最愛の人へ   作:糖也

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第二十一話 日常

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月日が経つのははやいもので、俺が野球部に、そして真姫がμ'sに入ってから早くも一ヶ月が経とうとしていた。

その頃にはお互いにチームに馴染んでいて、俺が真姫の心配をするまでもなくあいつはあいつで上手くやっているみたいだ。

俺はと言うと、人数は少ないといっても流石は野球部。

誰がみてもきついとわかるようなハードな練習を毎日繰り返し行う日々を送っていた。

これは、俺とマルが試合に勝つためにどうしても必要になってくる要素を踏まえて考えた練習メニューで、みんなも勝つためにはとこれを認めてくれたのだ。

しかし、自分で考えたとはいえ体力のない俺にとっては、まさに地獄のような練習だった。

一ヶ月がたった今でも死にそうになるくらいだ。

そんな日々を送っていると当然習慣が変わってくると言うもので、いつも家に着くのは夜の21時くらいになってしまう。

いつもは真姫とともに歩いていた帰宅路も今はマルと男二人、ヘトヘトになりながら歩いている。

そして、朝は6時に起きて真姫とともに神社に向かう。

そこで、μ’sのメンバーに混じって朝練を行い、それが終わってから学校に向かうのだ。

そのおかげか昔ほどじゃないにしても体力はだいぶ戻ったといってもいいだろう。

夏大まではあと一ヶ月ほどだ。

そう、俺に休んでいる暇なんてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

 

「あーーー

やっと終わったーーー」

 

 

6時限目の終わりを告げるチャイムがなる。

今日もいつも通り寝て過ごしたわけだが、毎日の激しい練習に耐えるためだ。

先生方には悪いが勘弁してもらいたい。

 

 

「おいマル

さっさといこーぜ」

 

 

帰り支度をしながらマルに話しかける。

 

 

「わりー

今日は先行っといてくれ。

練習には間に合うからよ」

 

 

そう言ってきた。

それなら仕方ないと思い、俺は一人部室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玄関に着くと真姫の姿が見えた。

俺は声をかけるため近付こうとした瞬間、誰かが真姫に声をかけるのが見えた。

俺は慌てて隠れてその様子を見守る。

すると、声をかけたのは一年の男子生徒でしばらく話したあと二人は玄関を出てどこかに行こうとしていた。

俺は慌てて靴を履き替え二人の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく追っていると二人は人気のない体育館の裏でまた何か話しているところだった。

俺はまた、影からその様子を伺うことにする。

 

 

「ったく、何やってんだ俺...」

 

 

これじゃあまるでストーカーじゃないか...

真姫がどこで何をしようとあいつの勝手なのに何故か放っておけない。

体が勝手に動いてしまう...

 

 

しばらくすると、男の方がこちらに向かって歩いてきた。

俺は慌てて他のところに隠れ男が通り過ぎるのを待つ。

 

 

 

...俺の前を男が通り過ぎた。

 

 

「はぁーたすかった...」

 

 

「なにがたすかったの?」

 

 

「!!?」

 

 

後ろを振り返ると真姫が腰に手を当てながら俺の方を見ていた。

 

 

「お、おう

なんだ、真姫ちゃんじゃないか!

奇遇だな!こんなところで会うなんて」

 

 

いきなり声をかけられた俺は、慌てて言葉を発したが自分でも何を言っているのかわからなくなってくる。

 

 

「なにいってんの?気持ち悪いんだけど」

 

 

「なっ!」

 

 

確かに気持ち悪かったかもしれんがそんなストレートにいわなくてもいいだろ...

 

 

「そ、それよりお前、こんなところでなにしてたんだよ」

 

 

「それはこっちのセリフなんだけど」

 

 

「い、いいから答えろよ」

 

 

俺は無理やり聞き出そうと思いどもりながらも真姫に問いかけた。

 

 

「...べつに、なにもしてないわよ」

 

 

「!?」

 

 

うそだな..

見てたからわかるがあれは告白だった。

それを隠そうとしてるのは何か訳があるのか、言いたくないだけなのか。

どちらにしろ、関係ない俺が首を突っ込むのは野暮ってもんだ。

 

 

「そっか...

じゃあ俺練習あるから、またな」

 

 

「あ、ちょっと」

 

 

そう言って俺は走って部室にむかうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習が始まりしばらく経ってからもさっきのことが頭から離れない。

真姫があの男に告白されてそれに対して真姫はどう答えたのか...

あの男、見るからにモテそうな顔立ちだ。

背も高いし頭も良さそう...

やばい...泣けてきた...

 

 

 

「おい!いったぞ!」

 

 

「えっ?ぶっ!」

 

 

などと考えていると、飛んできたボールに反応できず左目の上にボールが直撃してしまった。

 

 

「おい!大丈夫か?」

 

 

慌ててマルが駆け寄ってきた。

 

 

「だ、大丈夫大丈夫。

ちょっとぼーっとしてたわ。

ゴメンな」

 

 

グラウンドで気を抜くのは死活問題だ。

昔、耳が痛くなるほど教えられたことなのにな...

 

 

「ってて...」

 

 

幸い血も出ずに済んだので俺はそのまま練習に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、目覚ましの音と共に目覚めた俺は下に降りようと準備を進めていた。

 

 

ガチャ

 

 

「!?」

 

 

突然空いたドアから真姫が顔を出す。

 

 

「なによ、起きてたのね。

ほら、早く準備しなさぃ....」

 

 

「?」

 

 

なんだ?急に黙りやがった。

 

 

「なんだよ」

 

 

「ぷふっ」

 

 

「?」

 

 

そのまま口を押さえて下に降りてしまった。

 

 

「なんだってんだよ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして俺も下に降りると真姫が母さんの後ろに隠れて肩を揺らしているのが見えた。

 

 

「?おはよう、母さん」

 

 

「ぷっあっははは」

 

 

 

 

母さんは突然俺の顔を見て笑い出した。

 

 

「おい!いきなり笑うなよ!

