ナノガイガー戦記~勇者とエース~    作:かがみん

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第13章 ゆけ! 超弩級戦艦ジェイアーク

ジェイアークの艦橋。部屋は三角形を基調とした設計で、いかにも異星文明の産物らしく感じられた。

Jは艦長席に着き、ジェイアークの状態を確かめた。

艦体は、管理局の手を借りて、ほとんどの破損箇所は修復済みである。トモロ・コンピューターとジュエル・ジェネレーターも正常に稼動していた。

ジェイアークは三重連太陽系でアベルにダウンさせられる前の状態に戻ったのである。

それも、凱のGストーンあってこそだ。トモロの凍結解除のため、凱はGストーンのパワーをありったけ籠めて流し込んだ。この時、GストーンとJジュエルの共鳴により発生した莫大なエネルギーに、ペンチノンは強制的に起動させられた。

凱がGストーンを通して現状を伝え、トモロはすぐさまジェイアークの武装を待機させる。

間もなく、ビームが向かって来るのを感知したトモロは、ジェネレーティングアーマーで艦を保護しつつ、ESミサイルを発射した。物質透過能力を持つESミサイルは、弾頭を外す事で、ES空間経由で遮蔽物に邪魔されることなく離れた味方の救助が可能となるのだ。これでJ達を回収し、ミサイルの弾道をトモロがコントロールすれば、艦に帰着できる。

そして、ビームはGストーンとの共鳴でパワーを上げたジェネレーティングアーマーにより、防がれた。

《すまない……ソルダートJ。お前を一人で戦わせてしまった》

ペンチノンは謝った。

「気にするな、ペンチノン。動力源を断たれてはお前とて仕方あるまい」

《だが、これからは私も戦う。お前の翼となって……!》

「頼むぞ、ペンチノン。凱、貴様にも礼を言う。よくぞジェイアークを蘇らせてくれた」

凱は苦笑し、

「正直、間に合わないかと冷や冷やしたぜ。これでここでの俺の役目は終わった。俺も出撃する」

「ギャレオンはここにはおらんぞ?」

「そのかわり、俺には新しい力がある!」

凱はGの紋章が輝く腕を掲げて見せた。その手首には、金色のブレスレットが装着されていた。

「ジェイアークはお前に返したぜ」

「武運を祈ろう──」

凱はジェイアークを下船した。フェイトはかなりの魔力を消耗したので、休養のため艦内に残った。

《ジェネレーティング……98%から70%に出力低下》

凱が降りたため、Gストーンとの共鳴が無くなった。ジュエルジェネレーターの出力が下がる。

「それでも──」

単体で戦うよりは戦力が上がっている。

ペンチノンの働きで、超弩級戦艦ジェイアークは速やかに、武器に回すエネルギーを充填した。

「ふ。いくら復活したとは言っても、死に損ないのソルダートとジェイクォースを喪失したジェイアークなどに……」

アベルは再度、ゾンダーに攻撃を指令した。

ゾンダーには、いや、素体となったトーレには、パルパレーパのケミカルボルトが埋め込まれている。これにより、遊星主の操り人形となるのだ。

ゾンダーの荷電粒子砲は、撃つにはエネルギー・チャージが必要だった。エネルギー充填が終わるまでにはしばらくかかる。遠距離用兵器が使用できないゾンダーは、そのため近接戦を仕掛けた。

間合いに入ってしまえば、ジェイアークの武装の大半が意味をなさなくなる。戦艦故の弱点だ。

「ペンチノン!」

《反中間子砲、斉射──》

原子核を維持する中間子を対消滅させる事であらゆる物質を破壊する、ジェイアークの主砲がゾンダーへ放たれる。

攻撃を受け、ゾンダーは動きを止めた。砲撃に、肩や腕部が砕け散る。だが、再生してしまうためダメージは軽度だった。

そして、再びジェイアークに向かう。

「ペンチノン!?」

……なぜ、頭部や胸部を狙わない?

