街道を道なりに沿っていくと、アスカンタ城が見えてきた。
その異様な光景に一行は驚く。
「なんだありゃ」
「城から黒い垂れ幕、かしらね。下りてるわ……」
「まるで葬式みたいでがす」
「……あぁ」
アスカンタ城は屋上から黒い幕が下ろされ、全体が黒に覆われていた。
ヤンガスの言うとおり、葬式のようだ。
「キラって子が帰ってこないのもこれに関係があるかもな」
「だろうね。まずは、中に入ってみてからだ」
ククールの予想は当たっているのだろうが、まずはその理由を確認しなければいけない。ドルマゲスのこともだが、この国に何があったのか。
いつものようにトロデ王を外に待たせ、レイフェリオたちは中へと入っていった。
「これは……」
「……まさにお葬式ね」
レイフェリオとゼシカが思わず呟く。
城下町を出歩く人、全てが黒に身を包んでいたのだ。武器屋や防具屋などのお店の店員も。そして、兵士の服装すら黒だった。
「いくらなんでも徹底しすぎじゃないか? ……おい、あんた何でそんな格好しているんだよ?」
ククールがちょうど目の前を通りかかった男性に声をかけた。
「……フン。俺たちだって好きでやっているわけじゃない。お触れのせいさ」
「お触れ? ……一体何があったのですか?」
レイフェリオが加えて問う。男性は不機嫌な様子だったが、レイフェリオたちが旅人だと知ると仕方なさそうに話してくれた。
「……二年前、王妃様が亡くなったのさ。それから俺たちはずっと喪に服している。それだけだ」
「二年間も? それっておかしくない?」
「……知るか。そのせいで、俺たちは笑うことも出来ない。子どもは外で遊ぶことすら出来ないんだ」
男性はそれ以上はなにも言わず、去っていった。
残されたレイフェリオたちは男性の言葉に軽く違和感を拭えない。
「王妃が亡くなったとしてもそんなに喪に服すか?」
「……長くても半年。けれど、普通は一月ほどで通常の生活に戻すはずだ。国全体が喪に服す期間としては長すぎる」
「ふーん。レイフェリオ、詳しいのね」
「……まぁ、ね」
ゼシカの指摘に一瞬焦りが出るが、恐らく彼女はレイフェリオが貴族などの身分である可能性を疑っているだろう。
自分からはっきりと言わない限りはそれは確定されないのだがら、レイフェリオは敢えて放置している。この発言もどこかの国の、という疑いに変わるはずだ。
それはひとつしかないが。
レイフェリオが詳しいのは、幼い頃に叔母である王妃が亡くなった経験をしているからだ。その時の叔父の落胆ぶりは尋常ではなかった。それでも、国民に科した喪に服す期間はここまででなかったはずだ。無論、身内は長かったがここまで黒装束にもしていなかった。父が亡くなったときは確かにそれ以上ではあったが……。
それも含めても、この国の状態は異常と言えるだろう。
「兄貴の言うとおりだとして、この国は異常ってことでがすね。王さまは何してるんでがすかね?」
「国として機能していない、感じがするけどね……話を聞いてみないとわからないな」
「……おい、ドルマゲスのことはどうする?」
「ここまで陰気な雰囲気な場所にあいつがくるとも思えないけどね……」
ゼシカの言うとおりだ。
この雰囲気、トラペッタなどの街なら気にもならないが、笑い声一つ聞こえない場所では異様に映る。
来ていないという断言も出来ないが、来ていると思えないのも事実。
「その辺りは王に聞いてみるとして……城の中にも行ってみようか」
「そうね……」
街の奥にある城へ、レイフェリオたちは向かうことにした。
最近は短めですね・・・