DRAGON QUESTⅤ~父はいつまでも、傍にいる~ 作:トンヌラ
「……ん」
パチリと、目が覚めた。窓から差す月の光が淡く寝室を照らす。もうすっかり真夜中で、皆が眠りについている時間だ。だがリュカはそっとシーツを剥ぎ、ベッドから抜け出した。部屋を出て、音を立てないように廊下を歩き、階段を降りて宿のドアノブを握る。
「ようリュカさん。眠れないのかい」
背後から声がかけられた。振り向くと、そこにはにやりと不敵に笑う宿屋の主人がいた。ルドマンの好意でただで宿に泊めさせてもらっている。
「はい。なんだか寝付けなくて……」
「そうだよなぁ。悩むのも無理ねえよな。結婚っていやあ一生の問題だからな。散歩でもして頭を冷やせば 考えがまとまるかも知れないぜ」
「……そうですね。ちょっと外に出ようと思っていたところです」
「そうか。また眠くなったら、オレに言いなよ」
優しい宿屋の主人にありがとうございますとお礼をいうと外へと出ていった。
明かりはもうすっかり消えてると思っていたがまだちらほら点いている。人もまだ家の外に降り、興奮げになにかをしゃべっている。大方、昼間ルドマンの言ったことが広まったのだろう。
(そうだ、僕は結婚相手を決めなくちゃいけないんだ)
リュカは溜め息を吐きながら、辺りをまた見回す。とりあえずどこかいこうという気分だ。ためしにリュカは最初に目についた酒場へと足を運んだ。
「おっ、主役の登場だぜ!!」
「え?」
リュカが酒場に入ったとたん拍手喝采で迎えられた。各々が顔を赤くして興奮の声をあげているのでリュカはただただ困惑した。
「しっかし羨ましいやつだなおめぇ! あんなべっぴんさん二人を抱えてよぉ!」
「両手に花ってやつだぞこのヤロウ! 俺なんて恋人すらいねぇんだぞ!!」
「お前がつれてきたビアンカちゃんって子、うちで雇いたいくらいかわいいな!」
リュカはテーブルに座らされるとたちまち酔っぱらった男に絡まれた。リュカは愛想笑いを浮かべつつどうにか逃れられないか必死に模索した。
「まあとりあえず飲めや! 飲めば誰が好きかわかるかも知れねぇぜ!」
「いや、お酒はちょっと……」
ギャハハと笑いながらビールを口へと持っていく男を突き飛ばそうか俊巡したその時。
「悪いがうちの息子は酒に弱くてな、勘弁してもらおうか」
聞きなれた声と共に手がこちらへと伸びてくる。そして男の差し出したジョッキを取り上げた。後ろを振り返るとそこにはビールを一気に飲み干した父、パパスだった。
「父さん!? ダンカンさんの家にいたんじゃ……?」
「昼間ビアンカが家に来て言ったんだよ。ダンカンは少し具合が悪いから置いていったがな」
「おいっ! なーに俺のをのんでんだよ旦那!」
「ははっ、悪いな。だが酒ならわしが相手するぞ! なんせわしの息子がこんなめでたいことになるのだ、飲まずにいられるか!」
「あんた父ちゃんか! よっしゃ飲み明かすぞ今日は!!」
ジョッキを取り上げられた男とパパスは肩を組みながら新たに酒を入れた。きっとこのまま酔いつぶれるまで飲んで夜を過ごすつもりなんだろう。リュカは呆れつつも父に感謝して店を出た。
そのあとリュカは教会やまだ明かりの点いている家などを訪れていろんな人の言葉を聞いた。アンディの家にも訪れたが、アンディの両親はフローラを選んでも文句は言わないといってくれた。
しかしリュカはまだ決心がついていなかった。
一人でじっくり考えようと、町の外れの方まで逃れるように向かう。そして茂みの近くに座り、ふうと溜め息を吐き出す。
(僕はどっちが、好きなんだろう)
リュカは手を頭に当てて考える。
ビアンカとフローラ。
みんなはどっちも魅力的な女性だという。それは、リュカも同じだ。二人とも、すごく素敵な女性だと思う。だからこそ、決めあぐねている。
