ビリリリリリリリリリ
けたたましいベルの音とともに、おれは目覚める。
携帯の時刻を確認すると8時50分と表示されていた。
え?
確か8時20分に目覚ましをセットしたはずだよな。
しかし起きたのはこの時間。
俺は頭を振ってもう一度携帯を見た。
しかし、何回見ても8時50分と表示されている。
どうやら、起きるたびに何度もスヌーズしていたらしい。
かすかだが、その記憶はあった。
よく見ると、着信履歴に真姫の名前がでている。
しかも20件。
ガチャ
「!!?」
俺は、ベットの上から恐る恐るドアの方を振り返る。
そこには、私服姿に高そうなバックを肘にかけた真姫がたっていた。
「お、おう。おはよう!
いい朝だな、、、」
「そうね、おはよう」
真姫は笑顔でそういうと、俺のそばまで寄ってくる。
次の瞬間、
ゴチン!!
脳天にゲンコツをくらった。
ゲンコツで一気に頭が覚醒したおれは、真姫に服のコーディネートを頼んで、一階で歯を磨いていた。
頭には先ほど出来たばかりのタンコブが自己主張していてヒリヒリしてくる。
歯を磨き終えて顔を洗い、寝癖を直して再び二階に向かった。
「早かったわね。
さっ、これ着てさっさと行くわよ」
部屋に入ると、すでに真姫は服を選び終えており、俺はその服に着替える。
姿見で、服装を確認してみた。
さすが真姫だ。
季節にあった服をおれに合わせてコーディネートしており、自分でも納得のいく服装に仕上げてくれた。
真姫の服のセンスはとてもレベルが高く、俺もちょくちょくこいつに服を選んでもらったりしている。
玄関のドアを開け、二人して急いで駅に向かう。
家を出た時間で、すでに時刻は9時10分。
完全に遅刻コースだ。
バスに乗り、駅に着くまでの間、座席でおとなしく待っておく。
この待ち時間が非常にもどかしい。
「もう!
あんたのせいで遅刻じゃない」
「しょうがないだろ。
布団が俺を離してくれなかったんだ。」
「なに意味わかんないこと言ってんのよ。
まったく、私が来なかったらどうなってたか、、」
そう言ってため息をつく。
「悪かったよ。
まだこの時間に駅に向かえたのは、おまえのおかげだ。
本当、おまえがいないとダメだな、
一人で起きれる気がしない。」
素直にそう言ってやると真姫は、顔を真っ赤にして、
「そ、そうよ!///
あんたは、私がいないと何にもできないんだから。
まったく、この真姫ちゃんに感謝しなさいよね!」
などと話していると、俺たちが降りるバス停の名前が運転手からコールされた。
俺たちは、バスから降り、そこからは走って駅に向かう。
さぁ、駅までもう一踏ん張りだ。
駅前に着くとびっくりするくらい、人がごった返していた。
流石は日曜日。
これは、悠介を探すのも骨がいりそうだ。
時刻は9時40分。
予定より10分も遅い時間に俺たちは、待ち合わせの大きな看板の前に着いた。
「遅いぞ。」
隣から声が聞こえる。
俺が息を切らしながらその声の方向を向くと、片手を上げている悠介の姿があった。
「わりー、道に迷ってた。」
「違うわよ。
あんたが寝坊したんでしょ。」
俺が嘘をつくと真姫が訂正してくる。
「久しぶり。
真姫ちゃん、ヒロ」
悠介は、ハイレベルなファッションと、男前な顔で、そう言ってくる。
この笑顔に何人の女子が泣かされてきたのだろうか。
「お久しぶりです。悠くん。」
真姫が返す。
「しばらく見ないうちに、また綺麗になったね、真姫ちゃん。
今度一緒に遊びに行こうぜ?」
悠介がそう言うと、真姫は笑顔で悠介に近づき
ガン!!
「あいて!」
悠介のつま先をグリグリ踏んでいた。
「いきなりナンパするからだよ。」
「本当のことを言っただけだ。」
「まぁ、なんでもいいや。
それより腹減ったからなんか食べに行こーぜ。
朝ごはん食べてねーんだよ。」
「あんたが寝坊するからでしょ。」
立ち話もあれなので、俺たちは近くの喫茶店に場所を移すことにした。
喫茶店で、俺たちは今日の作戦会議をしていた。
俺は、腹が減っていたこともあり、オムライスを注文する。
真姫は紅茶、悠介はコーヒーをそれぞれ頼み、今日のことについて話し合う。
「で、結局、どいにいくんだ?」
「せっかく街に来たんだから、ショッピングだけじゃもったいないでしょ?
