主人公の設定公開の話になります。
小屋に着くなり、スライムとドラキーたちがレイフェリオを引き連れ奥の部屋へと連れていく。そうすると、残ったのはグランとヤンガスたちだけになった。
「……どういうつもりなの?」
「レイ様には少々席を外していただきたかったのですよ。わしが話相手になろうと思いましてな」
「話し相手、でがすか?」
「えぇ……皆さまはあの方のことをどこまでご存じでしょうか?」
「……トロデ王以外は知っているぜ?」
「何っ? わしをのけ者扱いか、ククール!!」
「……そうでしたか。いたし方ないでしょうな。落ち着きなされ、トロデ王。わしが説明致しましょう」
グランにそういわれ、しぶしぶトロデもおとなしくなる。
用意された椅子に腰を掛け、各自目の前にはお茶が準備された。
「さて……どこからお話しするか迷いますが、まずはあの方のお立場をはっきり伝えておかねばならないでしょうな」
「レイフェリオの立場じゃと?」
「はい。レイフェリオという御名は確かに本名ではありますが、正式名ではありません。レイフェリオ・クランザスというのがあの方のお名前です」
「クランザス……じゃと?」
その名を聞き、トロデがわなわなと震えあがる。それはサザンビークの王太子に与えられた名前だということは、世界の王族、強いては法皇にとっては常識だった。無論、トロデーン国の王であるトロデが知らないはずはない。
「まさか……あやつがサザンビークの王太子だというのか!? そんなはずは……」
「クランザスって名前がどうかしたんでがすか?」
「皆さまが知らなくて当然でしょうな。トロデ王だからこそわかることですから」
「お主らが驚かぬということは、それが本当だと言うことじゃというのか?」
「……私はアスカンタで知ったわ。パヴァン王がレイフェリオのお父さんに会ったことがあるっていう話をきいてね」
「そんなに前からかよ……俺とヤンガスはベルガラックで教えてもらったぜ」
ギャリングの屋敷での話だったから、トロデがいないのも無理はない。
「……ギャリング殿が亡くなられたことは、レイ様にとってショックな出来事だったでしょう。人に対して壁を作っていたレイ様が、初めて他人で信頼できると感じたお方でしたから」
「そう……」
「それはさておき、ドルマゲスという道化師を倒しに行くとのことでしたが、無論レイ様をお連れになるつもりはないでしょうな?」
「……あいつは行くつもりだぜ?」
「そうね。私たちも一緒に来てくれた方が助かることに変わりはないけれど、万が一一緒に行けなくなったとしても、私たちだけでも倒しにいくわ」
「既に話し合い済みでしたか。これは余計なことを言いました」
グランはヤンガス、ククール、ゼシカを順にみる。といっても心の目で感じるだけだ。そして、その心が既に決めていると言っていた。だが、納得していないのが一名いる。
「ならん!! レイフェリオは置いていくのじゃ。連れていくことなどできん」
「おっさん、なんだよ急に」
「お前らわかっておるのか? サザンビークの王太子じゃぞ!? この世界における最大国家じゃ。その世継ぎを戦いの場へ連れていけるわけがなかろう! 何か起きてからでは遅いのじゃぞ」
「……だがよ、おっさん。それは兄貴の意志を無視していることじゃねぇか? 兄貴が行くと言ったら止めるってのかよ」
「勿論じゃ。クラビウス王は家族愛が深いということで有名なのだ。……万が一何かあったら責任などとれぬ」
「そのクラビウス王ってのが許可すればいいんだろ? 今からそれをしに行くんだよ」
「無理じゃ。認められるわけがあるまい」
「……トロデ王よ。貴方は、我が国の王子を信用していないのでしょうか?」
「……そんなことはない。レイフェリオには世話になった。返しきれないほど協力もしてもらっておる。だが、ドルマゲスを倒すのに、あやつに理由はないのじゃ。わしらの事情に付き合わせる理由が」
それはここに来るまでにもトロデについてくる理由として挙げていた言葉があるからだろう。トロデはその言葉を信じている。だからこそ、巻き込むまいとしているのだ。
しかし、その理由があったならばどうだろう。
「兄貴がドルマゲスと戦う理由はあるぜ、おっさん」
「そうね」
「だな」
「何じゃと?」
「……レイ様は確かに貴方がおっしゃる通り、大国サザンビークの王太子です。だが、もしギャリング殿がいうように、世界に何かが迫ってきているというのなら、大国の王族として率先して解明に向かう必要もあるかもしれません。未だ、人々は気が付いていない。だが、人々がそれに気が付いたとき、その責めを負うのは民をまとめるべき王です。違いますか?」
「……確かにそうじゃ」
「そして解決するのもまた王なのです。あの方は次代の王。ならば、行かなくてはならないでしょうな」
「……お主はそれでよいのか? 自国の王子をそのようなことに巻き込んでも」
「……あの方がそれを望んでおられるなら止めるのはわしの役割ではありませんから。それに……止めたところで、きっと立ち止まりはしないでしょう。ご自身をの生まれを厭うているのですから……」
グランは悲しい表情を浮かべ、既に冷たくなっているお茶をすする。
「生まれ……でげすか?」