でなければ、致命傷を与えた事にはならないだろう。

《すまない、ソルダートJ。私のミスだ》

「奴が来るぞ!」

トーレ・ゾンダーは跳躍。艦の上空に飛び、艦橋をエネルギー翼で斬り裂かんとした。

五連メーザー砲が撃つ。その衝撃でゾンダーは体勢を崩した。

(できれば、施設を破壊する事はしたくはないのだが、やむを得ない)

Jは艦体後部からESミサイルを発射させた。

ES空間を経由する空間跳躍攻撃は、移動距離を無視して、一瞬で相手への着弾が可能になる武装である。ただ、爆発の影響でこの場にかなりの被害がでるのではないかと予想される為、Jは躊躇した。しかし、ゾンダーを倒すことが最優先だと判断し、ジェイアークの重武装を使用する決意を固めた。

だが。ESウィンドウを越えたミサイルは何故か見当違いの空間に出現し、着弾した。

ゾンダーへのダメージは僅かしかなかった。

「なぜ、弾道が逸れる……!?」

《私の弾道計算が狂っていたようだ──》

「何だと」

ジェイアークの武器の制御もトモロ・コンピューターの役割だが、ミスが頻発しては強力な攻撃力も宝の持ち腐れになってしまう。

「一体、どうしたのだ。まさか、アベルの──」

凱はアベルが仕掛けた罠を全て外し、凍結プログラムも解除した。だが、彼の気づかぬ何らかのウィルスがひそかにトモロを犯していたのなら──

《いや、そのような類いではない》

ペンチノンは自己診断した結果、Jの言葉を否定した。

《恐らく、強制的なシャットダウンによる後遺症だろう》

言うなればいきなり電源を引き抜かれたコンピューターのようなもので、再度立ち上がったとしても設定やデータなど動作に不具合が起きる事がある。それと似ていて、トモロも計測・計算能力などに不調が生じていた。

無論、いつまでも続くわけではなく、現在、急いで自己修復機能を働かせ完全回復を目指している。

「だが、今この状況でこの不調は……不利になるな」

Jは唇を噛んだ。

 

「トモロは事前にメンテナンスができなかったはず。故に機能的な支障をきたすのは目に見えていましたよ……」

優れた技術者でもあるアベルは、ジェイアークらの創造者なだけあり、その構造的な弱点を熟知していた。

「たとえ……私のプログラムを打ち破っても、今のトモロは機能低下の状態。さぁ、J。役立たずのトモロでどう戦いますか……」

 

アベルの視界でジェイアークが激しく震動した。

ゾンダーがインパルスブレードで艦体を攻撃したのだ。

エネルギー翼は艦を保護する防護フィールド、ジェネレーティングアーマーに阻まれ、白い艦体自体に傷はなかった。

《ジェネレーティングアーマー、出力50%》

だが。攻撃と防御、双方のぶつかり合いにより、ジェネレーティングアーマーに使われるエネルギーが確実に消耗する。それに伴い出力も低下した。いかにジュエル・ジェネレーターが効率的で強力なエンジンとは言え、莫大なエネルギーにも限りがある。防御力に回し過ぎれば今度は攻撃力が落ちてしまう。その加減はトモロが得意とするところだったのだが。

