あれよあれよと転生することとなり特典を手にするが?
初投稿です。よろしくお願いします。
「さて、本日13時27分、貴方の死亡が確認されました」
気がつくと見渡す限り真っ白な空間。
目の前には白い輪郭をした、無機質でありながら神々しさを感じる人型の存在。
それに対峙する自分は手足がしっかりと存在するにも関わらずどこか感覚がないような、足下が覚束ないような居心地の悪さを味わっていた。
「あえて言おう、テンプレ乙」
「いきなりですね、貴方」
当然である。
やや朧気な部分もあるがこっちは確かに死んだ記憶があり、にも関わらず五体満足どころか怪我ひとつなく、あまつさえこんな現実味のない不思議空間にいたのだ。
あれだろう! 二次創作的な特典とかのあれだろう!? オレTUEEEEな感じのあれだろう!?
「まあ大体あってますけど転生するということでよろしいのですね?」
「当然。とっととよこせ特典よこせ今すぐよこせさあよこせ」
「本当いきなりですね、貴方。というか説明は要らないのですか? 自分の死についてとか、なぜ転生するのかとか、或いは私が何者かとか……」
「どうでもいい」
「えー……」
「お前の存在については世界一どうでもいい」
「…………さすがにへこみますよ?」
「それより特典はよ! SSSランクの魔力とか
「あえて言わせてもらいましょう。テンプレ乙」
なんとでも言うがいい。せっかくの機会、中二心を開放したっていいだろう。 踏み台だろうと知ったことか。逆に考えるんだ、踏み台でもいいさと。
「いっそ清々しいですね」
「そりゃあ、こんなこと一生に一度あるかどうかだし」
「貴方の一生はもう終わってるのですけどね」
苦笑しつつそう言い、やや困った顔(見えないけど多分)で頭をかく神(仮)。まさか特典なしパターンかと恐々としていると、語りかけるように口を開いた(やはり見えない)。
「…こちらの都合で転生していただく身としてこのようなことを言うのもどうかと思いますが、ひとつご忠告を」
「……何?」
「どのような人生を送るにせよ、自分が何をしたいのか、自分にとって何が大切かをよく考えてほしいのです。 強い力を得て調子にのり、周囲から孤立し後悔を残して引きこもるという前例はさほど珍しくありません。ロマン溢れるファンタジーやSFに触れそれに熱狂するのも良いでしょう。英雄になるべく巨悪との戦いに身を投じるのも悪くありません。世界を征服するべく魔王として君臨しても構いません。しかし貴方がこれから向かう世界はひとつの現実、ゲームやアニメのような空想ではないのです。ラスボスを倒してハッピーエンドとはいきません。例え物語が終わっても貴方の人生は続いていきます。貴方がまた死を迎えるまで」
「……」
「もちろんその場の思いつきで行動し、気の向くままに好き放題生きることを否定はしません。ですが、後悔のないよう生きていただきたいのです」
まあその通りではあるのだろう。 仮に高い戦闘能力を得ても日常で役に立つことはないだろう。人生のなかで日常パートと戦闘パートでは日常の方が比率は高いはずだ。 強敵を探して放浪の旅とか生涯現役常在戦場の軍人とかそんな生き方もごめんである。
こっちは平和ボケした生粋の日本人だ。
「じゃあとりあえずランクAの黄金律頼む」
「急に即物的かつ実利的な方へシフトしましたね」
「あと平和な現代日本生まれで下手に名家の生まれとか面倒だしそこそこ裕福で平凡な家庭の生まれで顔はイケメンでなくていいけどそこそこ整った感じで」
「具体的な注文のようで微妙にふわっとしてますね」
「あと無病息災と家族円満と恋愛成就」
「神頼みですか。 神ですけど」
実際問題、金さえあれば大体の物事は解決するだろう。
二度目の人生を送るならば生前できなかったことをするのも良いが先立つものは必要だ。幸せは金で買えないと言うが金がないと不幸ではある。 それ以外では健康とか周囲の環境とか生まれもってのあれこれとかがある程度充足していれば概ね満足である。
新しい人生では楽器でも始めてみるか…。
と、そんなことを考えていると目の前の神(確定)はやはり困った顔で口を開いた(無論見えない)。
「…期待させておいて申し訳ないのですが、特典及び転生先についてはランダムとなっておりまして……」
「あ、そのパターン?」
というか転生先のことすっかり忘れていた。
なら日常系の世界だと戦闘能力がそのまま無駄になり、逆に戦闘色が強い世界だと自衛手段は必要になるわけか。
……サザエさんや名探偵コナンの世界に生まれたらどうなるのだろう。一生歳をとらないのだろうか。
「ちなみに転生先はハイスクールD×Dに決定しました 」
「あ、もう決まってるのね」
「ええ、厳正なるあみだの結果です」
「あみだ?」
「ちなみにひとつ右はバイオハザード、左はがっこうぐらし!でした」
「危ねえ!!」
ハイスクールD×Dも危険は多いがゾンビものよりはましである。難易度高めの死にゲーとあからさまな詰みゲーくらいには差があるだろう。日常を生きようと決めた矢先この仕打ちである。良かった、相対的に良かった……。
「にしてもハイスクールD×Dか…」
「補足しますと兵藤一誠と同級生として転生します」
「つまり巻き込まれる可能性はそれなりにある訳か…」
であれば自衛手段はほしいところだ。うろ覚えだが、悪魔やら堕天使やら命の危険も多く、主人公も実際に殺されていたはずだ。
まあ、一切何の能力もない無力な一般人ならそれはそれで狙われることはないかもしれないがそれでもはぐれ悪魔などに鉢合わせたら抵抗すらできないし何より……
「それじゃあつまらないしなぁ……」
「そうですか?」
「いや、日常も大事とは思うぞ? でもほら、やっぱロマンじゃん?」
「ああ、わかります」
伝説の武器とか溢れるカリスマとか正義のヒーローとか!
