最愛の人へ   作:糖也

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第九話 誓い

 

 

 

 

ショッピングモールを後にした俺たちは、近くの公園で、自販機のコーヒーを飲んでいた。

あたりはもう薄暗く、街灯なども点きはじめている。

 

 

 

「これからどうする?」

 

 

俺が質問すると、

 

 

「そろそろ解散にしましょ。

いい時間だし。」

 

 

真姫が答える。

時刻はすでに17時半、

確かにいい時間だ。

 

 

 

「それもそうだな。」

 

 

「じゃあ、今日はお開きってことで、」

 

 

俺は、脱いでいたジャケットを肩で担ぎながら答える。

今日の気温は、四月にしてはあたたかく、長袖一枚でも過ごせるくらいで、寒いと思って着てきた俺のジャケットも、早い段階で荷物と化していた。

 

 

「そういえばおまえのそれ、真姫ちゃんのと一緒だよな。」

 

 

ジャケットの下に隠していたネックレスを見て悠介が質問してくる。

 

 

「あぁ、これか?

入学祝いに真姫にネックレスをあげたんだよ。

そしたら、同じのが二個入っててさー。」

 

 

入学式の夜のことを悠介に説明してやる。

 

 

「俺は嫌がってんだけど、真姫が無理やり、俺につけろって言うんだ。」

 

 

真姫「!!」

 

 

そう言いながら真姫が買った荷物を担ぐ。

 

 

「なるほどね、、」

 

悠介は小声でそう言うと、公園の入り口まで一人で向かっていった。

 

 

「今日は楽しかったよ。

真姫ちゃん、ヒロ、また今度遊びに行こうぜ。」

 

 

そう言って、家に帰っていった。

 

悠介の姿が見えなくなったところで真姫に話しかける。

 

 

「俺たちも帰るか。」

 

 

しかし、反応がない。

 

 

「真姫?」

 

 

見ると、下を向いて俯いていた。

大丈夫か?こいつ

 

 

「どうしたんだよ。

気分でも悪いのか?」

 

 

「、、さい」

 

 

「は?」

 

 

よく聞き取れなかった。

すると、真姫は顔をあげ、顔を真っ赤にして俺を睨む。

 

 

 

「うるさいっていってんの!

今日は買い物に付き合ってくれてありがと!

じゃあね。」

 

 

大声でそう言うと、立ち上がり、スタスタと歩いて行こうとする。

 

 

「お、おい!」

 

 

「ついてこないで!」

 

 

慌てて追いかけようとすると、そう言われてしまった。

俺は真姫が見えなくなるまで公園で立ち尽くす。

あんなに怒った真姫は久しぶりに見た。

しかし、原因がわからない。

さっきまで全然普通だったのに。

あいつは昔から、些細なことで傷つき、俺に怒鳴り散らしていた。

もしかしたら見落としていることがあるのかもしれない。

俺はベンチに座り、今日あったことを振り返ってみる。

朝遅刻をし、真姫に起こされた。

これは違う、あいつはこんなことで怒らないし、少なくともあの時は怒ってなかったはずだ。

駅で悠介と待ち合わせをし、そこからいろいろなところを回った。

喫茶店、カラオケ、卓球場、バッティングセンター、フードコート、ショッピングモール、そして最後に公園。

ダメだ、なにが原因か、まるでわからない。

 

 

俺はここで考えていても仕方ないと思い、家に帰ることにした。

わからないものは仕方がない。

あとは直接真姫に聞いて、謝るしか方法はないだろう。

真姫が買った荷物を再び担ぐ。

あいつ、自分の買った物を忘れるくらい怒ってたのかな。

そんなことを思いながら、公園の出口に向かって、足を動かす。

あぁ、重てーな、ちくしょう、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

「ただいまー」

 

 

 

ようやく家に帰ってきた俺は、買ったものを床に置いた。

疲れた

腕が痺れてやがる。

 

 

 

「あんたどうしたの?その荷物。」

 

 

家の奥から出てきた母さんが、俺が持ってきた大量の荷物を見て驚いたようにそう言った。

俺の荷物と思ったのか、袋の中を開いてなにやら物色している。

 

 

 

「ちょっと真姫に買い物を付き合わされて。

おかげで腕がちぎれそうだ。」

 

 

よく考えたらこの荷物を真姫の家まで届けなくてはいけない。

あいつももう、家に帰っているだろうし、謝るついでにこの荷物を届けよう。

 

