「安童様。リアス様達の特訓を指導していただきありがとうございました」
「いえいえ。グレイフィアさんと魔王様のお願いですからね。無下には出来ません」
俺達はグレイフィアさんに案内されてサーゼクスさんのお屋敷に入っている。
目的としてはリアスさん達の特訓をお願いした対価を決める為だ。
俺は要らないと言ったのだが、サーゼクスさん曰く『相手が誰であれこちらが頼んでいるのだから対価は必要だ』との事。
魔王様にそこまで言われてしまったら無下にする事も失礼だし、指導後に話し合う様にお願いしたのだ。不釣り合いな成果を出してはお互い困るしな……まぁ、勝敗が大事だからまだ決めてないんだけど
しかしサーゼクスさんと会った時も感じたのだが魔王ってあんなに若い悪魔でもなれるものなのか?
もしかしたら昔の悪魔界で戦争があったらしいからその時に本来の魔王が倒されたからだろうな。そうじゃなきゃグレモリーからルシファーなんて名前が出るわけがない
「到着しました。こちらに魔王様がいらっしゃいます」
グレイフィアさんが扉の前で止まり、ノックをした後、そのまま扉を開けた。
中は広いが奥に作業する為に置かれたと思われる長机、その前にソファが向かい合わせに置かれ、その間に小さめのテーブルが置かれていた。
そしてその奥、窓から外を見ている人・・・悪魔がいた。その人は紛れもない。サーゼクスさんだった
「やぁ久しぶりだね安童君。それに黒歌君も」
「お久しぶりですサーゼクス様。忙しいでしょうにお時間取らせてしまってすみません」
「いやいや。気にすることは無い。リアス達の特訓を終えたんだ。そろそろだと思って仕事を済ませていたからね」
「そうでしたか・・・それでもあまり時間をとるのはいけませんし・・・すみませんが早速本題に移りたいのですが」
「そうだね。そこに座り給え。黒歌君とソフィア君も」
自分の名前を呼ばれたからかソフィアは少し驚いた表情をしていた
前にあった時はソフィアいなかったし、知ってるのはオーディンさんくらいだからな
「私のこと知ってるんですか?」
「勿論。オーディン様から聞いているよ」
「いやぁ・・・魔王様に知っててもらえるなんて照れますねぇ・・・」
少し顔を赤らめてるソフィアはほっといて、俺はサーゼクスさんに促されソファに腰掛ける。
それを確認してか、サーゼクスさんも向かいのソファに腰掛けた
「さて、対価の話だったね?」
「そうです。お恥ずかしいことですがまだ決めてないのです」
「それはまだ対価を貰うまでの成果を得ていないという事かい?」
「いえ、そういうわけではないのですが・・・リアスさんとライザーさんのゲーム結果で考えようと思っているのです」
「なるほど。確かにリアス達のゲームの結果次第では教育者にも問題がある可能性が浮上してしまう。では仮にリアスが負けたら?」
「パーティーで見納めの見物としてライザー眷属全員と俺達を戦わせて欲しい。勝ったら婚約の話は無し。あ、俺達と言ってもこの二人は出ません。少しアテがあるもので」
俺がそういうとサーゼクスさんは少し微笑んだ
「なるほど・・・流石にリアス達を鍛えただけはあるね。それは確かに面白い。何とかしてみようではないか。ではリアスが勝った場合は?」
「俺もあの町・・・駒王町で自由に行動出来るようにして欲しい。悪魔討伐しかり、全て」
俺がそう言うとサーゼクスさんは少し考え込むように腕を組んだ。これはある意味賭けだ
「なかなか面白い話だ・・・しかし本来は1人の人間を冥界の・・・しかもフェニックスとグレモリーのお家騒動に加入させるわけにはいかないんだ。そこまでこの世界も優しくはない」
「まぁ・・・そう、ですよね。普通・・・」
「だがしかし、こちらは依頼している身分だ。何とかしてみようではないか」
マジかよ!!これが通るとは思ってなかったぞ!?
何事も言ってみるもんなんだな!
