ナノガイガー戦記~勇者とエース~    作:かがみん

12 / 28
第11章  ゾンダー! 蘇った悪夢

ゾンダーとの連戦。

ゾンダリアンとの激闘。

原種との苦闘。

Zマスターとの死闘。

そして、機界新種との、最後の戦い……。

天海護が決して忘れることのない、原種大戦の記憶。

苦心惨憺たる思いで勝利を手にした護たちを嘲笑うかのように、滅んだはずの存在が復活したのだ。彼は、はやてのように、悪い夢を見ているような気持ちになった。

 

「アベル……君は──」

広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティを素体にゾンダーが成長していく。機動勇者隊の面々は、その異様さに慄然とした。

「あれが、ゾンダー……」

巨大な機界生命体を見て、はやては唾を飲み込んだ。あんな巨大なモノが暴れだしたら、街は──

「くっ。総員、ゾンダーを迎撃せよ!」

はやては部隊にゾンダー攻撃を命じた。

『ぞぉぉんだぁぁぁぁ!!』

スカリエッティ・ゾンダーは周囲の有機物や無機物を吸収し、さらに巨大となる。

そのシルエットが不定形なものから金属的な人型ロボットへと形態が変わる。

およそ30メートルはあろうかという、白と黒を基調とした配色のゾンダーロボ。

ゾンダーロボは、ゆっくりとした動作で、動きはじめた。

「アイツを止めるっ!」

スバルはマッハキャリバーで駆け出した。

「おおおおっ!」

スバルが、リボルバーナックルを唸らせて巨人に向かう。

そんな彼女をティアナが誘導弾で援護する。

「我等も続けっ」

他の部隊員達も、一斉に砲撃や打撃をゾンダーに与えた。

だが。

「効かない!?」

スカリエッティ・ゾンダーは無傷のまま立っていた。

「バリアやて……!?」

ゾンダーはバリアを使った防御ができる。

原種大戦でも通常の火器や武装は通じなかった。

しかも厄介なことに、ゾンダーロボはスカリエッティを素体にしているためなのか、AMF(アンチ・マギリング・フィールド)を発生させているのだ。

これでは魔法を分解されてしまう。

そして、ゾンダーはただやられているだけではなかった。

ミサイルやビームを撃ち、機動勇者隊に反撃を始めたのである。

 

「あかん。街が破壊される」

戦闘区域にある建物が、攻撃の余波で次々に崩壊していく。

隊員達は結界魔法や防御魔法で被害を食い止めようとするが、焼け石に水の状況だった。

「ディバイディングドライバーがあれば……」

と、護は悔やんだ。

GGGはゾンダーとの戦闘で市街に被害が及ばぬよう、ディバイディングドライバーを使用していた。空間を湾曲させ、ディバイディング・フィールドを造りだして閉じ込め、ガオガイガーはゾンダーを仕留めてきた。

Gツールと呼ばれるその装備は、別の宇宙──三重連太陽系に置き去りにされたGGG艦隊が持っている。

(ここに、GGGのディビジョン艦が一隻でもあれば……!)

どれほど助けになっただろうか。

護が焦慮する前で、魔導師達は強装結界をゾンダーのいる空間全域に張った。

これは、武装隊が捕捉した魔導師を逃がさずに捕らえる為に使う手であった。

結界内部に閉じ込められたスカリエッティ・ゾンダーだったが──

腕から放つ赤いビームが、強装結界を貫いた。

強烈な熱エネルギーが、大気を揺るがした。

「そんな……!?」

その一撃は、高町なのはの《スターライトブレイカー+》や闇の書の《破壊の雷》にも匹敵する程の威力を持っていた。

結界を撃ち破ったゾンダーは進撃を開始、破壊を行う。

「魔法が通じなくても、これなら……!!」

スバルは勢いをつけて疾走。

ウイングロードでゾンダーに肉薄する。

「振動拳!!」

スバルの固有技能は魔法による攻撃ではない。それゆえにAMFには影響されず、ゾンダーにぶち込まれる。

スバルの拳がバリアに衝突するが、力ずくで押し切った。

「ぅおおおおっ!」

バリアを砕き、ゾンダーロボの装甲に打撃を食らわした。

スバルの接触兵器《振動破砕》は機械に対し、最も効果を発揮する。

振動波により目標となる物質を粉砕。その力はスカリエッティの戦闘機人といえども敵わない。ゾンダーは機界生命体すなわちロボットでもあるため、外装や内部の機構は共振波による破壊現象を免れなかった。

GGGの獅子王雷牙博士や高之橋両輔博士がここにいれば、スバルの振動破砕が、マイク13のディスクXと同じ原理の攻撃だと見抜いただろう。

さらに、それは地球にいる未知の変身生命体《ソムニウム》の戦闘形態《ネブラ》の必殺技「サイコヴォイス」とも共通していた。

 

