捻くれ少年のラブコメディ

16話

俺は廃工場につきすぐに中へ飛び込んだ。

「小野寺！」

「！八幡くん！」

「来たか」

そこには写真にあったとおり手を綱で縛られた小野寺の姿があった。

そして、小野寺をこんな目に遭わせた張本人であるあの時の先輩がいた。

「やっぱりあんたか」

「ほんとに1人で来たんだね。馬鹿正直なやつだ。.....まぁいい。それで？君はどうするつもりだい？」

「小野寺を取り返すに決まってるだろ。さすがに俺もキレたぞ」

もう我慢の限界だ。ここまでの糞野郎だったとは。

「キレたねぇ.....比企谷八幡、君はこの人数を相手に取り返せるのかい？」

そいつはそう言うと後ろから数人のいかにも不良っぽい奴らが出てきた。

.....まぁそれくらいは予想済みだな。

「あ、あとそこから動くなよ。動いたら小野寺小咲がひどい目にあうことになる。......おいお前らあいつを潰せ」

そう言うと、不良達は俺に殴りかかってきた。

「がはっ！」

いってぇ....これいきなり肋折れたかも。

「なんだよコイツ、超弱いぞ！」

その後も俺は羽交い締めにされた。

「ぐっ.....」

「八幡くん！！！....も、もうやめてください」

「それは無理だなぁ。俺の小咲に手を出したんだから」

「なにが俺の小咲だ....それはお前の妄想の中の話だろ」

「今はな。でもすぐに俺の女になるさ」

「なんだと....？」

「小咲ちゃん、こいつを助けたいかい？なら条件がある」

「条件.....？」

「俺の女になれ。それならあいつを解放してやる。あ、でも行動で証明してもらおうかな。俺と今からヤるんだ。君の意思で」

「て、てめぇ！なにいって...がはっ！」

「さぁ？どうする？」

「........わ、わかりました」

「おい小野寺！そんなやつの言うこと聞くな！」

「うるさいぞ」

俺が必死で呼びかけると腹をまた蹴られる。

「がっ！.....お、小野寺」

「ははっ、いい子だ。じゃあ縄を解くからまずは服を脱ぐんだ」

「.......」

小野寺は言われるがままになる。

「ぐっ.......」

その時

「八幡！！小野寺！！」

「比企谷！！小咲ちゃん！」

楽、霧崎、集、宮本、鶫、そしてその後にもヤクザが数人いた。

「楽......」

「遅くなってすまん！今助ける！」

そう。俺はここにつく前、楽達にメールで救援を頼んでおいた。

さすがに一人で突っ込むほど馬鹿じゃない。

「ちっ、なんだこいつら！おい！お前らあいつらを潰せ！」

「どうやら身の程を知らないようですね.....」

そう言うと、鶫は一瞬で不良達を一網打尽にした。

「これなら竜達いらなかったな」

「まぁいいでしょ。念のためよ」

「ちっ！動くな！お前ら！こいつがどうなってもいいのか！」

何とか助かったと思ったら、そいつは小野寺を人質にとった。

「ほんとゲス野郎ね.....」

「......お前らありがとう。ここからは俺がやる」

「八幡......おう！任せたぜ！親友！」

「あいつをぶっ飛ばしなさい！」

「男を見せろ！比企谷八幡！」

「小咲をお願い」

「八幡！終わったら色々聞かせてもらうからな！」

みんなが背中を押してくれた。

「.....あぁ」

「動くなと言っただろ！」

「......お前だけは許さない」

「黙れ！ほんとに殺るぞ！」

「やってみろよ」

「なんだと？.......」

だがそいつはいつまでたっても小野寺を傷つけようとはしない。

「歪んでいるとはいえ、お前は小野寺のことが好きなんだ。ここまでするほどにな。だからお前は小野寺を傷つけられない」

「ぐっ......ちっ、ならお前を殺るだけだ！」

そう言うと突っ込んできた。

「今のお前なんて怖くもなんともねぇ...よ！！」

「が....はっ....」

相手のナイフをよけ、俺はみぞおちに思いっ切りパンチを入れる。

そしてそいつは倒れた。

「八幡くん！！」

小野寺が駆け寄ってきた。

「すまん.....遅くなって」

「ううん。嬉しかったよ」

そう言うと小野寺は俺を抱きしめてきた。

「......」

俺は小野寺を抱きしめ返す。

「.....おーい、おふたりさーん、俺達もいるよー」

.....忘れてた。

「！ご、ごごごめんね！いきなり抱きついて！」

「い、いや気にしなくていい」

「くぅ../羨ましい」

聞こえてない。楽の声は聞こえてない。

「小咲ちゃん、服服！」

「えっ......〜！」

小野寺は忘れていたのか顔を真っ赤にして後ろを向いた。

「ねぇ、そういやこいつどうする？」

「警察にでもつき出すか。監禁罪とか色々あるだろうし。桐崎任せた」

「えぇ！？私！？.....はぁ、クロード、お願い」

「承知いたしました」

「ねぇねぇ、そういえば小野寺さんさっき八幡のこと八幡くんって呼んでなかった？」

集が突然そんなことを言い出す。こいつこういうことは覚えてるんだよな。全力でごまかそう。

「.....なんのことだ？」

「....あんた目が泳ぎすぎ」

「ぐっ.....」

その後根掘り葉掘りはかされた。

「小野寺さんと八幡が小学生の時にねぇ..」

「小咲、なんであんた言わなかったのよ」

「い、いやぁ話す機会もなかったし.....」

「おい八幡！聞いてないぞ！」

「うるさいぞ楽、俺これでも怪我人なんだから」

肋も数本折れてるんですけど。

「じゃあじゃあ名前呼びってことはもしかして.....」

「集の考えてるようなことはないぞ。ただ少し仲が良かっただけだ」

「......」

俺がそう言うと、小野寺が腕をつねってきた。

「いたいいたい！.....なんだよ」

「少しなんだ」

「.......ま、まぁまぁ....かなり仲良かったです」

「もうあんたら付き合えば？」

「る、るりちゃん！？」

「小野寺が.....小野寺が......」

というかさっきまであんなことあったとは思えない空気なんですけど。

「ってそれより八幡くん怪我は！？」

「ん？別にこれくらいなんでもない」

「男なんだからそれくらい大丈夫よ！ほら！」

そう言うと桐崎は俺の腹に軽くパンチしてきた。

「ぐっ.....」

だが、今の俺にとっては軽くでも大ダメージだった。

「あ、あれ？」

「......」

さようなら小町。俺は天国へ旅立つよ。

「は、八幡くん？八幡くーん！！」

続く