「自由に行動・・・は難しいだろうがリアスの監視下でという条件付きなら手を打とう」
あー。駒王町はリアスさん・・・基グレモリーの管轄なんだもんな。そりゃ責任者がいれば問題はないだろう
「分かりました。ではそういう方針で・・・」
「すまないね・・・長い旅路から帰ってきてすぐにこんな事に巻き込んでしまって・・・」
「別にいいのですが・・・何故俺達に頼んできたのですか?」
依頼された時から気にしてはいたのだ。何故俺なのか。特訓ならリアスさん達だけでも成り立つ筈。なのにサーゼクスさんは俺達に頼んできた。理由がない筈がないだろう
「君達の事でオーディン様から連絡が来てね。是非とも彼らに協力をしてもらえというお告げがあったんだ」
「あの方は・・・まったく・・・人使いが荒い神様だこと」
俺が嫌味っぽく呟くと、ソフィアと黒歌はクスリとはにかんだ
そして俺はサーゼクスさんとグレイフィアさんに送られて人間界へ戻ろうとしたとき、サーゼクスさんに呼び止められた
「そうだ。君達にもう一つお願いをしてもいいかな?」
「なんでしょうか?」
「今後も君たちの力を借りることがあるかもしれない。その時は話だけでもいいから聞いてはくれないだろうか?これは魔王としてではなく私個人としての願いだ。断ってくれても構わないんだ」
「話だけとはとんでもありません。是非とも協力させてください。な?二人とも」
「私は安童が居ればどこでも行くにゃん」
「微力ではございますが魔王様のお役に立てるというのでしたら喜んでお受けします」
2人は頷いて答えてくれた
その答えにサーゼクスさんも笑ってくれた
「それが聞けて良かった。さぁ。戻りたまえ」
「はい。それではサーゼクスさんとグレイフィアさん。お忙しいのにありがとうございました」
「またおいで。歓迎しよう」
「はい!ありがとうございます!それではまた!」
俺はそう言いながらソフィアの魔法陣で人間界へと転移した。その時もサーゼクスさんは笑顔を絶やしてはいなかった
そして俺はソフィアと黒歌と共に人間界、駒王町の公園に戻った。そしてそこから久しぶりの我が家へと移動
────しようとした瞬間だった
「そこにいるお前。ただの人間ではないな?」
移動しようとした刹那、少し歳をとっているがかなりイケメンの部類に入るであろう男性が俺に話しかけてきた
「何のことですか?というかそれは貴方もでしょう?明らかに人間のオーラではない・・・堕天使ですね?しかもかなり実力がある部類の・・・総督、とか?」
「ほう?そこまで考えられるとなると、お前があのオーディンに転生させられたとかいう奴だな?まぁそう堅くなるなって。ちょいとお前に聞きたいことがあるのさ。北欧神オーディンに転生させられたお前に、な?」
「もうそこまで知ってるとは流石ですねぇ・・・堕天使総督アザゼルさん?」
男性────アザゼルはニヤリと笑いながら住宅街へと歩いていった。俺達もその後ろをついて歩いていく。まさかこんな所で会うとはなぁ
「よし着いた。ここが俺の住んでる拠点だ。お前、酒は飲めるか?」
「飲めるが飲まん。飲むなら一人で飲め」
ごく平凡なマンションの一部屋の玄関に入るや否やこの堕天使は・・・流石は欲に溺れ堕ちた天使だ
ちなみにアザゼルに対してタメ口なのは彼からの希望だからだ。なんでかは教えてはくれなかった
そして俺がアザゼルの家に向かう時にソフィアと黒歌には先に帰ってもらった。何かあったらお互い直ぐに転移出来るように簡易魔法陣が描かれた紙を持ってる
「つれないねぇ・・・水でいいか?」
「あぁ。で、俺に話とは?」
「お前さん、自分が何者かって・・・分かるか?」
「あぁ。分かるぜ。ついでにこの街にいる悪魔、堕天使の事も、な?」
アザゼルは酒を持ってくるとソファにどかりと座り、大きめのグラスに並々と酒を注ぎ、呑む
「お前の事をオーディンから聞いてな。つい話をしたくなったってわけさ」
「あんたが知りたいことなんて俺は知らないぞ。まだこの世に来て間もないしな」
俺はまだこの街に来て1ヶ月ちょいしか経ってないし、その1ヶ月はここから離れてたからほとんどいない。
だがアザゼルはそんなことを気にしないかのごとく俺に質問をしてくる
「だがお前はオーディンに目をつけられて転生した・・・何故だか分かるか?」
「まぁなんとなくはな。だが俺はあくまで転生してもらっただけのこと。何もやる気はないし、する気もない。頼まれれば別だ。後は俺の好きにやらせてもらうさ」
「なるほどねぇ・・・だが俺からしてみたら、お前、今後この世界にいなくてはならない重要な人材になると思うぜ?」
