3DS版での追加イベントになります。
ハワード邸を出たところで、ゼシカの足が止まる。
「ゼシカ?」
「あ……えっと、大した用じゃないんだけど……」
全員が足を止め、ゼシカへと振り返った。
「……ドルマゲスを倒した。それはそうなんだけど、私は兄さんの仇を討ったなんてちっとも思えてないの。暗黒神ラプソーンっていうのが何者なのかはよくわからないんだけど……あの杖をこのままにはしておけないわ」
「……ゼシカ」
「だから……あの杖をもう一度封印するまで、旅を続けるから」
「……俺も、そうさせてもらうぜ」
便乗するようにククールが割り込む。
「ククール?」
「どうにも気に入らねぇ……」
裏で糸を引いているのが暗黒神ラプソーン。その存在のことを言っているのだろう。であれば、レイフェリオも同感だ。
ヤンガスは元から手を引くことは考えていないだろう。
ラプソーンを倒すまで、旅は続行する。恐らくはそれが、世界に起こっている異変の原因にもなっているのだろう。
「……わかった。これ以上、好き勝手させるわけにはいかないしな」
「合点でがすよ、兄貴」
「んで、北に行くのか?」
「あっ……ねぇちょっとだけ村に寄ってもいいかな?」
レオパルドを追おうとする足をゼシカが引き留める。村というのはリーザス村、彼女の故郷のことだろう。
「……お兄さんのところか?」
「えぇ……ごめんなさい、急いでいる旅なのに」
「構わない。寄り道をしているならば、俺の方がよっぽどさせているからな」
サザンビーク絡みでは多くの時間を使わせているのだ。少し村に戻るくらいどうってことはない。
ヤンガス、ククールを見回しても反対の意志は見られなかった。
「ありがとう」
そうして一行は、リーザス村へと飛んだ。
★ ☆ ★ ☆
リーザス村についてゼシカがまず先に向かったのは、屋敷だった。
何も言わずに突き進んでいくゼシカの後を、レイフェリオたちはついていくだけだ。
屋敷に入り階段を登った先には、以前ここを訪れた時と同じようにアローザが座っていた。
現れたゼシカに気が付いたのか、アローザは思わず立ち上がる。
「ゼシカっ!? いつ戻ったのです?」
「ついさっきよ。またすぐにいかなくちゃいけないけれど……サーベルト兄さんの仇討ち、私にとってはまだ終わっていないの。だから……」
「……」
「ごめんなさい……」
ここを旅立った時、二人の間には険悪な雰囲気があった。しかし、この場にそれはない。ゼシカが成長したためか、それともアローザ自身の変化なのか。
まだ帰れないと言ったゼシカの言葉に、アローザはふっと柔らかく微笑んだ。
「……もういいわ。貴方の気のすむまで好きなようになさい」
「お母さん……」
「けれど、気が済んだのなら必ずこの村に戻ってくるのよ」
「あ、ありがとう」
ゼシカがいない間、アローザの中で気持ちが整理できたのだろうか。何か思うところがあったのかもしれない。
ふと、アローザがレイフェリオへと向き直った。
「レイフェリオ殿下……この度は、娘がご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「いえ。ゼシカには俺も助けられていますから」
「そういっていただけると、私も肩の荷がおります」
親し気に会話をする二人に置いてけぼりだったのは、当のゼシカだ。
「あれ? レイフェリオとお母さんは知り合いだったの?」
「貴方が飛び出していった時、ここに来てくださったのよ」
「……ゼシカと初めて会った時のことだ。そのままゼシカは村を出ていったからな」
「あはは……そうだったわね」
レイフェリオたちには目もくれず、アローザと喧嘩別れした時のことだ。随分遠い昔の話のようにも思う。それだけ、濃密な時間を過ごしてきたのだから。
「ゼシカ。殿下に向けてその態度は────」
「俺が構わないと言ったのです、夫人。俺たちは仲間ですから」
「レイフェリオ」
「……殿下の寛大なお心に感謝しますわ」
アローザはレイフェリオへと頭を下げる。サーベルトがいない今、リーザスの当主はアローザになる。しかし、リーザスはサザンビークと直接的に関係があるわけではない。あるとすれば……。
「そういえば、ラグサットはどうしたのですか?」
「ラグサット殿ならば、先日村を出ていかれました」
「あいつ……何をふらふらと」
「おい、ラグサットって誰だ?」
会話に割り込んできたのは、ククールだ。この中でラグサットに会ったことがないのはククールだけだった。
