ハッカドールがSCPに挑むようです   作:3号の三号

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この一連のストーリーは一応繋がっているということにはなっていますが、そんなに意識はしていません。ドラ■もんみたいな物だと考えてください。


焼きたてジャパソ

「アヤメさんがここの研究員になってたとは驚きました」

アヤメと共に研究室の倉庫をまさぐりながら、1号が話しかけた。

「なぜかこの研究室だけ条件よかったし駅近だったからね」

「あ、日本だったんだここ」

ブライト博士は突然の出張、2号と3号はコンビニに買い出しに行っている。アヤメはいまだ怒りが収まっていないらしく、返事はするもののどこか冷たい。

「ふぅ、これでひと段落ついたわ」

「そろそろお昼にしましょう」

「こんなところに食パンが置いてあるわね。博士の差し入れかしら」

「せっかくだから焼いて食べましょうよ。ちょうどいいところにジャムと“私”もあることだし……」

「え?」

「え?」

「あなた、手から熱とか出してパンを焼けたりとかするの?」

「いえ、焼けませんけど」

「いやでも今“私”って……」

「やだなぁ私はさっきこの“私”のことを、あれ?」

1号が指差したのは机の上においてあるトースターである。瞬間、二人は何か異様なものを、このトースターから感じ取った。

「トースター」

ぽつり、と1号が呟く。

「“私”はトースター」

アヤメも言ってみた。なぜかこのトースターについて「これ」だとか「こいつ」だとか言う気が起こらない。親近感というか、自分に似た何かのように感じた。

「あい あむ あ とーすたー」

「アイラマトーストゥォー」

「I am a Toaster」

「“私”、何かしら」

「さあ」

「SCP、よね」

「ですね」

その時、研究室のドアが開いた。

「2号がなんか寄り道してたから置いてきた……ふーあっつ。外あっつ中涼しっ」

半ば反射的とも言える速さで、アヤメはコンビニから帰ってきた3号に向かって言い放っていた。

「3号ェ! お前の前の俺を取って俺を!」

「え、何?」

指差しているのと言っていることが食い違っているため、3号は混乱している。

「???」

「……! …………!」なるべくハンドシグナルで伝えようとするのだが、一定以上の意味を持たせたところでトースターを指す時思わず胸に手を当ててしまうのだった。

「え、“僕”を持ってけばいいの?」

うんうんと、二人は強く頷いた。どうやら言わんとしていることは通じたらしい。

「どこに?」

「多分緊急用の隔離部屋が近くにあったと思うからそこまで持ってって」

「えー、めんどくさいなぁ」

ポリポリ頭をかきながら、3号は目の前のトースターを持ち上げようとした。その時だった。

「うぉ重っ」

ガシャーンという、機材を高所から落としたような音が、研究所に響いた。

「あぁ……」

地に落ちた“私”は、もはやバラバラとなり、残骸は四方八方に飛散していた。すると、開いていたドアから、

「ふー、遅くなっちゃった。ごめんねー近くにアニ■イトあったからつい寄り道しちゃって、うぉ涼しっ部屋だけ涼しい……あれ?」

2号が入ってきた。

 

 ***

 

 2時間が経過した。日の沈んだ研究所の一室で、一人の研究者と三体のAIが、精密部品の残骸を絶望的な表情で見つめている。

――SCP財団は不可思議な現象を引き起こすオブジェクトを“収容”する施設であり、故に、危険であろうと基本的には破壊しないのが鉄則である。なぜ収容しておくのかと言えば、将来科学の手に負えない危険なオブジェクトが世界を滅亡に追い込もうとした時、比較的安全なオブジェクトを研究しておけば解決の糸口が見つかるかもしれないからで、当然のことながら、こうした事故を起こしてしまった事がバレれば単位は相当降格であろう。

 あれから策は色々と講じてみたのだ。一般の業者にSCPの修理を頼むわけにもいかず、博士の帰る前に自分たちで直そうと努力した。結果的に出来上がったものと言えば、外装のみが復元された“元”トースターと、どういうわけかその周囲で砂と化している“元”部品のみ。

