『ある狩人たちの日々』   作:輪纒

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みなさんのオトモは村でご主人を待ってます。


『あるオトモの手記』

はじめましてなのニャ

 

これはご主人以外も読むと思うからはじめましてって言っておくニャ。

 

まずは僕のことから紹介するニャ。

 

僕はニンゲンたちに“アイルー”って呼ばれてる種族なのニャ。ネコだけど、あんな四足歩行しかできないやつらと同じにしてほしくないニャ。僕たちはもっと偉くて強い種族なのニャ。

 

そんな僕にはナマエがあるニャ。ご主人につけてもらった大事なナマエなのニャ。僕は色んなことを忘れっぽいけどこれだけは絶対に忘れられないニャ。ご主人が前にナマエのゆらい?ゆらいで合ってるのかニャ?……まぁ、由来を教えてくれたニャ。

 

『キミは僕の好きなお菓子に似てるんだよねー、ほら、毛の色とかさ。美味しそうでしょ?』

 

『あはは、食べないから安心してよ“ショコラ”』

 

……いつ思い出してもなんの捻りもないナマエニャ。でも僕はこんな捻りのないナマエを気に入ってるんだニャ。

 

 

 

僕がご主人と初めて会ったのは僕がネコ婆に連れられて旅をしていたときだったニャ。ネコ婆に出会うまでは僕もノラだったニャ。僕の地元はそりゃ寒いところだったニャ~。寒かったけどお魚が美味しかったニャ。脂が乗ってて身が引き締まってて…、涎が出てきちゃうニャ。

 

話が逸れたニャ。そんな地元でナカマと一緒にブイブイ言わせてたニャ。やんきーだったニャ。ナワバリに入ったやつは誰でもぶっ倒す!って感じだったニャ。でもあるとき売ってはいけないモンスターにケンカを売ってしまったニャ…。

 

ソイツの声はうるさかったニャ。うるさすぎてナカマもその声にぶっ飛ばされてたニャ。デッカい爪を持ってたニャ。それでナカマは潰されたニャ。それにデッカい口も持ってたニャ。あれにナカマは上と下に分けられてたニャ。今まで無敗だった僕たちがなんにも出来ずにやられたニャ。僕は偶然ソイツの掘った穴に入ってその上に雪が降り積もって助かったニャ。

 

目が覚めたときにはネコ婆のキャンプの中だったニャ。僕は包帯でグルグル巻きになってたニャ。動けなかったニャ。そんな僕をネコ婆は何も言わずに介護してくれたニャ。ネコ婆はスープを作ってくれたニャ。僕の地元で取れたお魚と新鮮な野菜で作った暖かいスープだったニャ。

 

本当に、本当に暖かかったニャ。

 

 

 

余談だけどアイルーって種族は治りがとても早いニャ。モンスターにやられても穴を掘って逃げて応急処置をしてすぐに戻ってくるニャ。死ななければ戻って来れるのニャ。そうニャ。死ななければまた一緒に戦えるニャ。またご飯を食べれるニャ。またバカやったり出来るニャ。けど僕はもう昔のナカマと一緒に何もしてやれないニャ。

 

 

 

次の日には僕はネコ婆に付いて行くくらいは出来るようになってたニャ。僕はネコ婆に何か恩返しがしたかったニャ。そしたらネコ婆は

 

『私と一緒に旅をして、いつかハンターさんのところで働きなさいな。』

 

こう言ってくれたニャ。だから僕はネコ婆のためにもハンターさんの役に立つ立派なオトモアイルーになるって決めたのニャ。僕は元から戦えるアイルーだった上に、ネコ婆と旅をしてさらに強くなれたニャ。ブーメランの技術や棍棒で殴る技術もさらに上がったニャ。そして何日間か、何十日間か旅をしてたどり着いたのがユクモ村だったニャ。

 

ユクモ村は良い村ニャ。特に魅力的なのは温泉ニャ。大小様々な温泉がそこら中にあったのニャ。温泉には色んな効果があったのニャ。頭痛や腰痛、肩こり疲労……それに抜け毛もあったニャ。僕もアイルー事じゃないニャ。危ないニャ。

 

ネコ婆はしばらくここに滞在するって言ってたニャ。もしかしたら僕のことを買ってくれるかもしれないハンターさんがいるかも、とも言ってたニャ。そんなときにビッグニュースが入ってきたニャ。ハンターさんが村の近くに来たモンスターを退治した、ってニュースだったニャ。そのハンターさんは村長さんと話してたニャ。何を話してたかは詳しくは知らないけど、多分ここにしばらくいていいから依頼を受けてくれってことだと思うニャ。

 

ハンターさんは村人全員に話しかけてたニャ。鍛冶屋、武器屋、行商人、教官、村の守衛、etc.…………最後にネコ婆のところに来たニャ。僕はどんなニンゲンか見たくては少し顔を覗かせてたニャ。そしたら偶然ハンターさんと目が合っちゃったのニャ。ハンターさんがその後、けっこう大きな声でネコ婆と話しているが聞こえたニャ。そしてネコ婆が、ご指名だよ。って言って僕を外に出したニャ。

