ハッカドールがSCPに挑むようです 作:3号の三号
SCPとして扱うほど重要とまではいかないけど、一応科学的にありえないことを引き起こす物体のこと。
多分、「アノマロカリス」が「奇妙なエビ」って呼ばれてるから、「アノマロ」=「奇妙な」って連想して付けたんじゃないかな。
「ん」
「どうしたの、3号ちゃん」
昼休み、暇を持て余した3号が何気なくブライト博士のデスクを見ると、そこには小さな封筒が置いてあった。
「何だろう、これ」
3号が手に持つと同時、戸が勢いよく開いて博士が部屋に入ってきた。
「あ、ブライト博……」
3号が声をかけるのを気にも留めず、博士は封筒を取り上げた。
「見たのか」博士は少し怒っているような顔だった。
「いいえ」
「そうか、ならいい」
「それ、何ですか」
「見てはいけないものだ」
博士はそう言うと、それを白衣のポケットに入れて、再び部屋を出ようとした。
「博士、今日も出張ですか?」1号が尋ねた。
「ああ。“蒐集院”がまた暴れ出してな。最近妙に奴らの動きが激しい。俺も戦闘に駆り出されることになった」
「ええっそれって大丈夫なんですか?」
「まあ俺は実質コレを届けるだけだしな。大丈夫だろ。……おっと時間時間。出発せねば。ああそうだ、コレのことは絶対誰にも言わないように」
博士はそう言うと、急いで部屋の外へ出て行った。
「結局アレ、何だったんだろう」
「きっとものすごく危険なものに違いないわ」
「危険なもの……」
「危険なもの……」
各々が想像を巡らせていると、再び研究所の戸が開き、今度はアヤメ研究員が入ってきた。
「ふー、提出した書類に不備があったの思い出した。……あれ、ない」
「どうしたの?」3号が後ろから声をかけた。
「ここに置いといた封筒って、もう博士が持ってっちゃった?」
「ああ、さっき、急いで持って行っちゃったわ」2号が言った。
「遅かったか……」
「そんなに大事なものなの?」
「うん。Anomalousアイテムなんだけど」
「アノマロス、ってそんな危険なものなんですか?」
「え、危険ではないけど」
「でも博士は『見てはいけない』って言ってましたけど」
「博士が? でもアレ別にあんた達に見せても倫理関係以外何の問題もないはず……」
「なんか“しゅうしゅういん”と戦うために持ってくとか言ってたケド」
「え、あの“女性が触ると瞬時に背景が変わるグラビア写真”を?」
「……話がかみ合わないわね」
「もしかして」
アヤメ研究員が机を見た。山積みになった資料の上に、封筒が一つ、置かれている。
「…………」
四人がそれを見つめた。まさか、という顔つき。皆それぞれの想像に任せ、封筒に思いを巡らせている。
「これ、アヤメさんの?」
「違うわ、だって私のはシール付いてるもの」
「…………」四人はしばらく沈黙した。
「何だろう」3号が口を開いた。
「多分凄い危険なヤツだよね」
「取り敢えず、博士に連絡しよう」
prrrrrrr……
「だめだ、繋がらない」
「他に連絡できる場所ってない?」
「でも博士『誰にも言うな』って言ってなかったっけ」
「まあ、大丈夫でしょう」
prrrrrrr……
「ハイ、こちら財団事務局ですが」
「あもしもし、███研究所です。ブライト博士と連絡を取りたいのですが」
「少々お待ちください……只今込み入ってましてそこから直接の会話はできない状態で……」
「それじゃあ封筒が間違ってるって伝えてください」
「かしこまりました。少々お待ちを……」
♪~
数分後。
「伝わりましたか?」
「それが、取ってないと」
「ええそんな、たしかに取って行きましたよ」
「何かの間違いじゃないですか? ちなみにこれが会話ログ
私>こんにちはブライト博士
Bright> 何か用かな?
私> 封筒取りましたか?
Bright> 取ってない
私> そうですかありがとう963すごいですね
Bright>それほどでもない
やはり無実だった
しかも963持ってるのに謙虚にそれほどでもないと言った」
プツン
「どうしましょう」
「…………」
ふたたび沈黙。
「これ、何のためにここに置かれたんでしょう」1号が沈黙を破った。
「博士は財団と敵対する団体と戦うために持ち出したんだよね」アヤメが尋ねる。
「分かりません。もしかしたら別の目的かもしれないし」
その時。
ピンポーン
「チャイムが鳴ったわ。……ちょっと私、トイレに行ってくるから、よろしく」
「じゃあ私が行ってきましょう……ハーイ」1号が向かった。
***
「どうも、研究員の島村という者ですが、今研究所には誰がいますか?」
「ええと、私と2号ちゃんと3号ちゃんとアヤメさんだけです」
「あっそうですか。ちょっと今日資料の確認をしたくて参りました。ちょっと入りますよ」
「えっちょっと」
男はそう言いながら、無理矢理1号を押しのけて中に入った。
(案外ここの警備もザルだな。“妖怪大隊”の占術師によれば“アレの写真”はここの筈だが……)
説明しよう! この男は財団と敵対する要注意団体、“蒐集院”過激派の数ある派閥のひとつに所属し、命令を受けて“アレの写真”を奪いに来た、要するに敵の手先である!