「やった!」

ゾンダーロボの上腕が砕け散り、周りから歓声があがった。

「あぁっ……!」

だが、しかし。

ゾンダーは欠損部分を瞬く間に再生させた。

「なんやて!?」

はやては目を疑った。

周りにある様々な物質を取り込むゾンダーは、有機生命体と機械生命体が融合した機界生命体だ。その身体は変幻自在に変化した。

コア(ゾンダーメタル)さえ無事ならば、いくらでも機体を再生することができるのである。それは、彼らの上位存在であるゾンダリアンやマスタープログラムたる原種──Zマスターにも当て嵌まる。

「あの再生能力は、まるで……」

遥かな昔の、だが忘れ難い記憶が、はやての脳裡に甦った。

「闇の書の……防衛プログラム」

だが、ゾンダーの再生速度は、防衛プログラムの再生能力より上回っている様に見えた。

機械でありながら生物のように動く。流動的なその姿にはやては戦慄を覚えた。

「ガオガイガーや超竜神でないと倒せない……」

原種大戦での経験が、護にそう言わせた。

『なぁ、護くん。その、ガイガーでなんとかできんか?』

「ガイガーじゃ……無理だと思います」

はやての問いに、護は首を振って答えた。

「ガイガーだけの力じゃゾンダーロボには……」

確かに、ジェネシック・ガイガーは原種大戦時のガイガーよりも優れた運動機能を持っているが、それでもガオガイガーには劣るだろう。

ギャレオンと合体したマシンのGSライドが組み合わさり、強大な出力が得られるのがファイナル・フュージョンした勇者王なのだ。ファイティング・ガオガイガーであれ、ジェネシック・ガオガイガーであれ、持ちうるパワーはガイガー単体の比ではない。

しかし、ジェネシックマシンが完全修復を終えていない以上、ガオガイガーの出撃は不可能だった。

──でも……

「でも、なんとかしないと……」

ゾンダーメタルを摘出さえできれば──浄解できるのに……!

護はモニターに映ったゾンダーを、歯痒く思いながら凝視した。

 

「たとえ、どれ程強い敵が出たとて、諦めるわけにはいかない。騎士として、な」

シグナムが、そう呟いた。

側にいた護が、その顔を仰いだ。

シグナムの双眸に、静かに闘志がみなぎっている。

ゾンダーの力を見せ付けられてもなお、シグナムの戦意は失われてはいない。

「私達も、戦うぞ」

皆を見回して、告げた。

ヴィータやギンガ達が、その言葉に頷く。

その時。

「な、なぁ。シグナム」

と、アギトが思い詰めた表情で、近づいてきた。

「なんだ、アギト?」

シグナムは怪訝そうに訊いた。

「あのデカブツと戦いにいくつもりなら──あたいも、一緒に……連れていってほしいんだ」

「なんだと!?」

シグナムは驚いて、小さな融合騎を見た。

「……シグナム。旦那が最後に言った言葉を覚えてるか?」

旦那。

「騎士ゼスト・グランガイツの事か」

哀しい運命に翻弄された、誇り高き騎士の無表情な顔を、シグナムは思い起こした。

彼と地上本部で武器を打ち交わしたシグナムは、同じ古代ベルカの伝統を継ぐ騎士として、深い敬意を抱いていた。

ゼストは卓越した戦闘力を持った現代に生きるベルカの騎士だった。親友・レジアス中将により、戦闘機人事件捜査中に戦死、スカリエッティの人造魔導師素体にされて蘇生し、結果的には管理局の中枢を揺るがす事件に荷担してしまう。

アギトはそんな彼と共にずっと過ごしてきた。主なき融合騎である彼女にとって、ゼストは自分の力を役立てる機会をくれたロード()だった。

アギトは、古代ベルカの技術で造り出された融合騎だ。しかし、彼女は違法な実験でボロボロになり、希望もない日々を送っていた。苦痛の毎日はルーテシアとゼストが研究所から彼女を救い出した事で終息する。

恩義を感じて以来、アギトは、戦いの度にゼストとユニゾンし、力を貸してきた。

しかし、騎士ゼストですら、属性の不適合の故に、アギトの真の能力を発揮させられずにいた。

完全に属性が適合する騎士がいれば……

アギトは《烈火の剣精》たる己の力を、最大限に使いこなせるロードを求め続けていた。

そしてスカリエッティに協力している時、シグナムと出会いアギトは動揺した。

本物の、古代ベルカの騎士。

炎の属性をもつ、烈火の将。

待ち望んでいた相手が、ついに見つかったのだ。

「ゼストの旦那は最期、あんたこそあたいに相応しいロードだと託して、逝ったんだよ、シグナム」

「アギト……」

地上本部で、一騎打ちでシグナムに敗れたゼストは、事件の真相を記録したデバイスとアギトとを、彼女に預けて物故していた。

「あんたが本当にあたいに相応しいのか。旦那より優れたロードになれるのか。それを見極めたい……」

だから自分を戦いの場に連れていけ、とアギトは言った。

「私は騎士だ。だからゼストとの約束は守る。だが、あの相手はお前の想像を絶した敵だぞ。今のお前では危険過ぎる」

「覚悟はしてるさ」

挑戦的な眼差しで、アギトはシグナムを見上げた。

(良い目をしているな……)

