ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

33 / 119
タイトル通りです。ゲルダのアジトでのイベントのみなので、短めです。



ミーティア姫の帰還

 洞窟の外に出ると既に夜が更けていた。だが、ミーティアのことが気がかりということもあり、真っ直ぐにゲルダのアジトへと向かう。

 ゲルダは出る前と同じように暖炉の前の揺り椅子に座っていた。

 ヤンガスが近寄ると、視線だけを動かす。

 

「戻ってきたのかい」

「おうよ。ほらよ、ビーナスの涙。確かに持って来たぜ」

 

 驚いたのか、ゲルダは飛び上がるように立った。その手にビーナスの涙を受け取ると、目の高さに掲げてその宝石を見つめる。

 

「……この美しさ、どうやら本物のビーナスの涙みたいだね。さすがはヤンガスってところか」

「さぁ約束だ。あの馬と馬車を返してもらうぜ」

「……あたしがした約束は、たしかビーナスの涙を持ってきたら馬を返すのを考えるってことだったね」

「そ、それはそうだが……」

 

 ゲルダの言に間違いはない。それをわかっているので、ヤンガスも強気に出れないのだった。

 

「今考えたよ。やっぱりあの馬は返せないね。この石っころはあんたたちに返すよ」

「なっ……約束が違うぞ!! 女盗賊ゲルダともあろう者がそんなガキみたいな理屈いうなよっ!!」

 

 その手にあるビーナスの涙を差し出し、受け取らないという。だが、それを認めることはできない。

 ヤンガスも納得できないと粋がる。

 一方のゲルダは涼し気な顔だ。

 

「約束、ね……そういえばアンタ以前あたしにこの宝石をくれるって約束してなかったかい?」

「な、なにを今更……そんな大昔の話を……」

「自分だって約束を破っておいてよく言うよ。とにかくあたしはあの馬を手放す気はないからね!」

 

 二人のやり取りを見ていたレイフェリオたちは、この言い合いを聞いている限りゲルダの言い分ももっともだと感じていた。

 それが引き下がる理由にはならないが。

 

「……お前の言う通りだ。あの時の約束を破ったのは確かに悪かった。お前がオレに腹を立てるのも無理はねぇ」

「だったら──―」

「でも今回のことはオレひとりの問題じゃねぇんだ。仲間のためにも引くわけにはいかねぇ」

「あんた……」

 

 更にヤンガスは地に手をついて土下座をする。予想もしない行動だった。レイフェリオたちもゲルダも驚愕に目を見開く。

 

「この通りだ! オレはどうなってもいいから……頼むからあの馬を返してくれ!!」

「…………はぁ。わかったよ。もういいから」

 

 ゲルダも膝をつき、ヤンガスの肩に手を添える。

 

「もうやめな。大の男が簡単に頭なんか下げるもんじゃないよ」

「それじゃあ……」

 

 顔をあげたヤンガスとゲルダの視線が合う。ゲルダは呆れたように息を吐き、立ち上がった。

 

「あんたを困らせてやろうと思ってたけど、バカバカしくなってきたよ。あの馬のことは好きにすればいいさ。でも、その代りこのビーナスの涙はやっぱりもらっておくよ。それが約束だったんだからね」

「あぁもちろんだ! ありがとうゲルダ。……それとすまなかった」

「……ったくうっとうしいね。これでもう用は済んだろ? どこへなりともいっちまいな!」

「お、おう」

 

 照れているのか、ゲルダは明後日の方向をみて追い払うように手を振った。

 ヤンガスも軽い足取りでこちらへと向かってくる。

 

「ごくろうさんだな、ヤンガス」

「へへっ」

「……姫が待っているだろう。迎えに行こうか」

「そうね」

「そういえばおっさんはどこでげすか?」

「もうとっくにいったわよ」

 

 早くミーティアのところに行きたかったのが、会話の流れを聞くなり飛んで行ってしまったのだ。

 一行はそんなトロデに苦笑しながら、部屋の外にでた。

 そこには見慣れた馬車の姿がある。

 

「あっ」

「よお。実はゲルダさまから前もって馬を返す準備をしとけって言われていたのさ。何だかんだ言って、あんたらがビーナスの涙を持ってくるって信じていたみたいだな」

「ゲルダ……」

 

 ミーティアに近づくと、そこには馬にすり寄っているトロデの姿があった。

 

「王……」

「姫や、怖い思いをさせてすまんかったのう。これからはいつでもわしが一緒にいてやるからな。もうお前を残して酒場にのみに行ったりはしないと約束するぞ」

「おっさん……」

 

 いつでも一緒、はどうかと思うが、呪いが解けるまでは一緒にいたほうがいいだろう。

 馴染みの御者台へとトロデが座り、今後の方針を考える。

 

「次はどこを目指すのじゃ?」

「……」

 

 こちらの大陸の主要な町はほぼ回った。とすれば、西にある大陸と中央大陸が残されている。

 中央大陸には大聖堂があるため、容易に近づけることはないだろう。とすれば、西の大陸が濃厚だ。

 西には、レイフェリオの故郷であるサザンビークがある。

 

「そういやいい加減情報屋の旦那が戻ってきてもいい頃だな。おっさん、とりあえず一旦パルミドに戻ろうぜ。どこに向かうとしてもドルマゲスの野郎の行き先を知らなきゃ話になんねぇだろ?」

「むぅ、出来ればあの町には二度と近づきたくないんじゃが……仕方ない戻るとするか」

 

 ヤンガスの提案にトロデは乗っかるようだ。確かにそれが一番無難だろう。

 

 一行はパルミドへと向かった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。