事務員さんの日常   作:量産型うに

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第2話

 プロデューサーはモテる。

 目からハイライトが消えているヤンデレっ娘から好かれたり、第三回総選挙一位のクンカーにも好かれたりしている。

 他にもたくさんのアイドルから好意を持たれているのだが、当の本人はそれに気づく様子も無く、日々の業務をこなしている。

 つーか忙しすぎて気づく暇なんてないだろうけどな。

 …え?事務員はモテるかって?

 察しろ。

 

 

   **********

 

 

 あくる日の午後の話。

 珍しくちひろさんは有休を取っていて、事務所にいる事務は俺だけという状況であった。

 久々の安寧を楽しみながら鼻歌なんぞ歌いながらカタカタとパソコンとの格闘に勤しんでいた時のことである。

 

「お疲れ様です」

 

 

 鈴を転がすような声だった。まるで早〇沙織のような (メメタァ)。

 声の方向へ顔を向けると、そこには我が346プロのエースである高垣 楓の姿があった。

 

「あ、どうも」

 

 当たり障りのない挨拶をして仕事に戻る。

 …ほんの少しの違和感があった。

 そう…そういえば今日は

 

「高垣さん、今日ってお休みですよね?」

 

 そうだ。高垣さんは今日お休みだったはずだ。

 お休み = 仕事無い = 事務所に行く理由無い。

 俺なんてむしろ休みじゃなくても事務所に行きたくないもんね。

 

「とある人とお酒を飲む約束をして、その人の仕事が終わるまで待っていようと思いまして」

 

「へー。とある人って誰ですか?」

 

「事務員さんです」

 

 なるほど。ちひろさんかあ。

 

 

 

 …ん?ちひろさん今日有休取ってたよな?

 

「ちひろさん今日有休取っているのでここにはいませんよ?」

 

「ええ。知ってます」

 

「ん?」

 

「え?」

 

 

 

 あれ?何かおかしい。会話がかみ合ってない。

 うちの事務員ってちひろさんと俺だけじゃなかったっけ。

 てかこんな大手プロなのにプロデューサーが一人、事務二人しかいないってどんなだよ!?

 

「…えーっと、事務員ってもしかして俺のことですか?」

 

「はい!」

 

 そっか。そーだよね。消去法でそうなるよね。

 いや、でも俺高垣さんと飲む約束なんてした覚えないんだけど。

 

「俺、飲む約束しましたっけ?」

 

「あら、忘れてしまったんですか?昨日の夜約束したじゃないですか!

 

 

 

 

                                 …夢の中で」

 

「いや知らねーよ」

 

 え、何この人頭おかしい。夢の中の出来事を現実に持ってっちゃダメでしょ。

 

「冗談です。本当は今日飲みに行く予定だった志乃さんが急な用事で来れなくなったので、代わりに誰かを誘おうと思いまして、折角なので最近ウワサの事務員さんをお誘いしに来たんです」

 

「最近ウワサって…俺何かやらかしましたっけ?」

 

「それはもう!346プロに久々に入社した若い男性ってだけでウワサになりますよ。事務員さんを狙っているアイドルがいるなんてウワサもあるくらいですし」

 

「えー!マジっすか!?誰だか教えてくださいよー」

 

「留美さん」

 

「お、おう…」

 

 ちょっとガチっぽすぎて引くわ。いや、美人なんだけどね。普段から婚期がどうのこうの言ってる人だから、全く冗談に聞こえないんですよ。

 

「それはさておき!事務員さん、今夜お暇なら一緒に飲みにでも行きませんか?」

 

「えーっと、そうですね。お誘いは嬉しいんですけど、生憎今日はちひろさんがいない分仕事が増えていまして、仕事が終わるのが遅くなってしまいそうなんですよね」

 

 そう。ちひろさんがいなくても仕事はいなくはなってくれないのである。

 

「大丈夫です。事務員さんが仕事終わるまで待っていますよ」

 

 あぁ…一切曇りのない純粋な笑顔だ。ぶっちゃけちょっと面倒くさいから仕事理由に断っちゃおうなんて思惑に全く気付いていないよ…。

 こんな笑顔されたら断りようがない。楓さん美人だからちょっと胸がときめいちゃうし。

 

「…わかりました。なるべく早く仕事片づけるので、それまでしばらく待っててください」

 

「はい!飲む場所ですけど、折角の秋なので松茸が美味しいところを探してみますね」

 

「あ、じゃあよろしくお願いします」

 

「松茸…待つだけ…ふふっ」

 

 いや、全然上手くないからね。

 

 

 まあ、仕事終わりの楽しみが出来たし、今日もあと半日頑張りますか!

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