 

『この子の名前はハンターさんが決めていいからね。』

 

その後はさっき言った流れニャ。こうして謎のハンターさんは僕のご主人になったわけニャ。

 

 

 

ご主人との出会いはこうだったけど、最初は僕はショコラってナマエが嫌いだったニャ。それにネコ婆の頼みとはいえニンゲンに従わなきゃいけないっていうのも嫌だったニャ。思えばあのときの僕は若かったニャ。ご主人は僕の衣食住を全部担ってくれてるんだからもっと働かなきゃいけないはずニャ。でもあのときの僕はサボったりもしてたニャ。悪いアイルーニャ。

 

僕の初めての依頼は忘れもしないニャ。この後楽しくて何回もやったことニャ。

 

『ショコラ、いいかい?あのモンスターの後ろから脅かしてきてくれ』

 

そのモンスターはガーグァっていうやつニャ?知ってるかニャ?後ろから脅かすと驚いて卵を産み落として逃げる、っていう習性を持った面白いモンスターニャ。僕は後ろからこっそりこっそり近づいてお尻にブーメランを投げたニャ。そしたらガーグァは本当に卵を産んで逃げようとしたニャ。でもご主人が回り込んで太刀で首の辺りを切ったニャ。僕もガーグァも驚いてたニャ。ガーグァはそのまま倒れて動かなくなったニャ。

 

そのあとご主人はガーグァを解体してたニャ。僕は卵を割らないようにバランスを取りながら解体作業を見てたのニャ。普段はにこやかで優しいご主人の鋭い眼光と黙々と解体する姿はかっこよかったニャ。

 

その依頼をこなして数日経ったときにご主人ところに中型モンスターの討伐依頼が来てたニャ。ご主人は僕を連れて渓谷に向かったニャ。……正直そのときの僕は行きたくなかったニャ。怖かったのもあるし、痛い目に会いたくなかったからニャ。でも仕事だから付いて行ったニャ。

 

そのときの渓谷は空気が違かったのニャ。いつもうるさいジャギィもいない。ガーグァなんて何かを察して逃げ回ってたニャ。ご主人の顔も少し強張ってたニャ。そしていつもハチミツを採集していた場所にたどり着いたときにそいつはいたニャ。青い毛、蜂の巣にしゃぶりつくデッカい口。そして大きな蹄。青熊獣アオアシラ。ニャ。

 

アオアシラはこっちに気付くと吠えたニャ。僕はそれを見たときに心の奥にあった記憶が蘇ったニャ。何も出来ずにやられたあの日。それを思い出すとパニックで武器を構えられなかったニャ。アオアシラがこちらに走って来ているのを見ても避けれなかったニャ。ここで喰われて死ぬと思ったニャ。

 

でも僕は死ななかったニャ。ご主人が間一髪で僕を抱えて避けてくれたニャ。そのときにご主人は少し傷を負ったニャ。それでも構わずご主人は僕を抱えたまま逃げて僕を木の裏に隠してくれたニャ。そして太刀を抜くと独りでアオアシラと戦っていたニャ。このことを後でご主人に理由を聞いたら。

 

『ショコラがやられるのは見たくなかったからね』

 

って言って笑ってたニャ。良いニンゲン。良い人ニャ。結果としてご主人はボロボロになったけどアオアシラを討伐してたニャ。その間も僕は動けなかったけど、帰りは一緒に歩って、ご主人のペースに合わせて帰ったニャ。

 

 

 

僕はこのこと以来、ご主人に従うことにしたニャ。いつかご主人みたいに勇敢になりたい。強くなりたい。そう思えたのニャ。モンスターにも恐れず向かって行くことにしたのニャ。そりゃもちろんまだ怖かったのニャ。でもご主人と一緒なら戦える気がしたのニャ。そしてそんなご主人を助けるために色んなことを覚えたのニャ。回復効果のある笛、罠、怖いときほど逆に怒るっていう心構えとか、色んなことを覚えたのニャ。

 

そうなってからは僕も毎日に楽しみが出来たのニャ。ご主人と一緒に温泉も入ったのニャ。ユクモ農場も一緒に開拓していったのニャ。夜になればご主人のベッドの横で丸くなって寝るのニャ。ご主人と過ごす毎日がとても楽しかったのニャ。

 

それに僕にも後輩が出来たのニャ。メスのアイルーだったのニャ。戦闘には参加出来ないけど、採集をするときに連れて行くアイルーだってご主人が言ってたニャ。少し生意気だったけど、初めての後輩だったから少しは許したニャ。

 

もちろんご主人も変わらない訳なかったニャ。武器や防具を新調してみたり、違う種類の武器を試してみたり、温泉の効能を変えてみたり……最後のはただの趣味ニャ。とにかく色んなことをやって、色んなモンスターと戦ったニャ。カラダから雷を出すモンスター。他のモンスターの声の真似をするモンスター。船の大きさよりもっと大きいモンスターもいたニャ。本当にニャ。口から火を吐くモンスターなんかもいたニャ。……そして、僕の旅の始まりになったモンスターも討伐したニャ。僕の罠に掛かってご主人がトドメを刺したときにはとても嬉しかったのニャ。涙を流している僕をみてご主人が困った顔をしているのも覚えてるニャ。

