マイエラ修道院を川に沿って上っていくと、そこにククールから教えられた場所があった。
川沿いの奥の開けた場合。
石碑のようなものがある以外は、何もない。
「この石碑の紋章は、ククールの指輪にあったものか」
「みたいね。……嵌め込むように見えるし」
「確かに窪みがあるな」
ククールの指輪をその窪みに入れてみると、ぴったりと、はまった。
カチッという音と共に、前方から藍色の霧が舞い上がる。
「な、何でがす!?」
「霧……!? いやこれは……」
「魔力を感じるわ。封印、のようなものなのかもしれないわね」
舞い上がった霧が晴れていくと、そこにはなかったはずの階段が現れた。恐らくはこれが旧修道院への入り口なのだろう。
「……行こう」
「ええ」
レイフェリオたちは、現れた階段を降りた。
「……明るいでがす」
「灯りが点っているみたいだね。これも封印と関係が」
「どちらでもいいわ。さっさと行きましょう。グズグズしてたら、逃げられちゃうわ」
ゼシカはその手にムチを持ち、準備万端だ。それもそのはず、ここには魔物の気配がうようよと感じられる。
そして、まさに目の前を魔物が歩いていたのだから。
レイフェリオ、ヤンガスも武器をその手に持った。
「先手必勝でがすね」
「だな。行こうか」
「蹴散らしてやるわよ」
魔物を相手にしながら、内部を探索している中、紫色の沼のような場所へと行き着いた。
「な、なんか嫌な感じでがす……」
「……これは毒の沼地だ。触れれば服の上からでも毒が入って、毒に侵される」
「さすが何年も使われていないだけあるけれど、気を付けないと大変ね」
「そういうことだ。足元は注意深く進もう」
毒の沼地を避けるために、近くにあった棚等を倒して道を作る。幸いなことに、この辺りには魔物も居なかった。足元に注意を注ぐだけに集中できていなければ、こうはいかないだろう。
ゼシカ、レイフェリオと沼を渡りきり、残るはヤンガスだけ、というときだった。
背後から魔物の気配がする。
否、気配だけでなく、それは強烈な異臭を放っている。
後ろを振り返ると、そこにいたのはかつて人であったモノ。くさった死体だった。
「ヤンガス、もたもたしないで! 来るわよ」
「ちょっ、ひでぇでがす!!!」
ヤンガスの言いたいこともわかるが、状況が状況だけに同意できない。
くさった死体が三体。レイフェリオは精神を集中させた。
「……ギラ」
炎がくさった死体へ放たれると、ゼシカは更に大きい炎の玉を作り出す。
「くらいなさいっメラミ!」
「グギャァァ」
炎に巻かれ一体が身動き出来なくなる。その一体へレイフェリオは追撃する。
「火炎斬り!」
「シャァ……」
まずは一体が消滅する。
だが、攻撃を仕掛けた後のレイフェリオへ別のくさった死体が手を降り下ろしてきた。
「兄貴! 危ねぇでがす!」
沼を漸く渡りきったヤンガスが、鎌を振るう。
ガシッ。
「なっ!」
くさった死体はヤンガスの鎌を手で掴みとると、それを投げ返した。
「うおっ!!?」
「何やってんのよ! イオ!」
「グァッ……シャァ」
ゼシカが唱えた呪文にくさった死体はよろける。そこをすかさずヤンガスが再度鎌を降り下ろすと、消滅していく。同じく、最後の一体をレイフェリオが斬りつけ消滅させた。
「助かったよ、ゼシカにヤンガス」
「まぁね」
「遅れてすまないでがす」
毒の沼から平地に戻ったところで、全員の体力を回復させる。ここでは、練習とばかりに、ヤンガスが呪文で治していく。
「……ヤンガスもまともに使えるようになってきたわね」
「まだまだ、兄貴には及ばないでがす」
「使えるだけで凄いことなんだけどな」
「私は使えないし、羨ましいわ」
攻撃呪文ならゼシカが一番だ。レイフェリオも彼女には及ばない。だが、回復ならレイフェリオに軍配が上がる。それでも、呪文の専門ではないため、僧侶には及ばないだろう。
一休みしたところで、更に奥へと進む。
