レティスの背に乗り神鳥の巣だという麓へと下ろされたレイフェリオたち。レティスの姿が見つからないように、レイフェリオたちを下ろすとすぐさま飛び立っていった。
「……ここが巣か」
「結構な高さがあるみたいでがすが……」
見上げてみても一番上、頂上は確認できない。とりあえずは進んでみるしかないようだ。レティスの話では頂上にあるということなので、ひたすら上を目指せばいいだろう。
「どこまで入り組んでいるかわからない。慎重に行こう」
「ふん、なら先頭は任せな」
「おい、ゲルダ?」
「これでも盗賊だったんだ。未知のダンジョンは得意でね」
その言葉に海賊の洞窟での出来事を思い返す。ほぼ、レイフェリオらに仕掛けを解かせていたはずだ。得意なようには思えない。しかし、素早さが随一なのは間違いないので、先頭を任せることに異論はなかった。
「わかった。なら任せる」
「あ、兄貴? いいんですかい?」
「誰が先に行っても大きく変わらない。だが、ゲルダならばその足を生かすことができる。それだけだ」
「確かにそうね。なら、それでいきましょう」
不満そうなのはヤンガスだけで、ゼシカとククールは特に何とも思っていないようだ。レティスの巣なのだから、罠や仕掛けがあるわけではないはずだ。ならば道に迷わなければ問題はないのだから。
そうしてゲルダを先頭に、一行は先を進むことにした。
巣は、内部と外周を行き来することで先を行くことができるようだ。魔物も徘徊しているが、この先レティスの卵を人質に取っている魔物との戦闘があることを考えると、可能な限り戦闘は避けたい。そこはゲルダの出番だった。
ゲルダは、忍び足で近づき魔物をおびき寄せる。その間にレイフェリオたちは先を行く。逃げ足が速いというゲルダは、自慢するだけあって魔物を煙に巻くのもうまかった。ほとんど戦闘をすることなく、順調に先を行くことができたのは、間違いなくゲルダの功績だろう。
どれくらいまで登ってきたのか。内部から外へ出ると、一匹の魔物が外を見上げていた。近くには、大きな卵らしきものがある。恐らく、あれがレティスの卵であの魔物が元凶だ。
「……どうする、レイフェリオ? 下手に戦闘を仕掛けると、卵にまで余波がいく」
「あぁ……かといって手に持てる大きさじゃない」
ならば選択肢は一つ。守りながら戦うしかないだろう。
「ゲルダは出来る限り、注意を引くように動いてくれ。ヤンガスはいつも通りだが、鎌を使用するのはなしだ」
「あいよ」
「合点でがす」
二人は武器を構える。今回、ゲルダも扇は使用しない。翻弄するのが目的であり、扇を使用すると卵にまで影響が出かねないからだ。
「ククールは、俺と卵の守りを頼む。どちらかは傍にいるようにな」
「わかった」
「なら、あたしは爆発系は使用を控えるわね。範囲呪文はできるだけ避けた方がいいでしょ?」
「……そうだな。相手の位置によるが、頼む」
「任せて」
作戦を確認し、戦闘準備をする。相手はレイフェリオたちが、レティスに頼まれたことを知らない。知らせないように、卵を保護しなければならない。ならば、まずはそのまま顔を見せた方がいい。警戒を卵からレイフェリオたちに向けるためにも。
何事もないように足を踏み入れると、足音に気が付いた魔物はレイフェリオたちへと視線を移した。空の動きを見ているということは、レティスの動きを監視していたのだろう。どうやら、レイフェリオたちが来るまで注意を引きつけてくれていたようだ。
「ん? なんだ貴様たちは。どうしてこんなところに人間がいる? その姿も……闇の世界の住人ではないな。どこから迷いこんだ?」
「……お前の方こそ何をしているんだ? こんなところで」
質問には答えずにレイフェリオが逆に問いかける。理由はわかっているが、あくまで無関係を装うためだ。
「ふん、答える必要はない。だがまぁ、卵を見張っているのもいい加減飽きてきたところだしな」
