戦闘描写はありません・・・。
呪われた城
一行が運ばれた先は、トロデ―ン城の前。
なのだが、その光景に一行は言葉を失う。
「……」
「……ここがトロデーン城、でがすか?」
「あぁ。……もう、あの時の面影もなくなってるがな」
外からでもその異様な光景が見てとれる。呪いのためか、城全体が闇に覆われているようだ。
城門までくると、その扉には荊が巻き付いていた。
「出るときはなんとかなったのだかの。ここまで荊が侵食しておったか」
「みたいですね」
「開けてみるでがすよ」
ヤンガスが扉に手をかけ押してみる。だが、イバラが巻き付いた扉はびくともしない。
「ヤンガス、俺がやる」
「兄貴?」
レイフェリオの声にヤンガスはその場を譲る。
レイフェリオは扉に手をかけると、瞳を閉じ魔力を集中させる。
「……」
やがてレイフェリオが目を開けたと同時に魔力が炎となりイバラを焼いていく。
扉を封じていたイバラは焼け落ち、手を掛ければ簡単に開いた。
「これで中に入れる。行こう」
「……」
目の前の光景に呆然としているメンバーを気にすることもなく、レイフェリオは中へと入っていった。
「あ、待ってくだせえ! 兄貴―!」
我に返ったヤンガスが慌ててそれを追う。
「何……今のは……」
「……魔力をただ解放したように見えたな」
「それくらいは私にもわかるわよ。呪文も唱えずに炎を出すなんて……初めて見たわ!?」
「……といか通常そんなことはできない。言霊を発することで力は解放される。だから俺らに聞こえなかっただけかもしれないけどな」
「それはそうかもしれないけど」
「気になるなら聞いてみればいいだろ? それより行くぜ」
「え、えぇそうね」
呪文は言霊を必要とする。ゼシカも勢いに任せて叫ぶことで呪文を放ったこともある。だが、それ以外の方法で魔力を溜めこんだ時は、制御が効かずに暴発してしまったこともあるのだ。以前、レイフェリオに怪我を負わせたときのように。
何かからくりがあるのかもしれないが、少なくとも今の芸当はゼシカ、そしてククールにもできないということは確かだった。
二人もヤンガスの後を追う。今回はトロデもそれに続いた。自国の城がどうなったのか気になるようだ。
扉の先を進むと見えてきたのは、かつて庭園だった場所だろう。
イバラが辺りを埋め尽くし、その面影もない。花もすべて枯れ、周囲には魔物も徘徊している。
「美しかった我が城のなんと荒れ果ててしまったものか……これもすべてドルマゲスによる呪いのせいじゃ」
「おっさん……」
「わしらの旅はあの日、我が城の秘宝が奪われたことから始まったのじゃったな……」
過去の日々を思い返すようにトロデが話始めた。
あの日、この城が呪いに包まれたその日のことを……。
★ ☆ ★ ☆
日が沈み夜を迎える頃、トロデは最上階の照らすから空を見上げるミーティアを見つけた。
「姫や、星を見るのも良いが外は冷える。そろそろ部屋に戻って休んではどうじゃ?」
「ええ、お父様。今参りますわ」
そうしてミーティアを伴い、自室へと送ろうとした時だった。封印の間の見張りをしていた兵士が倒れているのを見つけたのだ。
焦ったトロデは、直ぐに駆け寄る。
「どうしたのだ!? 何があった!?」
「うっ……」
「誰かっ! 誰かいませんか!? 医者を呼んでください!!」
ミーティアは大声で叫ぶ。その間にも兵士へと声をトロデはかけ続けていた。
「しっかりしろ。何があったのだ!」
「お、王様……何者かが……こ、この上の封印の間に……ぐっ」
「封印の間じゃと!!? ま、まさか、アレを狙う者が!」
兵士の言葉を聞き、トロデは急ぎ封印の間へと続く扉を開ければ、そこには同じく倒れている兵士の姿があった。襲われたことは一目瞭然だ。何者かがこの先にいる。恐怖はないわけではないが、確かめなければならない。震える拳を握り、意を決して向かおうと足を踏み出す。
