結局そのまま二人の話を聞いてしまった。
レイフェリオはベットには戻らず、川の側に行き顔を洗う。
「……俺は恵まれているんだよな」
ククールの話を聞いて、余計に感じた。
孤児が多いことはもちろん知っている。孤児を引き取って育てている場所があることも。
けれど、本当に知っているだけだ。
ククールに出会わなければわからなかっただろう。親を失うことは子どもにとって世界が変わるようなもの。
レイフェリオに親はいない。しかし、レイフェリオには居場所があった。役割もある。それを放置している今の状況は、ただの逃げなのかもしれない。
「いや、甘えか……叔父上に任せきりで、俺は旅に出て」
「レイフェリオ?」
「!?」
突然後ろから声をかけられた。驚いて振り向くとそこにいたのはゼシカだ。
気配には敏感なレイフェリオが気がつかなかった。それほどに思考に没頭していたのか。
「ゼ、ゼシカ!? 早いな」
「それはこっちのセリフよ。こんな朝早くから……どうかしたの? やっぱり……オディロ院長のこと気にしてる、とか……」
最後の方は声が小さくなっていた。口にしてはいけないと思ったのかもしれない。
聞きたいことはあるはずなのに、ここまで何も聞かずにいてくれていた仲間の気遣いにレイフェリオは笑みを漏らす。
「……ありがとうゼシカ。ヤンガスたちも気を使わせちゃったみたいだし」
「当然でしょ!? あ、あんな……私が庇われたらきっと……」
「俺は大丈夫。……オディロ院長の死はちゃんと背負う。それが俺の責務だから」
「レイフェリオ……?」
「あの人が俺に望むのはそう言うことじゃないんだろうけど、それが俺の立場でもある」
ゼシカにはよくわかっていないだろうが、レイフェリオは構わなかった。
「今まで知らなかったことがわかって、俺は改めて自覚したんだ。自分のことを」
「レイフェリオのこと? ……貴方ってやっぱりどこかの貴族か何かなの?」
「……率直だね。ゼシカは俺のこと知ってると思ったけど、君のお母さんは知っていたから」
「お母さんが? ……会ったことあったかしら?」
レイフェリオは首を横に振った。ヒントを与えすぎればきっと、ゼシカはわかってしまう。話せるのはここまでたろう。
「会ったことはないよ。この旅がなくてもいずれ会っていたかもしれないけれどね」
「どういうこと?」
「……いずれわかるよ。さぁ、皆のところに戻ろうか」
「……あっ、ちょっとレイフェリオ!?」
考えようとするゼシカを置いていく形でレイフェリオは教会へと歩いていった。慌ててゼシカも追いかけていく。
二人が教会の前まで行くと既に他のみなは揃っていた。
「二人ともどこへいっていたんでがすか?」
「そこの川辺だよ。それじゃあ行こうか」
ヤンガスの言葉に軽く返して、それ以上の追及をされないようにレイフェリオはそのままアスカンタ方面へと歩き出す。
「何かあったのか?」
「……上手くはぐらかされただけね。私たちも行きましょ」
ククールも不思議に思ったのか片方のゼシカに声をかける。ゼシカもなっとくは言っていないが、レイフェリオが話をする気がないのは今の行動から明らかだ。
ため息をつくと、ククールと共にレイフェリオを追った。