最愛の人へ   作:糖也

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第十二話 ただのお礼

「あー!これも可愛い!」

 

 

お店の前にあるマネキンの服を見ながら穂乃果は声を上げる。

これで何軒目だろうか。

穂乃果は構わずお店の中に入って行ってしまった。

 

 

 

「はぁ〜」

 

 

遊園地を後にした俺たちは、このまえ、悠介と真姫と共に遊びにきたショッピングモールに来ている。

ここにくるのが楽しみだったのか、穂乃果は常にハイテンションで、もう何軒回ったかも覚えていない。

まったく、なんで女の子はこんなに服が好きなのか、よくわからない。

以前、真姫の隣の部屋を興味本位で勝手に見たときは目を丸くした。

俺の部屋ぐらいあるんじゃないかってくらい大きい衣装部屋になっていて、服の数が尋常ではなかった。

第一、衣装部屋なんか初めて見た。

金持ちだからこそできる技だろう。

昔はただの空き部屋だったのに、、

さすがは両親が医者をしているだけある。

 

 

 

「おまたせー!」

 

 

近くのベンチに座っていた俺のところに、ようやく穂乃果が帰ってきた。

ここまで穂乃果に付き合ってきたが、穂乃果は服は見るが、いいものがないのか一つも買っていない。

 

 

 

「なんだ、気に入ったのがなかったのか?」

 

 

「ううん、いっぱいあったけど、今日はそんなにお金持ってきてないしね。」

 

 

なるほどね。

これが普通な庶民の反応である。

どこかの誰かみたいに、気に入ったものは片っ端から買っていくのとは、また違った楽しみ方だ。

今度注意してみよう。じゃないと俺の腕がもたない。

 

 

 

「そっか、ならそろそろ行こうぜ。

俺行きたい場所があるんだ。ついてきてくれよ。」

 

 

 

「うん!いいよ!」

 

 

そういって目的の場所まで、穂乃果と二人で歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこだ」

 

 

しばらく歩くと目的の場所が見えてきた。

 

 

「靴屋さん?」

 

 

「うん」

 

 

そう、俺が来たかった場所はここ、靴屋だ。

 

 

「ヒロくん、靴が欲しかったの?」

 

 

「ちがうよ、

明日、真姫の誕生日なんだ。

それで靴でも買ってやろうと思って。」

 

 

「、、、」

 

 

まえにあいつと来た時、この靴屋で真姫が熱心に靴を見ていたのを覚えてる。

しかし、あいつは俺の荷物だらけの姿を見た後に、何も買わずに店から出て行った。

俺は、買わないのか真姫に聞くと、靴は大きいから今日はいいと言われた。

荷物だらけの俺を見て気を使ったんだろうが、あれだけ荷物を持ってたら靴の一つや二つ関係ないように思える。

 

 

「えーと、真姫が見てたのはコレだな。」

 

 

このまえ、真姫が見ていたのは確か、黒色のエンジニアブーツだったと思う。

しかし、ブランドものってこんなにするのか!

俺は、その靴を持ってレジに行き、それをプレゼント用に包装してもらって、穂乃果のところに戻る。

あぁ、諭吉がどんどん消えていく、、

 

 

「真姫ちゃん、明日誕生日なんだ。

私も何かプレゼントしようかな?」

 

 

急に穂乃果がそんなことを言いだす。

 

 

「いや、気持ちだけで充分だよ。

あいつには、俺から伝えておいてやるから。

それより、後一つお願いがあるんだ。」

 

 

「?」

 

 

そう言って、次はおしゃれな感じの服屋に連れて行った。

 

 

「ここ?」

 

 

「あぁ、穂乃果にお願いがある。

ここでさ、真姫に似合いそうな服を選んで欲しいんだ。」

 

 

「?」

 

 

「あいつに、服もプレゼントしようと思ったんだけど、俺じゃあ何がいいのかわからないし、こういうのは女の子に聞くのが一番いいと思ったんだ。」

 

 

服をたくさん持ってる真姫に服をプレゼントしても、意味がない気がするが、

何を買えばいいかわからないし、服なら安定で着てくれると思ったわけだ。

それにこの前、俺も服をプレゼントされたしな。

お返しみたいなものだ。

 

 