《破損軽微。J、『次元の海』で戦うほうが有利ではないか》

もっと広い空間に出ればいい。そうすれば、キングジェイダーにフュージョンできる。

「そうしたら、海にいる奴らとこのゾンダーの挟撃を受けるかもしれん。──まずはこいつを倒してから他の遊星主を伐つ!」

ゾンダーは一旦間合いをとり、胸部装甲を開いた。

苛電粒子砲だ。

「ぬぅ……エネルギーチャージが完了したのか!?」

ジェイアークは防御力にエネルギーを回した。

ジェネレーティングアーマーにビームが衝突する。

「く──」

《出力68%から40%にダウン! 外部装甲に若干の影響あり》

「堪えろ──」

その時。ジェイアークの近くになのはが飛んできた。

加勢するため、なのはが結界を張る。

ビームの連続照射時間はおよそ三十秒ほど。その間、耐えきれば……勝機は必ず掴めるはずだ。Jはそう信じた。

「エクセリオン……バスター!」

ディバインバスターはあのビームには効かなかった。

だが、より威力が進化したエクセリオンバスターならば。

なのはの砲撃が、苛電粒子ビーム発生器官目掛け、ほとばしった。

レイジングハート・ジェネシスから、大口径カートリッジが排夾されると同時。──空中で魔法と科学の砲撃が激突した。

「おおっ……!」

今度はなのはが勝った。

エクセリオンバスターは苛電粒子ビームを押し戻す勢いで進み、ついにこれを爆散させた。

水しぶきの様なプラズマの輝きが飛び散り、エクセリオンバスターがゾンダーの胸を打つ!!

「いまだ!」

Jは即断した。

彼は飛び上がって叫んだ。

「フュージョン!」

Jはジェイアークと一体化した。

「ジェイバード、プラグアウト──」

小型戦闘艇《ジェイバード》と後部艦体《ジェイキャリアー》の二機へと、ジェイアークは分離する。

「ジェイダー!!」

ジェイバードはさらに変型し、全長20数メートル程のメカノイドとなった。

その機動性はガイガーにも匹敵する。

「ペンチノン、後を任せたぞ」

ジェイダーは疾駆した。

「プラズマウィング!!」

背部から扇状に羽根が拡がり、一気に加速する。

なのはの頭を飛び越え、距離を詰める。

「プラズマソード!」

中性イオンの集合体が刃を形成し、伸長して剣となる。

トーレ・ゾンダーはプラズマソードを、インパルスブレードで受け流そうとした。

「はぁっ!」

裂帛の気合いとともに一閃されたプラズマソードは、インパルスブレードの翼を打ち壊し、ゾンダーの機体を袈裟掛けに斬り裂いた。

「五連メーザー砲!」

ジェイダーの指先は砲口でもあり、そこからメーザーが放射された。狙うは斬撃で破壊された傷だ。

爆発がゾンダーを打ち倒す。

「よし──このまま奴のゾンダーメタルを」

摘出すれば、ゾンダーは停まる。

「「J!」」

警告の声が、その時響いた。

重なる声は、なのはとフェイトのものだ。

「むっ……!?」

アベルが何かを仕掛けてくるかと警戒するJ。

そんな彼の前でゾンダーが変化を起こした。

ギュアッ!!

凄まじいエネルギーの嵐がゾンダーを中心に巻き起こる。

「なにっ。これは──!?」

ゾンダーの形態がさらに巨大に、そしてまがまがしいものへと変わっていく。それは、魔神とも形容すべき姿だった。

「Jよ。ジェイクォース無くしてこいつに勝てるかな?」

いつの間にか、白衣の遊星主が高みから彼らを見下ろしていた。

「貴様……パルパレーパ!」

ケミカル攻撃を得意とする、遊星主の一人。

「貴様があれを仕掛けたのか!?」

パルパレーパは様々な効果を持つケミカルナノマシンを自在に操る。その中の一つに、機体のポテンシャルを限界まで引き上げるものがあった。

いわば、ドーピングだ。

本来ならパルパレーパが自分に使う物だが、アベルの命令でゾンダーに用いたのである。それにより、ゾンダーは機界新種に迫るパワーを手に入れた。無論、出力限界を越えた力はゾンダー自身にも反動を与え、機体を崩壊させるだろう。

