小説家としてのケンイチの興味本位な質問に、未だに興奮状態が収まりきっていない美由希は、嬉々としてその質問に答えた。
美由希「私、ファンタジー小説が好き何ですけど…」
この時、ケンイチは『何でファンタジー小説が好きなのに僕の小説を?』と思いながらも美由希の話を聞き続けた。
ちなみに、ケンイチが書いている小説は、昔の弟子時代の『実体験』を元に、少し名称や人名をぼかした『伝記的な小説』であり、ファンタジー小説ではない。
美由希「…その中でも兼一さんの書いた『現実感のある現代ファンタジー小説』が大好きで〈こふっ?!げほっ!ごほっ!〉その…って、いきなり
ケンイチもまさか、ジャンルの時点で盛大に間違われているとは、夢にも思わなかったので、息を吸う際に動揺し過ぎて、少し
ケンイチ「けほっ。い、いや、大丈夫です。少し、
なぜか若干、敬語になってしまったケンイチだが、今度は何かを覚悟したような顔で、美由希の言葉を聞いた。
少し、逃げ腰ではあるが。
美由希「それじゃあ、え~と。あ、兼一さんの書いた話の中でも『長老』って人が『海を走って国と国を移動したり』蹴りの衝撃波で『プールの水を真っ二つにする』て言う話は、正に現代ファンタジーて言う感じで凄く面白くて、ほかにも私逹の使う剣術も
この時ケンイチは、美由希の話の節々にカルチャーショックのような物を受けていた。
そしてその衝撃で、ある忘れていた事を思い出した。
それは、『武術家にも一般人はいる』と言う何とも当たり前な事であった。
まあ、ケンイチは今まで、その当たり前から、かけ離れた達人のいる世界が日常になっていたので、仕方ない事とも言えるだろう。
ケンイチ「うん。その、ありがとう、なのかな?」
さすがのケンイチも、今の美由希に非常識な現実を、突き付けるのは
美由希「?いえ、私も色々話して楽しかったです。あ、そうだ!折角ですし、家に上がってお茶でもどうですか?なのはを送ってくれたお礼もまだですし。」
その美由希の言葉で、少し気落ちしていたケンイチは、何とか何時もの調子に戻り、返事をした。
ケンイチ「うん、実は少し、僕の方も君達に話したいことがあったから、お邪魔させてもらおうかな?」
そして、家に二人が入ろうとした時、今まで蚊帳の外にいた(空気だったとも言う)恭也が話し掛けてきた。
恭也「ちょっと待て、兼一といったか?お前の素性は、さっきの美由希との会話で分かったが、小説家のお前が、俺達にいったい何の話があると言うんだ?流石に、それが分からなければ、家に上げる訳には行かん。」
恭也の、もっともな言い分に、『確かに、そうかも。』とケンイチは思い、なのはに話した事の一部を恭也達にも話す事にした。
ケンイチ「実は、なのはちゃんから、君達のお父さんの状態を聞いて、僕にも手助け出来るかも知れないと思って、その許可を貰う為になのはちゃんに家まで連れて来て貰ったんだ。」
すると、恭也は少し呆れた顔で、腕を組ながらケンイチに語りかけた。
恭也「ふ~。気持ちは有り難いが、お前に何が出来るって言うんだ?まさか、小説で人を治せる訳でも無いだろうに。」
恭也のその言葉に、ケンイチはこう答えた。
ケンイチ「確かに、小説では人を治せない。
けれど、僕は以前、ある人に弟子入りしていて、その人は完全に人体の構造を把握して外科の知識と技術を一流と言っても良いほど
そして、僕はその人から免許皆伝を受けているし、他にも東洋の薬学や人体のツボとかの知識も、別な人に弟子入りして
恭也は最初、『何を言っているんだ、コイツは?』と思ったが、そのケンイチのまったく曇りの無い瞳を見て、それが真実だと悟り、その考えが驚愕に変わると同時に、『コイツの本当の正体は何物なのか?』という疑問が湧き上がってきた。
恭也「もし、それが本当だとして、お前はいったい何物なんだ?まさか、先ほどみたいに小説家では、流石に通用しないぞ。」
それに対してケンイチは、観念したかのように頭を軽く掻き、笑いながら答えた。
ケンイチ「ははっ、確かにそうだね。
けど、この名乗り、普通の時は少し恥ずかしいから、余りやりたくないんだよね。」
そしてケンイチは佇まいを直しこう言い放った。
ケンイチ「僕は、梁山泊の豪傑が一人!『[一人多国籍軍]白浜 兼一』!!」
そして、ケンイチの名乗りを聞いた恭也達は、口を
恭也&美由希「「梁山泊?」」
ケンイチ「え?」
この時、ケンイチはこう思った。
『あれ、もしかして僕、やらかした?』と。
コレは、ケンイチの『忘れ去りたい黒歴史No.1』が、誕生した日である。
読んで下さった方々、ありがとうございました。
今回は『ケ、ケンイチがスベった!』(アルプスの少女ハイジ風)と言う話でした。
次回は、家に入ります。
追記
最後の方の美由希が『梁山泊?』と言っているのは『何で小説に出ていた梁山泊が出て来るの?』と言う意味です。