「ねえ、部品砂にしたのって誰だっけ」

「うん、何か気づいたらこうなってたね」

「これどうしようか」

「とりあえず、砂、片付けようか」

「……一応パン入れてみよ? 何か起こるかもしれないし」

「まぁ、SCPだしね」

「一応、一応ね?」

皆心身ともに疲れ切っていた。1号は虚ろな目で袋に入っている食パンを2切れ取り出し、四角い穴に入れてみた。5分たったが、トースターはうんともすんとも言わない。ひっくりかえすと、当然ながら生のパンが二枚出てきた。再び場は陰鬱なムードに包まれた。

「1号」アヤメがボソリと言った。

「はい」1号が表情を変えずにボソリと答えた。

「たべて」

「はい」

ムシャムシャ、モグモグ。

「おいしい?」

「おいしくない」

「あらあら1号ちゃん、工場の女の人が一年間食べ続けてできた味かもしれないのよ」2号がひきつった顔で言った。

「昼食の時間になったら毎日パンを食べて舌を慣らすんですね、分かります」3号が上ずった声で言った。

 

「…………」

 

 数秒の沈黙ののち、その場の全員がため息をついた。

「で、どうする? “このトースター”」

「そうね、“私”だった時にはもう戻らないし」

「なぜか壊れる前の“私”について言う時だけ効果が発動するんだよね」

「そんなことより月刊コミック■ューンの話しようぜ」

「あったかいカレーパンでも食べてぇなァ、あと、男」

他の皆があきらめ始め、話が関係の無い方向へシフトしていく中、3号がスマホで何かを発見したようだった。

「ん」

「どうしたの、3号ちゃん」

「ネット探してたら内部構造だけこれと同じタイプのトースターが見つかった」

「それだ!」アヤメが閃いたようだった。

「何かいい案でも思いついたんですか?」

「いいこと思いついた! それ取ってきて外装だけ引っぺがして入れ替えるのよ!」

「それは……」

「ナイスアイディア!」

「それでそのトースターはどこに売ってるの?」

「■■県■■町の店」

「それ凄い遠くない?」

「私たちアプリケーションのネットワークを介して転移できるからそこの周囲でハッカ開いてる人探せばいいわ」

「よし、じゃあ行くわよ! さっそく作戦開始!」

「アイアイサー!」

かくして、作戦『パンでpiece』の発動により、駅近の好条件ジョブを懸けた冒険が始まった。3号は座標の特定、1号は転移してトースターを購入、そして2号はアヤメと共に工作を行うのだった。

 

 ***

 

 30分後。

「できたー!」

「やった! 遂にやった!」

「一時は死ぬかと思ったけど、これで安心ですねっ!」

トースターは完全に復元していた。もはや元と見分けはつかない。元々芸術面では技術の高かったアヤメの成せる技だった。1号達が安堵のため息を漏らした時、部屋のドアが開き、ブライト博士が入ってきた。

「博士!」

「うい~す、忘れ物~。あんな危険なものを置き忘れるだなんて私としたことが、ん? 皆、なんだその嬉しそうな顔」

秘密は守られた。その満足感だけが彼女達にはあった。

「まあいいや。お、ちゃんと物置の整理も出来てるじゃないか。お前たちちゃんと留守番しててくれたみたいだな。よし、今日は危険な任務を負わせてしまったこともある。褒美にお前たちの給料にボーナスをつけてやろう。これからもがんばってくれよな。この調子で私の機嫌をとれば、早めに昇格させてやらんでもないぞ。それから1号、2号、3号、お前たちには特に期待してるからな。先輩を見習い、頑張ってくれたまえ」

「ありがとうございます!」思わぬ発言に、AI達は深々と頭を下げる。ボーナス、昇格。これは引き続いて仕事を頑張ろうという気持ちも起こるもの。

「あの、博士」

「なんだ、1号」

「これからもがんばるので、どうか見ててくださいっ!」

「うむ。その意気だ。ふふふ、私も助手時代を思い出すな……おっと行けない、本題を忘れてた」

ブライト博士はまだ半分昔の思い出に浸っているのか、その顔にはかすかに、にやりと笑みが残っていた。

「アヤメェ! お前の前のトースター取ってトースター!」




今回登場したSCP

SCP-426 - I am a Toaster (私はトースター) © Flah 2010
 http://www.scp-wiki.net/scp-426
訳者不明:http://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-426
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