ワーワー
「「?」」
朝、真姫と共に学校に登校すると校門の前で何かざわついていた。
「なんだなんだ?」
「さぁ」
俺たちは原因を調べようと校舎の方に近づいた。
すると
「なんだありゃ!」
屋上からでかでかと
【野球部全国高等学校選手権東京都大会準優勝】
と書かれた垂れ幕が降ろされていた。
「ヒロ!右!」
「ん?」
真姫に言われて右を見るとその横には
【大会最優秀選手賞 高山広】
とでている。
「な!」
...嬉しいっちゃあ嬉しいけどここまでしてくれなくてもな...
「良かったじゃない...
これであんたモテモテかもね...」
「...顔が笑ってねえぞ...」
野球が終わった今、ゆっくりしたいと思ってたのに...
これ、いつしまってくれるんだろ...
「まぁ、関係ないよ、
とりあえずいこーぜ」
そう言って二人、下駄箱に向かった。
「はあー疲れた...」
今日はついてない...
クラスのみんなからは質問攻めにあい、女子からは連絡先を聞かれ、ようやく眠れると思ったら先生に
「学校の代表なんだ、これからは授業態度も改めんとな」
なんて言われて眠れるわけもなかった。
「良かったじゃない。
私のクラスでも、あんたの話でもちきりだったわよ」
真姫はジト目でそう言ってくる。
「それ嫌味?」
「ふんっ」
今日の真姫は難しい。
「待てよ」
そう言って先に進む真姫を追いかけた。
「なんでお前あんなにつえーんだよ!」
「あんたが弱すぎるのよ」
久しぶりに放課後なにもなかったので今日は真姫と二人、街によって買い物をしたあと、近くのゲーセンで遊んだ。
今は帰り道、こいつにぼろ負けした俺は荷物持ちという罰ゲームを受けている。
まぁ、どうせおれがもつはめになってただろうけど...
「あんた、鼻の下伸ばしすぎなのよ」
「な!」
今日は街の店によるたびみんなから声をかけられる。
正直もううんざりだった。
「伸ばしてねーよ!
なんだ、今日は不機嫌だなお前」
「しらない!」
またこのパターン
たく、何回めだよ。
時刻は午後六時
あたりはまだ明るいが時間が時間だし早く帰るに越したことはない。
「ほら、いそぐぞ。
また俺がおじさんに怒られちまうよ」
「ちょっと!」
そう言って真姫の手を引いて急がせた。
「「ただいまー」」
またしても俺の家に来た真姫と一緒にリビングに上がった。
すると、父さんと母さんがリビングに座りなにやら真剣な顔で俺の方を見ていた。
「どうしたんだよ」
「ヒロ、ちょっと座れ」
「?」
な、なんだ、いつもより迫力あるな。
俺なんかしたっけ?
俺は言われた通り父さんと反対側に座った。
「真姫ちゃんも座って」
そう母さんが言うと真姫も俺の横に座る。
「それで?なんだよ。
俺なんもしてないぞ...」
「さっき相良さんから連絡があった」
「!!」
「相良さんって?」
真姫が母さんに質問する。
「昔のヒロの師匠よ。
この近くに住んでるの」
俺はいつもあの人に野球を教わってた。
俺の憧れだった人。
でも、俺が野球を辞めてからは連絡を取ってない。
「この意味がわかるよな?」
「なんだよ...今更。
俺がついていけるわけがないだろ...」
「これは今回の大会を見ての判断だ。
お前には十分実力がある。
俺たちとしてもはながたかい」
「...」
「なに?なんの話ししてるの?」
「相良さんは全日本、つまり日本代表のコーチなの...
その人からさっき電話があった...
つまりヒロが日本代表に招集されたのよ」
「!!」
またあの舞台に立てる。
そのことは素直に嬉しいさ...でも
「無理だよ、あんな終わり方したんだ。
みんなに申し訳が立たない...」
「なんでよ!
