進藤ヒカルに転生してしまった男の物語   作:ケーキの実

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遅くなって申し訳ございません
多分読んでる人が皆無だと思いますが一応投稿します

『』←これはヒカルと佐為の脳内会話です
分かりづらかったらすいません


第01局目

あれから図書館に通い詰めたヒカルは佐為に現代の碁を学ばせた。

資料を広げて佐為に言われるがまま捲った。

これも先行投資だと割り切った。

 

『ねぇヒカル、ルールは学びました。早く打ちましょうよ』

肩を揺すり出す佐為に驚愕する。

『は?ちょっと待てよ。何故触れるんだ?お前は幽霊だろ?』

『そんなの知りませんよ。それより早く、ヒカルー』

しれっとしてる佐為に思わず笑みが溢れる。

うちには碁盤ないし、どうしようか。

『じいちゃんがそう言えば碁打ちだって言ってたな』

『ヒカルのおじいさんですか?ならさっさと行きますよ!』

図書館の帰りにじいちゃんの家に向かうことになった。

 

「おーヒカル。一人で来たんか。どうした?身体はもういいんか?」

心配そうに尋ねるじいちゃん。

「んにゃ。もう平気!」

「そうか。そんで今日は何の用だ?」

「俺さ、碁をはじめたんだわ。もしじいちゃんに勝ったら碁盤買ってくれ」

じいちゃんの方に向かってドヤ顔で答えた。

 

「ご、碁じゃと?ちょっと待っとれ」

そう言って部屋から飛び出したじいちゃん。

暫くすると碁盤を嬉しそうに運んでいた。

「勝ったら碁盤だったな。よかろう!この進藤平八の力を見ておれ」

 

『佐為、さっさと倒してくれよ。母さんに電話してないからあんま遅くなれないからな』

『分かってますヒカル』

 

「どうした?ほらいくつでも石置いていいぞ」

石?あぁ、ハンデか。佐為なら余裕勝ちできるけど、ここは置かせてもらうか。

取り敢えず10個置いてやった。すると横を見ると不満そうな佐為がいた。

『あのな、佐為。お前ならハンデなくても勝てるのは知ってる。だけど、いきなり孫が碁を始めて互先で勝利したらどうよ?不自然に見えるだろ』

『確かにそうですね』

未だに不満そうな佐為を無視してじいちゃんの方を向いて座った。

 

「それじゃあ行くぞヒカル」

 

『星ですか。私の時代ではありませんでした。研究された結果なんでしょうね』

『分かったから早よ打てよ』

『右下スミ小目』

『佐為さ、分かりづらいから手に持ってる扇子で指してくれない?』

『分かりました』

 

 

「ヒカル遅いぞ!」

じいちゃんから叱責されちまったよ。

それから圧倒的な棋力で佐為はじいちゃんに勝利した。

 

「……っ。ヒカルお前」

囲碁初心者の俺には盤面はまだ打てる気配がするがどうやらじいちゃんが投了して終わった。

「ん?何?」

「強いな。確かにハンデありとはいえ的確な打ち筋だったぞ」

「へへっ。そんじゃ、約束通り碁盤よろしくね」

「分かっている」

 

それから暫くじいちゃんと話して帰宅した。

 

 

 

 

 

「ヒカル、将来が楽しみだ」

ヒカルの去って行く背中を見ながら笑いがこみ上げた。

孫バカと言われようが、ヒカルは本物だ。

 

「よーし、先行投資として良い碁盤でも送ってやるか」

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

自宅に着いたヒカルは佐為の方を向いた。

『どうだった?現世に蘇ってはじめての碁は?』

『はい!楽しかったです』

『そうか。まぁ頑張ってくれや』

『いいえ。ヒカルも頑張るんです。ヒカルには教えることがあります!』

『は?ちょっと待てよ。俺に何をさせる気だよ』

『碁石の持ち方と打ち方、そして一番重要な置く場所を覚える事』

『確かに持ち方と打ち方は初心者の手つきのままだと恥ずかしいから直さないかないかもしれないが、碁の置く場所は扇子で指してもらえばいいよ』

『いけません!私と棋力が同じくした人の相手は集中力が入ります。そんな事は出来ません』

『分かったよ。覚えやー良いんだろ』

 

 

それから5年の時が経った。進藤ヒカルは10歳になった。

じいちゃんに勝利した次の週に本カヤの碁盤が送られた事に俺も佐為も驚愕した。

佐為が言うには本物らしいから余計にな。原作だと足付きのそれなりの安い碁盤だったのに。

勝利した事で原作改変しちまったかな?まぁ、どうでもいいか。

あれから毎日佐為と打っている。俺は碁のルールと打ち方を覚える程度しか碁をやらない。

だからある程度打てるようになった俺は佐為を連れて碁会所荒らしをしまくった。

佐為に打たせて全戦全勝。それを見ていた客は俺に何度も対局をせがんだ。

回った全ての碁会所では俺は無料で対局出来るようになった。

これで佐為が現代の碁を学んでくれればいいし、俺もそれなりの打ち方を出来るようになればいい。

まさに一石二鳥の作戦だ。

 

