魔法とスキルの発現から5ヶ月、俺たちは大型モンスターが登場する10階層に向かっていた。
「うわー、想像してたよりも霧濃いな」
「うん、だからモンスターの不意打ちは気をつけろってルミが言ってたよね」
ルミとは俺とガルののアドバイザーであり、俺の冒険者登録をしてくれた人だ。
「ニャ」
「お? 早速モンスターのおもてなしが来たぜ」
前方から迷宮の武器庫ーーーランドファームを持った2体のオークがやって来た。
「よし、盛大に招かれてやろうぜ!」
俺とガーディーはすぐさまオークを一体ずつ相手取った。
オークは棍棒で攻撃してきたが、攻撃が遅すぎるので簡単に回避した。が、この攻撃は凄まじく、棍棒が通ったところから俺のところにまで風が届き、地面に激突した途端、ガン!っと大きな音を上げた。
・・・・・・ここまで力があるなら、ガーディーでも完璧に防御するのは難しいな。動きは遅いので簡単に避けられるけど。
そんなことを考えながらオークの首めがけて剣を走らせた。
その一撃でオークは倒れ、ガーディーが相手をしていた方は牽制によって注意が散漫になったところをガルがうまく仕留めたようだ。
ちなみにアリエルは休ましている。まだこの階層にはステイタスが間に合ってないからだ。まあ、俺たちもステイタス的には間に合ってないけどね。
「うん、オーク2体ぐらいなら余裕だね。これならこのまま11階層もいけるね」
「いや、今日はこのままこの階層にいよう。11階層だとインファントドラゴンにも遭遇する可能性もあるし、まだ、10階層で新しく出るモンスターを全部戦ってないし」
「僕もそれがいいと思うよ。下手に奥に進むと危険があるからね」
「やっぱりか。まぁ、ここでも経験値は結構稼げるしいいかな」
バリバリバリバリバリ
「え? ちょっと待ってこれってモンスターパレードじゃ」
「よし、戦略的撤退だ。みんなー、本気で走れー!」
そうして10階層を後にした。
「ハアハア」
息を切らしながら、俺たちは9階層に戻ってきた。
「やっぱりまだ10階層は早かったんだよ。今までよりもモンスターのスパンは早くなるし、9階層まででまずはステイタスだけはどれか一つはBになるまで修行しておこう。そして、一週間に一回は成果も兼ねて10階層に挑戦しよう」
「俺はその意見に賛成だ。せめて、アリエルが1人でウォーシャドウを倒せるぐらいにはなって欲しいし。ガーディーは?」
「僕もそれでいいかな。さすがにあの量は無理だし」
「じゃあ決定ってことで」
そうして、現れたフラッグシューターやウォーシャドウなどを相手にした。そして、月日はさらに3ヶ月過ぎる。
「よし、今日から11階層に進出だ。ルミの許可ももらったし、インファントドラゴンに会いさえしなければ死ぬことはないはずだ」
「うん、この3ヶ月でアリエルなんかウォーシャドウを2体相手にしても無傷でいられるようになったからね。偉いぞ、アリエル」
「ニァオ」
「よし、じゃあ出発だ。」
11階層は10階層と構造だけは一緒だ。ついでに言うと12階層もだが。迷路ではない円形のだだっ広い広間みたいな感じである。しかし、出てからモンスターの格が段違いに違う。
主要なモンスターではハード・アーマード、シルバーバックなどが挙げられる。
基本、防御が硬いやつが多いが、その中で唯一攻撃に特化しているものが、狼型モンスター、アサルトファングだ。1番強いと言われるのはハードアーマードだが、2人以上のパーティーを組んでいるとそこまで苦戦はしないが、こいつは違う。基本、3体以上の群れを成し、パワーはシルバーバックに劣るが、スピードが勝るため、一体でもきつい相手だ。
では、なぜこのモンスターの解説をしたといえば、
ウォーーン!