こんなチャンス滅多にないじゃない。」
真姫が反論してくる。
「お前には関係ないだろ!」
「!!」
「ちょっとヒロ!」
「...ゴメン」
今ある実力で俺は太刀打ちできるのか...
俺だけ選ばれて、他のみんなはどう思うのか、心配だった。
「無理に行く必要はないし、決めるのはお前だ。
ただ行くにしろ行かないにしろお前から電話しろ。いいな?」
「...あぁ」
そう返事して俺は立ち上がる。
「真姫、いくぞ...」
「え?」
そう言って真姫の手を握り無理やり立たせて俺の部屋に連れて行った。
「ゴメン!」
「!?」
俺はさっきのことについて素直に謝る。
「つい、カッとなってお前に当たっちまった。
本当に情けない」
「...それはいいのよ、別に
それより、なんであそこまで嫌がるのか教えてよ...」
どうやらそっちの方を気にしてたらしい。
「...なんて言うのかな。
俺、中学も全日本に行ってただろ?
そん時は自信満々でなんでもできるって思ってた」
「...」
「でも、仲間の実力やプレッシャーで全然活躍できなかった。
そのことについて、おれは仲間からも、日本のみんなからも責められてた。
なんでお前がでてるんだって...」
「...!」
「言いたくないけど俺...多分ビビってるんだ。
また前みたいになるんじゃないかって、怖くて仕方ないんだ。
俺はお前が思ってるほど強い人間じゃない。」
あんな思い、二度としたくない。
それならいっそ呼ばれないほうがマシだ。
「なによそれ...いつものあんたらしくないわね」
「...!」
「どんなことにだってまっ過ぐに向き合って突き進んでた。
私の知ってるあんたはね。
でも、今のあんたはまえの失敗を引きずってうじうじしてるだけにしか見えない」
「...」
「怖くたっていい、一緒に行けないけど、私がここから応援してあげる。
あんたを責める奴は私が黙らせてやるわ。
あんた言ったわよね?
どんなピンチだって、私のこと思い浮かべたらなんだってできるようになるって。
なら、絶対大丈夫よ。
まっすぐ、自分の足でぶつかって来なさい!」
「...真姫」
確かにうじうじ考えすぎてたかもな...気持ちわりー
そうだ、俺はいつだってまっすぐに突き進んでた。
昔と同じでそれは変わらない。
「ははっ
お前に励まされるなんて...
初めてかもな。」
「そ、そんなわけないでしょ!
いっぱい励まして来たわよ」
ああ、口には出さなくてもお前の存在自体に俺は何度も励まされて来たよ...
「なんか、自信出て来た!
よし!俺はやるぞ!
真姫!腹減った、飯食いに行くぞ!」
「ちょっと!待ってよ」
くよくよ考えるのは終わりだ。
あとのことは失敗してから考えればいい。
《side 真姫
結局あいつは全日本に招集され行くことを決意した。
決意するまえ、野球部のみんなにそのことを話したらみんな大喜びしてヒロを胴上げしていたのを覚えている。
学校でもそのことが話題になり、全校集会で紹介された時なんか、あいつは上がりまくってていま思い出しても可笑しくなってしまう。
大会は甲子園が終わってからで、8月下旬
つまり明日からヒロは旅立つ。
「下着入れた?
あと歯ブラシは?」
「入れたって!
しつけーな、お前は俺のおかんか!」
「なによ!教えてあげただけじゃない」
こんなやり取りもしばらくはできなくなるんだな...
少し寂しくなる。
「ねぇいつ帰ってくるの?」
「またそれか!
だから九月の最初には帰ってくるから大人しく待ってろって」
「む!」
なんかムカついた...
「それじゃあ最後におまじないしてあげる...」
「あん?
