ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

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オリジナルルートです。ヤンガスたちと合流します。
シリアス色が濃くなり、主人公設定も少しずつ語られています。
オリジナルだからか、ちまちまと時間が進んでいきくどいように感じさせてしまうかもしれませんね。





仲間との合流

 町へと出るとレイフェリオは額当てを外し、道具袋へとしまった。額当ては紋章が入っているため、王族の象徴のようなものだからだ。服の方は、騎士服を着ている兵士がそばにいるため、それほど目立たない。

 

「あってもなくても変わらないと思いますけど?」

「……重いんだよ」

「そんな理由ですか……」

 

 大事なものをそんな扱いでいいのかというようにシェルトはため息をつくが、レイフェリオは気にしていない。

 

「んで、まずはどこにいきます?」

「教会だ」

「教会?」

 

 城のすぐそばに教会が建てられていた。シェルトの疑問には答えず、スタスタを教会へと向かっていく。

 今までの町よりも大きな教会だ。

 扉を開いて入ると、すぐに老齢のシスターがレイフェリオに気が付く。

 

「まぁ! レイフェリオ様ではありませんか? いつお戻りに?」

「今日戻ったばかりです」

 

 シスターはレイフェリオへと駆け寄る。嬉しそうに目を細めながら、その姿を確認していた。

 

「まぁまぁ。どこもお怪我はしていませんか?」

「はい。……あの」

「あっ、申し訳ありませんね。お祈りにいらしたのですか?」

「……その、父に報告を」

「……そう、ですか。わかりました。奥へと案内しますので、ついてきてください」

 

 一瞬表情を曇らせたシスターだが、レイフェリオの手を引き教会の更に奥へと導く。ここを訪れた理由を知ったからか、シェルトはここで待つというように椅子へ腰かけた。

 

 連れてこられたのは、重厚な扉の前だった。

 

「……私はここまでです。どうぞ、お入りください」

「ありがとうございます」

 

 何度も来たことのある場所だが、久々に感じる重みに懐かしさを覚えた。それほど長い間離れていたわけではないが、それだけ濃厚な日々だったのだろう。

 

 扉を開け一歩ずつ中へと進んでいくと、扉は閉まる。ここは王家の人間のみが入れる墓所だった。

 

「……ただいま戻りました、父上」

 

 レイフェリオがここに来たのは、エルトリオへの報告のためだ。

 歴代の王が眠る場所。その一つの墓を前に、レイフェリオは膝をつく。

 

「ギャリングさん、オディロ院長……お二人も亡くなってしまいました。もしかしたら、ギャリングさんの死は防げたかもしれませんでした。けれど、それと同時に俺も死んでいたかもしれません」

 

 再びドルマゲスと会った時、果たしてレイフェリオを見逃してくれるのか。そもそも修道院ではなぜ見逃してくれたのかもわからない。

 

「……この血がその理由だとしたら、俺は戦うべきだと思っています。世界の平和が崩壊するかもしれないのであれば、俺はこの国の王族としてもいくべきでしょう。チャゴスは勿論、叔父上にはそれができません。アスカンタも国王一人。トロデ―ンは呪いの中です。動ける国は、サザンビークしかありませんから。……叔父上は恐らく簡単には行かせてくれないでしょうが。……もし、父上が生きていたら俺を止めますか?」

 

 答えが返ってくることはないが、それでも問いたださずにはいられなかった。

 アイシアが見た夢。ただの夢なのか、それとも意味があるものなのかはまだわからない。

 だが、巫女の夢は無視できない。旅を続けることで、夢が真実となる可能性は高い。

 それでもギャリングが遺した言葉は、レイフェリオにとって無視できるものではなかった。

 

「……失礼します」

 

 立ち上がり頭をさげると、レイフェリオは墓所を後にした。

 

 シスターと共にシェルトの元へと戻ると、何やら人だかりができていた。怪訝そうに顔を見合わせるシスターとレイフェリオだったが、シスターがその人だかりへと近づいていった。

 

「お前ら、何を嗅ぎまわってるんだって言っているんだ」

「嗅ぎまわるって……そんなつもりじゃないんだけど」

「じゃあどういうつもりだ? 王族のことを聞きまわってやることにいいことなんて浮かばないんだが?」

「何をしているのですか? ……シェルト殿、一体何の騒ぎです? ここは神聖な教会ということをわかっていての行動でしょうか? 騎士様ともあろう方が一体何をされているのです? そちらの貴方方もですよ」

 

 シスターが仲介に入ると、人だかりがちらほらと散っていく。レイフェリオがようやく全貌を見ることができるころには、既に全員が説教をされているところだった。

 

 言い合いをしていたのは、シェルトと……ヤンガスたちだった。数十分ほどのシスターの説教の後、頃合いを見計らってレイフェリオが近づく。

 

