浪漫!戦車道物語   作:ブロx

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ガルパンはいいぞ。(挨拶)
前作の、『例えばこんな麻子さんと愛里寿さん』の続きのようなものです。
 センチュリオンの搭乗員たちの設定を妄想すると、何だかワクワクして夜も眠れない。ので、感情に任せて書いちゃいました。 
 え?センチュリオン搭乗員の名前が無い?だったら作ればいいだろ!
作者の思い出のアニメのキャラから、名前をお借りしました。








前編

 

 

 

 戦車道に必要なモノとは何か。

 

それは仲間だ。言うなれば運命共同体。

互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。

 一人が他者の為に。他者が一人の為に。

だからこそ戦車道を続けて生きられる。乗組員は姉妹、乗組員は家族。

 

「嘘を言うなッ!」

 

 猜疑に歪んだ暗い瞳もなんのその。

快活に笑う女性が、むせる匂いに満ちた戦車の中で突然叫びだした。

 

「いきなりどうしたの?操縦手」

 

「悪い!変な電波を受信した!」

 

「しっかりしてよね?」

 

「…どうでもいいが、早く薙ぎ払ってくれないか。砲手」

 

 17ポンド砲の轟音が響く。

射出された砲弾は敵戦車の顔面を正確にぶち抜き、しめやかに爆発四散。

 と、なるのは戦場だけの話。

撃たれた敵戦車は、いじらしく白旗を出現させただけだった。

 彼女達が行っているのは戦車道。清く正しく、美しい乙女を育む事を目的とした武道である。

 

「早く装填しなさいよ、装填手」

 

「超!信地旋回!!!」

 

「もう完了してるが?」

 

 再度、敵から白旗が上がる。

 

―――状況終了。

 

 小さいが力強いその声が聞こえると、この戦車センチュリオンの乗組員達三人は一斉に己の後方を振り返る。

その視線の先には、綺麗なプラチナブロンドの髪をいじりもせずに、こちらをじっと見つめる少女がいた。

 

「大隊長。お疲れ様でした」

 

「愛里寿!!私達、今日もやってやったな!!!」

 

「大隊長。お疲れ様でした。予定通り、この後は今回の模擬戦の反省会を致します」

 

「御苦労。三人とも」

 

 少女は仄かな笑みを浮かべながら、三人を労う。

大隊長とも、愛里寿とも呼ばれた彼女の名は島田愛里寿。

 日本戦車道・大学選抜戦車大隊の大隊長であり、日本を代表する戦車道・島田流の後継者である。

今回、大学選抜チームは二組に別れ、戦車道の模擬戦を行っていた。

 

「今日は私達のチームの勝利だな!メグミ達もまだまだ速さが足りない!!

バミューダアタックは三身一体の究極必殺コンビネーションだが、一人でも欠ければ真価を発揮出来ないっていう弱点がある!

各個撃破されない為にも機動力をもっともっと!もっともっと研かなきゃ駄目だ!水のように自由に!渦潮のように力強く!!」

 

センチュリオン操縦手は、メガネをキラリと光らせながら力こぶしを掲げて力説する。

 

「……瀬津名。貴女の表現はどうもいまいち実態が掴めないわ。事は全て美しくエレガントに為すべきよ。

これは戦車道なんだから。そうでしょう?那由多」

 

砲手は、無表情に装填手を見やり問いかける。

 

「晴美、はっきり言って君の思想はくだらない。我々はただ、己の為すべき事を為すだけだ。

例えエレガントだろうが血を流そうが、大隊長の指示に従い大隊長の為に勝利を手にする。それだけだ」

 

装填手は、目も合わせずに砲手の言葉を切り捨てた。

 

「…無愛想な女。親の顔が見てみたいわ」

 

「おかしいな。君が幼少の頃から会っていると私は記憶しているが、ボケたか?晴美」

 

「皮肉で言ってるのも分からないのかしら?」

 

「その皮肉を、君に言ってるんだが?」

 

 そして目と目が合う、二人。

無表情な流し目と、力強い視線。まるで水と油、柔と剛。

 昔から相変わらずなこの二人に、操縦手・瀬津名がグイッと顔を寄せて二人の間に割って入った。

 

「止め止め!!!お前達はいつもこうだ!愛里寿の前でもどこでもお構い無しに!嫌いじゃないけどさ!!」

 

