ゼシカのルーラで、レイフェリオを除いた全員がサザンビークへと向かった。既に見知った顔ということもあり、街中にはスムーズに入ることが出来た。
「それで、城に向かうわけ?」
「あぁ。クラビウス王には会わないといけないだろうな」
「何でがすか? アニキはともかくとしてアッシらは」
「いいからついてこいよ。行けばわかる」
ククールはそのまま城へと足を向けた。よくわからないままではあるだろうが、ヤンガス、ゼシカ、ゲルダも後ろを付いてくる。そのまま城の前へ向かうと、騎士たちから呼び止められる。
「レイフェリオ殿下の指示でここに来た。クラビウス王との謁見をしたい」
「王太子殿下の……そういえばその身なりは以前殿下と一緒に」
「あぁ。後でレイフェリオ殿下も来る。俺たちは先にクラビウス王への説明を頼まれた」
「承知しました。どうぞ、お入りください」
レイフェリオの名を出し、城の中へと入ることが出来た。既に何度も来たことのある城。案内されずとも謁見の間までの道はわかっている。
「ククール、アニキの名前を出していいのかよ」
「あいつがそうしてほしいって言ってたから問題ないさ」
謁見の間を警備する騎士たちが扉を開けてくれた。ククールはそのまま謁見の間に足を踏み入れる。そこには大臣とクラビウス王が険しい表情で立ち話をしているところだった。ククールたちの存在に気づくと、目を見開いて驚き、足早にこちらへとやってくる。
「お前たち、無事だったのか⁉」
「なんとかな」
「……そうか。お前たちが無事ならばレイもようやくひと心地付けることだろうな。よく戻ってきてくれた」
「そう言われるとむずがゆいな」
「本当のことだ。法皇が崩御し、お前たちも囚われたと聞いた時、レイは冷静さを失い、この城を飛び出して今にも向かいそうだった。それだけお前たちのことを心配していたのだ」
レイフェリオならば、それが無駄だということもわかっていただろう。それでも飛び出そうとしていた。実際には、飛び出す前に止められたらしい。物理的に。そうまでしないと止められなかった。否、簡単に止められたことの方が異常だろう。あのレイフェリオがそこまで取り乱したという何よりも証拠だ。
「そこまで思われていたなら仲間冥利に尽きるぜ。そんなあいつだからこそ、俺たちも諦めずに生きて居られたんだ」
「そうね。あの時も、レイフェリオだけは信じられたもの」
「……お前たちは我々の知らないレイを知っている。おそらくお前たちと共にいる時のレイは一番自然体なのだろうな。叔父として、心から感謝している。お前たちがいたからこそ、レイも成長してくれた」
「お互い様ってやつだ」
「積もる話もあるが、まずは休息を取った方がいいだろう。その恰好では、脱出してきたままなのだろう?」
服は汚れているが、空腹などもう忘れるくらいだ。ただひたすら疲れていることだけは間違いない。
「侍女たちを呼ぼう。お前たちの部屋と湯あみ、消化の良い食事を用意しておく」
「感謝する」
「この程度当然だ。お前たちは、この国にとっても恩人に等しいのだからな。無事で本当に良かったと心から思っておるよ」
レイフェリオの扱いで衝突したこともあるが、それでもクラビウスという王は信に値する人間。少なくともククールはそう判断していた。あのレイフェリオの叔父であり、レイフェリオを育てた国の国王なのだから。
「今日のところはお言葉に甘えさえてもらうさ」
「うむ。後程、煉獄島について話を聞かせてくれ」
「わかった」
いつの間にか大臣が侍女たちを呼んできたらしい。ククールたちは彼女らに案内される形で、まずは汚れを洗い流す。衣服も洗濯してくれるというので、すべて預けた。久方ぶりに綺麗な場所、綺麗な空気を吸い、安堵できる空間に己がいることに、心から感謝した。
「……腹は減ってるのに、あれだけしか食えねぇなんてあり得ねぇでがす」
「そりゃそうだろ。大して食べ物があったわけじゃねぇ、水だって気にしながらだったしな。こうして、何も気にせず飲んだり食べたりできるのは当たり前じゃないってことさ」
部屋はヤンガスとククール、ゼシカとゲルダで同室だった。クラビウス王との謁見では、主にククールとゼシカが対応することにしていた。下手にヤンガスとゲルダに話をさせると、色々と面倒なことになるからだ。
「まずはレイフェリオが戻ってくるまで、ここで待機だ」
「アニキが戻ってくるまで⁉」
「万全の体調で挑む、ってあいつが言ってただろ? 今のお前にそれができんのかよ?」
「……そりゃ……まぁ……」
「そういうことだ。相手はラプソーン。賢者たちが封印という選択肢しか取れなかった相手だ。普段の力を出せない状態で負けるなんて無様だろうが」
マルチェロとの戦闘だって、ぎりぎりだった。以前ならばもっと動けたはずだ。それが歯がゆくて仕方ない。早く回復をさせなければならない。
「レイフェリオのやつに、足手まといなんて言われたくないからな」
「……あぁ」