憧れない人がいるだろうか? いやいない(断定)!
荒らし回ったりしないにしても助けられる場面なら力を貸したいし活躍したいし女の子と仲良くなってイチャイチャしたいし!
「素直というか、自分に正直ですね貴方は。……ではこちらの箱からくじを三回引いてください。それがあなたの転生後の特典となります」
と、どこからか穴の空いた四角い箱取り出した神。
この白い空間でどこか場違いな感じが否めない。
これが俺の人生を左右するのか……。
「こい!
「やたら殺傷性が高いですね」
「グラグラの実とか
「世界を滅ぼすつもりですか?」
こい! カッコいい強力な武器よこい!
神に祈りつつ(目の前)くじを引き、紙を広げる。
さあ、何が出たか……!
[
Fateシリーズより、ペルシャの大英雄アーラシュの持つ宝具。
2500kmにも及ぶ射程距離と大地を割る威力を持つ究極の一矢。
生前彼はその一矢でもって国境を作り、五体四散して命を失ったという。
その逸話もしっかりと再現され発動後は死亡する自爆宝具である。
つまり使ったら死ぬ。
「えぇ…」
「どうしました?」
「これ……」
「ん? …ああ、うん。 格好良いじゃないですか、当たりですよ」
「どこが!? 確かにカッコよかったよアーラシュさん! でもそうじゃないだろ!?」
「落ち着いてください。私に言われてもどうしようもありません。 それにまだあと二つ残ってます。 気を落とさず」
「……うん、そうだな」
まあ三つもあれば一つくらいはずれもあるだろう。
気をとり直して二回目を引く。
宝具がくるなら
そんなことを考えながら二枚目の紙を広げた。
[
Fateシリーズより、フランスの聖女ジャンヌ・ダルクの持つ宝具。
“主よ、この身を委ねます” という辞世の句を唱えることで発動する炎を発現させる聖剣。
彼女の迎えた最期を攻撃的に解釈した概念結晶武装。
己の生命と引き換えに打ち砕くべき相手を燃やし尽くす自爆宝具である。
つまり使ったら死ぬ。
「おい待てやこら」
「どうしました?」
「どうしたじゃねえ!? これ見ろこれ!」
「え? ……ああ、かの聖女とお揃いですね、おめでとうございます」
「喜べるか!? 何で二回連続で自爆技なんだよ!?」
「ええと、恐らくですが貴方の本質によるところが大きいかと」
「本質?」
「型月でいうところの起源ですね。特典として能力なり武器なりを渡したところでそう簡単に扱えるものではないのです。魂に上手く根付かないと言いますか。ですので完全なランダムでなく貴方にとって相性の良い特典が引かれやすくなっているのです」
「…俺の起源は自爆なのか……」
「……貴方は自分の死因を覚えてますか?」
そう言われて不明瞭な記憶を必死で探る。
―――思い出すのは燃え盛る炎、充満する煙、その中で必死に誰かを探す自分の姿……
――――どこだ!? どこにいる!? と必死に声を張り上げるも返事はなく……
―――――やがて近くの部屋で爆発が起きて……
――――――お兄ちゃん……
……ああ、そうだ―――
確か、マンションで火災が起きたんだ。
そこを通りかかって、女の子が泣いていて……。お兄ちゃん、お兄ちゃん、て泣いていて。それでいてもたってもいられなくなって―――-
「!? あの子の、あの子のお兄さんはっ……」
「落ち着いてください、ちゃんと無事ですから」
「そうか……良かった……」
「良くありませんよ。人を助けるのは良いことですがそれで自分が死んでしまっては元も子もありません。まあ、そう言う愚直な善性も嫌いではありませんが」
「……そうだな、すまん」
そうは言うものの悪い気分ではなかった。
お兄さんはちゃんと救助されたようで、結局自分は何の役にも立たなかったが女の子の兄が無事と聞いて安心してしまっている。
―――神の言う『起源』はこれだろうか?