 

 

「あんたも服を買ったのね。

珍しい。」

 

 

母さんが言って、俺は疑問に思った。

俺は服なんて買ってないぞ。

普段は全部、母さんが買ってくるものを着るか、自分で選んだものを、たまに買うかしかない。

 

 

 

「それは全部真姫の荷物だよ。」

 

 

「でも、男物のジーンズとか、Tシャツも入ってるわよ。」

 

 

母さんが袋の中身を見せてくる。

すると、本当に男物の服が入っていた。

しかも、買い物中に真姫が俺に試着させた服が。

俺にはわかる。

あいつは、俺のためにわざわざ服を選んで、安くないのに、プレゼントしようとしたんだ。

 

 

 

それがわかった瞬間、俺は走り出していた。

ドアを開け、まっすぐ真姫の家まで走る。

あいつは、俺のためにここまでしてくれる。

いつだってそうだ。

あいつが、俺のためにならないことをしたことは、一度もない。

俺のために考えて、俺のために行動してくれる。

なのに今日、俺はあいつのことをわかってやれず、怒らせた理由すら気づいていない。

いくら考えても、たりない脳みそをフル稼働しても、答えはでなかった。

こんな情けない自分に腹が立ってしょうがない。

いまならまだ間に合う。

ちゃんと話し合うんだ。

怒られるだろうし、怒鳴られるだろう。

でも、俺はバカだから、話してくれないとわからないことがたくさんある。

気づいてないうちにおまえを傷つけたことなんかしょっちゅうだ。

ちゃんと謝ろう。

そして、わだかまりもなにも無くなってから、きちんとお礼を言うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーンポーン

 

 

〈はーい〉

 

 

おばさんの声がインターホンのマイクから聞こえる。

 

 

「すいません、真姫は?」

 

 

〈あら?ヒロくん一緒じゃなかったの?真姫ちゃんはまだ帰ってないから、てっきり一緒にいるのかと思っちゃった。〉

 

 

は?

まだ帰ってないだと?

そんなはずはない!

あいつは俺より先に公園から出て行った。

なのにまだ帰ってないらしい。

 

 

「すみません!

ちょっと俺探してきます。」

 

 

そう言って、公園から帰ってきた道を走り出す。

 

 

〈あ、ちょっとヒロくん!?〉

 

 

女の子一人で出歩くには危険すぎる時間帯。

それなのに真姫はまだ外にいる。

クソ!俺がついておいて、こんなことになるとは、、

ますます自分の情けなさに腹が立ってくる。

自分を責めている余裕はない。

帰ってきた道を辿れば、真姫がいる可能性は高いだろう。

ここは、しらみつぶしに探していくしかない。

考えをまとめ、すっかり暗くなった団地の中を走っていく。

真姫、おまえ一体どこに行ったんだ、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、」

 

 

俺は、さっきの公園の街灯の下で息を切らしていた。

帰って来たときはバスだったから、走ってみるとものすごい距離があることがわかる。

 

 

「なんでどこにもいないんだよ、、」

 

 

辿ってきたが真姫は見つからない。

携帯にかけても一向に繋がる気配もない。

時刻はすでに19時を回っていた。

まずい、早く見つけ出さないと、、

こうなったら、捜索範囲を広げるしかない。

俺は真姫が行きそうなところを考えて、再び全力で走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと、家の近くにある公園まで走っていたみたいだ。

 

 

「はぁ、はぁ、」

 

 

息はとうに限界を超えている。

さっきの公園からの往復だけで5キロは走っただろう。

しかし、今はそんなことはどうでもいい。

早く真姫をさがしださないと、、

そう思って、公園内を見てみると、若い男二人がベンチに座っている女の子を囲んでいるのが見えた。

こんな時間にナンパか?

おそらく男は高校生くらいだろう。

女の子の方はこの角度からじゃ、よく顔が見えない。

もしかしたらあれが真姫かもしれない。

俺は確認のため、後ろから近づいていく。

街灯の光によって女の子がてらされて、顔があらわになった。

 

 

真姫だ!