勿論、天空の盾云々というのもある。フローラを選べばそれは絶対ついてくるけど、ビアンカを選べばその限りじゃない。旅の目的を考えるなら、フローラにすべきなのだ。
それにフローラはビアンカと違っておしとやかで、女らしい女性だ。だからフローラを選ぶ方がいいに決まってる。
『お前の人生なんだから、まずはお前が幸せにならないとな』
(……)
ふとヘンリーが前に話していた言葉が浮かぶ。幸せをつかんで嬉しそうに笑う親友の顔を思い起こしながらリュカはふぅとため息を吐いた。
「僕の、幸せか……」
リュカは幸せという言葉の意味を良く分かっていなかった。幼少期から旅の毎日、そして10年にわたる奴隷生活、娯楽というものの経験不足、同世代の友達がたった一人なリュカにとって、これまでの人生は過酷極まるものゆえだからだ。楽しかった思い出なんてきっと、両手で数えられてしまうだろう。
ならその数少ない幸せな思い出とはなんだろうか。リュカは瞳を閉じる。父とサンチョと過ごした日常、ゲレゲレとの触れ合い、ヘンリーとの出会い、そしてーー
「あれ、リュカじゃない。こんなところで何してるの?」
突然誰かから声をかけられてはっと顔を上げる。辺りをキョロキョロと見回してみるが、辺りには人なんていない。気のせいなのだろうかと思いリュカは再び瞳を閉じようとする。
「こっちよリュカ! 上よ上!」
再び声が聞こえ、言われるままに上を向く。すると、金髪の女性が目の前のベランダから手を振っているのが見えた。リュカはくすっと笑いながら手をあげて答える。
「まだ起きてたのかい、ビアンカ」
「うん、なんだか眠れなくて……ねぇ、リュカ。まだ眠れないから話しない?」
「いいよ。僕もまだ眠れないからさ」
リュカはとりあえずビアンカのいる家に入った。といってもビアンカがいるのはルドマンの別荘だ。他の方の家と違って何も遠慮が要らない。
階段を上がり、ベランダへと向かう途中、ビアンカの後ろ姿が見えた。彼女は両肘をベランダの柵に起き、夜空を見上げていた。空を淡く照らす月光が彼女の金の髪に反射し、憂いを帯びた横顔がちらりと覗かせている。リュカは、何でだろうか彼女に釘付けだった。
立ち尽くすリュカが送る視線にビアンカは気づいたようで、こちらを振り向いてクスリと笑った。
「そんなところに立ってないでこっちにきたら?」
「あっ、あぁ……そうだね」
リュカはすたすたとビアンカの横に立ち、ふうと息を吐き出す。もう何度目だろうか分からない。
「……なんだか大変なことになっちゃったわね」
「そうだね……正直悩むことばかりだ。僕自身も良く分からないからね」
リュカはまるで、何も関係ない第三者のように相談するような口調でいっていた。何故だろう、ビアンカならこういう悩みを平気で言えるのだ。例えビアンカがその当事者だったとしても。
しかしリュカは知らない。その言葉が彼女をどれだけ惑わせているか。
ビアンカは瞳をキツく閉じ、唇を噛む。そして、無理に頬の筋肉をあげて、口を開いた。視線は、遥か先に見える夜の空。
「悩むことないじゃない。フローラさんと結婚した方がいいに決まってるじゃない。おしとやかだし、おんならしいし美人だし、それに天空の盾を貰えるんでしょ?」
そうだ。
さっきまではリュカもそう思っていた。天空の盾も美人の奥さんも手に入る。きっと父も周りも喜んでくれるだろう。
ビアンカの言う通りだ、迷う理由なんてーー
『ビアンカは本当は 私の実の娘じゃないんだよ』
『私はこんな身体だから、この先どうなるか分からないし……リュカがビアンカと一緒にくらしてくれたら、安心なんだがなあ』
いや……ある。もしリュカがフローラを選んだら、目の前の女性も、そしてその人の幸せを願う心優しき人も傷つけることになる。自分のためだけに、自分に良くしてくれた人を傷つけていいのか。
「ダンカンさんや、君はどうなるんだ?」
リュカはその迷いを、何時しか口にしていた。