どこか遊べるところ行ってみない?」
「なるほど、カラオケとか?」
悠介が提案する。
「いいですね!それ。」
「ゲーセンとか?」
次は俺が提案する。
すると、真姫はジト目で、
「センスないわね」
こう言った。
なんだ、この差は、、
「おい、、あからさまに態度が違うぞ。
せっかく提案してあげたんだろ?」
「しかたないじゃない、ほんとにセンスないんだもん。」
やばい、本気で落ち込んだ。
おれが肩を落としていると、
「もう、口にケチャップついてる。
ちょっとこっち向いて。」
そう言って、
ティッシュで俺の口をガシガシ拭いてきた。
「いいよ、自分でやるから」
「いいから、こっち向いて」
悠介「、、、、」
喫茶店を後にした俺たちは、悠介の提案通りカラオケに来ていた。
3人部屋に案内された俺たちは、順番に曲を入れて歌っていく。
聞いていると、やはりというか、二人ともかなりレベルが高い。
採点モードでも、バリバリ90点台出すレベル。
俺はというと、最高で88点。
完全に置いていかれていた。
このままではまずいと思い、自分の番がまわってきたところで、選曲しようと機械を取ろうとすると、真姫が先にいじっている。
「なあ?次おれの番だろ?」
「あんたさっき連続で歌ったじゃない。」
「あれは間違えただけだ。
いいから返せよ。」
そう言って機械をひったくる。
すると怒った真姫がおれに襲いかかり、再び俺から機械を取り上げた。
このままではラチがあかない。
そう思ったおれは、ある提案をする。
「わかったよ。
じゃあ、いつものでいこーぜ。」
いつものとは、俺と真姫のデュエットのことで、カラオケに来ると、某有名アーティストのラブソングをいつも二人で歌っていた。
「はぁ、わかったわよ。」
そう言ってマイクを握り、歌が終わると、なんと採点は今日最高の97点を叩き出した。
よっしゃーと言いながら二人でハイタッチする。
やはり、真姫は歌が上手いな、改めてそう思った。
悠介「、、、、」
次は卓球場。
お金を払い、ラケットとボールをもらって、卓球台まで行く。
はじめは俺対悠介。
パチーン!!
鋭いスマッシュが決まる。
11-6。
ぼろ負けした。
続いて、俺対真姫。
パチーン!!
鋭いスマッシュが決まる。
11-8。
またしても負けた。
「何でおまえらそんなに強いんだよ!」
俺だってそんなに弱いわけではない。
この二人が強すぎるのだ。
「あんたが弱いだけよ。」
「その通り」
くっ!
なんか腹立つな。
などと考えている間に真姫対悠介の試合がすでに行われていた。
パチーン!
パチーン!
めまぐるしいほどのラリー。
レベルが高いとこんなに白熱するのか。
点数は14-15。
真姫のマッチポイント。
「さぁ!」
パチーン!
掛け声と共に真姫のスマッシュが決まる。
つーか、それ決まった後に言うやつだろ。
「あー負けた。
やっぱ真姫ちゃんは強いなー」
「悠くんも、すごく強かったですよ。」
二人が笑いながら話している。
すると真姫がニヤニヤしながらこっちを見てきた。
「なんだよ。」
「べつにー、喉乾いたなーって」
こ、こいつ、おれに買ってこいっていうのか。
「なんで俺が買わなきゃならんのだ。」
「敗者は勝者の言うことをきくものよ。」
俺は、はぁーと、ため息をつき
「なにがいいんだよ」
仕方がないのでおれてやる。
「私はコーヒー、悠くんは?」
「じゃあポカリで」
なんで悠介のまで、、
1人ごちりながら自販機まで急いで向かった。
帰ってきて、それぞれジュースを渡す。
「ほれ」
「ありがと」
よく考えたら自分の分を買うの忘れてた。
「おい、真姫。
おれにもくれよ。
買うの忘れたんだ。」
「はぁー、しょうがないわね。
はい。」
そう言ってジュースを投げてきた。
俺はありがたくそのジュースをいただく。
悠介「、、、、」
続いては、卓球場の隣にあるバッティングセンター。
俺と悠介は野球をしていたこともあり、バッコバコ打ちまくる。
「すごいわね、悠くん。」
「だろ?
まだ腕は鈍ってなさそうだ。」
真姫は悠介だけを褒める。
「あの〜、俺は?」
「え?あーすごいすごい、」
棒読みかよ。
だからなんだよこの差は、、
続いて、真姫が打席に立つ。
やはりというか、野球をやったことのない真姫は、バットは振れるがボールに当たらない。
「きゃっ!」
バットを振った勢いで尻餅をつく。
「なにやってんだよ、ほら、バットはこう持って、腰をこうやって入れるんだ。」
仕方ないのでしばらくレクチャーしてやると、
カーン!
「あ、当たった!