瀬津名の言葉を聞き、二人はしまったと思ったのか素早く同時に愛里寿に向かって頭を下げた。

 

「申し訳ありません、大隊長。この無愛想なムシけらをすぐに黙らせますので、どうかお待ちを」

 

「…申し訳ありません、大隊長。血も汗も流した事の無いこの冷血女をすぐに黙らせますので、どうかご容赦を」

 

―――誰が血も汗も流してないって?装填手はいいわよね、ただ弾を込めるだけでいいんだから。

 

―――私は君の言う、無愛想なムシけらだからな。装填されなきゃ何も出来ない砲手様にはとてもとても敵わないよ。

 

「……相変わらずで安心する。この二人」

 

「悪い!愛里寿!私が何とかするから、ちょっとセンチュリオンから降りててくれ!!!」

 

 相も変わらず姦しい言い合いが続いている戦車から降り、愛里寿は今回の模擬戦を振り返る。

今回より少し前に、大学選抜チームはとある高校に敗北を喫した。それの反省を兼ねた模擬戦が今回だったのだ。

 

「うん、課題は皆クリア出来てる。次に向けて、もっともっと煮詰めていこう。必ず、次は勝つ」

 

「―――愛里寿ちゃん」

 

声のした方向にまるでニンジャのような速度で愛里寿が振り向くと、そこにはピストルが。

 

「―――静かに素早くですか。変わりませんね、お母様」

 

いや、手をピストルの形にしている己の母がいた。

 

「課題は、まだまだあるみたいね?」

 

「未熟さを痛感する毎日です……。しかし、何ゆえお母様がこちらに?ご多忙だと聞き及んでいましたが」

 

 自慢の愛娘に向かって微笑む愛里寿の母。

島田流家元・島田千代。大学戦車道連盟・理事長でもあるこの女性が、何故今ここを訪れたのか。

 

 千代はその美しいプラチナブロンドの長髪を手で梳くと、戦車センチュリオンを見つめた。

 

「あの三人に話があってね。お母さん、急いでここに来ちゃった」

 

「瀬津名達三人に?」

 

 意外だ。何か特別な事だろうか。 少々目を見開き、愛里寿は心中に期した。

―――お母様が急いで、しかも直に来るとは。こんな事、お父様が外国から帰ってきた時以来だ。

 

 余談だが愛里寿の父は海外から帰ってきて妻と娘に会うなり、カンボジアが天国に思えるジャングルだった。と言って二人を抱きしめ続けたそうな。

 

「あ!家元!!お疲れ様です!!!」

 

「千代様。何ゆえこちらに?」

 

「千代様。お疲れ様です」

 

 先程までの姦しい言い争いなどどこ吹く風。

センチュリオンから素早く出てくる瀬津名達は、皆一斉にお辞儀をする。

 その様子を、何故か千代は懐かしさを含んだ表情で見つめた。

 

「貴方達にちょっと頼みたい事があるの。極秘任務、お願いできる?」

 

 イエス・マム。

異口同音で応える三人に、千代は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 県立大洗女子学園。

先だって行われた戦車道全国大会に20年ぶりに出場し、優勝を成し遂げて廃校までも阻止した奇跡の学園艦である。

 そしてその大洗は後に、日本戦車道・大学選抜チームとの試合にも見事勝利し、学園艦存続を確実なものとした。

 

それを祝う為に、大洗女子学園のとあるOG達が現在学園艦の学園長室を訪れていた。

 

「ご無沙汰しております。学園長」

 

「よ!おっさん!」

 

「お懐かしゅうございます」

 

「相変わらずだね、3人共。

・・・君達がこの艦を卒業して、もうどれくらいになるかね?」

 

 綺麗に整った髪型、柔和な眼差し。紺色のスーツを品良く着こなす男性が三人の女性に話しかける。

 大洗女子学園・学園長は昔を懐かしみながら、昔から変わっていない三者三様の元生徒達を眺めていた。

 

「4年になります」

 

「私達も老けたなー!ま、そうか。あの時はおっさんカツラしてなかったしな!」

 

「え?何言ってるんだい瀬津名くん。これは頭皮から直に生えてるものだから」

 

「ズレてるよ?」

 

「・・・・・・」

 