 

『佐為さ、大会に出てみない?』

『大会ですか?』

『小学生の部だけどそろそろ実力を公にするのも悪くないしな』

『ヒカルは打ちたくならないのですか?』

『俺は碁を本気でやってないし、お前に全て任すよ』

本気でそう思っているヒカルであった。

楽して金を稼げればいいという考えなんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

大会当日。あいにくの雨模様。

失敗したかな。雨の中、大会とか糞めんどくさい。

『ヒーカル!ヒーカル!楽しみですね!』

若干一名、はしゃいでたりするが無視する事にした。

 

会場の中に入ると既にたくさんの子供とその保護者の親がたくさんいた。

この大会はランダムで選ばれた人同士で対戦し、勝ち抜けしていくトーナメント式である。

どうせ優勝するし、どうでもいいか。

指定された座席に座り、相手が来るのを待った。

暫くしてから一人の子供が対面の椅子に座った。

 

「時間です。始めてください」

運営の人の言葉で試合がはじまった。

 

『すごい!すごい!子供がたくさんですよ!私の時代では考えられなかった光景。囲碁は脈々と受け継がれていたんですね』

感慨深げに辺りを見渡している佐為。

『ほらもう試合はじまったから早く打て』

『はい!』

 

 

結果は優勝した。他を圧倒し、速攻終わらせた。

大人気ないと思われるかもしれないがこれが勝負の世界だと諦めてもらう。

表彰式で賞状を貰って終わった。囲碁のプロも来ていて注目されたらしいがめんどくさそうなのでその場から退散した。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

「こ、これは!?」

運営のプロ枠として参加していた緒方精次は目の前の棋譜を見て絶句した。

これは本当に子供の打ち方だど言えるのか?

ありえない。あり得るはずがない。私でも見逃すこの手をノータイムで打った。

子供は早熟だと聞くがこれはおかしい。

先生の所のアキラくんでもここまでではない。

一人だけプロ級の棋士が参加していたと言われてもおかしくない光景だ。

面白い、進藤ヒカル。覚えたぞ。

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

『はぁー疲れたな。碁を打つだけでこんだけ疲れるんだな。考えて打ってない俺ですらこれだ。凄いな棋士達は』

『どうですか?ヒカルも囲碁の棋士を目指しますか?』

『たが、断る!俺の碁はお前にあげると言ったぞ。そんな事考えていないで現代の碁をもっと学ぶんだな』

 

そういや塔矢アキラと対戦したのはこの時期だったけ?

そろそろ原作の奴らと関わっていかないとな。

佐為は強いけど、原作だと様々な打ち手と打って成長したし、その中には塔矢アキラも入っている。

明日は碁会所に行く事に決めた。

 

次の日の朝に佐為には出掛けるからついて来いと言った。

目的地に着いた。佐為は辺りをキョロキョロしている。

『ここですか?碁会所って事は今日も打てるんですか?』

『そういう事さ。ほら行くぞ』

 

 

「あら、いらっしゃい。」

声をかけて来た受付のお姉さん。確か、名前は市河だったかな?

「名前書いてね。ここははじめてだよね?」

「ここははじめてだけど碁会所は散々巡ったよ」

「棋力を教えてくれる?」

「お?あそこに子供いるし彼と打たせてよ」

 

指を刺されてキョトンとしたオカッパの男の子。

「え?僕のこと?」

「俺と打たねーか?一応同年代の大会は優勝経験あるぞ」

「えー君、子供囲碁大会出たのね。それでもアキラくんはそこらの子供と思っちゃいけないよ」

「市河さん。僕が打つよ」

「分かったわアキラ君。あ、子供は500円必要よ」

「ほーら」

ヒカルは事前に知っていたので500円玉を市河さんに放った。

 

 

 

「奥で打とうか。僕は塔矢アキラ」

 

「俺は進藤ヒカル」

 

 

これが後に最強のライバルと言われる進藤ヒカルと塔矢アキラの初対局であった。

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

「……ありません」

塔矢アキラは同年代ではじめての黒星を飾った。

「ありがとうな。これ俺の連絡先、また暇な時に対局しような」

ヒカルは連絡先を記したメモ用紙を塔矢のところに置いた。

だが、放心状態の塔矢アキラには声が届いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?負けたの?」

「アキラ君が負けたのかい」

「プロに近いと言われてるアキラ君が?」

お客の騒然とした声が辺りを響かせた。

今尚鳴り止まない驚愕の嵐。

 

