随分と久しぶりの更新となりますので、お手柔らかにお願いします。
台詞など原作と多少違う部分があります。
洞窟内部はひんやりとしており、所々に氷が張っていた。
「……上には氷柱か。足元を注意して進まないと危ない、な」
「あっちには氷の橋のようなもんがあるぜ」
辺りを軽く見回しても、ただ歩くだけでも慎重さを必要とする場所のようだ。それに加えて魔物もいる。足場が悪い状態で戦闘にならないように気をつけなければならない。
「兄貴ー! さっさと行くでがすよ」
「……レイフェリオ、あいつが要注意、だ」
「わかってるさ」
魔物を倒しつつ、地下への道を進んでいくが、人の気配はない。グラッドはまだ奥にいるようだ。
とその時、ドンと音がした。
「痛っ」
氷に注意しながら進むも、氷に入った途端にヤンガスが足元を滑らせ尻餅をついてしまったようだ。ここの氷は、他の場所よりもいっそう滑るようで、自分の意志で歩くことも難しい。
転んでしまったヤンガスを引き起こすことも一苦労だ。
「っと、ほらよ。うわっ……あぶねぇ」
「大丈夫か? ククール」
「あぁ……」
「ヤンガスも。ここは一歩ずつゆっくり歩かないとダメなようだ」
「め、面目ねぇでげす兄貴」
その先もレイフェリオを先頭に、奥へと進んでいくと一際大きな氷に出くわした。
「氷柱……か?」
「その割には、大きくない?」
「それもそうか……ん?」
ふと横を見れば氷の隙間から何かの影が見えた。
奥に何かいるらしい。レイフェリオが近づけば、人の気配が奥からしてきた。
「だ……誰か、いるのか……? いるのなら、助けてくれ……身体が凍えてしまって動けないんだ……」
そこ声は震えているようだった。凍えてということは、短くない時間そのままということかもしれない。一刻を争うなら急ぎ助ける必要があるだろう。
「……皆、離れて」
「兄貴?」
レイフェリオは右手をかざし、氷へ魔力を送る。掌から現れた炎が氷を溶かしていった。
氷柱の先に向かうには迂回すればいいのだろうが、溶かした方が手っ取り早い。あっという間に溶けた氷の先には、倒れている男が一人。
「大丈夫ですか……?」
「うっ……わ、私はオークニスの薬師グラッド。この洞窟で薬草の採取をしていたら……オ、オオカミに襲われて……慌てて逃げ込んだら、落ちてきた氷柱に閉じ込められてしまったんだ」
「……怪我は大したことないな。……ホイミ」
かすり傷は負っているようだがそれ以外には大きな傷はない。やはり、さむさで体温を奪われているのが原因のようだ。であれば、直ぐにでもこの洞窟から出た方がいい。
「あ、ありがとう。だ、だが寒い……早く暖めなくては……」
「兄貴のさっきのアレでは駄目なんでがすか?」
「……魔力に耐性のない者に使えば、その身を焼くだけだ。グラッドさんには出来ない」
「うっ……ん? あ、その、袋は!」
「えっ?」
グラッドが指したのはメディから預かった袋だった。袋をグラッドの前に差し出す。元々、グラッドに届けるように言われていたものだ。
「これは、メディさんから貴方に渡すように頼まれたものです」
「……そうか。すまないが、その袋を開けてくれないか?」
「え、ええ」
グラッドに言われる通りに袋を開け、中身を見せる。その中には見慣れない薬草が入っていた。だが、グラッドには見覚えがあるようだ。
「ヌーク草か……本来なら薬湯にして飲むものだが、このままでも」
袋の中に手を入れ、グラッドは薬草を掴みそのまま口にいれてしまった。
口に含んだ途端に、目を見開き勢いよく起き上がる。
「くぁら──っっ!」
「……えっと、大丈夫なのよね?」
「さぁな」
「はぁはぁ……ふぅ、やっぱりヌーク草は生で食べるものじゃないな。まぁ粉になっていなかっただけましか……」
「その、グラッドさん……?」
「あ、あぁ、すまない。お陰で身体は温まった。君たちのお陰だよ、ありがとう」