「……何をしているんだよ」

「あ、兄貴!??」

「レイフェリオ!!?」

「へぇ……国ではそういう格好なのな」

「着たくて着ているわけじゃない……で、シェルトは何を言ったんだ?」

 

 放っておくと服装について言われそうなので、当事者でもあるシェルトに声を掛ける。

 

「……知り合いだったんですか。そうならそうと言ってくださいよ。前もって特徴を教えておくとか」

「悪かった。まさか、こんな場所で会うとは思わなかったんだ」

「兄貴の知り合いだったんでがすか?」

「そこのとんがり頭。殿下に向かって”兄貴”だって。俺を舐めているのか?」

 

 喧嘩腰になるシェルト。今にも剣を抜きそうだった。

 レイフェリオもこういう状況は考えてなかったため、頭を抱える。言われてみれば、ここでは控えてもらいたい呼び名だった。

 

「シェルト、いいから黙っててくれ。皆、とりあえずゆっくり話せる場所に移動しよう。ここでは迷惑になる」

「わかったわ」

「了解」

 

 といっても宿屋に行くわけにはいかず、結局はレイフェリオの自室にあるテラスで話をすることになった。

 侍女がティーセットを準備するのを落ち着かない様子で見ながら、ヤンガスたちは座る。

 シェルトは兵士なので、レイフェリオの後ろに立ったままだ。

 

「では失礼いたします」

「あぁ、ありがとう」

「……本当に王子様しているのね」

 

 準備が終わったら、ベルネラがテラスから出ていく。

 ほんのわずかだが、城内でのレイフェリオの様子に驚きを隠せないらしい。それはククールやヤンガスも同じだろうが、言葉には出さなかった。その原因はシェルトの視線にあるようだが。

 

「で? レイフェリオ、こいつは誰なんだ?」

「シェルト、サザンビークの騎士の一人だ。俺の幼馴染でもある」

「ついでに言えば、今は殿下の護衛だ。怪しい動きをすれば斬るからな」

「……シェルト」

「へいへい……わかってますよ」

 

 柄に手を掛けていたのを外し、両手をあげる。攻撃しないという意志表示だ。

 

「それで、俺には説明してくれないんですか?」

「……右からヤンガス、ゼシカ、ククールだ。ここまで共に旅をしてきた」

 

 簡潔すぎるくらい簡潔に答える。思わずシェルトの方が拍子抜けしてしまった。

 仕方ないとばかりに、ゼシカが説明をする。

 

「アルバート家のご令嬢だったんですか。ってことは、ラグサットの?」

「許嫁らしい」

「ちょっ、何でそんなこと知っているのよ」

「リーザスで本人から聞いた」

「私は納得していないわよ。お母さんが勝手に決めたことなんだから」

 

 サザンビークの大臣の息子との婚姻であれば、多くの貴族が望むものだろう。そして本人が納得していないというのも政略結婚ではよくあることだ。

 

「で、とんがり頭、さっきの話だがここではその呼び名は不敬すぎる。やめろ」

「……確かに兄貴呼ばわりは不味いかも知れないわね」

「じゃあどうすればいいんでがすか?」

「普通にレイフェリオでいいだろう?」

 

 ゼシカもククールもそう呼んでいるし、仲間という間柄ならば許されるだろうとヤンガスに提案するが、当のヤンガスは渋い顔をした。

 

「兄貴を呼び捨て何て無理でげす」

「なら、お前は殿下を呼ぶな。それで解決だ」

「なっ、何だとぉ!」

 

 シェルトとヤンガス、この二人はどうやら反りが合わないようだ。

 

「……ところでレイフェリオ、これからどうするんだ? 王とは話ができたのか?」

「いや……恐らく夕食後になるだろう」

「そう。……大丈夫なの?」

「わからない。……ちょっと事情が加わったからな」

「事情でがすか?」

「あぁ……」

 

 ヤンガスが尋ねる素振りを示すが、レイフェリオは答えなかった。言えないことなのかどうかもゼシカたちには判断できない。この場に沈黙が流れた。

 

「ごほん、で彼らは城に泊まってもらいますか?」

 

 沈黙を破ったのは、意外にもシェルトだった。

 

「私たちは宿屋で構わないわ。レイフェリオに迷惑をかけるわけにはいかないものね」

「そういうわけには行きません」

 

 ガタンと城内から顔を出したのは、ナンシーだ。突然現れた侍女に、ゼシカたちもそちらを向く。

 

「? ナン? どうしたんだ?」

「どうした、ではありません。全く、殿下のご友人でもある方々なのですから、勿論私達でおもてなしさせていただきます。陛下には、私からお伝えしておきました。既に許可も得ております」