「待ってください、お父様。賊がまだ潜んでいるかもしれません。お一人では危険です」
「いや、もしアレが……あの秘宝が狙われているのだとすれば、こうしてはおれんのじゃ」
「お父様……では、私もご一緒します」
「駄目じゃ、危険すぎる。お前になにかがあれば──―」
「私もトロデーンを継ぐもの。覚悟は出来ております」
「ミーティア……」
「さぁ、参りましょう」
迷いのあるトロデを置いて、ミーティアは先に階段を上っていった。
その後ろ姿にトロデはしばし動くことができなかった。しかしふと我に返り急ぎ後を追う。
ミーティアに追いつき、階段を上りきるとそこには一つの影が見えた。封印が施された魔法陣の中に立ち入ろうとしている。
思わずトロデは叫んでいた。
「ここで何をしておるっ!? その杖に触れてはならぬ!」
「こ……これはトロデ王に、ミーティア姫。よもや貴方がたに見つかってしまうとは」
振り向いたその人物は、城へ滞在していた道化師のドルマゲスだった。
「しかし、その慌てよう。やはりこの杖は噂通りのチカラを持っているのですね?」
「……貴様、我が城に近づいたのはその杖が目的だったのか!?」
「さすがは王様。話が早くて助かりますよ。このトロデ―ン城の奥深く封印されし、伝説の魔法の杖は持ち主に絶大なる魔力を与えるとか……」
「それをどうするのですか?」
「ふふふ、私はこれをもって究極の魔術師となる。そして、私のことを馬鹿にしてきた愚民どもを見返してやるのだ」
「愚かな……その杖はそのようなものではありません。決して解き放ってはならぬものなのです」
「……気高き姫君よ。既に賽は投げられた。止めても無駄ですよ。クックックック」
「貴様っ!」
笑みを浮かべながらドルマゲスは、杖へと手を伸ばす。封印の役割を果たしていた鎖を引きちぎり、杖を抜く。すると魔法陣が光を放ち、魔力が迸った。
「きゃっ」
「くぅ……うわっ」
力に推され、トロデは壁へと吹き飛ばされる。
「さぁて、それでは早速この杖のチカラを試させていただきましょうか」
「おやめなさい。力に溺れてしまえば、その先に待つのは破滅だけです」
「この期に及んで戯言を。それは予言ですか?」
「いえ。予言ではおりません。そう確信しています」
ミーティアはまっすぐにドルマゲスを見据える。一国の姫君たる心がそうしているのか。一歩も引く様子はない。
「クックック。ならば、貴方で実験をさせてもらいましょう」
「ひ、姫ー!?」
ドルマゲスが杖を構え、矛先をミーティアへと向けた。杖の先から魔力が放たれ、禍々しい光がミーティアを襲う。トロデはすぐに立ち上がり、ミーティアの元へと急いだ。
だがミーティアは、魔力をそのまま受けることとなった。
「うっ……」
「おや? もっとすごい力を発揮するかと思ったのに……」
魔力を受けたミーティア、そしてミーティアを庇おうとしていたトロデは、それぞれ馬、魔物へと姿を変えて意識を失ってしまっていた。
これにドルマゲスは脱力する。
「姿を馬や魔物に変えただけか。この程度の呪いしか使えないとは、期待外れだな……。ん?」
ドルマゲスが地面へと視線を向けると、魔法陣が未だ淡く光っているのがわかる。恐らく、魔法陣の効力はまだ続いており、封印の力によって杖自身の力が制限されているのだろう。
そう推測したドルマゲスは、魔法陣を出て、そのままテラスの方へと歩いていった。
外へと出た道化師は、杖を掲げ叫ぶ。
「さぁ杖よ。お前の真のチカラ、我が前に示して見せろっ!」
声に呼応するかのように、杖からあふれんばかりの魔力が輝く。
「おぉ、このあふれんばかりの魔力。なんと素晴らしい! ……お? おぉ……これは……お、抑えきれない……おぉぉぉぉぉぉ!!」
ドルマゲスの身体から魔力があふれ出し、イバラが城を包み始めた。
