神器、チェンジで! え、無理なの!?   作:ニュイン

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1st day~ダイナミックお告げ~

 身体を揺すられる感覚に目を覚ますと、そこは真っ白い景色で埋め尽くされていた。ふと自分はまだ夢の中なのだと悟り、即座に2度寝へと移行する。

 

『ちょい待ち、ちょい待ち! 何、2度寝しようとしてるわけ!?』

 

 先程よりも激しく揺すられ、後もう少しで夢の世界へと旅立つ手前で無理やり引き戻される。流石に頭にきたので飛び起き様にエルボーを敵に食らわす。

 

『ほひゅ! ぅふっ、ぅくぅぅぅ!』

 

 何か嫌な感触と同時に気色の悪い呻き声が聞こえた。だがそんなことよりも夢の中だというのに異常なほど感覚がリアルすぎて少し違和感を覚える。

 

『ヒッヒッフー、ヒッヒッフー……みーたん、ひーたん、ぼーちゃん気をしっかりするんだ!』

 

 蛙を踏み潰した時みたいな声がする方に目を向けると、短く切られた金髪に碧眼のイケメンがラマーズ法をしながら自らの股間を弄っていた。

 

「へ、変態だぁぁぁぁぁ!!」

 

『ふー、ふー、ふー……ん? おー、やっと僕に気づいて……ちょ、逃げないでよ!』

 

 駄目だ、アレに関わったら駄目だ。てか寝起き早々に自分の股間を弄ってる男と目が合ったら誰でも逃げる、俺でも逃げる。

 暫くの間、一心不乱に変態から逃げていると見えない壁に衝突する。何故、見えもしない壁があるのかと鼻を押さえながら考えていると、不意に肩を叩かれたので十中八九あの変態野郎だと思い、見もせず右腕を振って裏拳を放つが空振りに終わる。

 

『ふっふっふ。どこを狙っている少年よ、それは残像だ!』

 

 気配は後ろから感じた筈だった。しかし、いつの間にか変態は俺の目の前に腕を組み仁王立ちしていた。

 何故だろう? 初対面の奴で、ここまで生理的に嫌悪感を感じるのは初めてだったので少し戸惑う。

 

『さて、僕の話を聞いてくれるかな? 選ばれし者よ』

 

「いや、今さら感が半端ない上にここはどこで、お前は誰なんだよ変態野郎?」

 

『完璧に君のせいだからね? 僕の息子にあんなことしたくせに事故みたいな衝撃だったし……いや、そんなことより話を進めよう』

 

 事故? あれが? 俺は眠りを邪魔されたから仕方なくやってしまっただけであり、悪気はなかった。でも、同じ男として玉突き事故の痛みは十分理解してるので今後に生かすため反省はしよう。けど後悔はしていないし、謝ったりはしない。何故ならアイツが悪いのであって俺は悪くないのだから。

 

『さて、気を取り直して。……ここは君の精神世界であり、僕が君に1つ提案をしたくて呼んだんだ』

 

「提案? 一体どんなのだ?」

 

『君は”神”である僕の代わりとなって人を導いて欲しいのさ。その報酬としてハーレム王になれたり、億万長者にもなれるよ?』

 

 目の前の変態――改め神と名乗る頭の痛い人は話を続ける。

 正直、胡散臭さが尋常ではない。コイツの言うことより、怪しい壺を売りつけようとする訪問販売員の方が何倍も信じられるのは仕方ない。

 

『さぁ、答えを聞かせてくれないかな? 寄神真桜くん』

 

「断る」

 

『ぅんん! あれれ、おかしいな? ごめん、ごめん年を取ると耳が遠くなってね。悪いけど、もう1度聞いてもいいかな?』

 

「何度も言わせるなよ、お前の提案は断るって」

 

 はっきりと否定の言葉を告げると、口を半開きにした状態で信じられないものでも見たような顔をしていた。

 何とも情けないアホ面だ。仮に神様と名乗っているなら威厳のある態度を示して欲しい。いや、最初から威厳もクソもあったもんじゃなかったな。

 

『ふ、ふふふふ。ま、まぁ信じられないのは確かだ。けど、これは逃れられない運命なのさ』

 

「いや、何でそうなるんだよ。俺は嫌だって言ってるだろ? そんな面倒臭いの」

 

『既に決定事項なんだよ。神であるこの僕――”神器”を君はその身に宿してしまった時点でね!』

 

「勝手に宿ってんじゃねぇよ、この変態! 帰れ!」

 

『無理ですぅ、帰れません~。てか受け入れちゃいなよ、you!』

 

 うざっ! てかイラつく! 無駄にドヤ顔なのがさらに頭にくるんだけど。

 あれから色々説明された。どうやらコイツは天使、悪魔、堕天使の三つ巴戦争で死んだ神であり、自ら作った神器というシステムに自分を封印していたという。さらに神器というのは歴史に名を刻む者や英雄となる者に宿るらしいが、宿るならもっとちゃんとしたのが良かった。