やっと見つけた。

真姫は、男二人に囲まれている状況でも、足と腕を組んで堂々とベンチに座っていた。

格好がチャラい男二人組は、懸命に真姫に話しかけているが、真姫は全て無視し、顔を背けている。

俺は、この男二人組にも、こんな時間にここにいる真姫にも腹が立ってしまい、気がつくと10メートル後方から思い切り叫んでいた。

 

 

 

「真姫!!!」

 

 

「!!!」

 

 

こちらに気がついた真姫と男達は、目を丸くして驚いている。

 

 

「ヒロ、、、」

 

 

俺は、男達の横を通り過ぎ、座っている真姫の腕を強引に掴んで、公園の出口まで引っ張っていく。

 

 

「ちょっ、ちょっと!」

 

 

真姫が何か言っているが知ったこっちゃない。

構わずズンズン進む。

幸いにも、男達は何か言ってくる気配もなく、俺たちはすんなりと公園から出ることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!離しなさいよ。」

 

 

 

どれくらい歩いただろうか。

誰もいない、真っ暗な河川敷で真姫は俺の手を振りほどく。

 

 

 

「なんで来たのよ!私だけで、あんな奴らどうとでもなったのに、、」

 

 

それを聞いた瞬間、こいつの勘違いぶりに腹が立ち、我慢できずに叫んでしまう。

 

 

 

「ふざけるな!!!」

 

 

「!!!」

 

 

 

自分でもビックリするくらいの大声を出していた。

 

 

「女のおまえが、男に敵うわけないだろ!

あいつらがもし、無理やりにでもおまえを連れて行こうとしたら、おまえが力で敵うはずないんだ!」

 

 

いつぶりだろう、こんなに怒ったのは、、

抑えようとしても、我慢がきかない。

 

 

「ちったー時間帯を考えろ!

こんな遅くに一人でウロウロするな!」

 

 

「、、、」

 

 

 

はぁ、はぁ、

俺は息をきらしながら怒鳴る。

真姫は、驚いたのか目を丸くして俺の話を聞いた後、下を向いて俯いてしまった。

 

 

 

「心配したんだ。

頼むから、こんなことはもうこれっきりにしてくれ、、

どこか行きたいところがあるなら絶対に俺に言え。

もう二度と、夜遅くに一人でウロウロするな。」

 

 

「るさいわよ、」

 

 

「!!?」

 

 

すると真姫が顔を上げ、キッと俺をにらんだ後に思い切り怒鳴る。

 

 

 

「うるさいのよ!あんた!

本当は私のことなんてどうだっていいくせに!

良い人ぶって、説教なんてするんじゃないわよ!」

 

 

「、、、」

 

 

 

「昔からそう!あんたは誰にでもそうやって接してきた、、

困ってる人を見過ごせないで助けて回ってるけど、事実、誰かのために頑張る自分に酔っているだけ!」

 

 

「、、、」

 

 

 

驚いた、真姫が怒ってるのはしょっちゅうだが、ここまで怒るのは、本当に久しぶりだ。

偉そうに説教なんてできる立場じゃないことはわかってる。

真姫にああ言われても何も言い返せない。

事実、俺は自分に酔っていたのかもな、、

 

 

「そのネックレスだって、ずっと邪魔だとおもってたんでしょ!?

私に無理やりつけられて、迷惑してたんでしょ!?

だったら直接言いなさいよ!

回りくどく、悠くんに言わなくても、嫌なら無理してつけなくてもいいじゃない!」

 

 

「!!?」

 

 

真姫は泣きながら叫ぶ。

あぁ、ようやくわかった。

こいつは、、真姫は、あのことについて怒ってたんだ。

悠介に、ネックレスのことを聞かれて、真姫とお揃いということに照れた俺が言った言葉。

俺の本心ではない。

でも、それで真姫を傷つけたことには変わらない、、

 

 

「心配なんて嘘!

私のことなんてどうだっていいくせに!」

 

 

 

ガバッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

 

気がつくと、俺は真姫を抱きしめていた。

このままじゃ、真姫がどんどん離れていってしまいそうな気がするから。

勘違いしたまま、俺のことを誤解したまま、、

 

 

「ごめん、真姫、、」

 

 

「!!?」

 

 

泣いている真姫を抱きしめながら俺は続ける。

 

 

「嘘って言われるかもしれない、信じてもらえないかもしれないけど、聞いてくれ。

あのとき言った言葉は全部デタラメだ。

悠介に言われて、照れ臭くなった俺が適当に言ったことなんだ。」

 

 

真姫は俺の腕の中で黙って聞いてくれている。

 

 