 瀬津名と呼ばれた女性は、黙っていれば深窓の令嬢もかくやと言わんばかりの美人と言えるだろうが、しかしその表情に浮かべるのは常に破顔。

白い歯を見せながら快活に笑う彼女に口を閉じて無表情という顔は存在しない。笑う所に福来たる。その体現が瀬津名だ。

 

 彼女が気を許した相手は、きっと死ぬまで退屈する事は無いだろう。その瀬津名が、学園長の頭を指差し指摘する。

 

 さりげなく、しかししっかりと指摘された頭髪を手直しする学園長。よる年波には、誰も勝てないものだ。

 

「―――この度は、学園艦存続おめでとうございます」

 

「晴美くん・・・」

 

 学園長を言祝ぐこの晴美と呼ばれた女性は、瀬津名とは真逆の無表情な女性だった。

口元を引き締めて腰からしっかりとお辞儀をする彼女を傍から見れば、なんと愛想の無い女かと思うかもしれない。

 

 だがよくよくみれば、天性のものだろうかその目元は幾分柔らかい。おそらく彼女は童顔なのだろう。

無表情とのギャップが、晴美を魅力的に見せていた。

 

 きっと彼女が気を許した相手は、見ていて飽きない素敵な女性のご尊顔を拝む事が出来るだろう。

 

「この度、我ら大洗女子学園卒業生は、母校存続にいたく感激しております」

 

「那由多くんも・・・。しかし、君達がそれを言うかね?」

 

 那由多と呼ばれた女性が目礼する。彼女を見て第一に思うのは、その力強い視線。

睨んでいる訳ではない。冷たく見下している訳でもない。ただとても、目力(めぢから)がある。

 

 人間として、生き物として尊敬できる。貴女に一生付いて往きたい。そして、私の隣で共に人生を歩んで欲しい。そう思わせる何かがこの女性にはあった。

 

 まるで、力強い勝利の女神。彼女が気を許した相手は、きっと素晴らしい人生を歴史に刻む事だろう。

 

「―――学園長。それはそれ、これはこれですわ。私達とて、母校が無くなるのは本意ではありません」

 

 晴美がピシャリと言い放つ。

その昔彼女達三人は日本戦車道・大学選抜チームの一員として、母校大洗と戦った事がある。

 戦いに私情は持ち込まない。彼女達三人の顔にはそう書いてあった。

 

「・・・やはり君達は変わらないな。君達三人がここの生徒会にいた頃が懐かしいよ」

 

「学園長こそお変わりなく。此度の試合を文科省に認可させる為尽力なさった事、島田流家元である島田千代様をはじめ、我々は深く感謝しております」

 

「千代くんか。・・・彼女が在学していたのはもう20年も前の事なのに、彼女はまだここを覚えていたのかね」

 

「母校とはそういうもの、との事です。学園長」

 

「当時はしがない教師の一人だったんだろう?おっさん!年甲斐も無く昔の血が騒いだんじゃないか!?」

 

「ははは、これは参ったな」

 

学園長はこの学園艦を廃艦にする等とほざいてきた文科省の役人が、この部屋を最初に訪れた時の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

『――――なるほど』

 

『お分かり頂けましたか?学園長。もはや学園艦の統廃合は、この国の決定事項なのです』

 

 大洗女子学園・学園長室。

ここに、文部科学省の役人が来ている理由はただ一つ。

 

『失礼ながら、貴校は近年特にこれといった活動実績は無く、入学者は減少の一途を辿っています。

 正直に申し上げて、無駄の一言ですよ。まったくもっておぞましい。

20年前ならいざ知らず、今の我々には無駄遣いなどという意味の無い事は出来ないのです。

―――無駄は極力減らす。それが我々の方針です』

 

 必要のない無駄な学園艦を一切無くし、その維持費を有意義な事に回す。

資金とは、資源とは決して無限ではない。大洗女子学園は、その他もろもろの有意義の為の犠牲となる。

 その決定を、役人は伝えに来た。

 

『なるほど・・・。聞けば聞くほど、あなたの仰るとおりだ』

 

『理解が早い学園長で助かります。

では、この学園の生徒会にはそちらから伝えて頂きたい。私はこれで失礼させて頂く』

 