「……流石ナンシーさん。仕事が早いですね~」

「シェルト殿、私達の仕事に何か言いたいことでも?」

「いえいえ、とんでもない」

「……ゴホン、皆様には客室をご用意致します。城内はご自由に出歩いても構いませんが、夕食までにはお呼びしますのでお部屋へ戻っていてくださいね」

「ありがとうございます、ご婦人」

 

 ククールは立ち上がり、騎士の礼をとった。思わずシェルトとナンシーは目を見開く。

 

「……ククールは修道院の聖堂騎士なんだ」

「そうでしたか。道理で身のこなしがスムーズな訳ですね」

「……なるほどな」

 

 納得するナンシーと険しい顔をするシェルト。

 

「シェルト?」

「ゼシカ嬢は魔法使いということだが、そこのやつは僧侶だったって訳か。んで、とんがりは腕っぷしだけはよさそうだしな」

「腕っぷしだけは余計だぜ……」

 

 否定はできないものの素直に聞くのもシャクなのか、ヤンガスが口を尖らせた。

 

「それよりも殿下、まだ夕食までお時間もあります。アイシア様と夕食まで町へ出てこられてはいかがですか? アイシア様への気分転換にもなりますでしょう」

「アイシアって、確か……」

「貴方の婚約者だったわね……」

「……あぁ」

「行くなら、俺が護衛しますよ? アイシア様の方はリリーナ嬢が一緒でしょうし」

 

 まだ行くとは言っていない、と言葉を挟もうとするが、ナンシーと目が合い思わず言葉を飲み込んでしまった。

 気分転換というからには、何か塞ぎこんでいるのかもしれない。

 仕方ないとレイフェリオは立ち上がる。

 

「ごめん……ちょっと行ってくる。皆は好きにしていてくれ。ナン、あとは頼む」

「かしこまりました。シェルト殿、お願いいたしますよ」

「わかってますよ」

 

 シェルトを伴い、レイフェリオは城内へと入った。残されたヤンガスたちは、黙って見送る。

 

「どんな人なのかは気になるか、ゼシカ?」

「き、気にならないわよ。それに……」

「……なんでがす?」

「……町の人の話、聞いたでしょ? チャゴス王子とレイフェリオのこと」

 

 町の人の話によれば、レイフェリオのものは良いものばかりだった。人当たりの良さもあるのだが、風貌も先代によく似ており王になることを楽しみにしている人も多かった。逆にチャゴスは、正反対だ。

 ベルガラックのカジノに行っては遊びに夢中で、年もレイフェリオと同年だというのに政務もせず、王家の儀式すら逃げ回っているということだった。

 加えて、チャゴスは優秀すぎる従兄を疎ましく思っているとも聞いた。現王である父の跡継ぐのが自分ではなく、従兄であることに不満もあるという。あくまで噂だが……。

 

「まぁ……従兄弟って言っても、レイフェリオは先代の息子でチャゴス王子は当代の息子だってか。仲たがいしても仕方ない関係だとは思うがな」

「そんなことはありませんよ」

 

 黙って聞いていたナンシーだったが、二人の仲たがいについては完全否定した。

 

「ナンシーさん?」

「チャゴス王子は素直になれないだけなのですよ。本当は認めたいと思っておられます。共に過ごしたいと考えておいでなのです。ですが、その機会を避けておられるのは他ならぬレイフェリオ様の方なのですよ」

「兄貴がでがすか?」

「……ヤンガス」

「あっ……すまねぇでげす」

「私の前では聞き流しますが、陛下の御前では絶対におやめくださいね」

「……わ、わかりやした……」

「そ、それで、レイフェリオの方が避けているってどういうことなのですか?」

「あいつなら飄々としていそうな気もしたが……」

 

 チャゴスが何を言っても流しているようなイメージだが、そうではないのだろうか。ナンシーは、少し悩むように目を伏せる。

 

「……それは私の口からは教えられません。ですが、チャゴス王子がレイフェリオ様を嫌っているわけではないのは間違いないのです。クラビウス陛下も、何とかお二人の距離を縮めたいとお考えの様ですが……」

「……まぁ俺たちはまだそのチャゴス王子に会っていないから、真偽のほどはわからないからな」

「そうね……結構長く旅をしていたような気もするけれど、まだまだ出会って日も浅いもの。知らないことが沢山あって仕方ないのかもしれないわ……知りたいと思うのは贅沢なことなのかもね」

 

 ゼシカ自身もすべてを仲間に教えているわけではないが、レイフェリオほど語ることもない。兄は既に殺され、母は村にいる。既にレイフェリオも知っていることだ。

 ヤンガスも特に隠すことはなかった。元盗賊であることも知られている。ククールとて、生い立ちについては隠すほどのことではない。それはククール自身が受け入れているということもある。

 この中で最も謎なのでは、レイフェリオだったからだ。

 

 レイフェリオの故郷で、それに触れ改めて何も知らないと言うことを思い知らされることとなった。

 

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