目の前に5体ものアサルトファングの群れと相対してしまったからだ。
「おい、どうする? スピードで勝るのはガルだけだが」
「まずは俺の魔法で牽制し、そこからガルの追撃って感じかな」
「よし、その方向で」
「了解」
「ニァン」
「我の魔力、様々な形に変わり、敵を攻撃せよ。クリエイトアロー」
五つの針状の矢をアサルトファングらにぶつけた。
直線上に走る矢はそのまま狼らに刺さるまではいかないもののよろけるまでのダメージは与えられたようだ。
よっし、魔力が上がった効果が出ているな。
先に敵の元についたガルが素早い剣さばきで左右のアサルトファングの息の根を止めた。
後に追いついたガーディーとアリエルが残った三体のうち2体を相手どり、うち一体をガーディーが早々に倒し、空きの一体は俺の魔法で串刺しにした。
アリエルはアサルトファングの素早い爪と牙の攻撃を軌道を読みながら危なげな避けている。正面、左右からくる必殺の攻撃がアリエルを防戦一方にしているが、日頃の努力のおかげで、少しずつダメージを与えている。
ここで、なぜ俺たちはアリエルの援護に回らないかと言うと、アリエルの腕試しをしているからだ。
ステータスで唯一この階層での推奨熟練度が劣っているアリエルがどれだけこの階層で通用するか試している。が、この検証は杞憂に終わりそうだ。
浅いが、少なくない傷がアサルトファングの動きを悪くし、防戦一方だったアリエルが押し始め、初めて通った深い傷がアサルトファングを怯ませた。
その隙を、アリエルはしっかり決め、首を深く引っ掻かれ血が吹き出たアサルトファングはそのまま息を引き取った。
よし、一対一なら何とか戦えるようになったな。うーんこの成長は我が子を見ているようだな。子供じゃないし、俺まだ成人してないけど。
ん? この世界だと成人しているんだっけ。そこらへんは分からんな。酒場とか言ってないし、どうなんだろ。
「よし、この2ヶ月で危なげなく11階層のモンスターも倒せるようになったな」
「うん、時間はかかったけどもうここまで来たら後はランクアップを待つだけだね。ていうか、僕、アビリティの力と耐久はSいったから早く偉業達成したいな」
「それは分かるな。俺もそろそろAにいくのもあるから偉業達成どうするのか考えないとな」
「僕は敏捷がSいったからね。他のがオールCだから速いだけしか取り得ないけど」
いや、お前の場合マジでそれだけで十分だから。俺もだいぶ成長速度チートじみてるけど、お前の敏捷の成長速度はおかしい。マジでおかしい。
「ニァ、シャー」
「お、敵か?」
そう思い、後ろを振り向くと、ハード・アーマード3体とシルバーバック一体がいた? あれ?シルバーバックってあんなに大きかったって? あの大きさは・・・・・・
「おい! あのシルバーバック強化種だぞ。ヤバイ、あの大きさは対処できんぞ。如何する?」
そうして判断をガーディーに仰ごうとすると、
「・・・・・・」
とても神妙な表情を持って、覚悟を決めたような、そんな顔をして口を開いた。
「ねえ、あのシルバーバック僕一人で狩っていい?さっき話した通りなんだけど、マジ、ランクアップしたいんだよね。鍛治の発展アビリティ欲しいし、何よりも1年以上後輩の君たちに先を越されたくないんでね」
「・・・・・・そうか。だったらハード・アーマードは俺たちが相手しておく。だから生きて倒してこいよ」
「うん、絶対にこの偉業を成し遂げてやる」
「ガーディー頑張って!」
「ニァン」
じゃあ仲間の偉業達成のために一肌脱ぎますか。幸い、場所は大きな闘技場なので最高だ。俺たちとガーディーで分けることができるからな。
「我の魔力、様々な形な変わり、敵を攻撃せよ、クリエイトアロー」
それをハード・アーマードらに当て気を引き、その間にガーディーとシルバーバック、俺たちとハードアーマードとに分けることに成功した。
「おい!来いこの猿やろう、カスの相手は俺だ」
おう、気の引き方が凄いですね。
そのまま俺たちはハード・アーマードを相手にした。これはアルマジロなので、転がり攻撃を受け止めることができれば後は楽勝だ。丸まった隙間に剣を刺せば事足りる。
魔力の造形を最大スピードで当て、スピードが遅くなったところを脆い腹に当てた。と思ったら硬い甲羅に当たってしまった。
ザシュ
・・・・・・ん? なんか上層最硬の防御を切った気がするんだが。
攻撃したハード・アーマードを見てみると、この甲羅が綺麗に真っ二つになった物が見えた。
え? この剣凄くない? 俺の力が上がったお陰もあるんだろうけど、それでも刃こぼれしないのはちょっとおかしい気が。
最初に11階層きた時に知れて良かったな。 そうじゃなかったらめんどい方法取ってたわ。
そうして、残りの二体を見てみると、同じように目を丸くして、三つに分かれたハード・アーマードを見ているガルと、柔らかいお腹にかぶりつくアリエルが見えた。
よし、こっちは終わったぞ。では見学タイムに移りますか。臨戦体制は維持するよ。
シルバーバックは体の所々から血が出て、ガーディーがダメージを与えていることが分かる。だが、ガーディーの顔や鎧にはかすり傷が見えた。
これはマズイな。ちょっとガーディーが押されてる。盾は邪魔なのか地面に置いてある。これはシルバーバックの攻撃が盾で受け止めることができないと判断したからだろう。その証拠に所々地面が凹んでいる部分がある。
シルバーバックの大ぶりの攻撃は軌道は分かりやすいものの強化種だからなのかスピードが速すぎるため、ガーディーはかすりながらギリギリのところで回避し、その度に反撃をしている。
そんな攻防に飽きたのか、シルバーバックの攻撃が単調になった。だが、そのせいでキレが増し、逆に避けづらい攻撃となった。
10回、20回と避け続けていったが、体勢を崩し、もろにシルバーバックの攻撃を受けてしまった。
ヤバイヤバイヤバイ!
ガーディーが立ち上がる前にシルバーバックがガーディーを掴み、握りつぶそうとしていた。
「うっ、ゔあーー」
如何する? ここは助けるべきか。いや助けるべきだろう!
そう思い、走り出そうとした瞬間、
ガーディーが剣を振るい、シルバーバックの指を断ち切った。
シャアアアアアアアアア
シルバーバックが残った片方の手を離し、絶叫した。
そして、その絶叫の中、ガーディーはその腕を断ち、首を絶った。
・・・・・・
「・・・よっしゃー! 勝ったぞ、ユウタ、ガル、アリエル」
「おおー! やったなガーディー。もしかしたらこれで、」
「いや、分からない。でも、僕は初めてこのダンジョンで冒険をした。それだけは言える」
「ガーディーカッコいいよ。僕はランクアップしたと思うな」
「ニャオン」
「そうだな。みんなありがとう。今日は主神の所に行くよ」
そしてその日の夜、一人のレベル2が自分の夢のため、その壁を乗り越えた。