ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

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ご無沙汰しています。度々の誤字報告、感想ありがとうございます。お待たせしてしまいすみません。


異世界へ

 老人の話では、影を追うことで異世界に迷い込むということだった。ならば、まずはその影を探すのが先だろう。

 

「外を探し回るのか……なら、装備を確認しておくか?」

「そうね、辺境とはいえなにかしら良いものがあるかもしれないし」

「兄貴、行きやしょう!」

「……」

 

 次の目的が決まったことで意気揚々としているククールたちだが、レイフェリオは考え込むように微動だにしない。

 

「レイフェリオ、どうしたの?」

「おい、あんた」

 

 ゼシカの声にも反応しないので、一番近くにいたゲルダがレイフェリオの肩を叩く。すると、ハッとしたようにゲルダの手をはたき落とした。驚くゲルダの顔を見て、レイフェリオはばつが悪そうに顔を背ける。

 

「っ……悪い」

「……何か気になることでもあるのかい?」

「いや……何でもない」

 

 レティスを探す。どこかそこに既視感を感じたような、不思議な感覚がレイフェリオを襲っていた。しかし、この場所に来たのもレティスの話を聞いたのも、今回が初めてだ。気のせいだろう。

 

「装備を整えるんだろ? どこか店がないか、探そう」

「お、おう」

 

 そのまま歩きだしたレイフェリオを、ククール、ヤンガスが追う。その様子をゲルダは訝しげに見つめた。

 

「……」

「どうしたの? 行くわよ」

「あいつ、いつもああなのかい?」

「? レイフェリオのこと?」

「秘密主義。いや、それ以上に普通じゃない。ここにくるまでもそうだ。あれは眼が良いとかの問題じゃないだろ。人間にそこまでの視力があるはずがない……あんたたちは平気なのかい?」

 

 ゲルダの言い回しの意味するところに気がついたのか、ゼシカは眉を寄せた。

 

「……レイフェリオはレイフェリオよ。生まれが特殊なだけ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「それだけって……恐くないのかい?」

 

 恐い。ゼシカがそれを感じたことなどない。恐らくそれは、ゲルダとゼシカたちの関わりの違いなのだ。レイフェリオの人柄を知っているのと、知らないのとの違い。

 しかし、旅を共にするのならば知っておいてほしいとゼシカは思う。ゲルダから視線を外し、前を歩くレイフェリオたちを見据えてゼシカは続けた。

 

「私たちは、ここに来るまでもたくさんの危機を一緒に乗り越えてきた。ククールも、レイフェリオも、私だって抱えているものはあるわ。全てを話してくれているわけではないけれど、それでも彼らは信頼できる」

「信頼、か……」

「何かを隠しているのは私たちにもわかるけれど、レイフェリオが話さないのなら今は無理には聞かない。きっとそれは、私たちを巻き込まないための優しいものだから」

「……」

「わかったなら、行くわよ」

 

 新参者という位置を改めて認識させられたようで、ゲルダは面白くなさそうに顔を反らす。しかし、その足はゼシカの後をついていっていた。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 集落は広いわけではない。歩き回れば直ぐに店は見つかった。金銭での売買はこの村では流通していなく、店主は島に流れ着いた商人で商品も中々売れずに困っていたようだ。

 

「売れねぇなら、店止めればいいんじゃねぇか」

「あはは……」

 

 ヤンガスの指摘はごもっともだ。しかし、島から出る方法がないため、動くに動けないというのが実情のようだった。

 

 店の品物を物色しながら、装備品を購入する。予想には反して、装備品は良い品物が揃っている。

 レイフェリオは、その中で武器を一つ手にした。

 

「レイフェリオ、それ装備できないでしょ?」

「あぁ……」

 

 手にしたのは孔雀の扇だ。勿論、レイフェリオには扱えない。この場で扱えるのはただ一人。

 一番後ろで様子を見ているだけだったゲルダの元へ近づくと、レイフェリオはそれを差し出した。

 

「……あんた、それ」

「君が全く戦えないわけではないことは、これまでの戦闘でわかった。なら、少しでも戦力として考えさせてもらう。今の武器よりも攻撃力は上がるはずだ」

 

 戦力とする。ゲルダはレイフェリオを険しい表情で見ていた。だが、見られているレイフェリオは苦笑しながら武器をゲルダの手に乗せる。

 

「……いいのかい?」

「あぁ」

「ふん、なら有り難く受け取っておくよ」

 

 素直ではないゲルダだが、口元が緩んでいる。新しい武器が嬉しくないわけがないのだろう。盗賊として盗んだものではなく、正規に買って与えられたものにゲルダは馴染みがなかった。裏社会に身をおいていたゲルダにとって、この武器はそういった意味で特別なものとなっていく。

 

 準備を整えたところで、レイフェリオたちは集落の外に出た。

 相変わらず魔物との戦闘をこなしつつ、目的の影を探す。これといった目印がない以上、闇雲に探すしかないだろうが、まずは見晴らしのよい岩で作られた門へと向かった。集落の人々の話では、レティスが降り立つ岩でもあるらしく、集落にも同じようなものがあった。

 

「ここ、だな……どうだレイフェリオ、何か影は見えるか?」

「そうだな……」

 

 辺りを見回すが、まだ影の存在は確認できない。そうして暫く待っていると、ブワッと風が勢いよく吹いた。

 

「きゃ……あ、レイフェリオ見て!」

「兄貴、影でがすよ」

「追いかけるぞ!」

 

 ゼシカが見つけた鳥の影。気配も感じるので、間違いない。レティスのものだ。

 周囲の魔物を避けながら影を追う。追われていることに気がついているのかわからないが、外れの方に誘われているようだ。

 

「っ! あれは……」

 

 影の前方には黒い渦の様なものが現れていた。あれが、老人の話していた異世界の入り口なのかもしれない。渦の前で立ち止まる。

 

「あ、兄貴どうするんでがすか?」

「誘われている……行くしかないだろうな」

「そうね……なら行きましょ」

「あぁ、行くぜレイフェリオ」

 

 レイフェリオはヤンガス、ゼシカ、ククール、ゲルダを順に見る。ここで引き返そうという者はいないようだ。

 

「ほら、行くならさっさとしな!」

「……わかった。行こう」

 

 覚悟を決め、レイフェリオを先頭に渦の中へ飛び込んだ。

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