最愛の人へ   作:糖也

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第1章
第一話 春


「なにしてるの?」

 

 

「べつになにも、、」

 

 

そう言うと彼女はまた、砂場の上に作りかけのお山をさらに大きくしようと作業しだした。

周りには彼女と同じくらいの年齢の子供が何人かで鬼ごっこやかくれんぼをしている。

僕は、君も混ざればいいのに言おうとした寸前で思いとどまった。言えるくらいならとっくにみんなと遊んでいることだろう。

きっとこの子は人見知りで不器用なんだなと瞬時にわかってしまった。

それなら、、

 

 

「なら僕も一緒に遊んでいい?」

 

 

一瞬、驚いた顔をして、

 

 

「す、、すきにすれば!、、///」

 

 

その言葉を聞いて自然と顔がにやけてしまう。

きっと根はいい子で素直になれないだけだと話しているだけでわかる。

この紅い髪の女の子と接しているとなぜだか守ってやりたい、友達を作ってやりたいと自分勝手な思いが心の奥からこみ上げてくる。

多分年もそんなに変わらないだろうその女の子に僕は興味が湧いた。

 

 

「ねぇ」

 

 

不意に声をかけられた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「・まぇ」

 

 

「え?」

 

 

「だ、だから名前!名前を聞いてるの!」

 

 

なんで聞かれてるだけでこんなに怒られるんだろうと思いながら砂をいじっている手を止めて彼女の顔を見る。

 

 

「高山 広《たかやま ひろ》、ヒロでいいよ

君の名前は?」

 

 

「わたし? 私の名前は、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビリリリリリリリリリリリリリ

ドン!

 

「いて!!」

 

 

気がつくとよく見慣れた自室の天井。

どうやら時計の音に驚いてベットから落ちてしまったらしい。俺は、いまだやかましい目覚まし時計のベルを止めもう一度寝ようと二度寝の体制をとる。

さっきは懐かしい夢を見た。

確か小学校3年くらいだと思う。

景色からしてここから遠くない近くの公園。

遊んでいた子は、なぜか見たことあるような顔をしていたが名前はどおしても思い出せない。

そんなことを考えていても無駄だと思い時刻はすでに、おきなければまずい時間だが、あと五分と体がゆうことを聞いてくれそうにない。

下から母の声が聞こえる気がするが気のせいだろう。

悪いが恨むなら俺を縛っているこの布団を恨んでくれ。

不意にドカドカと階段を上がって来る音が聞こえた。

その時、俺は、母が起こしに来たのかと油断してしまっていた。

母は怒鳴りはするが実力行使をしたことはない。

すなわち起こしに来たのが母ならばまだ穏やかに起ることができただろう。

しかし、自室のドアが開いた次の瞬間、お腹に激痛が走った。

 

 

「ぐぁえ!」

 

 

一瞬で頭が覚醒し状況を確認しようと上を見てみると俺の幼馴染、西木野真姫の肘が俺の腹にめり込んでいた。

 

 

「おはよ、いい朝ね」

 

 

ベットから立ち上がった真姫は、まるで何事もなかったかのようにそういう。

この女は、人の腹にエルボを食らわせておいてまるで悪気がないのか。

一度、俺に対する態度について小一時間説教してやりたいと腹の痛みに耐えながら考えていると

 

 

「おばさんが早くおきなさいって、朝ごはんもうできてるわよ」

 

 

「あぁ、わかったから、着替えるので下いっといてもらえますかね、」

 

 

そう言うと納得したのかドタドタと階段を降りて行った。

まったく、朝起きるたびにこれだと腹痛を抱えたまま登校しなきゃならんことになる。

母さんは俺がおきてこないとなると朝迎えに来た真姫を使って俺を強制的に起こしに来る。

そのおかげで遅刻はないが、毎回これだと身がもたなくなりそうだ。

ブツブツ言っている間に身支度を整え早々に下に降りた。

あまり時間をかけるとまた二人にガミガミ言われるからな。

 