沼地を避け、魔物を退治しつつ奥へと行くと、一際大きな扉があった。地下に行けば行くほど建物自体が崩れていたが、この扉はしっかりとその形を保っている。
「……この先ってもしかして」
「かもな。……気配はある。今までの魔物とは違う感じだ」
「また、死霊みたいなのじゃないでしょうね……」
「もう、見飽きたでがすよ」
ここにいる魔物の中にはミイラや、くさった死体といったあまり出会いたくない魔物が多くいた。
一種のお化け屋敷だろう。気が滅入るのもわかるが、この奥にいるのはここの主。
であれば、恐らくは……。
「行くよ」
レイフェリオの声に、ゼシカとヤンガスは戦闘体勢に入った。
ギィ。
扉を開くとそこにいたのは、予想を裏切らなかった。
「やっぱりそうなるのね」
「オォ苦シイ……神はいずこニ……コノ苦しみハイツマデ続く」
魔物は勝手に話始めた。
その姿は僧侶のもの。衣服はボロボロだが、間違いないだう。
「この人……もしかして」
「この修道院にいた人、だろうね。無念のうちに亡くなり、亡霊となってここをさ迷っているんだろう」
「ぼ、亡霊でがすか!?」
話を聞いていると何かしらの病により、修道院の者達が亡くなってしまったということだろう。
こうして一方的に話すだけなら放置もできたが、相手はそうもいかないようだ。
「我ガ苦しミ、オマエも味わエェェェ!!」
「く、来るでがすよ!」
声を発すると同時に、その左手から紫色の防弾が放たれた。
「ぐっ」
「ぐわっ」
「きゃっ」
複数の弾頭が三人を襲う。レイフェリオ、ヤンガスは踏みとどまったが、ゼシカは後方に吹き飛ばされた。
「グシャァ」
「な、何でがすかあれは!?」
「がいこつ、だね」
亡霊の叫びに呼応するように、がいこつが三体現れる。
がいこつ自体は敵ではない。問題は亡霊だ。
「ヤンガス、あのがいこつを頼む。ゼシカは後方から援護を」
「が、合点でがす! 兄貴は──」
「あの亡霊に集中する。俺に呪いは効かないから大丈夫だ。ヤンガスもがいこつを倒したら加勢を頼む」
それだけ指示を出すと、レイフェリオは亡霊へと剣を構え、魔力を左手に集中させ剣へ炎を纏わせる。
「死霊なら炎が弱点……効いてくれ。はぁぁっ!」
いつもよりも炎の熱量を上げるように呪文を練り、炎を纏った剣で斬りかかる。
「ググガガ……ガァ!」
「チッ」
攻撃は効いている。だが、亡霊も黙ってはいない。
亡霊のこうげきがレイフェリオの頬と、うでを掠めた。至近距離だったため、避ける動作が遅れたのだ。
だが、相手は遠距離攻撃ができる。遠距離攻撃を許してしまえば、ヤンガスやゼシカにも攻撃が飛んでしまうだろう。それだけは出来ない。
その時、後方から呪文の力を感じ、レイフェリオは場をあける。
火の塊、メラミだ。炎が消える前に、再びレイフェリオは斬りつける。
「グギ、ギャシャァァァ!!! 許サん! 思いシレェェェ!!」
「させないっ!」
最期の力を振り絞ったかのように放たれる呪いの光。レイフェリオはダメージを覚悟で剣で切り払い、そのまま亡霊へと斬り込む。
「一閃っ!!」
「グシャァ……オノれ……神よ。神ヨォォ……」
断末魔の叫び。手を空に掲げるように、亡霊の身体が朽ちていった。もう、現れることはないだろう。
「ふぅ……っ痛っ」
「兄貴! 大丈夫でがすか?」
駆け寄ってきたヤンガスを見る。ヤンガスも傷だらけだったが、致命傷はないようだ。
後ろにいるゼシカも同様だった。
「お疲れ様。これで、成仏したのよね?」
「恐らくね……」
「ん? レイフェリオ、その下にあるのは何?」
「下……あっ」
ゼシカに言われて気がついた。足元に光る物。それは、聖職者が身に付けているであろうロザリオだった。
「本当に僧侶だったんでがすね……」
「そう、だね……」
金のロザリオ。
レイフェリオは形を確認するように手に握りしめた。
戦闘の描写は苦手です・・・