ビアンカははっと顔をあげてリュカの横顔を見る。ビアンカは気丈にも表情を変えずに言う。
「心配しないで。今まで私達でやってこれたんだから。だからリュカはフローラさんを選ぶべきよ」
「……」
リュカは答えることができなかった。黙り込んでしまったリュカにビアンカは視線を月へと向けた。
「さっ、リュカもそろそろ寝た方がいいわ。疲れているんだろうしね」
「……そうだね。ビアンカは?」
「私はもう少し外で風に当たってるわ。まだ眠れそうにないのよ」
「……わかった。おやすみ。風邪引かないでね」
「うん、ありがとう。じゃあおやすみ……」
ビアンカはこっちを振り向かなかった。リュカは心の靄を抱きつつ、ルドマンの別荘を出て、そこから逃げるように町の外へ続く門へと向かった。
もういっそ皆には内緒で出て行ってしまおうか。はっきりいって、重すぎる。人の人生を左右しかねないことを一人で決められるはずもない。ここから逃げよう。そうすれば楽にーー
リュカは町の外へと足を踏み出した。だが、何者かに腕を掴まれた。
「えっ?」
そのままリュカの体は引き倒され、いつしかリュカの視界は星の煌めく夜空に変わっていた。と思ったら、ぬっと何者かの顔が突き出された。化粧に包まれ、アクセサリーをふんだんに着けた黒髪の女性だった。
「何逃げ出そうとしてるのよ」
「君は……?」
どキツイ声に見覚えのある顔。リュカは思い起こそうとする。
「あら、このデボラ様のことを忘れるなんてね。今すぐその間抜け面を踏んづけてやりたいくらいだわ」
「デボラ……ああ、フローラのお姉さんか」
「そうよ。ほら立ちなさいよ。この体勢じゃパンツ丸見えになっちゃうし。見たら殺すわよ?」
リュカは身の安全を考えてすくっとすぐに立ち上がった。体についた土埃を払うとデボラは呆れたように両手を上げる。
「あんたもめんどくさい問題に巻き込まれたもんね」
「……逃げ出したくもなるよ。はっきりいって、僕には選べない」
「ふーん、だったらさ……二人と結婚しなよ?」
「なっ!?」
リュカは夜中にも関わらずすっとんきょうな声をあげてしまった。慌てて口を押さえ、声音を小さくして抗議する。
「そんなの無理に決まってるだろ……第一父さんが許すはずもないよ」
「まああんたみたいな女遊びもしたこともないような人が出来るわけもないか」
ケラケラと笑うデボラにリュカはむっと若干頬を膨らませる。
「そういうデボラはどうなんだよ。何股もかけてるのか?」
「私はそういうことはしないわよ。すぐに捨てるから被るわけないし」
「そうなのか……」
どちらかというと捨てられたんじゃないかとリュカは類推するが口にはしなかった。
「ねぇ、フローラは今どうしてるの?」
「フローラならとっくに寝てるわよ。うちで起きてるのはあたしだけよ」
「そっか……一応彼女とも話したかったんだけどな……」
「とかなんとかいって寝込みを襲おうとしたとかじゃないわよね?」
「な、何いってんだよ……そんなわけないだろ」
デボラはかっかっと乾いた声で笑うとくるっと背を向けた。
「もういくのかい?」
「そうよ。私もなんか眠くなってきたしね。早くどっちか決めなさいよ」
「……ありがとう、デボラ」
「あんたみたいなのがこの私に感謝するなんて百年早いわよ。でも、受け取ってあげるわ」
じゃあねと綺麗な右手をあげて去っていくデボラをリュカは見送った。外見や言動はキツいけれど、何でだろうか、少しだけ楽になった気がした。
リュカはふうとため息を吐いて腰に両手を当てた。
「さて、僕も早く決めないとな……」
リュカはてくてくと門から離れ、宿へと戻ろうとする。部屋で考えた方が、何かといい気がしたからだ。
「おっ、リュカじゃないか。さっきぶりだな」
背後からこれまた聞きなれた声が聞こえた。リュカは安心したように微笑みながら背後を振り向いた。