 役人の言葉にうんうんと頷く学園長。

役人はそれを了承の意であると見て取り、次の仕事場へと向かう為に立ち上がる。

 

―――しかし、

 

『大洗女子学園の生徒をはじめ大勢の人々が暮らし、そして巣立っていったこの学園艦を残す事などおぞましい。

 真の有意義な事にこそ資金は、資源は与えられて然るべきこと。

―――そして、無駄は極力省くべき。無駄遣いに、意味は無い』

 

 椅子から立ち上がり、役人の前に無駄なく素早く立ち塞がる学園長。気のせいだろうか。役人は、眼前に戦車砲が見えた。

 

『理解が早い学園長で、助かります――――――だと?』

 

幻聴だろうか。役人は、

 

『そこをどけ、豚が』

 

戦車砲の砲弾装填の音が聞こえた。

 

『私はこれから、最愛の艦を、護りに往かねばならんのだ!』

 

―――完全に肝を潰された役員の前に、生徒会長・角谷杏をはじめ大洗女子学園生徒会が無理を通すのは、このすぐ後の話である。

 

 そして、大洗女子学園が戦車道全国大会で優勝した後、この役人はまたもこの部屋に現れた。

 

『強制退艦』という国の令状までひっさげて。

 

何かが切れる音を、学園長は冷静に聞いた。

 

『―――お思いか?』

 

『・・・・は?何です、元学園長?』

 

『私が、あなたのような虫けらを、捻り潰すのに――――何かためらいの様な感情を抱くとでも?』

 

 大洗女子学園生徒会が、今度は西住流家元と日本戦車道連盟・理事長と共に無理を通しに行くのはこの後の事である。

 

 

 

 

 

 

「いやいや。・・・学園長といえど、お上の決定を覆すなんて一個人では到底不可能だよ。全ては、彼女達の頑張りのおかげだ」

 

「土俵を用意する。…口にするのは簡単でも、それがどれだけ難しいか」

 

「改めて、この大洗女子学園存続にご助力くださり有難うございます」

 

「私達の母校を有難う。おっさん!」

 

恩師に向って、三人は深く頭を下げた。

 

「この学園を想う君達の気持ちは、ありがたく受け取っておこう。学園長として、こんなにも嬉しい事は無い。

 それで、どうだね近況は。大学での戦車道は、高校のそれよりも一層忙しいと聞いているよ?」

 

「…毎日、己の未熟さを痛感する日々です」

 

「ほう、謙遜を覚えるとは。成長したね、晴美くん」

 

「全然、まだまだですわ。母や千代様という素晴らしい方々がいるのですから」

 

「私もだよ!おっさん!母さんや家元に比べたら、まだまだ速さが足りないなって思う!!!」

 

「我々は、まだまだ若輩者です。

そういえば、我々の母と千代様は皆この学園の卒業生だと聞いております。学園長、その当時の事を後学の為にどうかお聞かせ願いませんか?」

 

「・・・成る程。千代くんが君達をここに寄越した理由が分かったよ」

 

 学園長は20年前を思い出した。

問題児だった現・島田流家元を。貴族と称された彼女達を従えていた若き生徒会長を。

 

「そういえば、母も千代様も当時の事を決して話そうとはしません。是非、聞かせて頂きたいですわ」

 

「おっさん!私も聞きたい!!話してくれ!!!」

 

 目が爛々と光りだす那由多達。

―――やはり、君達はあの子達の娘だよ。 学園長は、いよいよ20年前の在りし日が脳裏にはっきりと映ってきた。

 

「他ならぬ君達の頼みだ、聞かせてあげよう。・・・20年前、この大洗が戦車道を捨てた当時をね。

―――あの頃この学園艦には、」

 

四人の貴族と、学園の名を貶める烈女がいた。

 

 

 

 

 

 

約20年前。

 

「戦車を開放しろーー!!!人質にしたこの艦の戦車達を開放しろーー!!!!」

 

「うるせー!!!ガタガタ言うなこの先公!!!!」

 

 叫ぶ教師。叫ぶ生徒。戦車格納庫に、戦車道履修者たちが立て篭もった。

 

 その知らせを聞き、大洗女子学園の教師達は一般車両による格納庫の包囲戦を敢行。生徒達に必死の説得を行っていた。

 

「あたし達の戦車を売っ払うなんて、御天道様が許してもこのあたし達が許さねえ!!!」

 

「掛かって来やがれ!面ァ見せてみろ!!眉間なんて撃ってやるもんか!!!ボールを吹っ飛ばしてやらあ!!!!」

 

「返して欲しかったら砲弾でもブチ込む事ね!!!戦車は全部こっちの物ですけどね!!!」

 

 拡声器で叫ぶ女生徒達。

―――この学園の経営難だか時勢だか何だか知らないが、血と汗と涙が滲んでいるこの戦車達を捨てるなんてとんでもない!

