ハッカドールがSCPに挑むようです 作:3号の三号
深い森の中。博士と“パーソナルエンタメAI”ハッカドール達の四人は、砂利と雑草の入り組んだ、道ならざる道を歩いていた。
「何かじめじめする……うわっヒルが飛んできた」
「AIがヒルに血を吸われるなよ」
このように会話しているのは、さっきまで半分眠りかけていた3号と、耳の大きい短髪の男に“とりついた”ブライト博士。2号は疲れたのか無言、1号はというと……。
「いつまでこうしてればいいですか?」
「173を見つけるまでだ」
1号は前を歩く2号の背中に自分の背中をぴったりと密着させ、ジョ█ョでやってたアレみたいに、後ろ歩きでゆっくりと歩いていた。
「それっていつ見つかるんですか?」
「もうそろそろ」
「それもう5回目なんですけどっ」
日は西の空に傾き、オレンジの光が森の木々から漏れ出てくる。紫がかった雲が、ゆっくりと夜の色に染まっていく。
かれこれもう4時間が過ぎた。昼間からうるさく鳴いている蝉は、未だ命をかけてラブソングを歌っている。夕日も肌を焼く。しかし、夜は確実に、刻一刻と近づいている。
「まずいな。日没までに事を済ませないと、かなり大変なことになる」
「そろそろ疲れてきたんだけど」
ハッカドールはAIである。しかし、彼女らは当然のように痛みを感じ、また疲れもする。人間に痛みが必要なように、彼女らも痛みがなければ体の異常に気付かない。体に植物が入り込んで勝手に成長とかされては困るのだ。
「日没までにやらないと、どうなるんですか?」
「ヤツの時間が来てしまう」
「えぇ」
――SCP173、それは生きる石像。見ている間は何もしないが、一瞬でも目を閉じれば恐ろしい速さで人を殺す、高速のハンター。ブライト博士によれば、トラックで搬送中誤って脱走し、この山の中に潜んでいるのだという。当然、夜になれば闇にまぎれ、探すのは困難になるだろう。もしかしたら、ふもとに降りて人を殺すかも知れない。
「もう山にはいないんじゃないかしら」2号が言う。
「いや、絶対ここにいる」
その自信はどこから来るのか。2号がそう思った時、目の前に何か見えた。
「――あ、あれじゃない?」3号が指差した。
「本当だ」ブライト博士も見た。
「えっどれどれ」1号も振り返ってそれを見る。
――なんだか不気味な、名状しがたいモノが、そこにはあった。
「大きいわね」
「固い」
「太い」
「なめこ居そう」
「……運びましょう」
四人は、“非常口”のポーズで静止するそれを倒し、先頭に立ってリードをする2号を除いて、各々が手に持つフォームを確認し終わったところで、せえの、という掛け声とともに持ち上げた。
「かなり軽いね」
「まあ、三人で持ってるわけだし」博士も持ったのは初めてのようで、不思議な表情をしている。
「ともあれ、無事に運び出せるみたいでよかったわ。首をへし折られるだなんてしゃれにもならないし……あら、何か落ちてるわね、何かしら、わっ」
地面に何か落ちているのを発見した2号はなぜかそれを手放し、支えられて横になってる彫像の上に“それ”が飛んできた。支えている三人は思わずそこに、交互に目をやり……
***
「おい、起きろ、大丈夫か?」
「う、ん、誰ですか……?」
1号が目を覚ますと、そこには2号や3号、先ほどの博士の姿はなく、代わりに長い茶髪の男がいた。場所も、先ほどのところとは違う。あたりは完全に夜の闇に包まれている。
「私はブライト博士だ。先代が殺された。お前は大丈夫みたいだな」
「ええっ!?」
「私はブライトと同じではあるが、テレパシーはできないからな。……一体何があった?」
「“あ...ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 『奴を運んでいたと思ったら いつのまにか意識がなかった』な…何を言っているのかわからねーと思うが おれも何をされたのかわからなかった…”って感じですっ!」
「…………………………………………何が何だか分からない…………」
ブライト博士は1号の手をとり起き上がらせると、1号の背中に自分の背中を合わせ、ふうと一息ついた。
「なぜあいつがトラックから脱走したのかは分からないが、恐らく別のSCPが絡んでいる。それを突き止めなくてはな」
思わぬ状況に困惑する1号。恐怖の捕獲作戦は、幕を開けたばかり……。
次回は…
「今回の収容違反はあまりに甚大だな」
「左様」
「それで、この子たちはどうします?」
「待ってください!」
「\e」
アス比4:3の世界
今回登場したSCP
SCP-173 - The Sculpture - The Original (彫刻 - オリジナル)
© Lt Masipag 2008 Moto42 2007
http://www.scp-wiki.net/scp-173
訳者不明:http://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-173