ねぇ!当たったわよ!」
「その調子、その調子」
真姫は、ものの5球くらいでバットに当たるようになっていた。
なかなかのセンスである。
悠介「、、、、」
バッティングセンターに行った後、ショッピングをするために俺たちは大型ショッピングモールに来ていた。
小腹が空いた俺たちは、フードコートでクレープを買って食べている。
「あんたのクレープ何味?」
「ん?バナナだけど」
「ちょっと食べさせて。」
そう言って俺のクレープに勝手にかぶりつく。
「おい、勝手に食うなよ」
「ん、おいしい。
いいじゃない、減るもんじゃないんだし。」
「減るよ!!」
悠介「、、、、」
気がつくと、悠介がじーっとこちらを見ている。
「どうしたんだよ。悠介。」
「んー?
いや、なんかさー、おまえらって」
そう言ってタメを作った後
「夫婦みたいだな。」
「「!!!////」」
そんなことを言い出した。
「な、なに言ってんだよ。
そんなわけねぇだろ!」
「そ、そうよ。
誰がこいつなんかと夫婦なんて!」
こいつなんかってなんだよ、、
ちょっと傷つくな、、
「まぁ何でもいいけどさ、食い終わったならさっさと行こうぜ。」
「「////」」
俺たちはクレープを食べた後、モール内を見て回ることにした。
回っている途中に、可愛い服や物を見つけては、真姫が次々と買っていき、両腕いっぱいの量になったところで近くのベンチに座って休憩することができた。
真姫はまだ服を見ている。
「お疲れ」
悠介がそう言って俺の横に腰掛ける。
「そう思うならちょっとは手伝ってくれよ。」
「いやだ。
だって頼まれたのはヒロだろ?」
「それはそうだけど、、」
ちょっとは持ってくれてもいいじゃないか。
何て思っていると、再び悠介が話しだす。
「なぁヒロ」
「何だよ。」
「おまえって、、
真姫ちゃんのこと、どう思ってんの?」
唐突にそんなことを聞いて来た。
「どうって?」
「真姫ちゃんのこと好きなのかって聞いてんだよ。」
「、、、」
真姫のことを好きなのかどうかなんて考えたこともなかった。
いつも一緒にいて、妹のように共に過ごして来た真姫と、付き合っている自分を想像したら、何だかこそばゆくなってきて考えるのをやめる。
「そんなわけねーだろ、、」
「なら」
「?」
「俺が真姫ちゃんをもらってもいいのか?」
「..!!?」
どういうことだ!?
「おまえ、真姫のこと好きなのか?」
「ああ、好きだよ。」
初めて聞いた。
悠介の本音。
「う、嘘つくんじゃねぇよ!
だって今までそんな素振り、一度も見せなかったじゃないか!」
思わず声が大きくなってしまう。
「ああ、だから、、
真姫ちゃんが高校生になるのを待ってたんだ。」
なに言ってんだよ、こいつ。
「真姫ちゃんが高校生になれば世間体ってのはなくなる。
だから、俺はずっと待ってた。
高校生同士が付き合っても、誰も何とも思わないしな。」
「...!!」
なぜだろう。
妙な焦りが俺の中で生まれるのを感じる。
「もう一度言うぞ、
俺が真姫ちゃんをもらっても、おまえはいいのか?」
真姫が悠介と付き合う?
想像したら、とてもお似合いで、真姫にとっても幸せなことだろう。
でもなぜだか素直に喜べない。
俺の知らないところで真姫が遠くに行ってしまう。
そんな感覚。
「おれは、、、」
「なーんてな。」
「...!!?」
は?
「おまえがどう思ってるのか聞きたかっただけだよ。
なんて顔してんだよ。おまえ。」
そう言って、悠介は笑っている。
な、何だよ。びっくりさせるなよ。
「二人とも、おまたせー!」
真姫の声が聞こえる。
どうやら服を見終わったようだ。
「なに話してたの?」
「別に、何でもないよ。」
悠介が答える。
「お、俺、ちょっとトイレ行ってくるから。
二人はそこで待っといてくれ!」
そう言って、二人を置いて俺はトイレに行く。
なぜだか、少し一人になりたい気分だった。
悠介がなぜあんなことを言ったのか。
俺の気持ちを確かめるためって言ってた。
俺の気持ち。
改めて、俺は真姫のことをどう思っているのだろうか。
ただの近所の女の子?違う。
同じ学校の後輩?違う。
妹みたいな存在?それも違う気がする。
結局、俺の中のあいつは、何なのだろう。
今の俺の中であいつは、仲の良い幼馴染というのが一番しっくりくる。
トイレからの帰り道、悠介と真姫がベンチでしゃべっているのが見えた。
どっからどう見てもお似合いな二人。
あいつも、悠介みたいな奴と付き合った方がきっと幸せになれるだろう。
悠介はいい奴だ。
ちょっとチャラいけど、俺なんかよりもずっと。
真姫だって俺のことなんて何とも思ってないはずだ。
そう、俺と真姫は、ただの幼馴染。
そう結論付けて、俺は急いで二人のところに戻って行くのだった。