ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

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サザンビークへと入りました。
タイトル通り泉イベントですが、オリジナル要素多いです。またあの人に名前をつけてしまいました。


サザンビーク地方
不思議な泉


 外に出ると待ちくたびれたように、トロデが御者台に座っていた。

 レイフェリオたちの姿を見るなり、飛び降り近づいてくる。

 

「遅いっ!! 遅いぞ!! 何をしていたのじゃ」

「王、すみませんでした。色々と事情がありまして」

「……ドルマゲスが現れたのよ」

「何じゃと!! それでドルマゲスはどうしたのじゃ!?」

「ギャリングを殺して闇の遺跡に向かったらしいぜ」

「ううむ、ドルマゲスの奴め。また人を手にかけおったのか……こうしてはおれん。その遺跡とやらに急ぐぞ」

 

 御史台に飛び乗り、勢いよく出発しようとしたトロデだったが、すぐに止まった。

 

「……してその遺跡とやらはどこにあるのじゃ?」

「はぁ……北の小島らしいわ。船がないと行けないわね」

「古代の船を復活させないといけないでがすよ、おっさん」

「古代の船か……もしかしたら我が城の書物に情報が載っておるやもしれんな。よし、トロデ―ン城へ向かうぞ」

「……王、待ってください」

 

 今にも行きそうなトロデだが、ルーラを使えないトロデでは一人で行くことなど出来はしない。それに、船を復活させる前にやらなければいけないことがレイフェリオにはある。

 

「どうしたのじゃ、レイフェリオ?」

「……すみません、俺はサザンビークに戻ろうと思います」

「なっ……ど、どうしてじゃ?」

「それは……後ほど説明します。今は理由を聞かないでもらえますか?」

 

 トロデにとってレイフェリオがサザンビークに戻るということは、旅が終わると同じことだった。無論、レイフェリオは終わらせるつもりはない。だが、旅を続けるためにも一度サザンビークへと戻る必要がある。

 トロデにはそれだけを伝える。

 

「そうか……事情があるのじゃな。元々お前さんには関わりがなかったことじゃ。ここまで協力してくれたことに感謝こそすれ、それを無下にすることなど一国の王の名が廃る。よし、構わんじゃろ」

 

 一刻も早くドルマゲスを追いたいトロデだが、ここまで共に協力してくれたことの方が異常なのだと、認めてくれた。

 

「だがのう……そのサザンビークには姫の許嫁がおるのじゃよ。許嫁のチャゴス王子もだが、王族に知られることがあってはならない。町でも姫とわしの呪いや旅のことは口にせんでおくれよ」

「えーと、そうですね。わかりました」

 

 既にその王族に知られているとわかったら、どうするだろうか。レイフェリオは苦笑いをして頷いた。

 事情を知っている三人も笑いを堪えているような、変な顔をしている。わけがわからないトロデは、首を傾げるだけだった。

 

 こうして時折魔物を倒しながら、南へ道沿いに進んでいく。流石にこの辺りの魔物は今までと比較しても強くなっている。

 レイフェリオはこの辺りを徒歩で進んだことがあるため慣れていたはずだが、それよりも魔物の強さが上がっていた。

 

「はぁはぁ……つ、疲れるわね……」

「呪文の温存も、出来やしない……」

 

 戦闘を終え、ゼシカとククールは地面に座り込んだ。ヤンガスは大の字になって息を整えている。

 立っているのはレイフェリオだけだった。

 

「……ふぅ。まさか、ここまで魔物の狂暴化が進んでいるとはな」

「以前とは違うのか?」

「ああ。俺が一人で倒せる位だった。だが、今の魔物たちは皆の援護がなければ全滅していただろうな」

「……なるほど、な」

「本当に……何が起こってるのかしらね」

 

 ギャリングが言っていた狂暴化について、特に感じたことはなかった。ゼシカもククールも自身が住んでいたところで、魔物の強さが変わっていることなど感じてなかったからだ。

 しかし、レイフェリオは違った。馴染みのある場所の魔物の強さが違えば、理解もするだろう。

 

「……この先の森に小さな泉があるんだ。そこへ寄っていかないか?」

「この期に及んで寄り道するのか? 疲れるだけだぜ?」

「その泉には不思議な効力があるんだ。城へ行くよりも近い。それに……試してみたいこともある」

「試したいこと?」

 