どうやらヌーク草の効果のようだ。見たことはなかったが、あの薬草がメディの家で飲んだものらしい。それならば、もう心配はないだろう。
「いえ、俺たちはメディさんに頼まれたものを届けただけです。お礼ならメディさんに」
「……あぁ、そうだな。まさか、予期していた訳ではないだろうが」
「で、あんたはどうするんだ?」
「あ、あぁオークニスに戻ろうと思う。もし、君たちも戻るつもりなら一緒に連れていってくれないか?」
「またオオカミに襲われるかもしれないものね。一緒に行った方が安全だと思うわ」
そして、ゼシカの不安は的中した。
行く場所が同じだということで、共に洞窟を出ると、そこにはオオカミの群れが道を塞いでいたのだ。
「あ、兄貴っ! オオカミでげす!」
「あぁ。だがあの赤い目……」
「どこかで見たことのある目だな、レイフェリオ」
レイフェリオの呟きにククールも同意する。そう、あの目はハワードの邸で見たものだ。レオパルドのそれと同じもの。
グラッドを背後に庇うようにして、レイフェリオらが前に出る。
「こいつら……私が出てくるのを待ち伏せしていたのか。それにしても……こんなにいるなんて……」
怯えるグラッドに、徐々に距離を詰めてくるオオカミたち。迷っている暇はなかった。
「ゼシカっ!」
「わかったわ」
レイフェリオの合図でゼシカが魔力を練る。グラッドを庇いながらであるため、これ以上距離を詰められる前に倒す必要がある。
「ベギラゴン!」
ゼシカが呪文を放つ。火炎呪文でも最上級のものだ。業火がオオカミらに向かっていく。それに合わせてレイフェリオとヤンガスが武器を手に取り、一気に斬りかかった。
「ギャシャ……」
「ウゥゥ……」
怯んだオオカミにすかさず追撃をすれば、それほどの強敵ではなかったのか次々と倒れていく。しかし、数が多い。
「くっ、イオラ」
「これでもくらいなさい、イオラ」
レイフェリオとゼシカの呪文が放たれる。回り込んできたオオカミをも吹き飛ばす。
「しつこい男は嫌われるっての……バギマ!」
「……自分のことでがすか」
「何か言ったか、ヤンガス?」
単体を攻撃するよりは呪文で一気に制圧したほうがいい。ヤンガス以外は全体攻撃呪文を使える。一方で、数に任せて群れを離れグラッドに向かうオオカミがいた。
「まずいっ! グラッドさん!」
「くっそ、こいつら何で私ばかりを狙うんだ!?」
「……」
指摘されて気が付く。オオカミらはレイフェリオたちに対しては群れを張り、行く先を塞ぐよう行動していた。積極的に攻撃は仕掛けてきていないようにも見える。無論、隙を与えないようにもしているため、攻撃される前に倒れているのかもしれないが。
「グルルル」
『待て』
「っ!?」
更にグラッドを追い詰めようとしたところで、オオカミの動きが止まった。否、止められたと言った方が正しいだろう。奥から響くような不穏な声が聞こえる。
『その者ではない。確かに賢者の血を感じるが、ちがう。本物は別にいるはず……真の賢者を探すのだ』
声に応じるように、オオカミはグラッドを襲うのを止めその場を走るように去っていった。レイフェリオたちが相手をしていたオオカミもそれに合わせるように去っていく。
真の賢者という言葉。それが意味するところは、あの杖を持ったレオパルドが近くにいたということだろう。グラッドが賢者に近しい者。ということは、グラッドに近しい者が賢者だということになる。
同じことを考えていたのだろう。しかし、グラッドは首を横に振っていた。
「いや、まさかな……そんなことあるはずが……」
「グラッドさん、先ほどの声が言っていた『賢者』について、心当たりがあるんですか?」
「……心当たりというか。その……すまない。一旦、街に戻ってからでもいいだろうか」
言葉を濁すグラッドに、何か事情がありそうだと言うことを察し、まずはオークニスへと戻ることとした。
☆★☆★☆
オークニスに戻った一行は、グラッドの家へと招かれた。