「ちょっと待ってよ。彼は一応子供囲碁大会で優勝した経験の持ち主だよ。アキラ君でも不調の時は負けちゃうでしょ」

 

「こ、子供囲碁大会だと!?」

アキラは父から将来の子供の芽を潰すかもしれないからと大会には参加させてもらえなかった。

だけど、彼みたいな強い棋士が同年代にいるなら。

ガタッと音を立てて立ち上がった。

ヒラヒラと先ほどヒカルがメモった紙が床に落ちる。

 

「し、進藤ヒカルの連絡先」

その紙には進藤の住所と電話番号が載っていた。

暫く向けていた視線を紙からあげる。

まだだ。今すぐに連絡しても既に遅い時間帯。

優等生なアキラは連絡を後日する事に決めた。

 

 

それから数日の時間が経った。

あれから何度も何度も対局した碁を並べた。

この一手も、この一手もまるで指導碁にしか見えない。

これが彼の本当の実力なら僕より遥か高みにいる。

同い年で既にこれだけの差が開いている。

気になる。すごく気になる。ポケットに手を突っ込んだ。

彼に渡された連絡先。

 

「市河さん。少し電話を貸してもらえませんか?」

「いいわよ」

 

受け取った電話を片手に進藤の家に電話をした。

数コール後に進藤ヒカルが電話に出た。

当たり障りのない会話した後にアキラはヒカルに今から前対局した碁会所に来て欲しいと言った。

ヒカルはだるそうに返事をした。

 

 

 

1時間経っても現れない。

アキラは居ても立っても居られなくなり店の外に出た。

すると、のんびり歩いてくる進藤ヒカルの姿が見えた。

 

 

「進藤ヒカル」

思いつめた表情でアキラはヒカルの顔を見た。

「塔矢か。それで何か用?呼び出したからには理由があるんだろ」

「君はプロになるのか?」

そう問いかけられたヒカルはニヤニヤと笑って返答した。

「ん?プロ?まさか塔矢はプロを目指してるのか?」

「なるよ」

「囲碁ってどれくらい儲かるの?」

これが一番聞きたかったヒカル。前世の記憶は曖昧であまりそこら辺のやり取りは覚えていなかった。

だから改めて訪ねた。ネットで調べる事が出来るが家にはPCがなかった。

「タイトル戦の賞金なら名人戦で2800万円、棋聖戦なら3300万円、全8冠タイトルトータルで1億2000万円くらいだよ」

 

うっひょおおおお!!!前世は苦労しても底辺だった俺は心の中ではしゃぎまくった。

チート幽霊の力で無双すれば金持ちになれる。

 

 

『佐為、契約を覚えているか?』

『はい。お互いの人生を相手に捧げるんですよね』

『そういう事。お前は俺の身体で囲碁をやり、俺はお前の力でお金を稼ぐ。等価交換な』

『分かっています』

 

 

 

「塔矢アキラ、俺はプロになるよ」

「……え?」

「そしてタイトルを全て手に入れるのも悪くないな」

「き、君はタイトルの重みが分かっているのか?その物言いは全ての棋士に対しての侮辱になる」

「あ、そう」

やけに熱くなっているアキラに苦笑してしまう。だって俺は本気で囲碁なんてやってない。

全て欲のためだけの碁打ちになる。

「何がおかしい。君が簡単に言ってのけたその言葉は僕は忘れない」

「あのさ、語ってくれてすまないが俺はお前より強い!そしてお前は俺より弱い」

「……くっ」

「タイトルに近いのが俺であり、遠いのはお前。どうやら指導碁を打たれたの気付いたらしいな。もし俺に意見したいなら勝ってからにしろ」

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢

そう言って彼ーー進藤ヒカルは去って行った。

分かっている。彼が僕より強いのは。だけど、許せなかった。

父の傍らでプロの苦悩に悩む棋士達。それを見て来たから分かる。

彼は本気で囲碁に取り組んでいない。欲を得るためだけにやっている愚物であると。

だからこそ、勝ちたい。彼に勝ちたい。僕は強くなりたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢

 

『ヒカル〜。あそこまで言わなくても』

佐為の声音が不機嫌になってる。

『あれくらい言わないとあいつも本気にならない』

そう、塔矢は逆境に強い棋士。俺みたいな本気で碁を指してないのは気付いている。

だけど、それでいい。そんな俺に勝てないから今以上に本気になる。

それを佐為にぶつけたらどうなるか?佐為が強くなる。

佐為の成長を早める為に強い棋士を作らなければいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃないと佐為は消えてしまうんだから。

 




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