「……は?」
目を覚めたらそこは何かの室内だった。そこの壁には、自分とその隣に寄りそって気持ち良さそうに寝ている金髪の少女がいる。
だが、そんなのはどうでも良かった。自分達は確かに自宅にいた筈だ。
頭をフル回転させて状況を整理する。
学園都市が何か自分達に何かしたのか。
しかし、それはあちらには何にもメリットはない筈だと考え直す。
なんせ、学園都市第一位の超能力者と暗部組織の一つである《スクール》の構成員である妹だから。
再び、頭を悩ます白髪の少年、銀時は冷や汗をかいて叫んだ。
「ここ、何処だぁぁぁぁっ!!!!」
「う〜ん……うるさいっ!!」
「ぶほぉっ!?!?」
叫んだら、妹である心理は銀時を殴った。
「ここちゅあああん!!!何も殴る事ないじゃん!?」
「うるさい銀兄が悪い……って何処よ?ここ」
心理は冷たい目で銀時を見てから漸く、状況を把握した。
「しかも、なんか移動してるっぽいし……ってオイ……
心理。窓見てみろ」
何やら汗を流しながら窓を見つめている兄に、疑問を抱きながら窓を覗く。
「……はぁ?」
そこには地上ではなく、遥か上空にいる景色だった。
「待って。え?なんだって言うの?」
心理らしくなく、混乱している様子に銀時はガンと壁に頭を打ち続けた。
「目を覚ませェエエエエエエ俺ぇ!!何かの夢なんだ!!だから痛くねぇはず……なわけねェエエエエエエっ!!!痛ってぇよチクショウ!!!」
血をダラダラにして疼くまる銀時に心理はもう訳がわからないといった表情になっていた。
すると、騒ぎを嗅ぎ付けたのか数名の足跡が聞こえてきた。そして、それは姿を現わす。
「貴様らぁっ!!何者っスかぁっ!!」
その先頭にいる、ヘソだしにミニスカの金髪の女性が銃をこちらに向けていた。
心理は周りにいるその女性の部下っぽい者達を見ていた。
学園都市ではあり得ない服装に、腰には刀を差している。
「知らねーよ!!気づいたら此処にいたんだからよぉっ!!こっちが聞きてぇよ!!」
まだ血をダラダラにしている銀時がタダでさえ、悪党みたいな顔を強張らせて怒鳴る。
「うるせぇよ!!俺だって好きでこんな顔なったんじゃねーよ!!もっと清楚なイケメンになりたかったよ!!」
「ちょっと……誰にキレてんのよ」
いきなりキレて叫んでいる銀時に心理は溜息を吐いた。
「っていうより……俺らヤバくねっ?」
漸く、敵に遭遇している事に気づいた銀時はそう思っていたが、殆どが侍のような格好に刀を構えているのを見て、何かを理解出来てしまった。
「オイオイオイオイ…………心理ちゃん。俺達ゃ、どうやら俺の“元”世界に来てしまったっぽいよ」
ははっと血の気が引いたような表情に心理は更に顔を青くなっていった。
「いつまで無視してるっスかぁ!?」
痺れを切らした女性が睨んで怒鳴ると、銀時は心理を抱えた。
「きゃあっ!!銀兄ぃっ!?」
「とりあえず、やる事は一つ。逃げろぉおおおお!!!」
敵に背を向けて走りだした。
「待つっス!!」
展開通りに敵は追いかけていく訳だが。
「ちょっとっ!!私と銀兄だけでも切り抜けるでしょっ!!」
銀時はともかく、心理は銀時から無理言って教えて貰った為に、剣の腕前はかなりの物だ。
それに銀時は攘夷戦争で“白夜叉”と謂れた英雄の一人。戦争時に型にハマらない剣術を身につけてきた男だ。
途中で仲間を庇って命を落としたが。
「じゃあ、テメェはここでも人を殺すのか?」
低い声に心理は言葉を詰まらせる。
「確かにあそこじゃ、お前はそう言う位置にいる。お前はお前の武士道(ルール)でやってんのはわかってんだ。
けどな、ここではなお前はごく普通の女だ。ここで殺しでもしたら……お前はこの世界でも背負い込むことになんぞ。そんな事は俺が許さねぇよ。ま、ここに来たからには…俺に任しとけ」
表情は見えないけども、心理を一番に理解し、大切に思ってくれてる事は十分に伝わった。
これ以上、荷を背負わせたくないという想いが。
「わかったわ……ありがとう」
心理は銀時の想いを受け入れてそれに応えたいと思った。
この世界では、あんな残虐な事をしなくていいと少し安心出来たのだ。
銀時はもう何も言わなかったが、抱える力が少し強くなったのを感じた。もうその手からは何も零さないようにしっかりと、その手で感触を確かめるかの様に。
(そんな事しなくても、離れないのに)
クスっと心理は嬉しそうに顔を綻ばせる。
暫く走っていると、ドアが見えてきた。
そこに向かって更に加速して思いっきり
「おらぁぁぁぁぁぁっ!!!」
蹴り飛ばすとドアが吹き飛んだ。どうやら野外に出た。そこで何に乗っていたががわかって驚いた。
「船が飛んでんぞ!?」
銀時から降りた心理も流石に驚いた。
学園都市では科学が進展しているので可能かもしれないが、時代が時代だ。この世界はどうなってるのだろうと思った。
そんな事を身をもって体感していると、その先には一人の男が背を向けて月を見ていた。そして銀時達を横目で見る。
「今夜はこんなデケェ月だ。かぐや姫でも降りてくるかと思ったが……まさか、じゃじゃ馬姫と白兎が降りてくるたぁな」
(この男……危険すぎる)
振り向いた男を見た心理は戦慄した。
左目には包帯をしていて紫の蝶の様な模様が入った、派手な着物を着て煙管を吹かせている男の右目は、飢えた獣のように鋭い。
(あぁ?なーんかこの声に聞き覚えがあんだよなぁ?)
それに対して銀時は首を傾げながらその男を見ていた。
そんな時だった。
「此れで逃げ場はないっスよっ!!晋助様っ!!無事ッスカぁっ!?」
あの連中が追いついたようだった。だが、銀時は男を見て目をカッと限界までこじ開けていた。
「晋助だぁっ!?って事は鬼兵隊んとこに俺らいたわけ!?」
銀時に晋助、それに鬼兵隊と叫ばれてその男は銀時を睨んだ。
「お前、誰だ?」
「あ、やっべ」
慌てて口を抑えるが、心理は銀時のそんな様子に
「銀兄。もう遅いわよ」
呆れていた。
銀時は諦めたような顔をしていたので、観念するかと思ったが
(能力は……どうやら、使えるみたいだな)
再び心理を抱えてブワァっと背中に竜巻のようなものが出現する。
晋助、と呼ばれた男以外は全員、驚愕した。
「じゃあな!!チビ杉チビ助君!!」
ダン、と足を踏み込むと上空に上がり、そのまま降下していった。
「な、何なんスかあれ!?」
女性は慌てて船の下を見るが、もう誰もいなかった。
最後にイラッとする言葉を去って行った二人に高杉晋助は少し動揺していた。
(まさか……銀時なのか?)
内心、あり得ないと思いながらもあの少年の捨て台詞が頭が離れなかった。