 ゼシカは立ち上がり、首をかしげる。

 

「その泉には呪いを解くチカラがあると言われているんだ」

「って、じゃあ!」

「行ってみる価値はある」

「なるほどでがすよ」

 

 あくまで噂だが、実際にレイフェリオ自身も訪ねたことがある場所だった。偏屈といわれるじい様の小屋が近くにあるので、そこで休ませてもらうこともできる。

 

 道の途中で右側にある森の中を進む。だが、そこには予想以上の魔物がいた。

 

 バーサーカーが4体。常に飛び上がっており、武器を振り続けている。そして、どろにんぎょうだ。

 

「ゼシカは後方だ。ヤンガスはあの人形を先に始末してくれ。ククール!」

「わかったよ」

 

 呼び掛けにククールは、弓を素早くひく。対象はバーサーカーだ。

 魔法力を奪う手段を持つ人形を先に倒すために、ヤンガスをそちらに向け、バーサーカーの注意をこちらに引き寄せるためだった。

 

 狙い通りバーサーカーの狙いはこちらに定まる。

 

「バギ!」

「ライデイン!」

 

 ククールとレイフェリオの呪文が直撃する。だが、多少怯んだだけでこちらに襲いかかってきた。やはり、魔物の強さは上がっている。

 

「「ギィシャァ」」

「ぐっ」

「ちっ……」

 

 一気に4体が攻撃を仕掛けてくる。振り上げられた斧をレイフェリオは盾で受け止めるが、次の瞬間にはもう1体が斧を振り回す。それを剣で受け止めた。

 同じくククールも攻撃を受け止めるが、勢いよく振り下ろされたその力に押され、後方へと飛ばされてしまった。となれば、そこにいるのはレイフェリオ一人となる。

 

「レイフェリオっ!? ……ヒャド!」

 

 氷の刃がバーサーカーに届く……前にレイフェリオへと残りの敵の刃が届いた。

 攻撃を受け止めていたがために、隙があった横から凪ぎ払われる。レイフェリオも受け止めていた斧を押し返し避けようとしたが、間に合わない。

 

「ぐっ……」

「あ、兄貴!?」

 

 左側の腹部が切り裂かれ血が流れ出す。倒れながら流れる血を押さえ、レイフェリオは目の前にいるバーサーカーを見る。既に追撃の体勢だった。

 呪文をかけている余裕はない。更に追加される攻撃を剣で受け止め、力をためて払った。

 

「バギマ」

「イオラ」

 

 二人の呪文がバーサーカーを襲うと、既に人形を倒していたヤンガスがレイフェリオを庇うようにして立った。

 

「ヤンガス……」

「兄貴は早く回復をっ」

 

 斧を振り上げ、バーサーカーを切り払う。既に体勢を整えたククールも弓を構え攻撃に転じていた。

 

「……ベホイミ」

 

 痛みに集中力を奪われそうになりながらも、レイフェリオは回復呪文を唱えた。

 まだ痛みはあるが、出血は止まり体力も戻ってくる。

 

「よし……」

 

 剣を握り、立ち上がるとレイフェリオも戦闘へと復帰した。

 

「……ふぅ、手を焼かせる魔物ね」

「兄貴、大丈夫でがすか?」

「ああ、すまない」

「俺も吹っ飛ばされたからな……」

 

 まだまだ修行が足りないということなのかもしれない。

 この後も似たような状況に陥ることはあったが、先程の二の舞にはなることはなかった。

 

 そして、何とか小屋まで到着することができた。

 扉を開けると、そこにいたのは……魔物だった。

 

 反射的にレイフェリオ以外が武器を構える。

 

「あっ、ここの連中は戦う必要はないんだ。ここの主に育てられているんだ」

「そ、育てるって魔物よ?」

「……俺にも詳しいことはわからない。……っとスラ、爺は留守か?」

 

 周りを見回すと、レイフェリオは近くにいたスライムに話しかけた。

 

「なんだっちよ。あっ、レイ様だっち。しばらくだっちね。じいさんなら留守だっち。行き先は知らないだっちよ。オレっちは留守番だっち」

「あの泉か?」

「知らないだっち」

「……そうか。泉に先に行こう」

 

 レイフェリオは踵を返して、外へと出ていく。訳がわからない三人は、とりあえず後を追った。

 