 

「おはよう、早く食べちゃいなさい。真姫ちゃんまってるわよ。」

 

そう言われ、リビングの方を見てみると真姫がソファーに座ってテレビを見ている。

これは、早くしないとまた何か言われるなと思い早々に食卓についた。

 

 

「そういえば真姫、おまえ今日入学式だろ?おばさん達と一緒にいなくていいのか?」

 

そう、今日は真姫の高校の入学式だ。

 

「あぁ、朝はあんたに通学路でも案内してもらおうと思って、ママたちはあとで学校に行くって言ってたわよ。」

 

俺が高校3年ということもあり、こいつは俺に、通学路を案内させるつもりらしい。

 

「でも早いわねー、真姫ちゃんももう高校生になるのよね〜。」

 

「制服全然似合ってねーなw」

 

「な、なによー、///べ、べつにいいでしょ!!」

 

「嘘だよ、似合ってる」

 

素直な感想を言ってやると、真姫の顔はトマトみたいにみるみる赤くなり、ふんっ!とまたテレビの方へ向いてしまった。

 

「ごちそうさま!」

 

朝食を食べ終えて歯を磨き、寝癖を直した頃には真姫はもう玄関で靴を履いていた。

登校時間までまだ少し余裕があるのに、よっぽど楽しみなのかね〜、この子は。

二人して玄関を出ようとしていると、いつの間にか後ろにいた母が

 

「今日は二人とも早く帰って来なさいね。真姫ちゃんの入学祝いのパーティーするから!」

 

まじか、きいてないぞ、なんて思っていたら隣で「ほんとですか!やった〜」などと女二人が騒いでいるので、俺は行ってきますと言って、玄関を出た。

春といっても外はまだ少し肌寒い。

制服の下にもっと着込めばよかったと思いながら、ポケットに手を突っ込み、いつもの通学路を歩き出した。

後ろからまた、ドタドタと足音が聞こえて来る。

まったく、こいつは静かに歩けんのかとひとりごちていると今度はわき腹をカバンで叩かれた。

 

「ま、まちなさいよー、、」

 

そんなに走ってないはずなのに真姫は息を切らし、顔を赤くさせて、俺の胸をポカポカ叩いて来る。

こいつは昔から運動が苦手だ。

肺が弱いらしい。

そのせいか昔からよく入院していたのを覚えている。

 

「悪かったから叩くなよ。ほら、案内して欲しいんだろ?行こうぜ。」

 

「うん」

 

いつもの日常、いつもの風景、ただ少し違うのは今日から可愛らしく、鬱陶しい後輩が増えることぐらいか。

昔から友達作りが苦手なこいつのことだ、高校でもそれは拗らせていて、きっとこいつのことをわかってくれる友達ができるまで、すごく時間がかかると思う。

俺が一緒に通えるうちは、俺がこいつを守ってやらないとと、心の中で改めて誓った。

考えている途中で校門が見えるところまで歩いていたみたいだ。

周りからは「おはよ〜」など様々な声が聞こえて来る。

隣を見るとなにやら不安そうな顔をしている幼馴染がいた。

 

「大丈夫、なにがあっても俺がおまえを守ってやるから、、、だからおまえは間違ってもいいから行動してみろ。

せっかくの高校生活なんだ、胸張って、めいいっぱい楽しめばいいんだよ!」

 

そう言ってやると、

 

「な、なにいってんの!///

そんな当たり前のこといちいち言わないでよ、、」

 

うーん、俺間違ったこといったかな。

 

「でも、、、」

 

と彼女は一呼吸おいて、

 

「ありがとう///」

 

満面の笑みでそう言った。

 

「おう!」

 

願わくばこいつの高校生活が心の底から楽しいと思えるようになりますように、

 

そんなことを思いながら、今日もいつもの教室に欠伸しながら入って行く。

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