献身というか、自己犠牲というか、それが原因でこんな特典を引き当ててしまっているのだろうか。
だとしたら多少むず痒くはあるが悪い気はしなかった。まあ、今後は自分を大事にとは思うが少しは前向きになれる話である。
すると神は歯切れ悪そうに、
「ええと、そうではなくてでして……」
「?」
「実はその兄妹、火災とは無関係でして」
「え?」
「たまたま通りかかった迷子の子供でした。マンションの住人でも遊びに来ていた訳でもありません」
「」
「ちなみに貴方がマンションに突入したすぐ後にお兄さんと合流しそのまま家路に着きました」
「……俺の起源は?」
「良い人だけど抜けているというか、大切なところで詰めが甘いというか、時々やらかしてしまうというか、良かれと思って自滅するというか……」
「つまり?」
「貴方が得るだろう特典としては『英霊エミヤの召喚』『宝石魔術』『
そういう意味では強運ですよ。貴方がこの二つを引き当てるなんて、ガチャでいう五つ星です。ああ、使用に関しては心配ありませんよ。多少の相性違いはそれを引き当てた奇跡、あるいは縁によって補填されますので。と、感心しつつ補足する白い輪郭。『幸運』ではなく『強運』と言ったところがポイントである。
ああ、うん、そうか、そうか……
「ちくしょぉおーーー!!」
自棄になりつつ最期のくじ(多分誤字)を引く。
なぜこんな時に無駄な運を使っているのだろう?
だがそこの白い輪郭によればそんな特典を引く可能性は低く、三連続はさすがにないだろう(フラグ)。
もう自爆とかでなければ何でもいい(フラグ)。三つ全てとかあり得ないし(フラグ)、そんなポンポンと奇跡は起きないはずだ(フラグ)。
もう神なんて信じない。神様なんていなかったんだ。
そんなことを思いながら三枚目のくじを開く。
少しでも自分に優しい特典であることを願いながら―――
[
Fateシリーズより、ヴィクター・フランケンシュタインによって創造された人工生命体フランケンシュタインの怪物が持つ宝具。
彼女の持つ
また、使用時低い確率で第二のフランケンシュタインの怪物を生み出す可能性がある。
小説版ではリミッターの制限がつけられていたが企画段階においては正真正銘の自爆宝具である。
つまり使ったら死ぬ。
「だろうと思ったよコンチクショウッ!!」
「ガルバニズムと乙女の貞節の性質上燃費が良くマスターに優しいバーサーカーじゃないですか」
「
「そういえば見事Fateシリーズで揃いましたね」
「そこじゃない! 自爆の方!! なんで自爆で揃ってんだ!? 起源うっかりじゃなかったのか!?」
「もしかしたら死因によって起源が変化したのかもしれませんね」
「なんで冷静なの!? 今から送り届ける命が儚く散りそうなのよ!?」
「貴方の存在なんて世界一どうでもいいです」
「ひでぇ!? 優しくアドバイスしたあんたはどこいった!? あれか!? 最初のやり取り根に持ってた!?ゴメンね!?」
「テンションがおかしいですね、さっきから。というか何であんなにフラグ立てていたのですか?」
「過剰にフラグ立てておけば回避できると思ったんだ……」
「……ご冥福をお祈りします」
「まだ生まれてすらいないよ!? それとも今更か!?」
というかわざわざ企画段階って嫌がらせか!?
「さて、そろそろ落ち着いたようですし」
「落ち着いてねえよ!?」
「特典を使うための弓矢などの武器は手に入るよう環境を整えておきます。『乙女の貞節』も用意しておきますのでご安心を。早速転生といきましょうか」
「待て!? やっぱキャンセルで! 天国的なとこ行けない!?」
「すみませんが一番最初に了承を頂いてますし、この空間において一度行った契約は撤回できないのですよ。無理に破れば貴方の魂が砕け散ります」
「なん……だと……」
「いやー、助かりました。うちの上司仕事のミスには厳しくて、なんとか誤魔化せそうです」
「しかも転生理由は
ふざけんな!!という声も虚しく意識は落ちていった。
こうして使ったら死ね特典ばかり持つ転生者、
続かない