 

『――というわけさ。理解できたかな?』

 

「理解はした、けど納得はしてない」

 

『でも、君に選択肢は無いよ? もし本当に嫌ならこちらも最終手段として常時、蚊に刺された状態にするしかないね』

 

 何だ、その地味な嫌がらせは。本当にコイツは神様なのか? 俺には、自称神様と名乗る頭の弱いただの外道にしか思えない。というより選択肢など最初からあって無いようなもの、コイツの提案を受ける他ない。

 

「わかった、やってやるよ。でも、人を導くとかは俺には無理だからな」

 

『いいよ、いいよ。提案を受けてくれるだけでも十分だし、それに君には人を導くとか無理だなとは思ってたし』

 

 ヤバい。何がヤバいってコイツと話してると感じるイライラ。これはあれだ、シールを上手いこと綺麗に剥がせなかった感じに似てる。そう思うと仕方ないと割り切れる――いや、やっぱり駄目だ。そのドヤ顔だけは許せねぇ。

 

「じゃあ、俺は何をすればいいんだよ?」

 

『そうだね。……よし、じゃあこうしよう。もし何かトラブルが起きた時、問題を解決するヘルプとして頑張ってもらうということにしよう! 僕も力を貸すし、これなら難しくもないでしょ?』

 

「まぁ、それくらいなら……」

 

 ここで安請け合いしたおかげで、これから起きる面倒臭いことに巻き込まれるとはこの時の俺は思いもしなかった。

 

 

 

 

 ふと目を覚ますと見慣れた天井があり、先程のあれは夢だったと胸を撫で下ろす。

 カーテンを開け、眩しくも暖かな日の光を浴びて今日も1日、いい日になりそうな予感がする。

 

『おはよう、真桜くん! いい1日になりそうな予感がするね!』

 

 訂正しよう。今日は最悪な1日になるだろう。いや、最近の俺は疲れて幻聴が聞こえてしまっただけだ。そうだ、そうに違いない。

 

『幻聴なんて酷いことを言うもんだね。僕達は一心同体、同じ目的を持った同士じゃないか』

 

「はい、ダウト! 何が一心同体だ! 同士だ! ほぼ脅迫に近かったくせに!」

 

『おいおい、落ち着きなって。欲求不満じゃあるまいし、ご近所迷惑だよ? それとも本当に溜まってると考えるべきか。仕方ない、僕は暫くの間は目と耳を塞いでるから処理するならさっさとしてね』

 

 あぁ、神様は何でこんなものを俺に宿したんだ。というよりコイツが神様そのものじゃないかよ、くそったれ!

 

「大丈夫だから、いらん心配はすんなよ。そんなことよりナチュラルに話かけてきてるけど何なの!?」

 

『細かいことを気にしてると禿げるし、女の子にモテないよ? あぁ、だから真桜くんは童貞なんだね』

 

 大きなお世話だ、と言ってやりたいが何でもかんでもこの変態クソ野郎のことを気にしてると本当に禿げかけない。そう思えば怒りも収まってくる気がする。

 

「話しかけてきたってことは何か用があるんだろ?」

 

『そうだった、そうだった。あのね、神器を発現しない限り始まらないから話しかけたんだよ。ん~とね、真桜くんの中で最も強いイメージをしてもらえるかな?』

 

 ――強いイメージ。

 そう言われてもなかなか浮かんでは来ない。

 

『へいへい、いつまで待たせるんだよ! 時間を掛ければ誰だってできるさ。即ち真桜くん、君には速さが足りないんだ! ほら、hurry! hurry! hurry!!』

 

 うるさい。加えて無駄にハイテンションなのがムカつく。非常に残念なことだが、アイツは曲がりなりにも神様であるからして耳を塞いでも意味など無いのだろう。

 もし、コイツの声が聞こえなくなったらどんなに楽だろう? そう心の中で強く思う。すると、一瞬だが辺り一面が眩い光に包まれる。

 

『おぉ、神器の発現おめでとう! 僕自身、形までは決めてなかったからどんなものになるか分からなかったけど、まさか君のイメージがそれとはね』

 

 奴に言われ、少し気になったので近くにあった鏡台で見る。そこには白を基調としたヘッドフォンを着けた自分の姿が映っていた。

 

『まぁ、一先ずはクリアだ! 真桜くん、これからよろしく頼むよ!』

 

 例え強く願ったとしても、コイツの声は相も変わらず聞こえることと、これからこの神との共同生活を余儀なくされた俺は、目覚ましのアラーム音と同時に人生の警鈴が鳴り響くのが聞こえた気がした。




 どうも作者のニュインです。
 執筆途中の作品が行き詰まったので息抜きを兼ねてこの作品を投稿させて貰いました。この作品は不定期になるかもなのですみません。
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