「絶対の安全は保証しかねるぞ。それでもいいのなら」

「シグナム……!」

「私の傍についていろ」

アギトは喜色を浮かべ、

「ありがとうな、シグナム」

礼を述べながらシグナムの肩に乗る。

「あんたの強さ、あたいがこの目で確かめてやるぜ!」

はしゃぐアギトの姿に、思わずシグナムは苦笑した。

そんな彼女を見ながら、グラーフアイゼンを担いだヴィータが言った。

「ま、リインが不在な時だし。ユニゾン・デバイスが居るなら心強いかな。でも、いいのか。勝手に連れていったら問題になるぞ」

アギトはまだ扱い的には一囚人である。情状酌量の余地はあるとはいえ、更正プログラムを受けている最中は管理局の意向に従わなくてはならない。シグナムがアギトを戦場に連れていく事は、規定違反に相当し処罰を受ける可能性があった。

「責任は全て私が追う。どのような処分も受けるさ」

「シグナム、すまない……」

とたんに表情を曇らせるアギトに、

「お前は気にするな」

とシグナムは声をかけた。

「勝手にしろ。さて──」

ヴィータが首都の方角を向いて言った。

「そろそろ行くか。戦場に」

 

時空管理局本局。

そこへまんまと侵入した遊星主アベルに、ソルダートJは激昂をぶつけた。

「貴様、あろうことか我らの故郷を滅ぼした力を利用するというのか──」

「Zマスター迎撃システムの開発のため、入手したZメタルのサンプルでしたが、まさかこのような状況で使う事になるとは私も意外でしたよ」

あどけない笑顔でアベルは言う。それが余計にJの怒りをかきたてた。

「Zの力を否定したのは貴様自身ではなかったのか!? それをためらいなく使うとは……そうまでして三重連太陽系を再生させたいのか!」

「それが私達、遊星主の務めですからね」

「許せん……!」

Jの声が怒りに震える。

「ぞぉんだぁぁぁ──!!」

戦闘機人トーレと融合したゾンダーは、器材や人間を取り込み成長していった。

「ゾンダーロボに……っ」

「いいのですか? 早く倒さないと、このまま成長を続けて、ゾンダー胞子がこの宇宙に撒き散らされるかもしれませんよ」

「ぬぅ……ゾンダーメタルプラントが精製されれば……」

次元世界はやがて機界昇華されてしまうのか。

三重連太陽系のように──

「そんなことはさせんっ!!」

「ふふ。ジェイアークも無しで、ゾンダーとどれだけ戦えるか……見物させてもらいますか」

「貴様……!」

Jは、次元航行艦と同じほどに巨大化したゾンダーロボへと立ち向かった。

トーレ・ゾンダーは鋭角的なボディで、腕は刃の様な形状をしている。

手首に当たる部分と腿からは、トーレのライドインパルスによるエネルギーの翼《インパルスブレード》を生やしていた。

その動きは速い。

そして、ゾンダーの持つバリア能力に魔導師達は苦戦した。

「くそう、チェーンバインド!」

魔力の戒めが、ゾンダーの巨体を拘束する。しかしゾンダーはそれを、紙紐の如く引き千切り、IS《ライドインパルス》を発動させて魔導師達を翻弄した。

「いけない、下手に戦えば本局を破壊してしまう……」

フェイトはそのことに気づいた。

ゾンダーを無差別に暴れさせれば、アベルは何もしなくても、時空管理局を麻痺させれるというわけか……!

「結界だ、結界を張るんだっ!」

結界魔法が使える魔導師が、被害を抑え、ゾンダーを制肘するため強装結界に重ねる形で《スフィアプロテクション》などの魔法をかけた。本局の内部は爆発や破断の衝撃で、魔法の防御が無ければ厳しい状況になっている。