とは言え、アベルやパルパレーパたちにとっては、単なる手駒にしか過ぎない存在だ。

敵を滅ぼしてくれるなら、破壊されても胸は痛まぬ。

彼らにとってもZの力は嫌悪すべき力だからだ。

しかし。それにしても、ゾンダーを強化する行為は──

「Zの力を利するもの!……赤の星の名を汚す、邪悪なる者共め!」

Jは、怒した。

赤の星を滅ぼしたZの力をためらいなく使う事に、心の底から激怒した。

Zの力により故郷を失った彼だからこそ。

──貴様は最もしてはならない事をしたのだ、アベルよ。

「故郷を護れきれぬまま死んだ、ソルダートたちの無念を、貴様は忘れたかぁ!! アベル!!」

激昂し叫ぶJの言葉も、遊星主にはどこ吹く風だ。

「ふ……何をいいますか。全ては三重連太陽系再生のため──そのためになら私は如何なる力をも行使します」

「我々の行動を妨害する貴様は、神への反逆者として死ぬがいい!」

パルパレーパは傲慢に告げた。ゾンダー・プラジュナーはジェイダーに猛威を向ける。

「ぐああ」

さしものジェイダーも押され気味となり、窮地に陥った。

しかも、強化されたゾンダーのスピードはジェイダーをも凌駕するものだ。

「J!」

なのはとフェイトは彼を助けるため、飛び出した。

だが。ゾンダー・プラジュナーの圧倒的な力の前に、エース達も手こずるばかりだ。

《ESミサイル発射!》

ジェイキャリアーからミサイルが撃ち込まれるが、やはり、弾道の狂いが生じて致命的な攻撃にはならなかった。

《機能の回復は、まだ完全ではないのか……》

ペンチノンは己を歯がゆく思った。

《そうだ……凱はどうしたのだ!?》

青の星の勇者は、戦うために下船したのではなかったか。

ペンチノンがその事に思い到っていた頃。

凱は本局内で局員達の避難を手伝っていた。

主に非戦闘員の隔離区画への待避、及び、地上への転送を、ガジェット襲撃に備え、警護していたのだ。

その途中、治療を受ける命を見てきた。意識が戻ってはいないが、容体に異常はないため、凱はジェイアークの元へ駆けつけようとした。

復活したジェイアークならどうにかゾンダーと戦えるだろう。凱はそう考えていた。

現状の分析と連絡、避難誘導をリインフォースIIに任せて凱は艦船ドックに向かった。

そこで目にしたものは、遊星主と、巨大ゾンダーと戦うジェイダーの姿。

「うおおっ! 遊星主!!」

凱は二人の遊星主に躍りかかった。

驚異的なジャンプで、パルパレーパに接近する。

「獅子王 凱、この前の決着をつけるか」

「ぐおっ!!」

パルパレーパの攻撃に、凱は壁に叩きつけられた。

余裕の笑みで凱に追いつき、腕のメスに似た剣で斬りつける。

「くっ!」

「ギャレオンも、ジェネシックマシンもない貴様に、神と戦えるのか!?」

それは、聖王のゆりかごの中でも言われたことだ。

「このままケミカル・フュージョンし、無力な貴様を踏み潰すのはたやすいが……」

巨大ロボット形態のパルパレーパ・プラスは、ガオファイガーをも上回る。

「それでは面白くない。この状態で、戦ってやろう」

慈悲深げに、パルパレーパは言った。

「最も、貴様に勝ち目のない事実は、変わらんがな」

「パルパレーパ。お前こそ、俺を見くびりすぎだぜ」

立ち上がった凱は、左腕を上にかざした。

「《ガオーブレス》! イークイーップ!!」

《equip》

「なにをするつもりだ?」

いぶかしむパルパレーパの前で、凱の腕のブレスレットが光を放った。

 

凱の肉体から着ていた衣服が粒子に分解され、魔力により構成された《バリアジャケット》へと変換される。凱は、身体各部に装甲を纏った。かつて、GGG機動部隊の任務で装着していたアーマーと同じ形状のものだ。

そして、左腕には獅子の頭部を模した手甲が輝いている。これこそ、ルネと並んで、凱専用デバイスとして開発された、G式インテリジェント・デバイス《ガオーブレス》である。

凱は魔導師として、パルパレーパに戦いを挑むつもりだった。

 