「父さん。酒場にいたんじゃないの?」
「全員つぶれてしまってな。暇になったものでお前を探していたんだ」
「そうなんだ……」
リュカが酒場から出ていってからどれ程立ったかは知らないが恐らくたくさんお酒を飲んだのだろう。しかし父は至って平常であり、酔うという状態異常にはめっぽう強いようだ。リュカも同じ血を引いているはずなのにこれほどまでに弱いのはきっと母が相当弱いのだろう。
「こんなところで立ち話もなんだ。あの連中も全員寝ているだろうし酒場にいくか」
「そうだね……まあお酒は飲まないけど」
リュカとパパスは再び酒場に戻ると、たくさんの屍が転がっていた。鼾を掻き散らすもの、寝言を呟くもの、全く動かないものなど多種多様だが、リュカに言わせればどれも醜態だ。自分のこんな姿をもし見られたら次の日はきっと恥ずかしさで死んでしまうに違いない。
とりあえず屍を避けつつ席の空いているカウンターに座る。バーテンダーがいらっしゃいと穏やかに迎えるとパパスはビールを注文し、リュカは水を頼んだ。
「父さんまだ飲むの? 飲みすぎじゃないの?」
「わしはまだまだいけるぞ。んっ……ぷはぁ!」
パパスは差し出されたビールをぐっと煽りながら喉にいれていく。リュカはちびちびと水を啜りながら父の豪快な飲みっぷりを眺めていた。
「……それで、リュカは決まったのか?」
「決まってないよ。まだ迷ってる」
「……そうか」
パパスはビールのジョッキを静かに置くと、ため息を吐く。
「遠慮なんて、しなくていいんだぞ」
「え?」
パパスの口から放たれた言葉の意味を理解できず、リュカは振り向く。パパスは珍しく憂いを帯びた表情でビールを見つめる。強くてたくましい父のこんな表情を見るのは、再会の時以来だ。
「お前は気にしているんだろう? フローラ殿と結婚しなければ盾は手に入らず、母さんを救えなくなるのでは、と」
「…………」
図星だ。
気づかれるとは思っていたけれど、改めて口にされると何も言えない。それが重荷とは感じていないし、父と冒険することを選んだのは自分だ。だからそれに文句をいう筋合いはリュカにはない。
だが、父は優しい。だからこそ、こんなことを言えるのだ。
「もしだ。お前がビアンカを選んだとしてもワシはお前を責めはしないしむしろ祝福する。盾のことはワシが何とかする。忘れてるかもしれんがワシは王ゆえどうとでもなるのだ」
「…………」
でも……そうだけど……それでも……。
リュカはなぜか抵抗していた。無理していっているのではないか。パパスは自分の想いを圧し殺しているのではないか。そう思ってしまう。
だけれども。
「だからお前は、お前の幸せを選べばいい。それがワシにとっても、そして母さんにとっても幸せなのだ。ワシのことなど考えるな」
「……っ!」
パパスはそう言うと優しくリュカの頭に手をおいた。ゴツゴツした手がリュカの髪と擦れる度になんとも言えない安心感を覚えた。リュカはぐっと瞳を閉じ、父の言葉を噛み締める。リュカの抵抗は、あっさりと崩れ去ってしまった。
父さんは僕のことを想ってくれている。僕の幸せを願ってくれている。もはや疑う余地もなかった。リュカはただそれだけが嬉しくて、気がついたら父を抱き締めていた。
この言葉をいうだけでどれだけの苦悩があっただろうか。何がなんでもフローラを選んでほしいはずなのに、そんな自分を否定してまで僕の幸せを選んだ。僕が、幸せをつかむ方が嬉しいと言ってくれた。
ならば、その思いに答えなくてはならない。僕が後悔しない選択をしなければならない。それが何よりの父への感謝の気持ちになるだろうから。
僕は父を解放し、ありがとうと小さくいった。そしてリュカは酒場を去るべく席をたった。
「もういくのか、リュカ」
「うん、もう寝ようと思う」
「そうか……ワシもそろそろ眠るとしよう」
「わかった。じゃあ、おやすみ……」