ちょうど目を覚まし封印の間の魔法陣の中にいたトロデは、魔法の効力によりイバラに包まれることはなかった。同じくミーティアも魔法陣の中で意識を取り戻す。
「な、何じゃこれは……?」
混乱するトロデたち。その中で、ドルマゲスの高笑いだけが響いていた。
★ ☆ ★ ☆
「……あの時、わしらは陣の中におったから無事だったのじゃろうな。だが、なぜレイフェリオも無事だったのだ? いや、無事でなければ今頃わしらもただではすまなかったかもしれんが……」
「そう、ですね。……俺にも良くわからないんですが」
「兄貴もこの場にいたんでがすよね?」
「あぁ……城を出ようと思っていたところだったんだが、異様な魔力を感じて中に戻ったんだ……」
夜になったにも関わらず、外に出ようとしていたとは危険なことだろうが、旅を続けてきたレイフェリオにとっては大したことではなかったのかもしれない。
「突然、イバラが襲ってきたのには驚いた。だが、俺の前で弾き飛ばされていったんだ」
「呪いが効かないってこと? ……そんなこと普通ない、わよね?」
「……昔から呪いの類に影響を受けた試しがない。理由は……俺にはわからない。だが……」
「だが、何だよ?」
「……父なら何か知っていたのかもしれない。本当に生まれたばかりの時は……俺も郷にいたらしいから。その時のことは、父しか知らないんだ」
「郷?」
「竜神族の郷だ。覚えていないから、あくまで聞いた話だけどな」
レイフェリオが竜神族との混血児だということは、全員が既に知っている。驚くことではないが、本人から直接聞かされると、どう反応してよいかわからないというのが態度に出ていた。
それにレイフェリオは苦笑する。
「呪いが得意な魔物は、俺が前にでる。その方が安全だからな」
「レイフェリオ……」
「……わかった。任せるぜ」
「あぁ」
「そういえば、城の中で船のことを調べるって、どこに行けばいいんでがすか?」
珍しくヤンガスが軌道修正に入る。確かにここにきた目的は、魔法船について調べることだ。
「城の図書室は、左手にある建物じゃが……イバラに包まれておるからの」
「空いている扉から入るしかないのかしらね」
トロデが示す図書室は、入り口がイバラで潰されている。入り口から入ることは難しいだろう。一度、城の内部へと入り、図書室へと続く道を探した方が良さそうだ。
一行は右手にある扉から城内へと入ることにした。
城内には、呪いで身体がイバラとなった兵士、侍女などがそこにあった。温もりが感じられるのは、まだ生きている証拠だろう。呪いが解けるまでは、彼らを解放することはできない。
呪われた彼らを見るたびに、寂し気に表情を曇らせるトロデが痛々しかった。
魔物は城内にもおり、戦闘をこなしながらようやく王座の間までたどり着く。
「随分と遠回りさせられている気がするわね……」
「仕方ないじゃろ。……そこの通路を右へと進めば奥に扉があるはずじゃ。そこが図書室に繋がっておる」
「ったく、狭い場所で戦闘はきついぜ……」
ヤンガスがいうのはもっともだった。ダンジョンと変わらぬ狭い空間での戦闘は、気を張りながらのものとなる。面倒なのは確かだった。
囲まれさえしなければ、非戦闘要員がいる場合は護りやすい場合もあるのだが。
「ん? おい、あそこじゃねぇか?」
ククールが指し示す扉。トロデが駆け寄り、扉を開けるとすぐに本棚が見えた。どうやら、ここが図書室らしい。
「よし、手分けして探そう」
「合点でがすよ、兄貴」
「荒野の船に関するものでいいのよね?」
「だな……俺はこっちから調べるぜ」
本の数も多いので、手分けして本を探す。
どれくらい探しただろうか。そろそろ夜も更けてきそうなほど時間が経った頃、ようやく一冊の本を見つけることができた。
ちょこちょこセリフが原作と異なっています。
ミーティアの性格が違うせい・・・でしょうね。