_____冷たい
「……ぁ……」
身体の体温がかなり下がり、凍えるような寒さが体に広がっている。
それに気づいて、俺は目を覚ました。
耳には雫が地へと叩き付けられる音……雨が降っている事が感じられる音が、ざぁざぁと響いて来る。
その雨は俺の身体にも落ちているようで、その刺激が俺に突き刺さる。
薄らと目を開けば、どんよりと暗く染まった空。
空を灰色の雲が多い尽くし、天気は雨天になっているようだ。
「…………っ」
視覚と聴覚、触覚から得た情報を頭の中で咀嚼し……俺は戸惑う。
どう言う事だ?
雨が俺を濡らしている、と言う単純な状況に俺は思考が乱れる。
雨に当たる……と言う事は、即ち外に居ると言う事だ。
至って当たり前。それが普通だ。
……だが……。
「……あ……っ?」
どうして、外に居る?
俺は確かに、自室のベッドで寝た筈だ。
つまりは屋内。雨に当たる筈も無い。
それなのに、俺はこうして外に放り出されている。
何故?
「……ぐ……っ……」
手足の先まで冷えている体を動かし、俺は起き上がる。
上半身を起き上がらせると、不意に腹部に痛みが走る。
ジクッと刺すような刺激に、ほんの少し顔を顰める。
昨日に増えた怪我が傷んだらしい。何とも体を動かしづらい。
しかし怪我は慣れているもので、今回受けた傷は軽め。充分我慢出来る。
腹部の痛みを堪えながら、続けて足に力を入れて立ち上がろうと_______
ビチャッ
_______出来なかった。
体が思うように動かず、倒れてしまった。
地面の水溜りに着地し、俺は仰向けに倒れ込む。
まるで重りでも付けられているかのように体が重く、何か絡み付いているのでは無いかと言う位に体が動かしづらい。
……どう言う事だ、と再度疑問が沸く。
が、2回目に浮かんだ疑問は直ぐ様に原因を理解出来た。
「……はっ……」
体の体温が下がり過ぎているのだ。
原因は分からないが、何時しか雨の降る外へと投げ出された状況。心当たりが無くは無いが、その原因はまだ思慮深いから確実とは言えない。
原因についてはさて置き、俺が外に居た時間は恐らく少なくは無いだろう。
つまりは、少なくない時間俺は雨に打たれ続けていたと言う事だ。当然体が元気に動かない訳だ。
体の温度が下がれば自由に動けないし、色々と悪影響が及ぶ。
「…………はぁ……っ」
意識がはっきりとしないのはこのせいだろう。
正確に言うなら、朦朧としている……だろうか。
頭がぼんやりとして、体の感覚が定かでは無い。
ぼやけた視界と、遠のいた雨の音が俺の弱体化を示していた。
「…………」
まぁ体の状態は不味いと言う事が分かったが、解明出来ない疑問が一つある。
最初に抱いた、何故俺が外に居るか、と言う疑問だ。
方法として、俺が寝ぼけた、運ばれた、放り出された、捨てられた……だろうか。
やはり俺の親は非情で最低らしい。
「……」
と、色々と考えている間に更に頭がぼやけて来た。
先程まで思考はマトモに動かせていたのに、緩やかで曖昧な思考になる。
体は恐らく殆どロクに機能していないだろう。
このままだとデッドエンド……死んでしまうのだろう。
ふむ、案外死と言うのはひょっこり顔を出すらしい。
「__________?」
「__________。」
死ぬ、と言うのはどんな感じなのだろうか。
突然ぶつりと意識が途切れるのか、朦朧としていつの間にか死ぬのか、気が付けば死ぬのか。
どうなるのかは、俺がこのままなら分かるだろう。
身を以て知る、実に分かりやすい。
「_________!?」
「_________ッ!」
と、死について考えていると……視界が真っ黒になった。瞼が自然と閉じたらしい。
残るのは聴覚のみ。体の感覚は失せ、温度すらも分からない。
心臓の鼓動は弱々しく、微弱な音が胸で響く。
耳には水が跳ねる音、落ちる音、流れる音。
不思議な程、穏やかな気持ちだ。
死ぬ寸前は、生に対する執着も、死に対する恐怖も、案外何も感じないらしい。
とても良い勉強になった。……まぁ、その知識が生かされる事は無いのだろうが。
「_____リュー!お願い!この人を!」
「_____分かっています!」
意識が消えそうになる瞬間、女性の声が聞こえた。
焦ったような声音が遠く届き、俺の頭に弱く届いた。
その声が本当に聞こえた声なのか、幻聴なのか。
それを確認する程、俺に余裕は無かった。
「 」
「 」
遂に何も聞こえなくなった。
目も、耳も、手も、足も、全て感覚が失せた。
朧気に分かるのは、胸の内で微かに動く心臓
それが俺の中で脈動し、弱々しくも働いている。
しかし、何故だかそれが感じられなくなって。
鼓動が、聞こえなくなって。
「「 」」
止まって
いしきがなくなった
☆