ガーディーのランクアップから早2ヶ月も立った。
その間、ガーディーが彼女への結婚の約束をしたなど、ちょっとしたことはあったが、そこまで変わったことはなかった。
ダンジョンでは、今は到達階層を12階層に伸ばし、そこで日銭を稼いでいる。日銭といっても、現代日本で比べると年収1000万プレイヤーだから相当な金持ちになる。そのほとんどは装備の整備代やポーション代などへと帰るのだが。
それと、ガーディーのランクアップ後の戦闘はすごいとしか言いようがなかったよ。ほんま、マジで。
敏捷がガルと同じぐらい速くなり、攻撃力に至ってはシルバーバックを一刀両断にした程だ。
ランクの差ってとてつもない。置いて行かれた感が半端ないよ。まぁ、冒険者歴は向こうが2年くらい先輩だけど。
あと、装備にエンチャントが出来るようになって、さらに装備の質が上がった。指輪をするだけでステイタスが極小だけど上がるなどの効果があり、話を聞くと、とても上がりにくい発展アビリティがもうHになったそうだ。これはとても凄いらしい。
そしておれのステイタスは魔力と器用以外がSとなった。ガルは俊敏の限界値を超えた。それはガルがスキルを発現したからだ。そのスキルは
[
俊敏のアビリティ強化
俊敏の成長速度強化
俊敏の限界値突破
というものだ。
なので、俊敏に限り限界値が来ることがないというチート仕様になった。まぁ、この補正がなくても限界突破しそうな勢いで上がってだからな。1日で10以上上がるのは既に人を超えてたからな。
そして、1番すごかったのはアリエルだ。アリエルのステイタスは見ることができないが、多分敏捷以外はガルを超えたことが分かった。
なぜなら、シルバーバックを体当たりで倒したからだ。それも真正面からである。
今ならおれも出来るが、あの小柄な猫がそれをするのは驚いた。ガルとガーディーは反応もしなかったからな。面白かったぞ。
そんなわけで、みんなかなり強くなりました、はい。
で、今日はこの12階層でガルの鍛治用の素材を探している。この階層の奥の方には鉱脈があり、そこで質のいいブルーメタルが採掘できるのだ。そして、その付近にはモンスターが他のとこよりも多く湧くスポットもあって、ここ最近はここに行っている。
今日もモンスターを倒しながら、休憩するときにはガーディーが採掘をするっていうサイクルを続けている。
バリ!
お? 遠くの方で結構大きなモンスターの湧く音が出たな。
「よし、おれが偵察に行って来るよ。少ししたらお前らも来てね。行くぞアリエル」
「ミャオ」
そうして音が出たところに向かった。
ガーディー達と離れて少しすると、ドン!ドン! と何か大きなものが歩いている音が聞こえて来た。何か嫌な予感がするな。
すると、音の鳴る方から他の冒険者達がやって来て、
「おい! お前! 速く逃げろ! インファントドラゴンが出たぞ!」
そう言い残し走り去っていった。
・・・・・・え? マジですか?
これはやばいよやばいよ。
どうする? 仲間のところに戻るか? いや、でも、これはチャンスかもな。この冒険を達成出来たら、確実にランクアップはできるだろう。
でも相手はあの階層主と呼ばれるほどの強さを持つモンスターだ。勝てる可能性は正直レベル2になったガーディーがいても薄い。
でも、やっぱ体が疼いてしまう。あの敵を倒せと言っているかのように。
・・・・・・覚悟を決めますか。ここでおれは冒険をするぞ。
・・・・・・今思えば、元の世界にいたときにはこんな事は空想の中でしかなかった。ダンまちの二次創作も書いたし、他のも書いた。
自分でオリジナルの作品を書いては、途中で書くのをやめたりしたっけ。
勉強はそこそこ出来たけど、高校に入ってからはろくに家で勉強をしなかったせいで、成績は下がる一方だったし、この世界に来て精神面では結構変わったよな。
よし、決めたぞ。この冒険が成功したら、仲間におれの秘密を話そう。この秘密抱えるの結構辛いんだよな。
てか、この秘密ルニセは多分気がついてると思うが。
そうして、剣を手に取り、戦闘の準備を始めた。
「アリエル、ごめんけど今日はいつも以上に無茶をする。それでもしかしたら死ぬかもしれない。それでもいいか?」
「ニャウ、ニャア!」
聞くまでもなかったかな。こいつはおれの化身みたいな部分もあるし。
グギャアアアアアアアアア!