「ちょっと待ってください!」
(感づかれたか)
「私に任せてください! 成分分析!」
「!?」
緑の光、再び。みるみるうちに島村(仮名)の本性が露わにされていく。
「! あなたは」
「おのれ、貴様、さては最近導入されたとかいうハッカドールだな! 計画がばれたからには……」
「スマ█ラ初代派ですね!」
「は?」
「分かりますよー初代スマ█ラ。ホ、タ、テヤー!なDXもいいけれど、あのポリゴン感とかたまりませんよね~」
「お、おう」(なんだ、まだバレてないのか)
「1号ちゃーん捗ってるー?」
「あ、2号ちゃん。ちょっとこの人用事があるみたいで……たしか、ええとココにある、何でしたっけ」
「封筒だ。茶色い封筒」
「ああ、でしたらここに」
1号は島村(仮名)を案内した。
「危険なものと聞いてますが、一体何が入ってるんです?」
(やはりな。こんな危険なものの正体をこいつ等が知っている筈はない。適当なことを言って逃れよう)「Anomalousアイテムですよ。写真です。危険なので、私が預かろうかと思って」
「あっそれじゃあ違います。博士、写真を持ってっちゃったから」
「えぇ!?」(チッ先を越されたか)
「何かまずいことでもあったんですか?」
「いや、なんでも。ちなみに、博士は今どこに」
「それが分からないんです。どこかへ行っちゃって。電話もしたんですけど、取ってないって言うんです」
「いやそれは多分別人だ。ブライト博士といっても色々いるから」
「そう言えばそうでした」
(それにおそらく、これは機密情報。仮にそれが取った博士だとしても、彼にとって怪しげな封筒を取ったことは事務局員には知られたくない情報だろうからな)
「一応聞くが、この封筒は?」
「見てはいけない物だそうです」
「見てはいけない物……?」(“写真”が向こうにあるということは、コレはそうではない何かの文書か何か……ここに残していくあたり重要度は低そうだが……)
「よし、これは私が預かろ……」
「待って」
封筒を手にし、立ち去ろうとする島村(仮名)の手を、3号が掴んだ。
「何かな?」
「何で、あんたに必要なの、それが」
「あ、ああ、実はな、これは私が用意したもので、中の書類に不備があったから取りに来たんだ」
「何かあんたの物っていう証拠は?」
「これが音声記ロク
Bright>こんにちは島村研究員
俺> 何か用かな?
Bright> そんな封筒で大丈夫ですか?
俺> 問題ない
Bright> そうですかありがとう封筒すごいですね
俺>それほどでもない
やはり無実だった
しかも封筒持ってるのに謙虚にそれほどでもないと言った」
「声が違うんだけど」
「まあブライトって沢山いるし」
「そう言えばそうだった……ていうかあんたニコ動とか見るの?」
「いや、ゼンゼン……じゃ、そういうことで」
「もう帰るんですか? よければ一緒にスマブラやってきませんか?」
「いやもう時間ないんで」
「そんなこと言わないで、泊ってかない?」
「いや大丈夫なんで」
***
なんやかんやあって、島村(仮名)は封筒を奪取し、本部に帰還した。
「取り逃すとはお前らしくないやないか。資料を取ってきたのは評価するけれども」
「すいません」
島村(仮名)は今回の仕事に満足していない。しかし。
(あいつら)
彼の心には何か、温かいものがあった。
(あいつらとスマ█ラ、やってみたかったかも)
「俺、ちょっと寝てきます。疲れましたし」
「おう」
島村(仮名)は部屋を後にした。
「ふう、近頃の若いモンは根性が足りんな。サービス残業も碌にできんし。まったく。……取り敢えずこの書類は重役の全員に配るか。あ、アイツはやめとこ。もうじき解雇するし。あんなクズいらんわ」
上司はそう言うと、彼は封筒の中身をスキャンし出した。
「なんだこれ……雪山の……黒点か? 黄色い円で囲ってあるけど。……ま、ええわ。何かの暗号かもしれへんし、一応送信や」
上司はそう言うと、PCの「送信」アイコンを不満そうな顔でクリックした。
今回登場したSCP
SCP-096 - The "Shy Guy" ("シャイガイ") © Dr Dan 2010
http://www.scp-wiki.net/scp-096
訳者不明:http://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-096
Anomalousアイテム
アイテム353-JP グラビアアイドル██ ███の水着写真集(絶版) ©C-Dives 2016
http://ja.scp-wiki.net/log-of-anomalous-items-jp