「見張っているってのは、その緑色のものか……」
「貴様たちには関係ない。だが、せっかく来てくれたのだ。退屈しのぎに相手をしてもらおうか。この暗黒神ラプソーン様の腹心、妖魔ゲモンが直々にな」
バサッと翼を広げて周囲に砂ぼこりが舞う。どうやらレティスとの関係には気づかれなかったようだ。ならば、こちらも戦闘を開始できる。
「ゼシカっ!」
「わかってるわ。……メラミっ!」
「ぬかせっ」
ゲモンは息を吸い込むと、口から炎を吐き出した。ゼシカのメラミは相殺することなく、飲み込まれ炎がレイフェリオたちを襲う。
「やらせるか! ……散れっ!」
炎に向けて手をかざし力を集めると、炎を霧散させる。力を籠める時間はあまりなかったが、ダメージは受けていない。そんなレイフェリオの力にあっけにとられたようにゲモンは、動きを停止させる。これ以上の隙はないだろう。ヤンガスは力を籠めてゲモンを切りかかった。
「うぉりゃぁ!」
「ぐぅ……ちょこざいな!」
その間に作戦通りの配置へとそれぞれが移動する。レイフェリオは卵の前に来ると、その様子を伺った。小さいがレティスと同じような気配を感じる。生きているのだ。これを守ることが、レイフェリオたちの役目だろう。そっと卵に触れ、魔力を流し込む。
「……」
「何してる?」
「……全く攻撃の余波がこないとは限らない。多少の防御にはなるだろう。気休めだけどな」
「お前……」
そうこうしているうちに、ヤンガスが振り払われゲルダが攻撃に転じている。レイフェリオは魔力を籠めた。
「援護、頼む」
「あ、あぁ……わかった」
ゲモンへと駆けながら、レイフェリオは呪文を唱えた。
「ライデインっ」
「な……ぐわぁぁ」
「くらいなさい、メラゾーマっ」
「隼斬りっ」
「ちぃ……うるさいハエどもめ! 失せろっ」
ゼシカの呪文に追撃するように攻撃を与える。だが、ゲモンは鋭い爪をもってレイフェリオの剣を防いだ。そのまま振りぬかれ、レイフェリオは吹き飛ばされると同時にもう片方の爪で斬りつけられた。空中では避けるすべはない。
「くっ……」
「兄貴っ!」
「俺に、かまうな! 行け、ヤンガス」
斬りかかられた勢いのまま地面まで吹き飛ばされる。辛うじて受け身を取る。腕を掠めたため出血はしているが、動けないものではなかった。出血は止めなければいけないだろう。呪文を唱え、傷を癒す。
身体は大きい割には素早く動くゲモン。未だ致命傷は与えられてはいないが、それでも卵へ注意が向いてはいない。だが、それも時間の問題だ。
剣を握りしめ、レイフェリオは再びゲモンの元へと向かう。その姿を映すなりゲモンが鋭い視線を向けてくる。
「貴様……何者だ?」
「お前に答える必要はないっ!」
「何っ!」
剣を素早く斬り払うがゲモンに避けられる。しかし、そのままの流れでレイフェリオは剣も斬り上げた。剣先がゲモンの嘴を斬り、血しぶきが出た。
「ゲルダっ! ゼシカっ」
「わかってるよ!」
「えぇ! はぁぁぁ、メラゾーマっ!」
ゲルダが無防備になった足元を短剣で突き、ゲモンは苦悶の声を上げる。更にレイフェリオがゲモンから身を離した瞬間、先ほどよりも威力を増したメラゾーマがゲモンの顔へと直撃した。
「うぉぉぉぉ! ……ぐぅ……な、なん……この……せめ」
「何だ?」
「ぐぉぉぉぉ!」
ゲモンが雄叫びを上げると共に魔力が膨れ上がる。それが目指すものは……。
「まずいっ! ククール避けろっ」
「何っ? まさか……卵かっ!」
最期の力で卵もろとも消えようとしているのだ。それをさせるわけにはいかない。レイフェリオは急ぎ卵の元へ行き、守るために魔力を展開する。傍にいたククールもそれに力を貸そうと手を伸ばした時だった。
「く……」
「まっ!! レイフェリオっ!?」
一歩及ばず、魔力の衝撃にレイフェリオは吹き飛ばされ、卵もそれに飲み込まれるのだった。
来週は、投稿をお休みします。
次回は再来週となる予定です。