おっと、お出ましのようだ。では、この世界でしか出来ないおれの憧れた冒険をするとしますか。
さっき、逃げて行った冒険者からインファントドラゴンが出たことを聞いた。
おれとガーディーはユウタを迎えに行ってすぐに逃げようと考えていたが、ユウタの行った方向はあのインファントドラゴンが出現した場所だったのだ。
「おい! ガル、すぐにユウタのとこに行くよ! やられてなければいいんだけど、ユウタなら大丈夫だよね」
「うん、ユウタだったらもう倒しているかもよ」
「それはありえるかも」
・・・・・・生きててね、ユウタ。
ギャアアアアアア!
ふう、今はなんとか攻撃は避けられている。炎のブレス攻撃は厄介だが、尻尾と首の攻撃は楽に回避できている。
だけど、ダメージが今ひとつって感じだな。一応切り傷はつけられるが、まだ鱗の域を出ていない。どれだけ硬いんだよ。まぁ、攻撃しようとしたら、すぐに向こうのカウンターが来るから、力の入った攻撃ができないからなんだけど。
どうする? 何かいい策は・・・・・・いや、冒険をするって言ったのはおれだな。だったら何も考えず、シンプルにこいつを倒すことに集中だな。
だったらやる事は一つ、ある首をチョンパする事だな。ガーディー達にはごめんが、やり場を与えれないかもしれんな。
やっと、ユウタのところまで着いた。
やっぱり、ユウタはインファントドラゴンと戦っていた。
でも、その戦闘はユウタの劣勢一方ではなく、どちらかといえばユウタに武が上がるようだ。
ユウタの顔を見ると、どこか覚悟を決めたような顔をしてた。それはあの時のガーディーのようだ。
ガーディーを見てみると、傍観をする姿勢を見せていて、ユウタの冒険を見守るようだ。
僕は早くユウタの元に行ってあげたいけど、今、ユウタは自分の冒険をしている。だったら邪魔はしてはいけないよね。
ユウタはインファントドラゴンの全方位からくる攻撃を余裕を持って避けながら、最後には攻撃も忘れないと完璧な立ち回りをしている。
いけ! そこだよ、そこ。惜しい、あともう少しで、あ! 危ない!
ユウタが尻尾の攻撃をかわし損ね、まともに受けてしまった。数メートル転がったユウタはすぐに立ち上がったようであまりダメージがないように見える。
ふぅー、ヒヤヒヤするな。
そして、ユウタは詠唱を始め、それは相手の攻撃を避けながらこなしている。
すごいよユウタ、平行詠唱ができるなんて、上級冒険者でも難しいのに。
ユウタは、数メートルの球を複数出現させ、それをインファントドラゴンの体中にぶつけた。
ギャアアアアアア!
ドラゴンがユウタへの怒涛の攻撃をやめた。
チャンスだユウタ!
そう思った時、ユウタはインファントドラゴンの首を両断していた。
・・・・・・すす、すっ凄い! すごいよユウタ。 やっぱりユウタは僕の尊敬する人だ。僕もいつかはあんな風に、あんな風に・・・・・・
「よっしゃあーーーー!」
俺は、俺は、あの下層で唯一の階層主を一人で倒した。やったぞ。俺はここで冒険をしたんだ。
「ユウタ、頑張ったね」
「うん、あのインファントドラゴンを一人で倒すなんて無茶しすぎだよ」
ああ、本当に無茶したよ。体が棒のようだ。
「へへ、でも、これで俺も上級冒険者の仲間入りだ。そして、レベル2への最短記録を更新だ!」
「へ? あっそっか。ユウタはまだ冒険者を始めて一年経っていないん・・・・・・じゃあ、あのアイズ・ヴァレンシュタインの記録を打ち破ったってことか。それってすごい快挙だね」
「うん、でも、ちょっと予感はしてたけどね。僕の敏捷ほどじゃないにしても、異常だと言えるぐらいにはステイタスの成長スピードが速かったからね」
「はは、まぁまだランクアップしたかはわかんないから、もうハードルは上げないようにしよ。じゃあかえりますか」
そうして、レベル1の最後のダンジョンを後にした。
ホームに戻り、俺はルニセにステイタスの更新してもらった。
「ユウタ・・・・・・ランクアップしたよ。おめでとう!」
よっしゃ。無事ランクアップを果たせたぞ。
「ありがとうルニセ。これもこの世界の初日にルニセに会えたおかげだ・・・・・・あー!」
やばい、もう秘密を言ってしまった。俺のランクアップの祝い会の時ぐらいにサプライズとしてカミングアウトしようと思ったのに。
「・・・・・・やっと話してくれたね。嬉しいよ、僕は。でも、なんで今っていうのは聞かなくてもわかるかな。一人前の冒険者になったらそのけじめとしてうちあけようと思ってたんだよね?」
おう、何もかもお見通しってわけか。やっぱりルニセには敵わないな。