リュカは酒場のドアを開け、夜風を身に浴びる。ひんやりとした感触が頬を撫でる。けれどそれがなんだか心地よくて、思い切り鼻から吸い込んだ。
リュカはちらりと振り返る。パパスは残ったビールをぐいっと飲み干し、マスターに小さく頭を下げていた。
「……ありがとう、父さん」
聞こえるか聞こえないか。きっとそのくらいの音量だったと思う。リュカはそれだけ言い残して、ドアを閉めた。
「……きちんと決めろよ、リュカ」
***
「さてリュカよ。フローラとビアンカさんのどちらと結婚したいかよく考えたかね?」
「……はい」
「そうか。ずいぶん悩んだであろうな。両方と結婚するわけにはいかんからな」
ルドマンははっはっはと笑う。が、リュカの表情は緩まない。
「では約束通り 結婚相手を選んでもらおう! フローラとビアンカさんのどちらか本当に好きな方にプロポーズするのだ」
ついに来た。選択の時だ。
リュカは息を飲み、考える。
自分の選択は間違っているのか。これでいいのか。本当に彼女でいいのか。
……いや、その前にやることがある。僕には、答えを聞いてほしい人がいるんだ。
「……ルドマンさん」
リュカはルドマンの目の前に立った。その表情は、真剣そのものだった。それが、要らぬ勘違いを生んでしまうことになった。
「なんと この私が好きと申すか!? そ、それはいかん! もう1度考えてみなさい!!」
「えっ……? いやそうじゃないです。お願いがあるんです」
「へ……? ご、ゴホン! いかんな私としたことが……それでなんだね?」
ルドマンは若干恥ずかしそうに咳き込みつつ、リュカを見つめる。きっと緊張でとんでもないことを口走ってしまったのだろう。気を取り直してリュカは口を開く。
「あの、父と……デボラをこの場に呼びたいんです。どうしても、僕の答えを聞いてほしいんです」
「そうか……わかった。では少々待ってもらえるかな。……すまないが、呼んできてくれ」
「畏まりました」
ルドマンがメイドに命じると、ふうとため息を吐いた。そそして両隣に立つ二人は、足をブルブルと震わせていた。彼女たちにしてみれば、リュカの一言で運命が変わる。言わばリュカに運命を、人生を預けている。その選択の瞬間を遅らされることは生き地獄に晒されることと同義だろう。
だが、リュカはそれでも聞いてほしかった。昨日の夜相談に乗ってくれて、自分の道を決める大きな手助けとなった二人に。
十分ほど経ち、ノック音が静かに響く。ルドマンが応じるとメイドが戻ってきた。その後ろには、パパスとデボラがいた。
「父さん……デボラ」
パパスとデボラはドアの側の壁に寄りかかり、リュカに微笑む。
「聞かせてもらうぞ。お前が出した答えを」
「全く、こんな朝早くに呼び出すんじゃないわよ……まあいいけどね」
「うん。答えを出すよ」
リュカは震える声で答えた。
瞳を閉じ、自分の選択を信じる。そのせいで誰かが不幸になるかもしれない。
でもーー決めないよりはずっといい。幸せになりたい人と、一緒に行く。
リュカはぐっと拳を握りしめ、そして緩めた。
決めたのだ、昨日。その答えに、迷いはない。
足をあげ、前に進む。ギチギチに敷き詰められたイバラを斬り払うようにリュカは進む。
分かたれた二つの道。どちらに足を向けるのか。
「……っ!」
ーー僕は、こっちを選ぶことにするよ、父さん。
僕は一度父さんを見た。父さんに、見てほしかったから。
……そうか。
そう目で言ってくれた気がしたから。僕は最後の、1メートルを進む。
手を伸ばし、美しく整った手を掴む。そして、彼女の揺れる瞳を見つめる。
僕は、誰が好きなのか、ずっと考えていた。だけれども、この瞳を見て、僕は確信したんだ。
僕は、この
だから、僕は名前を呼んだんだ。
「ビアンカ。僕と、結婚してくれ」
はい、僕はビアンカ派です!フローラ派のかたはごめんなさいm(_ _)m