「……倒せたとしても、被害は甚大」

「ジェイアークが復活すればゾンダーごとき──」

ゾンダーは腕の刃でところ構わず切り裂く。その斬撃は魔力を纏っているため、結界の耐久力もいつまでも保たれず、砕けてしまう。

「まずい、これじゃあジェイアークも破壊される……」

フェイトは一か八か、大技を仕掛けてみるつもりだった。

「いや、奴を倒すにはゾンダー核を取り出さなければ……でないといくら攻撃で傷ついても再生する」

そんな……──

フェイトが絶句しかけた時、なのはがそこに駆け付けてきた。

「フェイトちゃん!」

「なのは!」

二人は並んで飛び、攻撃のタイミングを計った。

「ディバインバスター!!」

「サンダースマッシャー!!」

貫通力を増した設定で撃たれた、二方向からの砲撃。

ゾンダーはバリアを展開。

しかし、全てのエネルギーを遮断できずに攻撃を食らう。

ゾンダーロボの機体が破損する。

「だめだ、再生していく」

ゾンダーが腕を振るった。

「インパルスブレード……!」

高速で刃の翼が襲い掛かる。なのははプロテクションで衝撃を防ぎ、フェイトは真・ソニックフォームで加速して斬撃を回避した。

エース二人の攻撃も、異常な再生能力のために効果は半減し、いたずらに体力と魔力を消耗するだけになっていた。

「凱……まだか。まだジェイアークは──」

焦るJを、高みから見ているアベルが冷笑した。

「無様ですね」

ソルダートJの攻撃も、ゾンダーのインパルスブレードに弾き返される。

「さあ、ゾンダーよ、ジェイアークを破壊しなさい……もうこの艦は用済みです」

創造主から、非情なる決定が下された。

「させんっ」

Jが超弩級戦艦を庇うため、ゾンダーロボの前に飛び出す。

「危ない、J!!」

フェイトはJに追い縋り、その前面に回り込んだ。

「フェイトちゃん──!?」

ゾンダーロボの胸が展開し、球状の器官が表れる。それは、融合した機器を利用して造られた苛電粒子砲だった。そこからほとばしったビームの束が、ジェイアーク目掛けて放たれる。

「間に合えっ」

フェイトはバルディッシュをカートリッジ・ロード。防御魔法発動。

《Round Shield》

使い慣れた防御魔法だが、範囲と防御力を拡大して使用した。

「フェイトちゃ──ん!!」

なのはが叫ぶ。

ビームとシールドが衝突し、目も眩む爆光が生まれた。

「このような異郷の地に没するとは、哀れなものですね」

Jの運命を歎くようなアベルの口調だったが、創造主に逆らった不良品に対する憎しみが見え隠れしている。

「最も、反逆者には当然過ぎる『罰』でしょうが……ソルダートJ-002──」

 

……ゾンダーへと変貌するスカリエッティ。

その変容に、ルネの中に忌まわしい記憶が蘇った。

あれは、ちょうど原種大戦の頃だった。

 

GGGが原種と戦っていた一方、ルネは対特殊犯罪組織シャッセールの捜査官として、国際犯罪シンジケート《バイオネット》を追っていた。

中国・内モンゴル自治区。観光客で賑わう万里の長城。そこでルネはバイオネットのエージェント、シュヴァルツェ・オイレを発見した。彼は中国の科学院航空星際部から盗みだした機密情報を仲間に渡そうとしていたのである。

──ルネにとって運の悪い事に、同じ場所が原種とGGGとの戦闘の舞台となってしまう。

しばらく前に起こった、衛星軌道上での戦闘で外殻を破壊された機界31原種の一体、ZX-05脊椎原種が万里の長城と融合し、活動をはじめたのである。

あろうことか脊椎原種は観光客らをゾンダーにしてしまった。オイレもその中の一人だった。

バイオネットに憎悪を燃やすルネは、パートナーのエリック・フォーラーの制止も待たずに原種に立ち向かったのである。

なんとルネは小型戦術核で原種を爆破しようとしたのだ。

その前に、戦場を飛んでいた凱に救助されたおかげで(無理矢理、ステルスガオーに取り付いたというのが正しいが)、小型核の辛くも発射は止められたが……。

そんな中、危うくルネも脊椎原種に融合されるところだった。その時は助かったが、原種大戦末期、地球に撒き散らされたゾンダー胞子の影響でルネもゾンダーに融合してしまう。だが、Zメタルの反物質であるGストーンのおかげで融合から免れた。

 

……バイオネットの野望をぶっ潰すためにも、必ずオイレを捕らえる。その目的だけがルネの頭にあり、原種がどれほど危険な存在か考えようともしない。シャッセールの優秀なる捜査官エリックが、もはや万事休すかと思った。

しかし、GGG機動部隊の活躍により、脊椎原種は撃退され、オイレも天海護少年の浄解を受け解放された。

浄解されすっかり善人となっていたオイレから、バイオネットの画策を知るシャッセールの二人。

だが、直後、オイレは口封じに殺害された。

そして──

(あたしのふがいなさのせいで、あいつは……)

《ジェントルマン》エリックは、バイオネットの獣人からルネを庇い、殉職した。

初めて体験した仲間の死は、彼女の胸に密かな蔭を落としている。

自分の過失の為だと理解していても、その時は冷淡な感情で彼の死を評していた。

(なんで、私なんかを守るんだよ……)

フランス製勇者ロボ《ポルコート》の超AIは、死亡したエリック・フォーラーの人格パターンを移植していた。ルネはその真実を『光竜強奪』事件を追っていた時には、知り得なかった。そして、エリックの魂は勇者ロボに受け継がれたのか、再びルネを守ったのである。

《G・ギガテクス》戦の渦中、ポルコートはルネのかわりにバイオネットと戦い、大破した。傷つき倒れたポルコートの姿に、ルネは泣いた。抱えていた感情を全てさらけ出して──

この時、ポルコートの人格モデルがエリックだとルネが見抜いていた事に、パピヨン・ノワールが驚いている。

パピヨンは機体は破壊されたが、超AIは無事なのだと告げた。そのパピヨンもオリジナルはオービットベースにおいてリプリジン・護に生命を奪われている。

さて、事件解決後、ポルコートの超AIはローパーミニに搭載、シャッセール所属の乗用車で、新しいルネのパートナーに配備された。それをルネが喜んだのはもちろんだが、彼女は仲間の大切さを光竜奪取とを通して痛感していた。

(もう二度と、仲間は私のせいで、死なせない……!)