「ゼシカの婚約者だ。サザンビークの大臣の息子」
「ゼシカの婚約者? へぇ……」
「私は認めてないわよ……」
不本意だということは、ゼシカの表情からも読み取れる。決して歓迎しているわけではないのだろう。
「一応フォローしておいてやると、放蕩息子ではあるが遊び人ではないはずだ」
「兄貴とは仲良さげでげしたね?」
「……あいつは色んな意味で俺を畏れない奴だったからな」
「レイフェリオ、何かいったか?」
「いや、なんでもない。あいつとはただの幼馴染だ」
ポツリとつぶやいた言葉は、どうやら聞こえていなかったようだ。思わず口に出てしまったことに、慌てて言い換える。隠すほどのことでもないが、特別伝えることでもない。
「その話はまたあとでしましょう、ゼシカ。今は他にすべきことがあるのでしょう」
「……そうね。わかったわ。それじゃあ、私は行くわね」
「いってらっしゃい。気をつけるのよ」
「ありがとう、お母さん」
「レイフェリオ殿下も」
「ありがとうございます」
和やかな雰囲気の中、レイフェリオたちはアローザに見送られ屋敷を出た。出てすぐ、ゼシカは足を止める。
屋敷の右手には、サーベルトの墓があるのだ。ゆっくりとそちらへと歩いていく姿に、レイフェリオはククールへと目くばせをした。
頷いたククールと引っ張られていくヤンガスを見送り、レイフェリオはゼシカへと近づく。
「……ゼシカ」
「私ね。ここを飛び出したとき、ドルマゲスを討てばそれで終わりって思ってた。……でもドルマゲスは操られていただけで、本当の敵はラプソーンだった」
「……」
墓を見つめ、後ろにいるレイフェリオを振り返ることなく話すゼシカに、応えることなくレイフェリオはただ聞いていた。
「時々ね、不安になるの。本当に私たちだけでラプソーンを止められるのかって……弱気になっていちゃだめだってわかっているの。けれど……不安でたまらなくなる。暗黒神ラプソーンに操られた時、どうにもならなかったから……だから怖い、のかもしれない」
操られたゼシカだからこそ、ラプソーンの恐ろしさを感じる。それはレイフェリオたちにはわからないものだ。自分の身体を乗っ取られるという感覚は、とてつもない恐怖だっただろう。
ゼシカはレイフェリオへと向き直ると、自嘲気味に漏らした。
「こんなの私らしくないわよね……」
「ゼシカ……」
いつも強気で弱音を吐いたことがないのがゼシカだ。それでも、どんなに呪文に優れていてもゼシカはレイフェリオと同い年の少女でしかない。
強敵に立ち向かっていっても、そういうところは普通の少女なのだというところに、レイフェリオは安堵を覚えていた。
「いいんじゃないか、それでも」
「えっ?」
「不安にならない奴は、ただの無謀者だろう。相手は姿もわからない存在なんだ。そう思うのは当然だと思う」
「……レイフェリオも、不安になることがある?」
「……そう、だな。俺の場合は、それ以上に責任があるから」
「責任?」
「世界に対しての責任。王族としての、だな」
「……王族として。でもそれはレイフェリオだけが背負うものじゃないでしょ?」
「そうかもしれない。けれど、実際問題俺以外に戦えるものがいないのも事実だ」
「死ぬかもしれないのよ? それでも?」
「……怖くないわけじゃないさ、俺だって。けど……今の俺は一人じゃないからな」
ククール、ヤンガス、ゼシカ。そしてトロデやミーティアがいる。
同じ目的をもち、共にいてくれる存在がいることはそれだけで力になるものだ。
「一人じゃない、か」
「ゼシカはゼシカ自身の想いをもっている。それで十分だ。らしいとからしくないとかじゃなく、それがゼシカだろう?」
「……レイフェリオ」
真実思ったことを述べているだけだが、ゼシカにはそれで十分だったようだ。
今までにないほどゼシカがふわりと微笑んだ。
「やっぱり、レイフェリオは優しいわね」
「そうでもないと思うが……?」
「ううん。やっぱり優しいわよ。アイシア様がうらやましいわ……」
「なんでアイシアが出てくるんだ?」
「……誰にでも欠点ってあるものよね……」
「?」
「何でもないわ。さぁ、行きましょう」
意味深な言葉を残したまま、ゼシカは坂を下っていく。いまいち納得が言っていないレイフェリオもその後を追った。
イベントを知っている方は、「あれ?」と思われたかもしれませんが、鎧はなしです。
王族に地方領主の鎧を渡すのもどうか、と思ったので・・・。
先日は投稿できなくすみませんでした。