 

それからさらに経って、ご主人との出会いが懐かしく思えるくらいになったころ、ご主人は一流ハンターとして名を馳せていたニャ。そんなとき村の危機が訪れたニャ。嵐が近づいて来てたニャ。それもただの嵐じゃないニャ、モンスターが起こしてる嵐ニャ。ご主人はそれを止めるために独りで行こうとしてたニャ。なんで僕を連れて行こうとしニャいかって?……そのとき僕は後輩のアイルーとつがいになってたからニャ。僕も一家のパパニャ。稼ぎ頭ニャ。そんな僕は連れていけないってご主人が言ってたから、僕は悔しくてご主人頭を叩いたニャ。僕は怒ったニャ。こんなときにご主人のそばで戦わなくて何がオトモニャ!って感じだったニャ。ご主人は少し嬉しそうに微笑んでくれたニャ。

 

『一緒に戦おうか、ショコラ』

 

……ナマエのせいで緊張感が薄れたのは秘密ニャ。

 

 

 

それからはご主人にも友達が出来たりしたのニャ。色んなハンターさんがいたニャ。声が大きい人。装備が大きい人。胸が大きい人。……ご主人は凝視してたニャ。むっつりスケベニャ。それから4人で狩りに行くことが多くなったニャ。そのときはオトモ連れて行けないらしいニャ。だから僕は家に残って家族とゆっくりしたり、ほかのハンターさんのオトモと温泉入ったりしてたニャ。少しだけど寂しかったニャ。もちろんたまにだけどご主人と一緒に狩りに行くときは楽しかったニャ。でもご主人が前より僕と狩りに行ってくれなくなったのは寂しかったのニャ。

 

ある日僕は体調を崩したニャ。なかなか治らなくて医者に行ったら特別な薬草がないと治らないらしいニャ。それを聞いたご主人は驚いた顔ですぐに友達とその薬草を探しに行ってくれたニャ。

 

『大丈夫、安心してショコラ』

 

『ショコラちゃん、大丈夫だから、すぐに採ってくるからね』

 

『……安心して……くれ…』

 

『この俺に任せておけば大丈夫だ!』

 

ご主人の友達は優しい人ばっかりだったニャ。数日してその薬草を採ってきてくれてそれを飲んだ僕はすっかり元気になったニャ。ご主人はそのときも泣いてたニャ。

 

 

 

それから数年が経って、僕に後輩アイルーが増えたニャ。その中には僕の息子もいたニャ。親バカってご主人には言われたけど、僕の息子は戦うセンスがあったニャ。

 

でもそれに比例するように僕の体調も悪くなっていったニャ。前線で戦うことは出来なくなってきたし、忘れっぽくなってきたニャ。医者には歳だ、と言われたニャ。僕もご主人に出会ってから結構経つニャ。仕方ないことだと思ったニャ。でもそれだけじゃなかったニャ。忘れっぽいのはもっと進んだニャ。前までは覚えていたモンスターのナマエも、昨日あったことも忘れるようになってきたニャ。そしてそれに応じて僕の体調も悪くなっていってるニャ。

 

 

 

おそらく僕はもう長くないニャ。今ではご主人の顔すらたまに忘れる始末ニャ。だからご主人には覚えてるうちに言いたいことをここに書いておくニャ。

 

ご主人へ

ちゃんと奥さんを大事にするニャ。胸の大きい奥さんをちゃんと大事にしてあげるニャ。僕みたいに仲良しの楽しい家庭を築くニャ。僕の武器を磨いておいてほしいニャ。もう立てなくなったから武器庫まで行けないんだニャ。お願いするニャ。それと、僕の息子たち、ちゃんとクエストに連れて行ってやってほしいニャ。もっと強くなれるニャ。そして僕の武器を貸してあげてほしいニャ。最後になるけど僕が死んだらユクモ農場に埋めてほしいニャ。墓標にはちゃんと僕のナマエを、名前を書いておいてほしいニャ。幸せになってください。

               ショコラ より

 

     psもっとご主人と一狩りしたかったニャ。

 

 

 

      手記はここで途切れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある男が小さな、それでいて目立つ墓石の前に座っている。この男の後ろには胸の大きな女性が立って涙を流している。男はタオルをもって自身が扱うには小さな、それでいて使い込まれた武器を丁寧に拭いている。だが拭いても拭いても、上から降ってくる水は拭き取れない。墓石にはこう刻まれていた。

 

  『ユクモ村の英雄、ショコラここに眠る』

 

男は武器を拭き続けた、こうしていればあの少し臆病だけど、強い芯を持った友達がここにいる気がするからだ。男は読み終えた小さな手帳を墓の上に置いて呟いた。

 

「ありがとう、僕の友達。またいつか、一緒に狩りに行こうね。」

 

 




ショットがいれば安心!(2G並感)
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