次は自分が仲間を守る。

それもまた、「勇気ある誓い」だった。

 

(ゾンダーの恐怖なんか……もう私からは無くなったはずだ!)

Gストーンの力で身体の全てがゾンダーになる事はなく、機界化は下半身だけで済んだが、なまじ自我を保っていただけに言い知れぬ恐怖を覚えた。

融合は不快極まり、異質なモノに同化される恐怖がルネの心に残された。

(ゾンダーなんか……あたしには)

Zの力に対するトラウマはずっと眠り続け、そして今、目覚めた。

(あたしはもう、あの頃のあたしとは違う──!)

回想していたルネは、一瞬で現実に引き戻される。

「たぁぁぁぁぁっ!!」

激情を込めて、ルネはスカリエッティ・ゾンダーに突っ込んだ。

「今度こそゾンダーをぶっ飛ばす!」

鋼鉄の拳が放たれる。

しかし、Gストーン・サイボーグの剛力をもってしても、たやすくゾンダーのバリアを打ち破れない。

GとZの力、そして魔力がぶつかり合って拮抗し火花が散る。やがてルネは弾かれた。

「ちぃぃっ」

舌打ちをする。

ゾンダーのバリアは圧縮した空間を折り畳んだ、空間湾曲技術の応用で、原理的にはガオガイガーのプロテクトシェードに近いものだ。

かてて加えて、スカリエッティの魔力を使い防御魔法をも併用していた。

その防御力はこれまでのゾンダーロボより桁違いである。

これにより、魔導師たちの砲撃魔法も効果が減ぜられていた。

だが。スバル・ナカジマの先天固有技能である《振動破砕》は、そのバリアを打ち抜いて、機体に到達した。

見事にゾンダーの腕が破壊される。

しかし、ゾンダーはすぐさま傷ついた部位を再生させてしまう。

攻撃が通っても、瞬時に再生しては意味がない。

「くそっ、もっと、強い力がいる……Zの力を越える力が……!」

ルネは唇を噛みつつ、ある決意を抱いていた。

ルネ達がゾンダーと対峙していた頃。

 

首都への移動中、飛行する護はゾンダーとの戦い方について、はやてに説明していた。

『一撃で破壊……!?』

「はい。僕達はガオガイガーの必殺技……ヘル・アンド・ヘブン、ハンマー・ヘル・アンド・ヘブンでゾンダーの外殻を一撃で撃破して、ゾンダーメタルを露出させていました。もちろん、それには、途方もないエネルギーがかかりますが……」

ガオガイガーもゴルディオンハンマーも今は無い。

それでも、ゾンダーを止めねば、大変なことになる。

この世界のために、誰もが命を懸けて戦う所存だった。

『あの巨大な身体を一瞬で吹き飛ばせれば……』

「ゾンダーロボの核さえ露出できれば僕がすぐに浄解できます!」

カインの遺産。Zマスターの抗体たる護の力は、ゾンダーに変えられた人間を元に戻す事ができる。機界昇華を阻む、ラティオの力、それがあるからこそ、GGGは原種たちにも勝利できたのである。

『一撃で破壊……か……ふぅむ』

はやては護の言葉に考えこんだ。

「八神、長官……?」

しばし思案にふけったはやては、護に訊ねた。

『なぁ、そのデカブツ、なんとか足止めでけへんかな?』

「やってみます」

と、シグナムが答えた。

はやては頷き、

『よっしゃ。ちょっと準備に時間がかかるけど……うちがどうにかする』

「主はやて、何を!?」

『でっかい一撃が必要なんやろ? それなら、あたしが出る!』

守護騎士は驚愕した。

「主自ら……!」

夜天の主が前線に出ることは、滅多にない。JS事件の時でも、数えるほどだ。

だが。確かにゾンダーを破壊できるとしたら、オーバーSランクを持つはやてくらいしかいない。だが、普段は照準や補正には、融合騎リインフォースIIが必要になるのだが、今回は一人で魔法を使わねばならないのがネックだ。