 

 断固拒否。徹底抗戦。血戦上等。一蓮托生。

そんなハチマキをしながら、彼女達四人は教師達大人に抗っていた。

 

「言うなれば私達と戦車は運命共同体!互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う!」

 

「一両が皆の為に!皆が一両の為に!だからこそ戦車道を続けて生きられる!!!」

 

「私達は姉妹!私達は家族!!」

 

「無能?怯懦?虚偽?杜撰?どれ一つ取っても戦車道では命取りとなる!!それらを纏めて無謀で括るお前等大人!!!」

 

「誰が仕組んだ地獄やら!戦車道の名門・天下の大洗女子学園が嗤わせるァ!!!」

 

「お前も!お前も!!お前も!!!」

 

―――だからこそ、戦車の為に私達は死ぬ!

 

「・・・・埒が明かん!交渉人はまだか!?」

 

「学年主任!あれを!!!」

 

 そう言われて頭を抱えながら後方を見やると、学年主任に今年から任命された男性教師が、更に頭を抱える事になる問題児が車の上を歩いていた。

 

「・・・―――し、」

 

 綺麗なプラチナブロンドの長髪。スラリとした細身の身体。葉巻のように見える何かを口にくわえながら、その女性は車の天井をへこませて大地に降り立った。

 

「――――――島田ァアアアアアアア!!!!!」

 

 島田と叫ばれた彼女は、口にくわえていた何かを靴の裏でもみ消した。

そして、ズンズンと格納庫に向かって歩き出す。

 

「止めろ!スタンドプレーは許さんぞ!!交渉人を立てて、人質解放の交渉をするのを待て!!!

お前に話してるんだぞ島田千代!!!聞こえんのか!?」

 

無人の野を往く、島田千代。

 

「この前の大失態を忘れたのかこの馬鹿もんが!!

お前のスタンドプレーのせいで、文科省に何人も首をきられかけた!!一歩でも入ったら、貴様は退艦だ!!!」

 

腕を振って叫ぶ教師には目もくれず、千代は制服のスカーフを教師に投げつけた。

 

「千代!風紀委員長の私とは意見が合わないかもしれないけど、この人の話は聞いて頂戴!!副学園長さんよ!!!」

 

「島田くん!今回は」

 

ドガッ!と、哀れ鼻面をぶん殴られる副学園長。

 

「―――学園長が来たら知らせなさい」

 

「・・・聞こえますか先生方!?島田がそっちに向かってます!!奴を格納庫に入れてはならんのです!!!」

 

「任せてください!」

 

自分達の身体でバリケードを作る先生方。

 

「―――ねえ、何を任せるって?」

 

 その声にはっとする教師陣。

吐息が顔に当たる程の近間に、島田千代は立っていた。

 

「……あっちで見物してなさいな!!!」

 

蹴っ飛ばされる教師達。彼女の前に、埒が明いた。

 

「主任。次は、大怪我しますよ」

 

「止せ!入るな島田!!!」

 

制止の声も虚しく、格納庫の出入り口を蹴飛ばし、千代は突入した。

 

「……隊長!!お待ちしてました!!」

 

「あたし達を止めるなんて野暮な事は、言いっこ無しですよ?」

 

「誰も私達に追いつけない!貴女が言った言葉です!!島田隊長!!!」

 

「ねえ千代さん。それで、何しにここへ来たんですか?」

 

 チームの皆から貴族と呼ばれている、大洗女子学園戦車隊・四人の副隊長達。

上から順に、魔戦士公。魔龍公。魔海侯。魔炎長。

 

「ケリをつけにきたのよ、皆」

 

 20年前の県立大洗女子学園。

ここには一人の烈女と、四魔貴族と称される四人の女傑達がいた。

 

 

 

 

 

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