「おい、あのスライム喋ってたよな?」

「ビックリでがすよ」

「俺にも良くわからないんだが、知る限りじゃ最初からああだった。ともかく、泉はこの奥だ」

 

 木々が更に深くなって行く場所へとレイフェリオは歩いていく。不思議な魔物に、ヤンガスたちはまだ驚きから抜け出せないでいた。

 

 奥へと歩いていくと、そこにあったのは綺麗な泉だった。

 泉のそばには人が一人佇んでいる。

 

「ほう、こんな場所に人が来るとは久しぶりじゃ……」

「久しぶり、爺」

「ん? おぉ、レイ様ではありませんか? お久しゅうございます」

「爺も元気そうで良かった」

「無論、元気ですとも……おや? これまた随分とお美しい姫君をお連れではありませんか」

「「姫君?」」

 

 老人は後方に歩いていたミーティアを指した。馬の姿しかしらないヤンガスたちには誰のことかわからない。

 

「わしも城で多くの姫君を見てきたが貴女ほど美しい姫君は見たことがない」

「あの、爺さんにはこの馬姫さまがちゃんとした姫に見えるんですがすか?」

「うむうむ。例え馬になっても隠しようがない気品が姫から溢れとる証拠じゃのう」

 

 驚くヤンガスに、納得顔のトロデ。だが、一般的に見て、ミーティアは間違いなく馬にしかみえない。

 

「ん? って何故じゃ? ご老人、何故この馬が姫に見えるのじゃ!?」

「爺……今、姫は馬の姿なんだ」

「う、馬!? それはまことですか!!?」

 

 二人の言葉を聞き、驚いた老人はミーティアへと近づき、その姿に触れる。

 

「姫君、少々失礼を……ふむ、この鬣といい毛並みといい、確かに馬のようですな」

「爺には、姫の姿がちゃんと見えるか」

「はい。わしはこの目に何も映すことはありませんが、心眼が姫君をその姿として捉えております」

 

 老人は出会ってから一度も目を開いていない。心眼、つまり心の目で見ているのだという。呪われていてもその心はミーティア自身のまま。だからこそ、老人には姫の本来の姿が映ったのだろう。

 

「レイ様、一体何があったのですか?」

「……この馬はミーティア姫。トロデーン国の姫君だ。道化師の呪いを受けてこのような姿にされたんだ」

「そうでしたか……呪い……なるほど、それでここへ訪れたのですね」

「あぁ。試してみようと思ったんだ」

「ん? レイフェリオよ、一体どういうことなのじゃ?」

 

 レイフェリオと老人の二人が納得していて、他のメンバーは話についてこれていなかった。だが、老人は気にせずミーティアへと話しかける。

 

「では、姫よ。効くかどうかはわからぬが、そこの泉の水を口になさるがいい」

「ヒン?」

「その泉の水には呪いを解く不思議な力があるのだよ。必ずしも効くとは断言できんがの……」

 

 いつの間にか自由に動けるようになっていたミーティアは、促されるまま泉へと近づく。ゆっくりと座り、その口に水を含んだ。

 徐々に淡い光がミーティアを包み込んでいく。

 

「馬姫さまがひ、光っているでがすよ!!!」

「まさか本当に解けるってのか!!!?」

 

 やがて光は辺りを照らし出す。そのまばゆい光に思わず目を閉じてしまう。

 一同が目を開けたとき、そこにいたのは美しい姫の姿だった。

 

「あ……。皆さん、お父様!!? お父様見てください!! ミーティアは人間の姿に戻りましたのよ」

 

 興奮するミーティアはトロデに声を掛けるが、トロデは反応もせずに固まったままだった。驚いた衝撃から回復していなかったのだ。

 

「姫……」

「お父様? ま、まさかこれは夢を見ているだけ、というのでしょうか……これは幻、なの……?」

 

 あまりに反応しないトロデに、ミーティアも現実かどうか不安になってしまったようだ。

 

「お……おぉ、いやなに。あまりに突然のことで言葉を失ってしまったわい。ちゃんと見えておるぞ姫よ。さぁもっと近くに来て、その愛しい姿を見せておくれ」

「お父様っ!」

 

 トロデに近づき、思わず二人は手を取り合う。その光景をレイフェリオたちはただ見守っていた。

 涙を浮かべトロデは今までの時間を取り戻すかのように、ミーティアの姿を見ていた。

 