「やっぱり気づいてたか。 うん、もうこの際だから先にルニセには話すけど、俺はこの世界の人間じゃない、他の世界で生きていた人なんだ。」
「そうなんだね。でも、まさか異世界人だとはね。そこまでは分からなかったなー。てか、なんでこの世界に来たの?」
「理由はないよ。知らない間にこの世界に来てた。ただそれだけだよ」
そうして、俺の過去やこの世界が小説の世界だったというようなことを話した。
「そうなんだ。だったらさ、家族とかは寂しくないの?」
最初に聞く質問がそれですか。でも、それで俺がいかにルニセに愛されているかってのがわかるよな。
「寂しくないといえば嘘にはなるが、でも、今はルニセたちがいるから全然寂しくないよ。元いた世界には帰りたいけど、それは家族や友人たちに会いたいだけだから、あまり強く願ってもないかな。帰っても勉強したり、将来はきつくて不安のある仕事をした、充実はするけど、少し物足りなかっただろうから」
「じゃあ、今は幸せなんだね。だったら良かったよ。でも、多分この先元の世界には帰らないと思う。まず、異世界人が来たっていう話を聞いたことがないからね」
「だよな。でも、さっき言ったように生活はこっちの方が充実してるんだよな。こっちの方がゲームみたいで楽しいから。まぁ、命をかけてるから怖くないといえば嘘にはなるけど、でも、それがハラハラしてとても楽しいんだ。この感覚だけは絶対に元の世界では味わえなかったはずだ。まぁ、憧れのこの世界に来た時点でこの世界に永住することは決めてたけど」
「そうなんだ。この話はガルたちにもするの?」
「うん、そのつもり。でも、小説の話だけはしないでおこうと思う」
「それがいいよね。蛇足の情報は混乱しか生まないから。でも、ちょっと早いかもしれないけど、生涯を共にする伴侶には絶対に秘密にしてはいけないよ。」
「うん、分かってる。じゃあ豊穣の女主人の所に行こうよ。ガルたちはもう準備してるみたいだよ」
「そうだね。では早く出発しようか」
祝いの会はルニセ、ガル、ガーディーの三人だけしか出席しなかった。まぁ、ランクアップの件を知っているのはこの三人だけだし当然ちゃ当然だけどね。
俺は盛大に祝われ、あの秘密を暴露するとガルとガーディーは俺を心配してくれた。これは本当に嬉しかったな。
ルニセが最初に話題を出したとはいえ、もしかしたら信じてもらえなかったと思うし、信じてもらったとしても、話が大きすぎて、話についていけないか話についていけても異世界はどうっていう感心しか来ないと思ってたからな。
俺のランクアップの祝い会はつつがなく進んだ。
そして、帰って寝た後にある夢を見た。
勇太、久しぶりだね。
え? 父さん母さん? どうしてここにいるの。
いや、なんかね、神様がここに連れて言ってくれたんだよ。
そうなのよ。もう二度と会えない息子に会えるようにって取り計らってくれたのよ。
そうなの、てか俺って向こうの世界でどういう扱いになってるの?
それは・・・・・・
あ、俺って死んだんだね。
そうしてある記憶が蘇って来た。
あっそうか。俺はバスにはねられて。すごいテンプレだな。
そうね。時間がないから本題に行くけど、今までありがとう勇太。私の息子として生まれて来てくれて。
わしもだ勇太。死んでしまったのは悲しいが、別の世界で幸せに生きているって聞いて本当に嬉しかったよ。わしの息子に生まれてくれてありがとう。
父さん、母さん。俺はこの世界で楽しく暮らしているよ。うーん、孫の顔を見せられないのがちょっとした心残りかな。まだ、恋人も見つかってないけど。
でも、しあわせだから心配はしなくていいよ。そして、育ててくれてありがとう。もう、もう、会えないかもしれない。だけど、元気で過ごすからね。じゃあ元気でね。
うんさよならだ、勇太。
さよなら、さよなら勇太
「あれ、ユウタ。そんなに目を晴らしてどうしたんだい?何か悪いことでも」
「大丈夫、昨日いい夢を見たんだ。そのおかげで自分の蟠りが無くなったよ」
「それは良かったね」
うん、最後に会えて良かったよ父さん、母さん
冒険者ユウタ・ジユウガオカ
所要期間 約11ヶ月
モンスター撃破スコア 約3万体
レベル2到達記録 レコードホルダー
最終ステイタス
力 S924
耐久 S962
器用 A825
敏捷 S951
魔力 S913
《魔法》
【魔力の造形】
【回復する傷】
【】
《スキル》
【共に歩む者】
【魔力の循環】
ここからさらに冒険は加速していきます。そう願ってます。