外から帰ったため、冷えた身体を温めながら、グラッドは口を開く。
「実は……薬師メディは私の母親なんだ」
「あのおばあさんがでがすか!?」
「あぁ……あの山小屋の裏にある遺跡。本当なら、私は母親の跡を継いであれの守り人になるはずだったんだよ」
「ならどうして、あんたはこの街にいるんだ? 母親を放っておいて」
ククールの声は冷たいものだった。肉親を一人、あのような小屋に居させていることに対する怒りだったのかもしれない。メディは優しく穏やかな人だった。見知らぬレイフェリオたちを助けてくれた恩人でもある。
ククールの言葉に、グラッドは目を背け下を向いた。
「私は……家を……母を捨てたんだ……」
「……どういうことですか?」
「私は、母から学んだ薬草の知識を人々の役に立てたかった。だた、あの山奥にいたのではそれは難しい」
「それはそうかもしれないけれど。それでこの街に?」
「あぁ。家を出て、ここオークニスで薬師として人々のために尽くす道を選んだんだよ」
自ら選んだと言いながらも、グラッドの表情はどこか晴れなかった。心のどこかでメディを一人残しておいていってしまったことが後ろめたかったのかもしれない。
「君たちが私の前に現れたとき、嬉しかったんだ。母が、私の生き方を認めてくれた気がしてね……」
「いつでも子供のことを見守り、その子が困っていれば助けようとする。親なんてそんなもんじゃよ」
「トロデ王……」
この中で親であるのはトロデだけだ。それ故、言葉には重みがある。トロデの中ではミーティア姫の姿が映っているのだろう。
「……それで、身の上話をするために呼んだわけじゃなかろう? 何か頼みがあるようじゃが?」
「あ、あぁすまない。実は……先ほどの不気味な声のことなんだ。あの声は私のことを指して、賢者の血は感じるが違うといっていた。真の賢者を探しているとも……」
「そうね……そういっていたわ」
「信じられないかもしれないが、私の家系にはかつて暗黒神を封じた賢者のひとりの血が流れているんだ。そして同じ血をひく者は、私以外は母しかいない」
レイフェリオの懸念は当たったようだ。
メディがグラッドの母で、賢者の家系というならばレオパルドの目的はメディに違いない。
「メディばあさんが賢者の末裔じゃったというのか!? こうしてはおれん! 急ぐのじゃ!」
「待ってくれ! 私も一緒に連れていってくれ。どうしても母が心配なんだ……」
唯一の肉親のことだ。不安になるのもわかるが、相手は暗黒神の杖をもったレオパルド。危険なことに違いない。
「グラッドさん、ですが────」
「頼む」
「……レイフェリオ、議論している暇はないぜ」
「そう、だな。わかりました。俺たちから離れないでください」
「ありがとう」
急ぎ向かおうとした矢先のことだった。
グラッドの家の扉が開くと、二人の男性が入ってきた。一人は、寒いのか震えているようだ。
「すまない、グラッドさん。一人診てもらえないだろうか」
兵士の恰好をした人が付き添いで、裸の男が患者ということらしい。酒に酔ったまま廊下で寝てしまい、風邪をひいたと言うことだった。できればグラッドは急ぎメディのところへいきたいのだが、男が大げさなほどに症状を訴えるため、グラッドもしぶしぶ承諾した。
元より、人々の役にたつためといってここにきたのだ。これを無下にしては、ここまでやってきたことを否定するようなもの。
「すぐに診よう。ちょうどいい薬草が手にはいったところだったんだ」
「グラッドさん、それでは俺たちは先に向かいます」
「あぁ。すまない。必ず後で追っていくから母のことを頼む」
何もなければそれに越したことはない。だがその無事を見るまでは安心することはできないだろう。
不安そうな顔のままのグラッドと別れ、レイフェリオたちはメディの小屋まで急ぐのだった。
今後は、ゆっくりと自分のペースで更新することにしました。不定期に更新していきます。
今後とも宜しくお願いします。