はやてはそれでも気丈に笑い、

『まぁ、司令部の皆もサポートしてくれるしな。とにかくうちが魔法を撃つ準備が整うまで、なんとかあいつの動きを止めといてほしいねん』

「はやての頼みだ。あたしたちに任せろ!」

「スバル達と協力すれば足止めくらいは可能でしょう」

『よっしゃ、頼んだで。あたしもすぐに出撃する。そうそう、護くん』

「はい?」

『こっちが片付いたらすぐに本局に向かったって。あちらにもゾンダーが出たらしいからな』

「はい、わかりました!!」

「おい、狸女!」

はやてとの通信に割り込んだ声がある。

ルネが地上本部に呼び掛けた声だ。

「お前に頼みたいことができた」

『狸て、あたしのことか……?』

乱暴な呼び方にはやては目を丸くした。

「そんなことはどうでもいい!」

ルネの声は切迫さをはらんでいた。

『あの~、ルネさん?』

「アレをよこせ!」

『アレ!? アレって──』

「あたし専用のアレさ!」

『ちょっと待ちや、アレはまだろくに実験データすら録って』

「それどころじゃないんだ!」

サイボーグ少女の語気が荒れた。

「あいつをぶっ叩くにはもっと強い力がいるんだよ! 今のあたしの力よりも!!」

はやては迷った。

開発されたばかりの新装備を、こんなに早く投入して万が一、取り返しのつかない事故が発生したら……。

はやては『組織の一員』としてそのような思考をしていた。

けれど、彼女が六課や勇者隊などの部隊を結成したのは、そんな理由に捕われずに行動するためだ。

はやては、即断した。

『わかった。あたしはルネさんに賭ける。だから、頼んだで!』

「あぁ。今すぐに、実験データを録らせてやるよ。あいつとの戦いでな!」

ルネは勇ましく言った。

はやては本局に通信。

シャーリーことシャリオ・フィニーノに繋げる。

『シャーリー。ルネさんの新装備、こちらに送ってくれへんか』

『え、でも、アレは──』

シャーリーは躊躇した。

『かまへん。あたしが許可したんやし。さ、早う頼む』

『本当によろしいんですね。わかりました、すぐに転送します』

『ありがとう』

『はやてちゃん。私がいなくて大丈夫ですか?』

リインが心配そうに訊いた。

融合騎として主を傍でサポートできないのが心苦しいようだ。

『あんたがおらへんと、正直きついけどな。でも、皆が助けてくれるし、なんとかなるよ。それより本局もガジェットやゾンダーのせいでかなりの被害を出しとるんやろ? 二人はそのまま、本局の皆に協力したってや』

『了解。八神長官』

『わかりましたです、はやてちゃん!』

敬礼し、はやてに告げるシャーリーとリインに、はやては微笑して応えた。

新たなる決意を抱き、彼女たちは行動を開始した。

『ルネさん。デバイスはすぐに、そちらに届くはずや』

「メルシー。感謝する」

母国語で礼を言い、ルネは通信を切った。

ルネと入れ替わるように、今度はシグナムがはやてに話し掛けた。

「主はやて、私からもお願いがあります」

『なんやシグナム、言うてみ』

「アギトの能力封印を、解除してほしいのです──」

「……!」

シグナムの肩の上で、アギトが驚いた顔になった。

「ゾンダーを破るにはルネ捜査官の言う通り、強い力が必要になります。そして、アギトにはその力を与える能力があるのです」

『うーん。これはまた、難しい頼み事やな』

情状酌量が適用されたとは言え、テロリストに加担した者の封印を、戦力になると解ってはいても、おいそれと解除するわけには管理局側としてはいかない。下手をすれば犯罪者に逃げられる恐れがあるからだ。

「アギトは逃亡したりは決してしません。私が保証します!」

「……シグナム」

アギトの顔が歪んだ。目元に光るものがある。

「お願いです。主はやて。私を信じてください」

『うちは、これまでシグナムを信じなかったことはあらへんよ。アギトもだからこそあんたに着いて行ったんやろ?』

アギトは何度も首肯した。

『うちはこの部隊を編成する時、けっこう融通の利く権限をもらってんねん。ちょっと時間をくれたらアギトの能力封印、解いたるよ』

「ありがとうございます、主はやて!」

これあるかな、我等が主よ、と、シグナムは胸中に呟いた。

『そのかわり、しっかりやってや』

「もちろんです」

「あたい、絶対にシグナムを失望させないように頑張るぜ!」

張り切ってアギトが言う。

そんな彼女を、シグナムは信頼の眼差しで見つめるのだった。

「それじゃあ、ここの事は頼んだで~!」

はやては司令部をグリフィスやルキノらに任せて、ゾンダー迎撃に出動していった。

 

「ねぇ、ギャレオン」

並走して飛行する鋼鉄の獅子に、護は言った。

「ここは僕達がなんとかする。だからギャレオンは本局にいる凱兄ちゃん達を助けてあげて」

無論、ファイナル・フュージョンできない状況はいぜんとしてあるが、やはり凱のパートナーはギャレオンこそが相応しいと、護は思っていた。

機械と直に繋がる能力がある超人エヴォリュダー……ギャレオンとフュージョンするには彼こそ最適な人材だと、ガイガーとして戦ってみて出した結論である。

「きっと凱兄ちゃんもギャレオンを必要としているよ──だから……」

ギャレオンは護の意を汲んで、承諾の色を双眸に浮かべた。

「よし、じゃあギャレオン。凱兄ちゃんに会ったら僕がゾンダーを浄解してすぐに駆け付けるから、って伝えといてね!」

ギャレオンと離れて戦うのは寂しいが、護は心強い味方がいることで不安を忘れられた。

ゾンダーに、もう怯む事はない。Gの力は、Zの力には負けない。

勇者王ガオガイガーと共にゾンダリアンや原種と戦い抜いた日々が、護にそんな確信を抱かせていた。

 

