魔物を倒しながら、海を進んでいると岩で出来たアーチが見えてきた。
「この近辺か……」
「とりあえず、ここで待ってみるのか?」
「あぁ。魚影が見えればいいんだが、下を覗くのは危険だからな。襲ってくるのを待つ方がいいだろう」
岩のアーチ付近の辺りをゆっくりと回る。下手に離れれば現れない可能性があるからだ。
どのくらいそうしていたのか、待っているのにも疲れ始めた頃、その瞬間は訪れた。
「!? 下だ!」
「うおっ」
「きゃっ」
船体を揺らすほどの巨大な影が、その姿を現した。龍のような体躯、間違いなく海竜だ。
大きな体をうねりながら、こちらをにらみ、口を大きく開けた。
「これかっ!? みんな、目を閉じろっ!」
「グシャァァァ!」
指示を出すと同時に、レイフェリオは魔法の鏡を掲げる。辺りが真っ白になるほどの光。強烈な魔力をその鏡で受ける。
「くっ」
「シャァァァア……」
鏡ですべての魔力を受け取ると、鏡に力がみなぎっているのが感じられる。どうやら、成功したようだ。
あとは、海竜を退けるだけだ。
ここまでの戦闘をこなしてきたレイフェリオたちにとって、海竜はさほど困難な相手ではなかった。こちらの攻撃を数回受けた後は、尻尾を巻いて逃げ出していったのだ。逃げていった魔物を追いかけてまで、倒すこともない。
再び、船をまわし闇の遺跡がある陸地へと急いだ。
★ ☆ ★ ☆
遺跡の入り口へ到着した。入り口には、未だ闇の結界が張られている。その反対側には、さも意味ありげに立っている塔。中央には、何かをはめ込むくぼみがあった。
「このくぼみが恐らく……」
「太陽の鏡をはめ込むのね」
「兄貴、頼むでがすよ」
「……皆はちょっと離れていてくれ」
「わかった」
レイフェリオが一人、その中央に立ちくぼみへと鏡をはめ込んだ。
ピタリとはまった鏡。刹那、光が鏡からあふれ出すと、光の帯が遺跡の入り口へ向かっていく。
「見て、闇の力が解けていくわ」
光に照らされたことにより、遺跡全体から闇の力が弱まっていく。恐らく、中にいるドルマゲスにも影響があるだろう。
一体、何のためにこの遺跡に来たのかはわからないが、再び何かをしようとしているのならば、それを阻止しなければならないだろう。
「いよいよなのね……」
「長かったでがすよ。ここまで」
「まぁな。ようやく院長の仇もとれるってわけだ」
ゼシカ、ククールは大切な人を手にかけられたという想いがある。無論、ギャリングの仇という意味ではレイフェリオも二人と想いは同じだ。いや、オディロとギャリングという二人を失っているレイフェリオにとっては、それ以上かもしれない。
悲しみも悔しさもある。これで、こんな想いをする連鎖を止めなければいけない。
拳を固く握りしめると、遺跡の入り口へと歩き出す。
「ここからは、敵の領域だ。覚悟はいいか?」
「あぁ、いつでもいいぜ」
「勿論よ」
「でがす!」
三人の声に頷くと、駆け足で遺跡の中へと入っていった。
遺跡の内部は、予想通り魔物が溢れていた。中には魂のようなものもうろついている。声が聴きとれるのが不気味ではあるが、魔物ではないようで戦闘にはならなかった。
「オオーン。何千年もの間破られなかった結界が破られてしまった……。ここは我らの崇めるラプソーン様の復活の日を願って建てられた神殿。暗闇の結界は異教徒どもからここを守るためのもの。その結界が破られたということは、異教徒どもが神殿を汚しに攻め入ってきたというのか……オオーン」
「……ラプソーン?」
不気味な魂は一方的に話した後、すぐにどこかへ行ってしまった。遠くへいくわけではなく、彷徨っているだけのように見える。
だが、その魂の意識が語ったことは、聞捨てることのできないものだった。
「何? ラプソーンって」
「聞いたことないでがすよ」
「俺もだ……レイフェリオ?」
聞き覚えがない三人とは違い、レイフェリオは眉を寄せる。聞いたことがないわけがない。だが、あくまで伝説。おとぎ話のようなものだった。
「……幼い頃、読んだことがある。暗黒神の話を。ただの夢物語。よくある逸話だと思っていたんだが……」
「どういうことだ?」
「俺も詳しいことは覚えていない。本当に小さい頃に父上から聞いたんだ。名前以外のことは、すまない。覚えていない」
「暗黒神……とても良い神様には思えないけれど?」
「だな。……ドルマゲスがここに来たことも、何か関係があるのか?」
「可能性はありそうだ。……あとで調べる必要があるな」
すぐには無理だが、城に戻った時には、調べてみる価値はあるだろう。今は、ドルマゲスを追うのが優先だ。
「ん? 兄貴、階段がおかしいでがすよ?」
「階段、なのか? ……何かの仕掛けなのかもしれないな」
「どこかにスイッチがあるってことね。探してみましょう」
襲ってくる魔物を倒しながら、仕掛けを探す。遺跡の中には、道が複数あり探すのも一苦労だった。また、古い遺跡だからか朽ち果てている満ちもいくつか存在していた。通れる場所を見つけながら仕掛けを起動させ、階段が形を成す。
「これで先に進めるでがすよ」
「今後も仕掛けを動かさないと進めない場所がありそうだな」
「そうね……時間を取られてしまうけれど、仕方ないわ」
焦っても事態は変わらない。目の前の道を一歩ずつ進むことが、最善だろう。
起動した階段を上り、先へと進む。
闇の力の影響なのか、奥へと進む度に何かに圧迫されるような力を感じる。僅かではあるが、力が押さえつけられるような感覚。太陽の鏡の力で弱まったはずだが、それ以上に重い闇の力を受けているような錯覚が、レイフェリオを襲っていた。