「多少高くなってもいいから、さっき買った靴に合うようなやつをお願いしたい。」

 

 

「、、、」

 

 

あれ?反応がない。

 

 

「穂乃果?」

 

 

そう呼び穂乃果の顔を見る。

 

 

「ヒロくんは真姫ちゃんのことが本当に大切なんだね。」

 

 

「?」

 

 

「ま、まあな」

 

 

真姫のことが大切か大切じゃないか聞かれたら、間違いなく大切と答えるだろう。

それは、これからも変わらない。

 

 

「そっか。

うん!いいよ!私が選んであげる!」

 

 

急に元気になった穂乃果がそう言ってくれた。

まったく、アップダウンの激しいやつだ。

 

 

「ありがとう、頼むよ。」

 

 

そう言って二人でお店の中にはいっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございましたー。」

 

 

店員さんが丁寧にお辞儀をしながらそう言ってくれる。

俺たちは、目的を果たしたあと、何か甘いものが食べたいと言いだした穂乃果のために、クレープを買って、フードーコートに座ることにした。

 

 

「いやー、いい服あってよかったね!

きっと真姫ちゃんにすごく似合うと思うよ!」

 

 

「多分な、本当に穂乃果がいてくれて助かったよ。ありがとう。」

 

 

「どういたしまして!」

 

 

穂乃果が笑顔で返してくれる。

 

 

「このために穂乃果を誘ったんだね。」

 

 

「、、、ああ、なんか利用したみたいになってごめん、、」

 

 

「いいっていいって、穂乃果もたのしかったからねー!」

 

 

本当にこいつはいいやつだ。

プレゼントを買うために利用した俺に文句の一つも言ってこない。

俺だったら多少思うところはあったと思う。

でも、そこは穂乃果の性格に救われ、一日を楽しむことができたんだ。

今日は本当に楽しかった。

穂乃果と一緒にいろんなところを回って、買い物をして、飯を食った。

二人だけでも、十分楽しい時間だった。

またこいつとどこかに出かけられたらいいな、

 

 

「なぁ穂乃果、」

 

 

「ん?」

 

 

 

「今日はありがとな」

 

 

「どうしたの?突然。」

 

 

今日一日付き合ってくれたこいつにどうしてもお礼がしたい。

そんな気持ちになっていた。

 

 

 

「もう一回服を見に行こう。」

 

 

「え?まだプレゼント買うの?」

 

 

「違う、お前の服だ。」

 

 

「!!」

 

 

穂乃果は目を丸くして驚いてる。

 

 

 

「い、いいよ。

穂乃果お金持ってないし、」

 

 

 

「そんなもの俺がだしてやる。

だから欲しいものを買え。

さっきお前、欲しそうに見てただろ?

やっぱり見るだけじゃダメだ、買うんだよ。」

 

 

「そんなの、悪いよ。」

 

 

こんなに遠慮している穂乃果は初めて見る。

いつものグイグイくるこいつの姿は今はない。

 

 

 

「悪いことあるか。

お前は今日一日、俺に付き合ってくれただろ?

そのお礼だよ。」

 

 

「、、、」

 

 

「そのかわり、また今度おれとでかけてくれよな。」

 

 

「、、、本当にいいの?」

 

 

穂乃果がボソッとそう呟く。

 

 

「いいに決まってるだろ?

何を遠慮してるんだよ。いつもの穂乃果らしくないぞ。」

 

 

「ほ、穂乃果だっていつも遠慮してるんだよ!?」

 

 

 

どこがだよ。

怒る穂乃果に心の中でツッコミをする。

でも、どうやらもとの穂乃果に戻ったようだった。

 

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、買ってもらおうかな!

