この世界に何かを残したい   作:鎌鼬

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思いついたから書いた。ただそれだけのことよ……




プロローグ・1

 

「ふぁぁぁ……」

 

 

タバコに火をつけて深く吸い込み、同じ様に深く吐き出す。独特の香りの紫煙が口から溢れて空気と混ざり合って消えていく。月海原学園の屋上でこうしてタバコを吸っているわけだが二十歳を超えておらず、ここの学生でもある。つまりは校則違反。見つかったら停学でも喰らいそうだが生憎と()()()()()()()()()()()()()()()()()。居たとしても()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「タバコ、ですか?まだ未成年なのに良いんですか?」

 

「ん?……あぁ、レオか」

 

 

そんな数少ない例外である自分と他にもう1人、真っ赤な学生服に身を包んだ金髪の男子生徒レオナルド・(ビスタリオ)・ハーウェイがそこに居た。

 

 

「良いんだよ、文句言われたら止めるけど自分からは止めるつもりは無いし」

 

「不良って奴ですね、初めて見ましたよ」

 

「馬鹿野郎。不良ってのはな、もっとこう、アウトローな奴等なんだよ。高々未成年の喫煙ぐらいで不良とか言えないね」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなんだよ。()()()()()()()()()()()()居たかもしんないけどさ」

 

「それは残念です」

 

 

口ではそういうものの、レオの顔は言うほど残念がっている様には見えない。何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「さて、僕はそろそろ行こうかと思うけどレオはどうする?」

 

「もう少しここに居ます。興味深い人を見つけましたから」

 

「レオが興味深いって言うね……虐めてやるなよ?」

 

「虐めません。シンジは僕を何だと思ってるんですか?」

 

「加減を知らないライオン」

 

 

ライオンは兄弟とじゃれ合うことで無意識の内に手加減を知るらしいのだが、レオには不幸なことに釣り合う相手が居なかった。同年代の子供では比べ物にならず、大人でもレオの相手を避けてしまう為に加減という言葉を知っていても加減をするという事を知らない。

 

 

レオからすれば戯れる程度の事が、相手からすれば遊びでは済まないという事があるのだ。実際、レオとボードゲームで遊ぶと初心者だと伝えても手加減ゼロで相手をされる。

 

 

返事に納得出来ないのか不満気な顔のレオを尻目に吸っていたタバコの吸殻を踏み躙って消すと、フィルターが()()()()()()()()()()()。続いて()()()()()()()()()()、モニターを操作して()()()()()()()()月海原学園の制服の上から黒いコートを羽織る。

 

 

「んじゃあな、レオナルド・(ビスタリオ)・ハーウェイ様。本戦でまた会おう」

 

「……そうですね、間桐シンジ。また会える事を楽しみにしてます」

 

 

再会を信じて別れの言葉をかけて、屋上から出る。現在は休み時間でも無い授業中の時間なので廊下に見える人影は無い。行くべき所へと行く前に、2つ程用事を済ませる事にする。

 

 

まず向かった先は一階の保健室。一応ノックをして扉を開けば床に着きそうな程の長い紫の髪の少女、間桐桜がそこに居た。

 

 

「あれ?兄さんどうしたんですか?まだ授業中の筈なのに……」

 

 

そう言って桜は心配そうに駆け寄ってくる。名前から分かる通りに妹なので心配しているのだろうが、生憎と()()()()()()()

 

 

「思い出したから。一応挨拶にね」

 

「……そう、ですか」

 

 

思い出したという単語を告げると桜は間桐シンジの妹という仮面を脱いで素の状態に戻る。だが一瞬だけであったが残念そうな表情になった。

 

 

「思い出したんだったら、私が妹じゃないって分かってますよね?でしたら早く本戦へ向かってください」

 

 

業務的、事務的と言うのか、作った笑顔を浮かべて淡々と必用事項だけを桜は告げる。きっと何を言っても同じことしか返されないだろう。何故なら、それが彼女の役割(ロール)だから。

 

 

だから、こちらも言いたい事だけを言わせてもらう。

 

 

「こっちに無許可で妹なんて作られてさ、最初は驚いたけど考えてみたら僕も妹が欲しかったんだよね……だから、この()()で短い間だったとはいえ妹が出来て良かったよ。ありがとう」

 

「ーーー」

 

 

返事は返らない事は分かっているので言いたい事を言って保健室から立ち去る。だけど作った笑顔を浮かべる桜の目に一瞬だけ驚きの色が見えた事は見間違いじゃないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はっと」

 

 

保健室を出た足でそのまま向かうのは放送室。特別な教室だからなのか、扉には鍵が掛けられていたが屋上の時と同じようにモニターを投影して少し操作をしてやれば簡単に開く。

 

 

目的であるマイクの元に真っ直ぐに向かい、いくつか機材を弄って放送可能な状態になったのを確認してからマイクに向かって話しかける。

 

 

「あーあー、テストテスト、マイクのテストちゅー……よし、聞こえてるかなぁ愚民ども!!みんなのアイドルワカメ系男子の間桐シンジ様だ!!いいか?これは気まぐれな上に貴様らの為にならないから敢えてボカして言わせてもらおうーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。思い出せなかったのならそれまでだ。思い出せたのなら、また会おうぜ!!」

 

 

桜の時と同じ様に言いたいことだけを一方的に言って放送を終える。普通なら一生徒が勝手にこんな放送をすれば校内は大騒ぎ、職員室から教師が来て生徒指導室に連行されるだろう。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()。それでも気づきかけてる奴が確信を持てる様に、忘れている奴が思い出せる様にと淡い期待を込めて、特にこの学園で出来た友人たちが気づいてくれる様にと祈りながらこんな放送をした。

 

 

「さてっと、やりたい方はやったしそろそろ行きますかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の放送をしたと言うのに静かなまま、平然と授業を続けている校内を歩いて辿り着いた先は一階の曲がり角にある壁。気づいていない者が見たのならそこはただの壁でしかないのだろうが気づいている者からすれば、そしてとある()()()()をしている自分からすれば、そこは異質に見える。五感ではなく他の感覚的な部分でそこの異質さを感じることが出来る。

 

 

一歩踏み出して右手を出そうとした時、初めて手が震えている事に気がついた。右手だけじゃない。左手も両足も、それこそ全身が震えていた。その震えの正体は紛う事なき恐怖。この先を行けば待っているのは()()()()だと分かっているから怯えているのだ。

 

 

「……ッ!!ハ、ハハッ!!今更震えるなんてね……」

 

 

ここに来る時からそうなる事は分かっていた。自分がそこに参加すると知っていて、しない事も出来たがすることを選んでしまった。参加しなければなんて後悔はしていない。ただただ、この先で待ち受けている命がけの事態が怖くて仕方がないだけだ。

 

 

「スゥ……ハァ……」

 

 

気持ちを落ち着かせる為に深呼吸。一度二度では無く何度も繰り返して、ようやく震えが治まって来た。

 

 

「……よし」

 

 

意気込んで二歩目を踏み出し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

こうしてーーー間桐シンジであって間桐シンジでは無い者の物語(Fate)は始まる。

 

 

 

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