「はいはい・・・サボり魔総督のお言葉受け取っておきますよー・・・で、仕事はどうした?シェムハザさんに捕まっても知らないぞ」
「お前・・・なんでそれまで知ってんだよ・・・ほんとになにもんだよ」
そう言うと冷や汗をかいたであろうアザゼルは浴びるように酒を一気に飲み干し、また注いでいく。どんだけ呑むんだこの駄天使総督は・・・
「話はそれだけか?だったら俺は帰るが」
「あぁ待て待て。お前の持ってる神器についても聞きてえ。俺はこれでも神器に関してはかなり知識があるぜ?」
「神器ねぇ・・・俺も知識は少しはあるが、細かいところまでは分からんな・・・俺はありふれた感じのものさ。ただ自分に電気を纏わせて身体能力向上させるだけだよ」
「ほう?その言い方だとお前、“禁手”には至ってないな?」
「いや、至ってはいるよ。今は他の可能性を見つけてる最中だ」
「・・・本来、神器の最終形態は禁手の筈なんだがな。ま、何が起こるかはわからんな。亜種になるものだってある事だ」
俺の神器に限ったことではないが、神器には【禁手】と呼ばれる形態が存在する。簡単に言うと最終進化のようなものだと思う。神器によって禁手は違うし、本来の禁手では無い亜種のようなものも存在するらしい。
俺はその【禁手】に至ってはいるものの本来、禁手に至るためには劇的な事を体感とか、自分の限界値を越えられるような出来事とかがないと出来ないみたいだが、俺はまだそれがない。髪の色が変わったりする現象が【禁手】の可能性だとしたらあまりにも早すぎる。アーシアさん奪還の時になったからな
「ま、もしかしたら、お前さんの思ってるソイツは禁手じゃない可能性もあるな」
「そうだな。そういうことになる。で、今度は俺から聞きたいことがあるんだが」
「あ?なんだ?」
「本当に俺に会うために来たのか?本当は二天龍の事じゃあないのか?」
俺がそう言うとアザゼルは酒を飲む手を止め、俺の事をじっと見てきた
「お前、本当にただの人間か?」
「神器を所有している時点でただの人間ではないだろ?で、そこのところはどうなんだ?アルビオンが目覚めてるのは知ってる。ドライグの場所も知ってる。というかそのうち会うつもりなんだろう?」
「・・・やっぱりお前は今後要注意人物になるな」
「堕天使総督様にそう言われるのならそうなるかもな。だが俺はあくまで第三者。手荒な事はしないつもりだぜ?あと俺のやってる事を邪魔するなら容赦はしない」
「そうか・・・ま、今後また会うことがあるだろう。その時また話でもしようや。今度は酒を飲みながらな?」
「まずは仕事を済ませてからにしろサボり魔総督。それからならいくらでも話は聞いてやる」
俺の言葉を聞いてアザゼルは 冷めてんなぁと呟き、並々に注いだ酒をまた一気に飲み干す。こんなのが総督ではシェムハザさんも大変だなぁ・・・
「ま、いずれどこかでお前とまた会う事になる。その時はまた頼むぜ?」
「はあ・・・実験体にするのだけは勘弁してくれ。こっちの身がもたないからな」
おれはそう吐き捨ててアザゼルのいる部屋の窓から上空を経由して自宅に戻るべく空を飛び、アザゼルの元から離れた
「こりゃオーディンの爺・・・ヤバい奴を転生させやがったな?」
どうもアイツからは訳のわからんオーラのようなものを感じた。俺は今まで色んなやつと対面してきたが・・・俺が押され気味になるほどのものをアイツは持っていた。あれでも恐らく本気ではいないだろうな・・・こりゃ今後の会談でアイツを呼ぶ必要があるな・・・アイツに関しては恐らくサーゼクスも警戒をしてるはずだ
「二天龍はいるわあの小僧はいるわ・・・こりゃ大変なことが起きる気がするな・・・」
俺はアイツが出て行った窓を見ながら酒を浴びるように呑んだ
「・・・アザゼルはちゃんとこの街に来たんだな。対象は俺にも向けられていたが」
俺は家に帰る途中で他愛もないことを呟いていた
だが変に干渉してアザゼルが来なくなるという恐れはなくなったのが救いだ。
アザゼルがこの街に来ないと色々と面倒な事が起こるからな。まぁ、来ても面倒なんだが
「さて・・・これからが大変だ。まずは今夜の火の鳥とのレーティング・ゲーム。期待してますよリアスさん達」
俺は黒歌とソフィアの待つ家向かって稲妻を纏い、空を滑空する
「もし仮に負けたとしても・・・生徒の仇は俺がぶっ倒す。それがコーチとして―――いや、俺のプライドだ」
俺はグレモリー眷属のことを見守る義務がある。そして俺も強くなくちゃいけないからな。
だから努力は怠らないようにしないと