本気になった穂乃果はこわいよ〜!」

 

 

そう言って穂乃果は立ち上がり、歩きだした。

カッコつけたのはいいけど、お財布の中身がだんだんとさみしくなっていく。

はあ〜、バイトでも始めようかな。

 

 

「ヒロくん!」

 

 

そんなことを考えていると突然、前を歩いていた穂乃果に声をかけられる。

 

 

「なんだよ。」

 

 

 

穂乃果はクルリとこちらを向いたあと

 

 

 

「ありがとう!」

 

 

 

満面の笑みでそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はたのしかったね、、」

 

 

夕日の光を浴びながら、穂乃果はそう言った。

 

 

 

「あぁ、本当に楽しかった。

穂乃果、ありがとな。

やっぱ穂乃果を誘って良かった。」

 

 

俺たちはショッピングモールを後にし、バスに乗って最寄りのバス停で降りたあと、二人で家までの道を歩いている。

 

 

「///お礼を言うのは穂乃果だよ。

服まで買ってもらっちゃったし、

これは、穂乃果も何かお礼をしないとだね。」

 

 

 

「気にすんなって、俺の好きでしたことだ。」

 

 

 

「それじゃあ穂乃果の気がおさまらないよ。」

 

 

そう言って俺の方を向き歩みを止める。

 

 

「ねぇ、ヒロくん、

ヒロくんは今、好きな人とかいるの?」

 

 

「!!!」

 

 

 

急にそんなことを聞いてきた。

 

 

 

「///いるわけないだろ!」

 

 

「じゃあ真姫ちゃんは?

真姫ちゃんのこと、好きじゃないの?」

 

 

 

これは前にも聞かれたこと。

俺は真姫のことが好きか嫌いか。

そう聞かれたら、好きな方だろう。

でも、恋愛対象としてと聞かれたら、よく分からない。

結局、まだ俺の中では答えが出ていないのだろう。

 

 

 

「あいつはただの幼馴染だよ。

穂乃果こそ、好きなやつとかいないのか?」

 

 

 

「、、、私はいるよ。」

 

 

 

「!!!」

 

 

 

こいつに好きなやつとかいたのか。

クラスのやつかな。

でも、穂乃果に好かれるなんてそいつは本当に幸せものだと思う。

 

 

 

「誰だよ。」

 

 

 

思わず聞いてしまった。

どおしても、穂乃果の好きなやつが気になってしょうがない。

 

 

 

「今はダメだよ。

いずれ分かることだから、その時まで待ってて。」

 

 

 

何だろう、この気持ち。

犬が餌をおあずけにされたような、そんな感覚。

俺の心の中は、今日一番乱されていた。

 

 

 

「ねえ、ヒロくん。

目、瞑ってみてよ。」

 

 

急にそんなことを言われた。

 

 

 

「何でだよ。」

 

 

 

「いいから」

 

 

そう言われて渋々、俺は目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

「!!!」

 

 

右頬に何か暖かくて、柔らかい感触がした。

 

 

 

「///これは、今日のお礼だよ!

じゃあ、穂乃果先に帰るからねー。

おやすみ!」

 

 

 

そう言って穂乃果は走り去っていった。

俺は、穂乃果の姿が見えなくなるまで、自分の右頬を触りながら立ち尽くす。

 

 

「///今のって、、」

 

 

やっぱり、キスだよな、

でも何で俺なんかに。

穂乃果はお礼だと言っていた。

けど、お礼で普通、キスをするか?

もしかしたら穂乃果の好きな人って、、、

 

 

バチンッ

 

 

 

「考えすぎだ。」

 

 

俺は両頬を叩き、ありえないことを考えていた自分の目を覚まさせた。

 

 

 

「///」

 

 

でも、あり得ないと自分の心に何回言い聞かせても、胸の鼓動は激しさを増すばかりだ。

 

 

「帰るか。」

 

 

時刻は午後五時をまわっている。

ここで止まっているのも怪しまれるので、家への道を歩き出す。

俺は、家に帰るまでの間、穂乃果の事で頭がいっぱいになり、危うく電柱にぶつかりそうになったりしたが、やっとの事で高山家までたどり着くことができた。

外は寒いが、俺の顔は終始暖かいままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 

玄関のドアを開け、中に入ると、なにやらいい匂いがしてきた。

どうやら母さんがもう晩御飯の支度をしているようだ。

靴を脱ぎ、廊下を歩いてキッチンのドアを開ける。

 

 

 

「「おかえりー」」

 

 

見ると、母さんと真姫が二人で夕飯の支度をしていた。

 

 

「何でお前がいるんだよ。」

 

 

「今日はおばさんに料理を教えてもらう約束をしてたの。」

 

 

真姫はお鍋を回しながらそう答える。

自分の母親に教えて貰えばいいじゃないか。

おばさん、料理上手なんだし、

 

 

