村に到着のお話です。戦闘シーンはなしです。
坂を上っていくと石でできた門のようなものが見えてきた。そしてどこかから人の気配を感じる。
近くではないが、遠くでもない。複数の人の気配。
「……」
「兄貴、どうしたんでがす?」
「……あそこに、村がある」
「レイフェリオ?」
不思議に思ったのかヤンガスは辺りをキョロキョロと見回す。だが、ヤンガスが見ている範囲に村落はない。ククールも同じだ。しかし、レイフェリオが嘘をつくとも思えない。
「……どこにあるの?」
「……」
「ちょっと、レイフェリオ待って!」
ゼシカの質問に答えることなく、レイフェリオは歩き出した。慌ててゼシカもその後を追う。
「……あれ、大丈夫なのかい?」
「兄貴のことを言ってんのか?」
「どう考えても可笑しいだろ? この近くに村なんてないどころか、人の気配さえ感じないんだから」
常識的に言えばゲルダの指摘は当然かもしれない。高台を目指して進んでいたが、途中は勿論、今現在も見えるのは木々や魔物ばかり。人がどこかにいるような軌跡は見られなかった。
「人がいるかも怪しいってのに、村なんてあるわけないんじゃないのか?」
「兄貴が嘘をついてるってのかよ!」
「だからそう言ってるんじゃないか」
「ゲルダ、てめぇ―」
言い争うヤンガスとゲルダに、ククールはため息をついた。そして、何も言わずにレイフェリオの向かった先へと足を向ける。
「お、おいククール!」
「グダグダ言う前に、レイフェリオについていけば良いだろ? あいつが嘘を言っているとは思わないけどな」
「あん? どう言うことだい?」
「言葉とおりさ。俺らには見えなくても、レイフェリオには見えているものがある。それだけの話だ」
「あんた……」
肩を竦めるとククールは、足早に向かった。
「ちょっ、待てよ!」
「……何なんだってんだよ。全く……」
慌ててククールを追うヤンガスに、訳がわからないと眉を寄せながらゲルダもそれに続いた。
ククールたちが追い付くと、レイフェリオとゼシカは止まって待っていた。その後ろには、人の手で造られたような門がある。
「村……よね?」
「集落という方が正しいんじゃないか?」
ゼシカとククールは若干気落ちしたように言い捨てた。村よりも人の数は少ないだろうし、ここ以外に人が住んでいる場所へとないのではないかという考えに至ったからだ。文明が遅れているとも言えるだろう。入り口から垣間見る様子は、一昔前のような面影だったのだから。
「行こう」
「あ、待ってくだせぇ兄貴!」
「……まぁそうだよな、ほら行くぜ」
「う、うん」
「……仕方ないね」
未だ納得のいっていない風のゲルダも、仕方ないという風に後をついてく。
集落。その表現が正しいだろう。木や藁、石などで作られた家や柵などは、今まで見てきた町から見れば時間が昔に戻ったようだ。服装などを見ても、同じ時代には感じられないほどにかけ離れている。
レイフェリオらが中にはいれば人々から好奇な視線を受けた。余所者がきた、ということなのかもしれない。
「……どうするの?」
「まずは、ここの長とも言うべき人に会うべきだろう」
「大きな家ってことだな」
「あぁ、行こう」
レイフェリオが指す長とは、集落のまとめ役のことだ。探さなくとも、一際広い家のようなものは一番奥にある。まずは、そこへ向かった。
中に入ると、上座に老人が一人座っている。その前にいる男はまだ若い。ということは、この老人がそうである可能性が高いだろう。
「申し訳ありません、少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ん? えらい小奇麗なかっこをしておるな。見たところよそ者ようだが?」
レイフェリオが話しかけるとじろじろとレイフェリオ、ククールというようにその恰好を不思議そうに見ていた。
あまり見かけない恰好なのだろう。レイフェリオはどこの町でも目立つが、他のメンバーの服装もここの住人たちとは全く違うものだ。
「はい。我々は外から来ました。神鳥レティスを追って」
「ほほう。神鳥レティスについて聞きたいというのか? それは良い心がけじゃ」
「えっと……」
「神鳥レティスはこの世界と異世界とを行き来する力を持っておったというな────」
レイフェリオがレティスの名を出した途端、老人はレティスについて語りだした。こちらが何を言っても話は止まらない。
老人が話すレティスとは、伝説の存在でレティスだけが特別なチカラ、世界を行き来することができたらしい。だが、異世界の邪悪な存在がこの世界を狙い二つ世界をつなぐ巨大な門を作った。このたくらみを阻止するために、レティスは異世界へと向かい自らの力を用いて門を閉じたという。その際、力を使い果たしたレティスは己の影のみを残したまま異世界からは戻らなかった。まれに影が異世界への破れ目を作ることがあり、完全に力が亡くなったわけではなく、破れ目に入ると異世界に迷い込むことがあるらしい。
「影……破れ目、か」
「まぁあんたもいたずらにレティスを追ったりして破れ目に入り込んだりせんよう気を付けるんじゃな」
「ご心配痛み入ります。貴重なお話ありがとうございました」
「礼儀正しい青年じゃな。何もない村じゃが、ゆっくりしていくといい」
「はい」
老人に礼を言うと、レイフェリオは外に出た。ククールたちもそれに続く。
貴重な話というより確信に近い情報を得られた。世間話というか、伝説のおとぎ話を話しているようなつもりなのだろう。意気揚々とした感じだった。
「……で、どうするんだ?」
「ここに来た時に、影を見た。恐らくあれが老人のいうレティスの影なんだろう」
「ってことは、あれを追えば破れ目に行けるってこと?」
「あぁ。破れ目に迷う。異世界ってことだろう」
異世界がどういうところなのかはわからないが、レティスの力が今は必要だ。そのために、可能性に賭けてみる価値はある。レイフェリオはそう判断した。