やがて。護やシグナム達が、クラナガン上空に到達する。

ゾンダーは、巨体を揺らして街を壊し続けている。

いままで戦っていた者たちが、援軍の到着に歓喜の声を上げた。

「待たせたな!」

スバルに、降り立ったヴィータが言った。

「待ちくたびれましたよ、副隊長!!」

また、湾岸地帯のガジェットを一掃した部隊も応援に来て、ゾンダー包囲網を形作った。

その中にはエリオとキャロ、そしてフリードリヒがいる。

ここに、機動六課フォワードチームが勢揃いを果たした。

「なのはじゃないけどよ、久しぶりに全力全開やってみるか!」

勢いづいたヴィータが、グラーフアイゼンをラケーテン・フォルムに変える。

隣ではシグナムがカートリッジをロードしていた。

アギトの封印解除はまだ出来ていない。今かいまかと、アギトは気を揉んでいる。

「そう焦るな。私の力を見るのだろう?」

「そうだけど……」

「なら。そこで見ていろ、ヴォルケンリッターの力を、な」

「ヴォルケンリッター……」

「お前がそんな大言壮語するなんて珍しいな。悪いものでも食ったのか?」

と、ヴィータがからかうのをシグナムは、

「なに、アイスを食い過ぎて腹を壊したお前ほどではないよ」

「それいつの話だよ!? はやてが小学生の時のだろうが」

「副隊長たち、なに呑気にやってるんですか~!?」

ティアナが、軽口をたたき合う守護騎士達に、慌てた口調で言った。

ゾンダーはすぐ側まで近づいている。

「お前、なのはに言われたのを忘れたのか。頭冷やせって……」

ティアナが赤くなった。忘れたい彼女の汚点である。隣にいたスバルは汗を垂らしてパートナーを見ていた。

「そうだぞ。戦場ではつねに冷静さが肝心なのだ」

シグナムの分別臭い発言に、かっとなってあたしを殴ったのはどこの誰でしたかね!?と、心の中でツッコミを入れるティアナ。

「それより、ティア、攻撃を……」

「歓談の時間もこれまでだな」

と、シグナムは呟く。ティアナはやっぱり心の中でツッコんだ。

(歓談じゃないでしょ……)

そんな彼女をよそに、ヴィータがラケーテン・ハンマーを振り上げ、疾駆する。

「たりゃぁぁぁっ!!」

ドリルの破壊力が、ゾンダーの巨腕をぶち抜く。

上空からは、キャロの騎乗する火竜フリードリヒが、炎のブレスを吐き出した。

火球が炸裂し、ゾンダーロボの頭部が傾いだ。しかし、バリアのためか、いまいちダメージが通っていない。

ゾンダーは無事な腕から赤い紐状の武器を何本も発した。

それは、スカリエッティが使っていた魔法だった。

「フリード!!」

赤い紐は竜の首に巻き付き、ギリギリと締め上げる。

悲鳴と共に、キャロとフリードは地面に叩きつけられようとした。

シグナムはすかさず魔力の紐をレヴァンティンで切断し、フリードの身体はキャロがすんでで発動させた補助魔法で事なきを得た。

「よくもキャロとフリードを!!」

エリオはストラーダを構え、突進した。

電気資質を用い、威力を強化する。

「危ない!」

ゾンダーは胸に火砲を造りだし、エリオ目掛けて撃った。

炎の弾丸が少年騎士に向かう。

「くっ……!」

飛行魔法を使っているわけではないため、エリオは軌道を変えるのが難しい。空中で制止し、自ら自由落下をすることにより炎弾を回避した。

さらに、ゾンダーは周囲に魔法や熱線を発射し、機動勇者隊は防戦に追い込まれる。

「攻撃の手を、緩めるなっ!」

シグナムが叱咤し、ゾンダーに肉薄する。

「飛竜一閃!!」

シグナムの攻撃を食らって、ゾンダーロボの肩が粉砕された。

だが、瞬時に再生し、襲い掛かって来る。

「ちっ……キリがない」

ヴィータはキガント・ハンマーを使うべきかどうか、考えた。魔力の消耗が激しい技をここで使ったほうかよいのか。それよりはやてを待ってからのほうが……。

いや、はやてから足止めを頼まれたんだ。

ためらってどうする。

同じく、シグナムも、自身の最大の直射型魔法《シュトルム・ファルケン》を使用することを決めていた。

「同時に行くぞ!! シグナム」

「我等の力を結集するんだ!!」

「あたし達も行こう、ティア!」

「待って、スバル。あれを……」

ティアナは後ろを指さして、言った。

「あ、あれは──」

スバルの目が大きく見開かれた。

「いくぞアイゼン!」

《Jawohl!!》

「ギガントハンマー!!」

グラーフアイゼンが超巨大なハンマーへと変じる。

「レヴァンティン──!」

《Sturmfalken》

「烈風の隼よ……翔けよ!」

二人の守護騎士が、奥義を放とうとした時──

「みんな、そいつから離れてぇな!!」

後方から響いた声と共に、

『……!?』

強大な魔力が、彼らがいる空間に満ちていった。

「これは……!」

「はやての──!?」

「ディアボリック・エミッション──!!」

 