「父さんは?」

 

 

「まだ帰ってないわよー。」

 

 

母さんが答える。

なんだ、暇だからキャッチボールでもしようと思ったのに、

補足だが、短い距離なら十分投げることができる。

ストレス発散に、キャッチボールはちょうどいい。

 

 

「今日のご飯はなんですか?」

 

 

そう言って真姫の肩に手を回して寄りかかった。

 

 

 

「味噌汁とハンバーグ、あとサラダね。

ほら、邪魔だからテレビでもみててよ。」

 

 

そう言われると、ちょっとムカつく。

俺は、真姫に仕返しをするために耳元にフゥーと息を吹きかけた。

 

 

「きゃっ!」

 

 

 

こいつは耳が弱い。

怒った真姫は、おたまを振りながら俺を追いかけてきた。

やりすぎたかな、、

 

 

 

しばらく追いかけっこをしたあと、俺と真姫は、リビングの机をはさんで睨み合っている。

 

 

「今すぐ私の所に来るなら弱めの刑にしてあげてもいいわよ。」

 

 

「どんな?」

 

 

「ちょっと腕を噛むだけよ。」

 

 

「強いよ!犬か、お前は。」

 

 

俺たちのやりとりを見ていた母さんが

 

 

「あんた達、新婚さんみたいね。」

 

 

「「!!///」」

 

 

そんなことを言い始めた。

 

 

 

「なにしてんだ?お前ら」

 

 

「!!」

 

 

後ろを振り向くと、父さんが仕事着で立っていた。

 

 

「危ないからイチャつくのもその辺にしとけ。」

 

 

 

「「イ、イチャついてない!」」

 

 

真姫と声がかぶった。

 

 

「そういえば、玄関に落ちてたけどコレ、お前のか?」

 

 

そう言って二つの袋を俺に差し出してきた。

 

 

 

「おい!なんで持って来るんだよ!」

 

 

ヤバい、真姫に見られる。

そう思って、慌てて父さんから袋をひったくり、階段を上がって自分の部屋に入る。

危なかった。

危うく誕プレを真姫に見られるところだった。

俺は、誕プレをクローゼットの一番奥に隠して、再び一階に降りる。

 

 

「なんだ、エロ本か?」

 

 

「ちげーよ!そういうこと言うなよ!」

 

 

チラッと真姫を見ると、俺を見てなにやらにやけていた。

 

 

「なんだよ。」

 

 

「べつにー。

またかと思って、」

 

 

「またってなんだよ!

言っとくけど買ったことないからな!」

 

 

 

真姫はハイハイと言いながらキッチンに戻っていく。

 

 

そのあと、家族に真姫を加えて夕飯を食べ、俺は自分の部屋でテレビを見ていた。

 

 

ガチャ

 

 

「お風呂空いたわよ。」

 

 

パジャマにタオルを首にかけた風呂上がりの真姫が、俺を呼びに部屋を訪れた。

風呂上がりとあってか、真姫からとてもいい匂いがする。

 

 

「今はいいや。」

 

 

ベットに横になっている俺は、動く気にならず、そう返事をする。

すると、俺の横に真姫がチョコンと座った。

 

 

「ねぇ」

 

 

「なんだよ。」

 

 

 

「さっきの袋ってなに?」

 

 

真姫はテレビを見ながらそう聞いてくる。

 

 

「べつに、ただの漫画だよ。

ちょうど欲しいものがあったんだ。」

 

 

「ふーん」

 

 

真姫は立ち上がり、

 

 

 

「それじゃ、私帰るから。

はやくお風呂入りなさいよ。」

 

 

そう言って階段を降りていった。

ドアを開けた時の真姫の横顔を見たが、なぜか笑顔だった。

なんだよ、気持ちわりーな。

 

 

「ふぁ〜ぁ」

 

 

真姫のおかげで考えないで済んだが、改めて一人になると今日の穂乃果との事を思い出してしまう。

 

 

「///」

 

 

 

その事を思い出すと、どうしても顔が赤くなり、胸の鼓動が早くなってしまう。

 

 

「風呂入ろ。」

 

 

考えても仕方ない。

あれは、ただのお礼なんだと自分に言い聞かせる。

俺は頭を振り、汚れと疲れを落とすためにお風呂場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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