まだなんかあんのかよ」
「いいから目つぶって」
ヒロは言われた通り目を瞑る。
「!!」
「ふふっおやすみなさい」
私はそう言って、高山家を後にした。
「///」
我ながらなんて恥ずかしいことをしてしまったのだろう。
顔が赤くなる。
「...頑張ってね、ヒロ」
明日は登校日で見送りに行けない。
しばらくはあいつともお別れね。
あとは、テレビであいつの活躍を見守るしかないか。
ヒロの活躍を願いながら私はベットに横になった。
それから約二週間後
「...遅い」
私は今ヒロの家のリビングで、おじさんとおばさん、それに翼とともにヒロの帰りを待っていた。
メールでは今日帰ると連絡があった。
時刻は夕方六時。
もう帰って来てもいい時間と思う。
「はあ〜」
「姉ちゃんさっきからため息ばっか。
そんなに早くヒロ兄に会いたいの?」
「な!そんなわけないでしょ!///」
事実だけど...
早く帰ってこないあいつについイラついてしまう。
「それにしても本当にすごかったよね、ヒロ兄。
俺もあんなふうになりたいよ。」
隣では翼がテレビで見たヒロの感想を嬉しそうに話していた。
「だから!俺が教えてやるって言ってるだろ?翼。
あいつを育てたのは俺だぜ?」
それを聞いていたおじさんがそう言って翼の頭を撫でる。
「いいじゃない、翼教えてもらいなさいよ。」
「いやだよ、俺はヒロ兄に教えてもらう。
それにおじさん、練習になると怖いんだもん。」
翼は何かいやな思い出でもあるのかすぐに否定し、おばさんの方に走っていった。
翼はよく、おばさんに懐いている。
小さい頃からよくしてもらっていだからだろう。
「何かあったんですか?」
「ああ、昔、ヒロと一緒にあいつも練習に連れてったんだ。
帰る頃には大泣きだったよ。」
「は、はは...」
ピーンポーン
そんな話をしていると、突然インターホンが鳴り響いた。
私は立ち上がり急いで玄関に向かう。
「ヒロ!」
ドアを開けるとそこには
「残念だったな」
パパとママが立っていた。
「もう、真姫ちゃんったら。
そんなにヒロ君に早く会いたいの?」
「も、もう!
ちがうわよ!」
見ると何やら手には料理を持っていた。
そういえば、ヒロが帰って来たあとパーティーをするって言ってたわね。
そのあと一時間以上たってもあいつは帰ってこなかった。
心配になり連絡しても返ってこない。
一体何してるのかしら。
時刻はすでに午後七時
親達と翼はヒロを待つことなく先に料理を食べている。
「おーい、真姫ちゃんも早く食べろよ。
あいつ待ってると明日になるぞ」
...あいつのためのパーティーなのになんだか少し可哀想になってきたわ。
「ううん、私はヒロが帰ってからでいいわ」
ガチャッ
「ただいまー」
「!」
玄関のドアが開く音がしてすぐにヒロの声がした。
「あーヒロ兄帰ってきた!」
真っ先に翼が飛び出しそれに続いて親達も立ち上がりみんな玄関に向かう。
私も遅れて立ち上がり玄関に向かった。
「ヒロ兄おかえり!」
「おー翼、来てたのか。ただいま」
「ヒロ君、おかえり〜」
「なんだ、みんないたのか」
玄関に行くと、両手いっぱいに荷物を持ったヒロの姿があった。
表情はどこか疲れているように見える。
「さ、早く上がりなさい。
ご飯できてるわよ。もうみんな食べてるけど」
「なんだよ!待っててくれてるのかと思ってたのに!」
「お前が遅れるのが悪い」
みんな口々にヒロと話したあと、リビングの中に入っていき私とヒロの二人だけになる。
「ずいぶん疲れてるんじゃない?」
「ああ、時差ボケで超眠い」
久しぶりのヒロの声をきき、安心する。
「ヒロ」
「ん?」
私は予め用意していた言葉をヒロに送った。
「おかえり」
ヒロは少し意表を突かれたような顔をして
「ただいま」
にししっといつもの笑顔でかえしてくれた。