「……あの方は……レイ様は、竜神族と人間との間に生まれた混血児なのですよ」
「? 竜神族?」
全員が聞いたことのない言葉に疑問符を浮かべている。これも予想していたのか、グランは話を勧めた。
「竜神族とは、竜と神との狭間に生きる存在です。本来ならば人間と交わることなどありえません。ですがレイ様の母上、ウィニア様はとても好奇心に溢れた方で……人間の郷へと降りてきてしまったのです。そこでエルトリオ王子と出会い、結ばれ、レイ様がお生まれになりました。これはサザンビークでも今はクラビウス王とわしくらいしか知らないことです」
「なぜですか?」
ゼシカの疑問は当然のものだ。
「エルトリオ様がウィニア様の素性を知らせなかったからです。わしは魔法を研究しており、エルトリオ様にも信頼されておりましたので知っておりますが、他の者は知りませぬ。それがレイ様のためだと、お考えになったのだと思うております。けれど、人と竜神族の混血であるレイ様のお力は人としては異常なもの。それ故、一部のものからは恐れられてもおります……」
「えっ……?」
「……なるほどな」
「何がなるほどなんだよククール……」
「……異質なものを恐れるのは人間の本能だってことだよ。お前も経験あるだろ?」
人より人相が悪く見られるだけで、畏れられ、まともになろうとしても結局は盗賊に戻るしかなかったヤンガスだ。多少悪く映るってだけで、悪者扱いされてきた。
それと同じことだとククールは言っているのだろう。
「青年のおっしゃる通りですじゃよ。サザンビークは魔法の国。先祖返りなどと噂もされておられるが、いずれにしても、そのことでレイ様が悩んでおられることに変わりはないのです。だからこそ、あの方は行くでしょう」
「……レイフェリオの悩みって?」
「それはわしの口からは教えることは憚られますな。皆さまが信頼されれば、いずれお話してくださるでしょう」
「だが、爺さん。何でアンタはそんな話を俺たちにしたんだ? わざわざ本人を追い出してまで」
「……レイ様が素で接しておられるのをみたから、ですな。確かに国にはレイ様のご友人もおられます。信頼できるものもいるでしょう。だが、皆レイ様と共に戦うことはできません。ですが、皆さまならばそれができるのではと……年寄の願望ですじゃよ。願わくば、それが真実となってほしいと思うのじゃ」
ほっほっほ、とお茶をすする様子は好々爺。
だがこんな話を許可なくされてしまえば、この老人に従うしかないと感じさせられる。
「勿論だぜ……オレは兄貴についていく。そしてドルマゲスを倒す」
「そうね……お爺さんに乗せられるのも癪だけど、話を聞いてなくても私はそのつもりよ」
「……まっ、俺としてはどっちでもいいんだが。……他人事には感じないからな。で、おっさんはどうするんだ? まだ納得してねぇのか?」
随分とすっきりしている三人に比べ、まだ不満がありそうな表情のトロデにククールが追い打ちをかける。この状況で反対などできるはずもない。
だが、一国の王として許可するわけにもいかなかった。
「……わしは納得できん。だが、トロデ―ン国が介入する問題ではないのじゃろうな。クラビウス王の判断に任せるだけじゃ」
「素直じゃないわね……全く」
★ ☆ ★ ☆
一方。
「おい、スラにキース。どこに連れていくつもりだ!?」
「黙ってついてくるだっち。レイ様、怪我しているだっちよ」
「怪我って……俺は別に何とも」
「キキーッ! 隠す、ダメキーッ!!」
二匹に連れられて来たのは、小屋の地下にある部屋だった。ベッドが置かれ、そばには魔法使いの魔物がいる。
「マージ?」
「お久しぶりです、若様。さて、我の出番ですね」
マージと呼ばれた魔法使いは、手に持っていた杖を振るう。杖の先端につけられた宝玉が光った。
「マ、マージ! 待てっ」
「ラリホーマ」
レイフェリオの制止も間に合わず、杖から魔力が溢れ出すと、レイフェリオを眠りへ誘う。
「く……謀った、な……」
「お休みください、殿下」
意識を失い倒れこむレイフェリオを後ろに来ていたさまよう鎧が床に激突する前に支えた。
「……」
「ご苦労様です。さて、ベットへと運んでください」
「……」
声を発することのないさまよう鎧は、マージの指示に従い、レイフェリオをベッドへと寝かせた。
「……あとはグラン老に任せますか。スラ、見張りを頼みますよ」
「任せるだっち!」
「キキーッ」
「……貴方は役に立たないでしょうに。まぁ、いいですが」
ドラキーに何ができるのかと思いつつ、それでもマージは放っておくことにした。
マージはグランのお陰で人間の言葉を放すことができ、呪文にも優れた力を持っている。また、幼少のレイフェリオを知っており、その性分も十分に理解していた。
人間らしい魔物と、グランに評価されるくらいは。
実を言えば、レイフェリオが怪我をしているというのは、単なる口実に過ぎない。そうでなければ、スラとキースに説明するのが面倒なのだ。
知能がそれほど高くない二匹に、理由を説明するのは骨が折れる。
「傷を負うのは、これからなのだろうな。人間など捨て置けばいいものを……難儀なお方だ……」
深く眠るレイフェリオをマージは、ただ見守っているだけだった。
主人公の生まれについてのお話でした。まだ謎になっている部分はまた・・・。