きました!ラスダンです!
EDまであと少し……
聖地ゴルドの上空。動いているのか座標は多少ずれていたが、黒い霧の中を掻い潜り中へと侵入する。降り立ったのは城のようにも見える建造物。周囲は黒い霧に包まれており、そこかしこに重苦しい闇の力が漂っているようだ。
『レイ、ここ』
「……暗黒神ラプソーンの気配、か」
城から空を見上げても、青い空が見えることはない。闇に包まれたと錯覚するような場所だ。あの時、ドルマゲスを追いかけて向かった遺跡と似た雰囲気がある。
「それでもいくしかないだろ?」
「えぇ、当然よ」
「合点でがす」
「この期に及んで怖気づいちまったわけじゃないだろうね?」
ククール、ゼシカ、ヤンガス、そしてゲルダ。全員を見回してからレイフェリオは首を縦に振り、改めて城を見上げた。すぐそばには魔物たちの気配もある。レイフェリオは手に力を込めて拳を作り、目を閉じた。
「……」
「兄貴?」
意識を集中させて法力を練り上げると、握っていた拳を開き手のひらを上に向けて解放した。すると青い光がレイフェリオたちを包み込む。重苦しい空気が若干和らぐのを感じた。
「レイフェリオ、これは?」
「大したことはできないが、多少は闇の力に対する負担を和らげてくれるはずだ。ドルマゲスの二の舞は避けたいからな」
「……そういうこと。確かに、この先は戦いが待っているもの。なるべく体力は温存しておきたいわね」
「流石兄貴でげす」
すべて法皇が残してくれた力だ。ここまで見通していたとは考えにくいが、今は使えるものは使わせてもらう。一番優先することはラプソーンの討伐なのだから。
「いくぞ」
「「あぁ/えぇ/おう」」
城内へと入るレイフェリオたち。するとすぐに目の前には上階から巨体が大きな音と共に舞い降りてきた。巻きあがる砂埃に思わず腕で目を庇う。
「……戦闘開始、だな」
ククールの声にレイフェリオは腰に差していた二振りの剣のうち、いつもの愛剣を鞘から抜く。前にいるのは、大きな体躯、それに追随するかのような金棒を持ったトロル族だった。それが二体。似たような敵とは何度も相対してきた。それに、今のレイフェリオは一人ではない。竜神族の里に向かうまでの道を一人で進んだことに比べれば、大した相手ではない。
「ゼシカ、ククールは後方で頼む」
「任せろ」
この五人での戦闘は久しぶりだ。既にゼシカは集中し始めている。背中にゼシカとククールがいる安心感。このような状況であってもそれがとても頼もしく、どこか高揚感を抱かせてくれた。
「兄貴」
「あぁ……」
「メラミ!」
後方からゼシカの呪文が放たれる。それを合図にレイフェリオは地を蹴り、魔物へととびかかった。頑丈な体躯は剣を振り下ろしたところで、そのままでは大きなダメージを与えることはできない。既に経験済みだ。魔力を手に込めて、剣に焔を纏わせてから振り下ろす。
「火炎斬り!」
「グシャァァ」
ゼシカのメラミと合わせることで、焔の力が増幅する。それでも倒れないトロル族にはヤンガスが追い打ちを掛けた。
「くらいやがれ、蒼天魔斬!」
悲鳴にもならない叫びと共にトロルが消えていく。残りの一体も同様に鮮やかに倒すことができた。
「へ、口ほどにもねぇ」
「ったく、そんなこと言って足元救われるんじゃないよ」
「わかってら」
軽口を言い合うヤンガスとゲルダの二人。悪態を吐きながら並んで歩く後ろ姿を見ていると、レイフェリオの口端が上がる。
『レイ、どうしたの?』
「ちょっとな」
竜親族の里までの道のり。リオもいたし、トーポだって共に戦ってくれた。心強かったのは間違いないが、それでもやはり彼らと共に戦っていると帰ってきたのだという感覚に陥る。
「ほら、レイフェリオ。立ち止まってないでいくぞ」
「行くわよ、レイフェリオ」
「……っ、あぁ」
その後も久々の五人での戦闘だったが、連携の勘を取り戻すのにさほど時間はかからなかった。流石に一か月の間、戦闘をしてこなかったククールたちと、竜神族の里のあの道のりを戦い抜いたレイフェリオとの間に力の差は生まれてしまっていたが、それは必然ともいえる。
「ふん、直ぐに追いついてやるさ。いずれあんたなんて要らなくなるくらいね」
「それは楽しみだな」
「王座でふんぞり返っていればいいんだよ、あんたは」
「ゲルダ……」
「それがあんたの未来だろう」
レイフェリオの未来。ラプソーンを倒した後、その先のこと。軽口のように言い放ったそれは、ゲルダなりの激励なのかもしれない。まだ終わらない。必ず勝利して、帰ってくるのだと。
「あぁ、そうだな。その時は、君もたまには顔を見せに来てくれるか?」
「……気が向いたらいってやるよ」
「そうか」
「ゲルダ、兄貴何やってるんでがすか?」
「すまない。今行く」
いつの間にか足を止めてしまっていた。少し先でヤンガスが呼びかけているのが見える。戦闘で少なくない怪我を負うこともあるが、それは既にククールによって治療されていた。この先も油断は禁物。無駄話をするのもここまでだろう。
「いこう、ゲルダ」
「あんたに言われるまでもないね」
城内と外苑、それを行き来しながらレイフェリオたちは奥へと進んでく。徐々に闇の匂いが濃くなっていく中で、途中で墓らしきものを沢山みかけることになった。もしかすると、これまでもラプソーンに挑んだ者たちの墓標だろうか。それとも、死を意識させるための仕掛けか。
緊張感を持ちつつ、階段を降りていく。すると一つの大きな石碑がわざとらしく置いてあるのが見える。
「おい、これ……」
「あぁ……」
石碑に記載されている文字を読み上げる。
『神は告げられた。巡礼者を惑わせる円形の都市を見たならば後戻りは禁物である。もしも道を戻らば巡礼者はさらなる幻惑を知ることになろう』
「あん? 一体どういうことだい?」
「巡礼者って……もしかしなくとも私たちのこと?」
「かもしれないな。もしこれが何かを示すのなら、円形の都市ってのがこの先にある」
ククールの言葉にレイフェリオも頷いた。これがラプソーンの罠なのかは現時点ではわからない。だが円形の街か何かがあったならば、この言葉を覚えておいた方がよさそうだ。従うか、従わないかはその時に考えればいい。