その先の向こうには   作:峰白麻耶

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入学式7

身体的には全く疲れてはないが精神的に疲れた俺は買い物後、家に帰る。ただいまと小声でボソッと呟き玄関に入ると女性の靴が一足。はあとため息をつく。そのまま突き進みリビングに入ると

 

「ふっふっふ。お帰りゆき」

 

そこにいたのは淡緑の髪を腰まで伸ばし、緑の目で俺を見据える女性。

 

「花蓮。帰るなら帰るって言ってくれって何度言えば分かるんだよ……」

 

彼女は鬼頭花蓮。今年で三十路の後半戦に入る俺の仕事の上司兼同居人兼保護者。ごめんなさいと謝る姿はとても三十後半戦には見えず新社会人くらいなら通用するぐらいは若作りをしている。

 

「帰るって分かってるなら好きな物を用意できるんだけど?」

「何時も言ってるじゃない~。ゆきの料理なら何でも良いって。今日は何作るの?」

 

見ていたテレビから離れ、俺の方にするすると近づき抱きしめる。

 

「苦しい。離れて」

 

俺がそう抗議すると、さらにきつく抱きしめ

 

「いやだ~」

 

この人の抱きつき癖は治らない。俺がこの人と知り合った時から俺はこの人のぬいぐるみになっている。

 

「離れないと料理できないんだけど」

 

俺がそう言ってやっとテレビに戻る。反抗期だーなどブツブツ呟いているがそうじゃない。料理を作らせろ腹が減ってるのだ。

 

「今日は何作るの~」

 

見たいものが無いのかリモコン片手にチャンネルをドンドン替えながらくつろいでいる花蓮を横目に俺は買い物袋から今日買ってきたものを取り出し

 

「鰹のたたきとハムカツとシーフードサラダ、豆腐の味噌汁に炊き込みご飯」

「我ながらちょうどいいときに帰ってきたわね」

 

グッと握り拳を作り、待ちきれなさそうにテレビとキッチンに視線を往復させる。残念ながらそれなりに時間がかかるので我慢して貰おう。

 

 

 

 

 

「花蓮。できたから運ぶの手伝って」

「はいはーい」

 

そう言ってスキップしながら鰹のたたき、ハムカツ、シーフードサラダの乗った大皿を一気に持って行く。

 

「落としたら夕飯抜きな」

 

俺はそう忠告すると

 

「そうなりそうになったら魔法使うからいいのよ」

 

もう何も言う気が無くなった。

 

二人でテーブルを挟みテレビを見る。久しぶりの家族団欒。花蓮は料理をパクつきながらおいしいと連呼して食べている。そう言われるとこっちとしても作ったかいがある。

 

「そう言えば学校は楽しい?」

 

唐突に花蓮は言う。しっかり俺の目を見て聞いてくる。

 

「楽しいとは思う。けど仕事の方が優先だからあるなら言ってよ」

 

俺がそう言うと花蓮は呆れ顔になる。

 

「そうそう私達が必要になる案件が出てきてたまりますか」

 

プリプリと怒りながらハムカツをパクッと食べる。

 

俺と花蓮が付いてる仕事。それは警視庁警備部特集事案対策部。昔存在したSATでは魔法という新たな技術に対抗できない為組織されたものである。SATは今でも残っている。なぜなら魔法師は地位が確定されてるためほとんどの場合犯罪を起こす理由がないからだ。がほんの一部の魔法師が要人を金銭目的でねらう場合など。他にはテロなどなど表に出したくないもの、失敗が許されないものなどが依頼として回ってくる部署である。依頼の特性からそのメンバーは一流の腕を持つ人ばかりである。俺は数年前に色々あり、推薦を受け試験を受け合格したのだ。

 

「確かに俺達が暇って事は良いことだけど」

「良いから普通に友達と話して恋人作って高校生ぽいことしなさい。うちは腕だけは良いから安心して謳歌しなさい。高校生は三年しかないのよ?」

 

花蓮は高校生生活に未練でもあるのだろうか?そんなどうでも良いことを受け流す。

 

「それが簡単にできたら苦労はしない」

 

俺は普通ではない人生を送っている。その内容は楽しい夕飯時なので思い出さないが嫌でも思い出す時が来る。

 

「まったくゆきたっら………じゃあ学校でなんか面白いことないの?」

 

まだそこまで通っていない学校だが色んな事が起きた。その中で一番ホットなのは

 

「風紀委員になった」

 

そういうと花蓮は驚いた顔になった。

 

「あれ?雪って二科生だよね?風紀委員になれるっけ?」

 

当時のことを思い出そうとしてるのだろう。このことから分かるとおり花蓮は一高のOGだ。

 

「今の風紀委員長が言うには二科生の縛りがあるのは生徒会だけで風紀委員にはないんだとさ」

「おへー。そうだったんだ。風紀委員は月姉さんがやってたから分からないんだよね。生徒会なら分かるけど」

「その話初めて聞いたんだけど」

 

そして俺は風紀委員の仕事に不安を覚えた。鬼頭月見。俺を花蓮の前に俺を引き取った人である。俺を妹の花蓮同様特対部に所属していた。性格は月という文字が入っているのにも関わらず豪快で男らしいと言えばいいか。戦闘狂とまではいかないがそれに近い人物で特対部最強と言われた人だ。そして今は亡き人である。

 

「まあ、言う必要もないかなって思ったのよね。試験の結果は月姉さんが主席で私が自席。姉さんは生徒会の勧誘を受けて私が風紀委員の勧誘を受けたんだけど風紀委員の仕事内容を聞いた姉さんが風紀委員になりたいって言ってね。最終的に私が生徒会、月姉さんが風紀委員になったの。ゆき覚悟しといた方がいいわよ。姉さんが毎日笑顔で楽しいって言っていたから」

「月見が?」

 

戦闘狂に近く細かい事務的な作業が嫌いな月見。そんな人物が毎日楽しいと言うのは毎日事件が起きるとどう意義である。

 

 

俺はもう明日から学校に行きたくなくなった。




今回で主人公の仕事が明らかになり、新キャラが二人。一人亡くなってますが……。この二人が主人公の過去に関わるのでお楽しみに。

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