傷つくだろ」

 

 

「あんた、早く顔洗ってきなさい」

 

 

「?」

 

 

俺は渋々洗面台まで足を運ぶ。

そして鏡の前に立ち自分の顔を見ると

 

 

「な、なんじゃこりゃー!」

 

 

酷い有様になっていた。

左目の上に大きなコブができていて、それはもう見てられないほどだ。

あいつら..これ見て笑ってやがったのか。

 

 

「どうやって学校に行けばいいんだよ...」

 

 

悩んでいても始まらないので、朝飯を食べいつも通りの時間に家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷぷっ...

あっはっはっはは」

 

 

「てめー

笑いすぎだ!」

 

 

朝練に行くと俺の顔を見たニコが真っ先に笑い出した。

それに続いて俺の顔を見たメンバーのみんなが笑い出す。

 

 

「く、クソ...」

 

 

屈辱だ。別になりたくてこんな顔になった訳じゃないのに...

 

 

「み、みんな笑いすぎだよ。

先輩が可愛そうだよ」

 

 

「そうです。

人の嫌がることをするものではありません」

 

 

花陽ちゃんと園田がフォローしてくれている。

 

 

「お前らだけだよ...

ありがとう...」

 

 

そのあとは、だいぶ落ち着いたが終始クスクス声は止むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪side 真姫

 

 

 

『俺と付き合ってください!』

 

 

『え...』

 

 

『返事は今じゃなくていい、考えてみてくれ...

それじゃあ』

 

 

昨日の出来事を思い出す。

クラスの男子から告白された。

まだ一回も話したことのないのに何故告白できるのだろう。

私は不思議でならない。

その後、ヒロがいるのが見えて声をかけた。

多分、私たちの後をつけてきたのだろう。

それが何故だか嬉しかった。

心配して欲しくてわざと意地悪してみても、あいつはあっさり引き下がって部活に行ってしまうんだもの。

少しイライラしてしまう。

まったく、もうちょっと食い下がってもいいじゃない..

そんなイライラを持ちながら今日も体育館の裏で昨日の男の子を待つ。

理由はもちろん、昨日の告白の返事をするためだ。

 

 

タッタッ

 

 

足音が聞こえた。

振り返ると、思った通り昨日の彼だった。

 

 

「ゴメン、待った?」

 

 

「ううん、大丈夫よ」

 

 

かなり急いできたのだろう。

額にはわずかに汗が滲んでいる。

 

 

「それで昨日の返事だけど...」

 

 

「うん...」

 

 

私はあらかじめ用意していた言葉を彼に告げた。

 

 

「ごめんなさい...あなたと付き合うことはできません」

 

 

「.....そっか」

 

 

彼には悪いが付き合うことはできない。

 

 

「誰か好きな人でもいるの?」

 

 

「...!?」

 

 

唐突に彼がそんなことを聞いてきた。

 

 

「...どうして?」

 

 

「いや、なんとなくそう思っただけだけど...」

 

 

ふと脳裏にあいつの顔が浮かんだ。

背も小さく顔も良いわけではない。

頭も悪いし性格だって捻くれてる。

はたから見れば今目の前にいる彼の方がよっぽどかっこよく見えるだろう。

でも...それでも私はあいつを選ぶと思う。

 

 

「...うん、いるわ」

 

 

「だれ?あ、わかった!

サッカー部の坂田だろ?」

 

 

開き直った彼は図々しくも私の好きな人を知ろうとして、適当な名前を上げ始めた。

まったく、そんなことをしてなんになるのだろうか...

 

 

「ううん...」

 

 

「じゃあ野球部の宮本か?

西木野、いっつも野球部の練習見てるからな」

 

 

出てきた名前は全て同じクラスの男子で、とりわけ人気の高い二人だった。

背も高く、イケメンで女子の憧れの的らしい。

 

 

「ううん...」

 

 

「じゃあ、一体誰だよ?」

 

 

そんな見てくれだけの人に私は興味がない。

どんなに背が高くてイケメンだろうと、お金持ちで貢いでくれようと関係ない。

私の中ではあいつが一番輝いて見える。

こんなこと、恥ずかしくて他人には絶対に言えないけどね...

 

 

「ふふっ

心配しなくても私の好きな人はそんなにかっこよくないわ。

そう、背も小さくて性格も捻くれてて、不器用で...

でも、私が困ってたらなにをおいても真っ先に助けに来てくれる。

そんな人...」

 

 

「?」

 

 

みると彼はよくわからないと言いたげな顔をして私を見ていた。

 

 

「話はこれでおしまい。

それじゃあ私は練習があるから...またね」

 

 

そう言って彼の前から立ち去り、校舎の中に入るとすぐ近くにヒロの後ろ姿が見えた。

私は声をかけようとしてすぐ後ろまでいくと、あることに気がついた。

耳が真っ赤に染まっている。

 

 

「ふふっ」

 

 

平然を装ってるその姿がおかしくて、笑ってしまう。

ヒロが照れているのをみると少し嬉しい。

 

 

「練習、頑張ってね。

おチビさん」

 

 

私はヒロの肩を叩きながらそう言い残し走って逃げる。

 

 

「て、てめー!」

 

 

今はまだ、この何気無い日常が私は好き。

でも、いつかはあんたと一緒に手を繋ぎながら人生を歩んで行きたい。

時間は止まってくれない。

そう、私たちの関係も変わらずにはいられない。

願わくば、あなたの隣にいるのはわたしでありますように。

 

 

 

 

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