四月某日。
土曜日の今日は久しぶりの休みの日。
今日は誰にも起こされることなく、安眠することができる。
俺は、一日中ゴロゴロする予定をたてて、とりあえず午後まで眠ることにした。
せっかくの休みだ。満喫しない手はない。
時刻は午前9時、突然携帯が着信を知らせた。
ったく、誰だよこんな朝早く電話してくる非常識な奴は、、
文句を言いながら携帯をとる。
「もしもし」
「おう、起きたか。おはよう!」
この声はマル。
ていうか、またおまえかよ。
「なに?」
俺は、寝起きなこともあり、不機嫌そうにそう返す。
「今日おまえ暇だろ?遊びいこーぜ!」
「今日練習ないの?」
「休み」
「なんか最近、野球部休み多くないか?」
思ったことをそのまま口に出す。
「駅前10時に集合な」
そう言うと、勝手に電話を切られた。
無視するわけにもいかないので、眠い目をこすりながら支度を始める。
すると、またしても、携帯が振動する。
見ると真姫からメールが来ていた。
≪今日暇?≫
何か用事があるみたいだ。
俺は、悪いと思いながら返信を返す。
≪悪い、今日は用事があるんだ。≫
そう送ると、返信が返ってこなくなった。
これは、相当不機嫌になっただろうな。
帰りに何かかってかえってやるかな。
などと考えているともう時刻は9時20分。
まずいと思い、再び準備に戻った。
結局、一日中友達と遊んでしまった。
朝駅に行くとマルと野球部数名がすでに待っていて、そこから街に向かい、いろんなところを回って時刻はすでに5時半。
いい時間なのでそのままお開きとなった。
俺は、帰りに真姫の家に寄ろうと帰路に着いく。
そういえば、なんか買って帰らないといけないな。
じゃないと不機嫌なままだろうし。
そう思いながら歩いていると、ちょうどいいところに和菓子屋さんがある。
俺は、ここでいいかと思い、お店のドアを開けた。
「こんちわ〜」
「いらっしゃいませーー!」
元気のいい声が聞こえてきた。
「あ!」
見ると昨日、廊下でぶつかってしまった女の子が、割烹着を着て店番をしている。
「あーーーーー!」
女の子が大きな声で叫んだ。
俺は耳が痛くなり思わず塞ぐ。
すると女の子が近くまで来て、
「昨日はすいませんでした!」
そう言って謝ってきた。
「いいって、おれが悪いんだし。
それよりなんでここに?」
「あ〜、ここ私の家なんです。
今は店番してるんですよ〜。」
そう言って頭をかく。
「あ、そうだ。
君、学生手帳落としてない?」
「え?」
と言って「確認してきます」と家の中に入っていった。
しばらくすると、家の中から「あーーーーーー!」と、さっき聞いたばかりの叫びがふたたびきこえてきた。
ていうか、いままできずいてなかったのか、、
「なんで知ってるの?」
戻ってきた彼女が聞いてくる。
「ああ、この前ぶつかった時に落としてたよ。
今はおれが持ってる。
落としたままじゃかわいそうだからひろっておいて、
学校の日にとどけようとおもってたんだ。」
しかし、よく考えたら今持ってないじゃないか。
おれがそのことを伝えると、再び家の中に戻っていく。
しばらくすると、私服姿のあの子が店にでてきた。
「お待たせしましたー!」
ん?どういうことだ?
俺が怪訝そうな顔をして見ていると
「持たせておくのも悪いんで、今から取りに行ってもいいですか?」
そういうことか。
まぁこの子がいいならいいんだけど、
俺は店を出ようとしたが、すんでのところでここに来た目的を思い出す。
「そのまえに、和菓子買わせてくれない?」
俺は、ほむまんというのを選んでそれを彼女が包装してくれた。
「それじゃぁ、レッツゴーー!」
そう言って彼女は元気よく、前を歩き始める。
俺は、和菓子片手にその後ろ姿を追いかけた。
「そういえば君、名前は?」
歩き始めて数分、ふと思ったことを口にする。
「そういえば自己紹介してませんでしたね!
私、高坂穂乃果って言います!二年です。
穂乃果でいいですよ!あなたは?」
そういえば学生手帳に書いてあったな、
「俺は高山広、音乃木坂の三年だ。ヒロでいいよ。
あと、別に敬語じゃなくていいから。」
「うん!わかった。
じゃあヒロくん!改めてありがとね!学生手帳拾ってくれて!」
満面の笑みでそう言った。
相変わらず綺麗な瞳だ。
もっと近くで見てみたい衝動に駆られ気がつくと彼女の顔に自分の顔を近づけてしまっていた。
「「///・・・!」」
やべ!近すぎた。
二人して顔をそらしてしまう。
「い、いやー今日は本当あちーなー!」
「ほ、ほんとだよー!あはは」
違う話をして気を紛らわす。
そんなことをしているといつのまにか家の前まで来ていた。
「ここだよ。」
「案外近かったんだね。」
二人で玄関まで進む。
「上がる?」
「うん!」
おいおいいいのか?知り合ったばかりの男の家に上がっても。
まぁ誘ったのはおれだし別になにをする気でもないんだけど、、、
「ただいまー」
「お邪魔しまーす!」
すると、母さんが台所から出て来る。
母さんは、穂乃果を見ると心底驚いていた。
「あんたが真姫ちゃん以外の女の子連れて来るなんてはじめてねー」
「穂乃果は学校の後輩だよ。
生徒手帳拾ったから届けようと思って連れてきたんだ。」
「はじめまして!高坂穂乃果です!」
そのあと、母さんと穂乃果は二人でわいわい話をしていて、完全に俺は蚊帳の外だ。
にしても母さんのテンションが妙に高い。
なんかいいことでもあったのか?