「おお! わしのかわいい姫よ。今まで馬車なんか引かせてすまなかった。辛かったであろう。これからは楽をさせてやるからのう……」

「いいえ。いいえお父様。辛いのはミーティアひとりだけではありませんもの……それに、ミーティアはレイフェリオ様たちのお役に立ててうれしゅうございましたのよ」

 

 ミーティアはトロデから視線をレイフェリオたちへと移し、その正面に移動すると、裾を掴み王女の礼を取った。

 その間に自分も元に戻ると息巻くトロデが泉へと走る。

 

「姫……」

「レイフェリオ様……皆さま、本当にここまでありがとうございます。感謝してもしきれないくらいです」

「馬姫……じゃねぇや、ミーティア姫がこんなに別嬪さんだとは思わなかったでげすよ」

「だな。トロデ王の娘とは思えないぜ」

「……ミーティア姫、貴女も本当にお疲れ様」

「ありがとうございます。それとあの……レイフェリオ様」

 

 ミーティアはレイフェリオへと改めて向き直る。その真剣なまなざしに、レイフェリオも意を正して答えた。

 

「何でしょう、姫?」

「貴方はもしかして……えっきゃっ!!!?」

 

 と何かを言いかけた時に再びミーティアの身体が光りだした。ミーティアの声に水を飲もうとしていたトロデも振り返る。

 

「ん? 姫? ……あぁ、姫!!」

「……ヒン」

 

 何とミーティアは馬の姿へと変わってしまった。どうやら効果は一時的なものだったようだ。

 

「うーむ。泉の癒しの力すらも効かぬとは、姫君にかけられた呪いはよほど強力なもののようですな。泉が駄目なら残された手段はただ一つ……」

「ドルマゲスを倒す、か」

「えぇ。さすれば呪いは解け、姫君は元の姿に戻れるでしょう」

 

 やはりドルマゲスを倒す以外に方法はないということだ。予想はしていたことだが、ミーティアをぬか喜びさせてしまったようで、レイフェリオは少々罪悪感を覚えていた。

 

「レイ様……」

「何だ?」

「姫君はおそらくここの水を飲めば短時間ではありますが、人間の姿に戻れるようです。時間を見つけては飲ませて差し上げてはいかがでしょう?」

「それは良い考えなんじゃない? 連れてきてあげましょうよ」

「だな。俺も賛成だ。あんな美人に会える機会を逃すなんてもったいないからな」

「……だからあんたはケーハク男なのよ」

 

 確かにトロデと違い、ミーティアは話すことすらできないのだ。少しでも人として会話することができれば、気も紛れるだろう。

 

「わしからもお願いじゃ。たまにでよいのじゃ。連れてきてやってくれぬか?」

「王……勿論構いません。それで姫が少しでも喜んでくれるなら」

「ヒン!!」

 

 ミーティアが顔を高く上げる。まるでお礼を言っているようだ。

 

「そろそろ日も落ちる頃です。どうされますか? 小屋に泊って行かれますか?」

「……あぁ、そうさせてもらえると助かる」

「わかりました。狭苦しいところですが、どうぞおいでください」

「ところで、レイフェリオ? このおじいさんとはどういう関係なの?」

 

 ビクっと肩が震えた。指摘されてそういえば一切説明をしていなかったことに気が付く。

 

「あーと……」

「これはご無礼を。わしはグラン・サーモンドと言います。昔はサザンビーク城で魔法研究をしておりまして、レイ様にお教えしていたことがあるのですよ」

「へー、ってことはレイフェリオの先生ってことか?」

「……あぁ」

 

 レイフェリオの素性を知っているならばそれで納得するだろうが、残念なことにそうではない人物がここにいた。

 トロデだ。

 

「ん? レイフェリオよ、お主この老人に習っておったのか? 城の魔法研究員ともなれば貴族じゃろうに。一体どういう繋がりがあるのじゃ?」

「……それは……」

「レイ様、まずは小屋までいきませんか? そろそろ風が冷たくなってきましたし、この老体にはきついのですよ」

「爺……わかった」

 

 トロデの質問を遮るように、グランは小屋へと誘導していった。

 




ここまで読んでいただいてお分かりいただけるかと思いますが、本作はルートが入れ替わっています。メインの場所は行くので、トロデ―ン城へも向かいますが、ここから暫くはサザンビーク編となります。
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