ようやく、ですね。
気持ちをきりかえたレイフェリオは城を出て宿屋に向かった。宿屋の前にはヤンガス、ゼシカ、ククールが立っている。装備を確認しているところをみると、バザーで装備を整えてきたのだろう。
レイフェリオに気が付くと、三人が駆け寄ってきた。
「用事は終わったのか?」
「ああ」
「ねぇ、レイフェリオ。その格好でいいの?」
旅人の服ではなく、王子服のままでいることを言っているのだろう。
レイフェリオは苦笑する。
「このままでいい。もう身分を隠す必要はない。それに、いざというときはその身分が必要になる場合もある」
「……兄貴」
「と、言われたんだ」
クラビウスや、シェルトらに指摘されたことを白状する。
当初は着替えていくつもりだったレイフェリオだ。それでも、この服は守備力も高く、戦闘を行うのに邪魔にならないようになっている。今までの旅装よりは、遥かにいいものだ。
「だが、その額当てはいいのか? みればすぐにサザンビークの王族だとわかるんじゃないか?」
「……それが目的なものだからな。この重みが俺の責任の重さでもあるんだろうから……今は外せない」
王家の紋章がある額当て。外を出歩くには重いと、毎回外していたものだ。
それでもこれはレイフェリオだけが身に着けることを許されたもの。外すと言うことは、それを放棄したということになる。王族として旅立つと決めた以上は、外すことはできないものだ。
「お前が決めたのならいいが」
「気を遣わせたな、ありがとう」
「ほら、行きましょう。トロデ王が待っているわ」
「兄貴!」
「あぁ、行こう」
レイフェリオを先頭に城門へと向かうと、兵士が敬礼をする。既に事情は伝わっているらしい。
「お気をつけて」
「お帰りをお待ちしております」
「あぁ、警護は任せた」
「「はっ!」」
城門が開けられ、外へと出る。
馬車に乗ったトロデが肩を落としながら待っていた。それすら、レイフェリオは懐かしく思う。トロデに会うのは、国に到着して以来だ。
「トロデ王、お待たせしました」
「ん? お、お主レイフェリオか!?」
「はい。叔父上の許可もいただきましたので、同行します」
「そ、そうか……それにしても」
トロデは御史台から降り、レイフェリオを見回す。じっくりとみられ、レイフェリオは思わず後ずさった。
「あの、王?」
「あ、いや。こうしてみると、王子だということを認識しておったのだ。にしても、チャゴス王子とは全く違う衣装なのだな」
「俺は戦闘を行いますので、動きやすい服装にしてもらっているんですよ。チャゴスや叔父上は、そういったことは苦手なので、必要ないんです」
「なるほどのう……」
納得顔のトロデだが、チャゴスの名が出たことで、レイフェリオはやらなければいけないことを思い出す。
膝をつき、トロデの目線に合わせた。
「……チャゴスが色々と迷惑をかけたようで、申し訳ありません」
「レ、レイフェリオ!?」
「何をしでかしたのかはわかりませんが、王や姫に迷惑をかけたことはわかりますので。サザンビークを代表して、謝罪します」
「……王子は何も知らんのだ。致し方ない。それにお主が頭を下げる必要もないわい」
「王……」
「そうじゃな……姫にはお主から声を掛けてもらえるかの」
「えぇ、構いません」
立ち上がると、レイフェリオはミーティアの顔へと近づく。言葉は話せないが、こちらの言葉はわかるのだ。チャゴスが何を言ったのかはレイフェリオにはわからない。それでも傷つけられたのであろうことは、ミーティアの表情から理解できた。
「姫……従弟が失礼をしました。知らぬこととはいえ、姫を傷つけたことお許しください」
「……ヒン」
頭を下げ騎士の礼を取ると、ミーティアが顔を近づけその頬に触れる。
言葉が話せないミーティアなりの意思表示なのだろう。
「……ありがとうございます、姫」
「ヒン」
チャゴスは知らなくとも、レイフェリオはトロデ―ン国の王と姫だということを知っている。事情が事情なので国家間の問題になることはないだろうが、それでも王家の人間として誠意を見せる必要がある。
トロデもミーティアも、それを受け入れてくれた。今はそれで十分だ。
「さて……ではゆくとするか」
「それはいいけどよ……兄貴、どこに行くんでがしたっけ?」
「あんたは……船を取りに行くんでしょう」
「あ! そうでげした。ってことは荒野に行くんでげすか?」
パルミドの情報屋の話では、荒野に古代の魔法船があるということだった。そこへ向かうのかと聞くヤンガスに、レイフェリオは首を横に振る。
「トロデ―ン城に向かおう。荒野の荒れた船なら、以前見たことがある。調べてみたが、何も変わったことはなかった」
「……なるほどな。近くにあるトロデ―ンなら何か情報があるかもしれないってか」
「そういえば、ベルガラックでそんなことをトロデ王が言っていたわね」
「あぁ。トロデ―ンへもルーラで行ける。時間を無駄にしている暇もないからな。すぐに向かおう」
「合点でがすよ、兄貴」
ヤンガス、ククール、ゼシカ。そしてトロデも頷くのを確認し、レイフェリオは呪文を唱えた。
「ルーラ!」
詠唱されるとともに、光に包まれ一行は呪われた城へと向かっていった。
短いですが、次回からは地方が変わるのでいったん区切ります。
トロデ―ンへいよいよ出発しました。