ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

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苦難の道のり

 やっと洞窟を抜けた時には、体力が限界に来ていた。思わず足を止める。

 

「……はぁはぁ」

『レイ、大丈夫?』

「あ、あぁ。流石に、一人はキツいな……」

 

 何度、魔物と戦闘を行ったのだろうか。こんなに疲労を感じたのは久しぶりだった。肩で息をし、膝に手をつく。息を整えながら、体内にある魔力を循環させた。

 前方には、まだ道が続いている。随分と進んできたはずだが、先はまだ見えない。この後も、強い魔物との戦闘がある。そんな強い気配を、レイフェリオは感じていた。少しでも回復するように、意識を集中させる。

 

「キュウ……」

 

 トーポが不安そうにレイフェリオを見ていた。大丈夫だと安心をさせたいのはやまやまだが、この状態では説得力はない。

 それでも、レイフェリオは笑みを浮かべる。地面に膝をついてそっと両手でトーポを抱き上げた。

 

「心配させてすまない……少し休んだら、また案内を頼む」

「……キュ」

「ありがとう」

『レイ、少しだけなら結界を張るよ! だから、一眠りして』

「リオ?」

 

 リオはレイフェリオの頭上に立つと、羽を広げて魔力の壁を作った。

 

「これ……」

『ごめん、僕が出来るのは本当に少しの間で……レイ一人しか囲えないんだ』

 

 ひょいと頭から降りて、レイフェリオの肩に止まる。下を向いている顔は申し訳なさそうにしていた。

 神鳥の子であるが故の力ということだろう。とはいえ、まだ生まれたばかりだ。力もまだ十分に扱うことは出来ず、その扱う力も未熟であることをリオは申し訳なく感じているようだった。だが、たとえ僅かばかりの間だとしても魔物の気配に気を使わなくてもいいことは、レイフェリオには有難いことだ。

 

「リオ、十分だ。助かる……ありがとう」

『レイ……』

 

 撫でるようにリオの羽に触れる。そして、壁に体を預けるとそのまま瞳を閉じた。疲労が限界まで来ていたのか、直ぐに眠気が襲ってくる。レイフェリオは抗うことなく、誘われるまま眠りについた。

 

 

 

 

 何かに喚ばれたように、レイフェリオは目を開ける。目の前に広がるのは、暗い闇だ。

 

「……ここ、は?」

『漸く、ここまで来ましたね』

「っ?」

 

 淡く白い光がレイフェリオの前に現れる。徐々に形作られる姿は、やがて竜となった。

 

「竜……?」

『初めましてではないですが、こうして顔を見て話をするのは初めてですね、レイフェリオ』

「……貴方は」

 

 竜の姿ではあるが、その声色には覚えがある。何度も語りかけてきた声だ。どこか懐かしくもある気配。恐らくは、ずっと側にいたであろう存在。それが、目の前にいる竜だ。レイフェリオはそれを確信していた。

 

「貴方は一体、何者ですか? それにあの時……あの力は……」

『私は……貴方の中にいます。あれも全て、貴方の力……私はそれを手助けしたにすぎません』

「俺、の?」

 

 口元は動いていない。頭に直接響いてくるようだった。

 

『さぁ、目覚めなさい。そして、行くのです。貴方の真実を知るために』

「俺の、真実? あ……」

 

 形を作っていた光が姿を失っていく。思わず手を伸ばしてしまうが、捕まえることはできない。更にそのまま、闇が晴れていくのをただただ見送った。

 

 

 

「っ!?」

 

 パッと目を開くと、青い空が目に入る。膝の上に重みを感じて見下ろせば、トーポが眠っていた。

 辺りを見回せば、未だに結界が張られていることがわかる。

 

「……そうか。まだ途中だったな……さっきのは夢なのか」

『レイ? 起きちゃったの?』

「リオ、俺はどのくらい寝ていた?」

『2時間くらいだよ。でもぐっすりだった』

 

 それほど長い間ではないようだ。だが、体内を巡る魔力がほぼ回復しているのを感じる。重く感じていた体もだ。

 通常なら、こんな短時間でこれほどの回復は見込めないはずだ。一体どうしてなのか。

 

「……まさか、あの竜?」

『レイ?』

「いや、そんなわけないか」

『どうかしたの?』

「……何でもない。そろそろ向かおう。トーポ、起きてくれ」

 

 いずれにしても回復したのならば、先へ向かっても構わない。膝上のトーポを起こし、レイフェリオは立ち上がった。軽く身体を動かしてほぐすと、やはり身体が軽くなっているのを感じた。

 

『調子はどう?』

「問題ないみたいだ」

「キュキュっ!」

「わかっている。……頼む」

「キュウ!」

 

 トーポが小さな体を走らせていく。はぁっと息を吐き、レイフェリオは戦闘態勢に入った。この先も魔物はいる。いつでも対処できるように。

 

「行こうか」

『うん!』

 

 リオに声をかけ、レイフェリオも走りだした。

 

 

 

 更に奥へと進めば、魔物の強さは増していく。それでも足を止めるわけにはいかない。

 レイフェリオは飛び上がり雷を纏わせた剣で魔物を斬り捨てる。

 

「これで……終わり、か?」

『レイっ後ろっ!』

「っちぃ!!」

 

 リオの声に反射的に前へと飛び、その場を避けた。レイフェリオがいた場所には、棍棒を持った巨大な魔物がそれを振り下ろしたところだ。危ういところだった。リオの声がなければ、まともに攻撃を受けてしまっていただろう。まだ戦闘は終わっていない。集中を切らしてはいけないのだ。

 レイフェリオは道具袋からチーズを取り出し、トーポへと投げる。チーズを食べたトーポが炎を吐いた。その間、リオは呪文を以て魔物を足止めをする。魔物がひるんだその隙を狙ってレイフェリオは、もう一度その手に魔力を帯びさせ、炎を纏わせる。

 

「下がれ、トーポっ! はぁぁ!!」

「キュっ!」

「グシャァァァァ……」

 

 会心の一撃。渾身の力を籠めた攻撃は、魔物を消滅させた。

 周囲を再度確認するが、魔物の気配は去ったようだ。だが、レイフェリオは剣を地面に突き刺し膝を付く。汗が滴り落ちては、地面に吸い取られていった。

 

「くっ……」

「キュ!」

『レイっ!!』

「……はぁはぁ……くっそ……あと、すこしだって……いうのに」

 

 先が見えなかった道に、終わりが見え欠けていた。行き止まりにある灰色の扉のようなものが、レイフェリオには見えていたのだ。だが、体がいうことを聞かない。

 

「……す、まない……みんな……」

「キュウ!!」

『レイ、しっかりして!! レイっ』

 

 必死に呼びかけるリオの声。聞こえているが、体力も限界だったレイフェリオには応えることは出来なかった。

 トーポがペチペチと叩くのをどこかで感じながら、そのまま地面へと倒れこんでしまった。

 

(……ここまで、か……)

 

 そして、何も聞こえなくなった。

 

 

 

 

 

 




お待たせしてしまいました。
戦闘も入れようと思いましたが、うまく描けなかったので今回も一部のみです。
次回は、漸く到着になります。
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