「じゃあ、俺二階行ってるから」
「あ、わたしも!」
そう言って、穂乃果は後ろからついてきた。
部屋に入ると穂乃果は、
「へぇー案外きれいなんだねー。」
そう言ってベットに腰掛けた。
思えば、真姫以外の女の子が自分の部屋に入るのもはじめてだった。
い、いかんいかん。
おれは、変なことを考えまいと頭を二、三度振って、生徒手帳を返すべく、スクールカバンに手を突っ込んでそれを取り出した。
「ほい」
「おーー!ありがとー」
生徒手帳をもらって、嬉しそうに飛び跳ねる穂乃果に
「そういえば、いきなり出てきてお店大丈夫なの?」
質問してみる。
「うん!お母さんにおねががいしてきたからねー。
ぶっちゃけ、お店のお手伝いが面倒だったから助かっちゃったー。」
なるほど。
それでわざわざおれの家まで来たのか。
「そうだ!ねぇしってる?
音乃木坂が廃校になっちゃうこと」
唐突に穂乃果がそんなことを聞いてきた。
「あぁ、知ってるぞ。」
知ったのは昨日だけどな。
「私、それを阻止しようと思って、すごいこと思いついちゃったの!」
俺だって確かに学校がなくなるのは嫌だ。
しかし、そんなこと学生の俺たちにできるのか?
「ヒロくんはスクールアイドルって知ってる?」
スクールアイドルって確かいまテレビでよくながれてるやつだよな、、
確か有名なのがア、アライズ?だったっけ、、
「まぁ、人並みには、、
ま、まさか穂乃果が?、、」
「そう!私!アイドル始めることにしたんだ!」
彼女は元気一杯にそう言った。
「本気か?」
確かに穂乃果は可愛いと思う。
けどそれだけじゃ到底成功するとは思えない。
話を聞くとどうやら仲間はあと二人いるみたいで、一人は衣装、一人は作詞を頑張っているらしい。
「それでね?作曲できる人がどおしても見つからなくて、、
ヒロくん作曲とかしたことない?」
「あるわけねぇだろ。」
「じゃあできる人知らない?」
それを聞いた瞬間、思い浮かぶ人物は一人だけだった。
でもあいつは、そういうアイドルの曲とか嫌いだからな。
了承するとは到底思えない。
ここは、うまくはぐらかすことにした。
「いや、知らない」
そう言うと、穂乃果は目に見えるくらいうなだれた。
「そっかぁー、、」
なんだかとても可哀想に思えて来る。
何か協力できることがあればいいんだが。
「でも」
「?」
「俺も自分の学校が無くなるのは嫌だからな。
穂乃果達がそのために何か行動を起こすってんなら、おれでよければ喜んで協力する。」
穂乃果は黙っておれの話を聞いている。
「学校を守るために行動を起こそうと動いている穂乃果たちは素直にすごいと思うよ。
きっと、すごく勇気がいるし、努力も必要だ。
俺だって自分の学校が無くなるのを指をくわえて見ているだけじゃ嫌だからな。」
「ヒロくん、、」
穂乃果は下を向いている。
お、おい、大丈夫かこいつ。
そう思い穂乃果に近づいた瞬間
「ありがと〜!!!!」
そう言っておれに抱きついてきた。
「お、おい!」
やばい、いい匂いが、、
じゃなくて早くどかさないと
なんとかどかそうとジタバタしていると不意に部屋のドアが開いた。
「紅茶とお茶菓子もってきた、、わ、よ、、」
タイミング悪く母さんが現れた。
「お、お邪魔しました〜」
そう言って部屋から出て行った。
最悪だ。
よりによってかあさんにみられてしまった。
「な、なんかごめんね〜、、」
穂乃果がそう言った。
すると、またドアが勢いよく開き、母さんが顔を出す。
「穂乃果ちゃんご飯食べて帰る?」
「いいんですか!?」
「もちろん!じゃあ腕によりをかけて作るわねー」
「あ!私も手伝います。」
そう言って二人揃って階段を降りていった。
俺はまた一人蚊帳の外で、ご飯ができるまでなにをしようか考える。
そういえば、真姫ん家に行くの忘れてたな。
今のうちに行っとくか。
階段を降りて玄関で靴を履いている時に、トイレに行っていた穂乃果に出くわす。
「どこか行くの?」
「あぁ、ちょっと真姫の家に届け物しなきゃならんくてな」
「真姫?」
「隣に住んでる幼馴染だよ」
「ふ〜ん」
なにやらジト目でこちらを睨んで来る。
「なんだよ。」
「べっつにー?」
「すぐ帰って来るから、ご飯頼んだぞ。」
そう言って俺は玄関を出た。
相当怒ってるだろうな。真姫の奴。
和菓子だけで果たして機嫌は治るのだろうか。
否!
不可能である。
ここは自分のトーク力を信じるしかないな。
そう思いながら真姫の家までの道を歩く。
ピーンポーン
「は〜い」
おばさんが迎えてくれて、俺は二階の真姫の部屋まで来ていた。
ゴクリ、、
意を決してドアをノックする。
「どうぞ」
いかにも不機嫌そうな声が帰って来る。
こいつの機嫌を直すのは骨がいりそうだ。
そんなことを考えながら、俺は戦場へと足を踏み入れるのだった。