騎士服に身を包んだはやては、騎士杖シュベルトクロイツを手に、呪文を詠誦した。

一般市民の避難が済み、ゾンダーと管理局の人間しかいないからこそ、放てる大技。

はやては効果範囲を限定した設定で、広域型魔力攻撃を放った。

亡きリインフォースから受け継いだ、純粋魔力攻撃。

闇の球塊が、ゾンダーを直撃した。

対象の魔力を食らい打ち消す働きがあり、魔導師には効果的な魔法で、かつバリアを消滅させる。しかも、一つの街全域をカバーできるため、巨大なゾンダーもすっぽり中に納まってしまう。

素体であるスカリエッティの魔力はこれにより、ほとんどが消失してしまった。攻撃魔法、防御魔法は使い物にはならないだろう。

あとは、空間湾曲によるバリアのみ。

それすらも強い衝撃には耐えられない。

「いまや、みんな!!」

「おおっ!!」

ヴィータ、シグナムがそれぞれ大技でゾンダーを攻める。

そこを、さらにスバル達がしかけた。

ティアナの誘導操作弾がゾンダーを惑わし、隙をついたスバルとエリオの渾身の一撃が、敵を打ち砕いた。

キャロはそんな彼女らをバックからサポートする。

ゾンダーロボの機体は、見る間に損壊した。

だが、今度も再生能力を発揮し、元に戻ろうとしている。

 

「来た!」

ようやく、ルネの手元に転送が完了した。

ルネの掌に実体化したのは、ルビーをあしらったペンダントだ。

もちろんただの宝石ではない。

Gストーンを組み込んで開発された試作型のデバイスである。検査の結果、凱とルネには両人ともリンカー・コアの存在が認められた。

はやてはそれを受けて、二人でも扱えるデバイスを用意するように取り計らった。G式、と仮に呼称されるそれは、GSライドとデバイスの技術を融合させた全く新しい試みである。

なのはのレイジングハート・エクセリオンにも、同様のシステムが採用され、新たにレイジングハート・ジェネシスに生まれ変わっている。

最初、ルネのデバイスはインテリジェント・デバイスになる予定だったが、「人工知能搭載型はウザいから」という理由で退けられ、結局、ストレージ型のデバイスに決定した。それを光竜と闇竜が聞いたらどう思うか。おそらく悲しむだろうが、ポルコートあたりなら気障な嫌みを返したかもしれない。

そのかわり、といってはなんだが、ルネの戦闘スタイルを鑑みて、機体は近代ベルカ式を基調としてもらった。

即ち、魔力で身体や武器を強化する方向に特化した機能を持たされているのだ。

「さっそく、いくか。《リオン・レーヌ》!」

ルネはデバイスに自らのコードネームを与えていた。

リオン・レーヌ……即ち、獅子の女王である。

《Equip──》

待機モードからデバイスモードへ。

ルネの右腕に、光が絡み付いた。

獅子の女王はルネの肘までを覆った、黄金に輝く金属製のガントレット(手甲)に変形する。スバルのリボルバーナックルにも似ているが異なるもので、腕の一点では、Gストーンが鮮やかに緑の光を放っていた。

──デバイス・コア、GSジェレイターに接続完了。システム異常なし。機体良好。魔力安定。

リオン・レーヌはリンカー・コアから供給される魔力に、Gストーンのエネルギーを上乗せして蓄積した。

「さぁ、魔導師ってやつを体験してみようか」

颯爽と、ルネはゾンダーに立ち向かう。

 

再生したゾンダーから熱線が飛ぶ。

手をかざしたルネが、デバイスにプリセットされていた防御魔法を発動させる。

「プロテクション……!」

防御における、ミッドチルダ式の基本魔法。それが熱線を弾き、拡散させた。

「いいぞ……」

カートリッジが排莢される。

近代ベルカ式の術式は、拳を強化、魔力が赤く発光した。

「ゾンダーめ、食らいやがれっ!!」

ルネが咆哮した。

跳躍して、ゾンダーロボの胸部に剛拳を打ち込む。

バリア貫通。

凄まじい破壊衝撃が、ゾンダーの外殻をえぐり取った。

「すごい……!」

呆然と、ヴィータが呟いた。

この威力は直射型砲撃魔法にも匹敵するだろう。

「これが……Gストーンのパワーかよ……」

「実験は成功ってとこだな」

ルネが頭上のはやてに笑いかけた。それは百獣の王が持つ猛々しい笑みだった。

はやてはビッと、親指を立てて返す。

それからシグナムに、

「さっき、アギトの封印解除手配が済んだからな」

と伝えた。

「ありがたい……!!」

アギトはついにこの時が来た、と喜んだ。

融合機としての真価を見せる時が。

「シグナム、アギト。あたしが次の一撃を撃つ発射準備の間、存分に暴れて時間稼いでな」

「わかりました。主はやて」

「よ~く見てろよ!! アギト様の活躍をよ」

「こっちだって、リインがいりゃもっと……」

アギトがはしゃぐ姿を横目に、ヴィータがぽつりとこぼした。

「……では、ヴォルケンリッター、シグナム。参る!」

「烈火の剣精アギト。見参だぜ!」

ゾンダーロボに不敵な表情を向けるベルカの騎士たち。

その力が、いま、放たれる。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。