「あの入学式の夜、お揃いのネックレスをつけることになって、正直ちょっと恥ずかしかった。

でも、本当に嬉しかったんだ。お前と一緒っていうのが。

今までになかっただろ?お揃いのものとかさ。

でも、俺のデタラメでお前を傷つけたことに、変わりはない。

本当にごめん、、」

 

 

「嘘よ、、」

 

 

今まで黙っていた真姫が口を開く。

 

 

「嘘よ、そんなの。

信じられないわ、、」

 

 

「信じてくれ!」

 

 

「!!?」

 

 

確かに、今の俺のいうことを信じろというのも難しい話だろう、、

でも、真姫には、、こいつだけには、疑って欲しくない。

 

 

 

「俺がお前に、こういう大事なことで嘘をついたことはない!

一度だってない!

お前だってわかるはずだ!」

 

 

声が大きくなる。

真姫には信じてもらいたくて、、

 

 

「約束するよ。

もう二度と、お前を泣かせるようなことはしない。

このさき、どんなことがあろうとお前の味方でいる。

お前がいいって言うまで、ずっとお前を守り続ける。

このネックレスに誓って、、

だから、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺のこと、信じてくれ。」

 

 

 

真姫は、少し黙ったあと、

 

 

「う、うわぁぁー」

 

 

俺の胸で泣き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっぐ、グスッ、」

 

 

しばらくすると、真姫はようやく泣き止んだ。

 

 

「よう、落ち着いたか?」

 

 

「うん」

 

 

そういうと真姫は顔を上げる。

 

 

「ヒロ、、」

 

 

「ん?」

 

 

「ごめん、なさい」

 

 

「あぁ、俺もごめん、」

 

 

二人で謝った後、自然と笑みがこぼれる。

 

 

「あの時、ヒロにああ言われて、私、ヒロに無理させてたんだなって、初めておもった。

それと同時に、嫌がってたんだってわかって悲しくなった。」

 

 

「うぐっ!」

 

 

痛いところを突かれる。

だからあれは全部嘘なんだ。

 

 

「だからあれは照れ隠しっていうかなんという「でも」

 

 

「?」

 

 

真姫は俺の言葉を遮り、

 

 

「それが違うってわかってホッとした。

それに、私を守ってくれるって約束してくれたしね。」

 

 

そう言い放った。

 

 

「い、いや、俺が守るっていうかなんというか、、」

 

 

「守ってくれるんでしょ?」

 

 

俺は、さっき自分が言ったことに少し後悔をする。

 

 

 

「はい、、」

 

 

「よろしい」

 

 

そう言って、真姫は歩き始める。

 

 

 

「さ、帰りましょ!

すっかり遅くなっちゃった。」

 

 

時刻はもうすでに20時を回っている。

これは早く帰らないと本格的にまずい気がする、、

そう思っていると、俺の携帯が着信を知らせた。

 

 

「げっ」

 

 

ディスプレイには、真姫父と表示されていた。

俺は渋々電話に出る。

 

 

「もしもし?」

 

 

「いつまで連れ回してるんだ!早く帰って来なさい!」

 

 

耳が痛くなる。

やばい、相当おかんむりのようだ。

俺は、今から帰る旨を伝え、電話を切った。

 

 

「誰?」

 

 

「おじさんだよ、相当怒ってた。」

 

 

そういうと、真姫の顔が引きつった。

 

 

「なんて説明しようかしら。」

 

 

「お前は黙ってろ。俺が説明する。」

 

 

そう言って、帰路につこうとする。

 

 

「ねえ?」

 

 

「なんだよ。」

 

 

「疲れて足がもう動かないわ。」

 

 

何言ってやがる。それはこっちのセリフだ。

お前を見つけるために、俺がどれだけ走ったと思っているんだ。

俺は構わず先に進もうとするが、真姫は一向に動く気配がない。

 

 

「だーーー!

わかったから早く来い!」

 

 

そう言って俺がしゃがむと、真姫は俺の背中に飛び乗って来た。

 

 

「うおっ!」

 

 

あまりの勢いに、バランスを崩しそうになる。

 

 

「それじゃあ、いきましょ!」

 

 

「楽でいいな、お前は、、」

 

 

こうしておれ達は、ようやく帰路に着いた。

なんだかんだあったけど、これで元どおりだ。

ここに至るまで、本当に疲れた。

こりゃ、明日は筋肉痛確定だな。

真姫を背負いながら、家までの道を必死に歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

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