「さぁ、いくぜ、パルパレーパ!」

「神の前では無駄なことだ!」

パルパレーパが、先に仕掛けた。

《Protect Shade》

その攻撃を受け止める防御の魔法。

「小癪な!」

「うおおおおっ!」

Gストーンの光が、凱の拳に集まった。

「ブロウクン……マグナムッ!!」

射ち出された魔力は、弾丸と化してパルパレーパに向かう。スバルの技にも似た、ガオガイガーの武装と瓜二つの打撃だった。

「ぬおおっ!!」

パルパレーパは凱の直射型砲撃魔法を食らい、予想外にダメージを負った。

「貴様っ……!」

「俺は聞いた。魔法もまた、勇気の力だと。ならば、俺にも使いこなせるはず!」

凱のエヴォリュダーとしての能力は、魔導師のとっても有利に働いた。高速演算、魔力の運営、デバイスとの相性……凱には優れた魔導師になれる素質を秘めていた。

さらに。機械と直接、神経を接続できる凱は、生機融合能力で完全にデバイスと一体化していた。

ファントムガオーとそうしていたように。

「貴様もまた忌まわしきZの力を使うか……」

「違う。俺の力は──」

嘲笑うパルパレーパに、凱は高らかに言った。

「大切なみんなの命を護る、勇者の力だっ!」

魔法陣展開。パターンは円と方形を組み合わせたもの。

「詭弁だな。貴様の勇気などでは何も守り抜けぬ!」

パルパレーパは、パーツキューブを召喚。

「ケミカルフュージョン!」

無数のキューブと融合。

「パルパレーパ!!」

巨大ロボットになった。

「なら、こっちも思い切りいかせてもらうぜ!」

闘志を沸かせた凱は、ドックの天井と壁をうち破ってそびえ立ったパルパレーパ・プラスへ、Gストーンを輝かせてみせた。

 

一方。

ゾンダー・プラジュナーと戦闘中のジェイダーは、苦戦し追い詰められていた。

ジェイキャリアーとの連携で攻撃するが、上手くいかない。

フェイトは焦慮しながら、打開策を思案する。

そんな彼女に、バルディッシュが一つの提案を示唆した。

フェイトはすぐさま、Jにそれを伝え、Jはジェイキャリアーのペンチノンに要請した。

《了解。回線オープン……情報を受信》

トモロの不調子を補うため、バルディッシュが協力してジェイキャリアーの制御を行うのだ。もともと、インテリジェント・デバイスは主に代わり魔法の起動、様々な情報、複雑な計算を処理するのが役割であり、しかも人間には不可能な高速演算が可能となる。同じ、意思を持った人工知性としても、トモロ・コンピューターと遜色のないバルディッシュは、トモロの補正には実に最適だった。

バルディッシュとペンチノンは膨大なデータを瞬時に共有し、計算を行った。

──助かった。感謝する。

──私は自分にできることをしているだけです。

──お前は……どこか、あの紫のロボットに似ているな。

ペンチノンはボルフォッグを思い出していた。以前、まだ原種との戦いが続いていた時。彼はGGG諜報部の勇者ロボ、ボルフォッグのサポートを受けた事があった。

人ならぬ人工の生命体同士、短い期間だがよき交流を果たしたと思う。

ボルフォッグがそうであった様に、バルディッシュも常に冷静な思考を保ち、主に対する誠実な態度などは好感が持てた。

──軌道計算・弾道計算・プログラム完了。発射シークエンス、用意……

──ミサイル発射!

協力体制を築いたペンチノンは、次々に武器を撃った。

ES空間を通り、ミサイルはゾンダーの背後から着弾した。

衝撃に揺らぐゾンダー。

しかし、それくらいで倒せる相手ではない。再生能力もより速くなっている。

倒すためには、どうしても、致命傷を一撃で与える必要があった。

(キングジェイダーにフュージョンできれば、あるいは──)

宇宙最強最大のメカノイド、キングジェイダーの戦闘力は絶大ではある。

が、この場所で下手に戦えば本局にも破壊の爪痕が残ってしまう。管理局の中心が破壊されてしまったら、次元世界の治安が維持しにくくなるかもしれない。

(と言って、ジェイダーだけでは奴の出力に劣る──)

Gストーンを持つ凱ならば、この窮地を打破できるかもしれないが、センサーによると彼はパルパレーパと交戦中らしかった。

《J。あのゾンダーと戦うにはキングジェイダーでなければ無理だ》

「それはわかっているが……」

《宇宙で戦えば遊星主に挟み撃ちに合う可能性がある。なら──》

ゾンダー・プラジュナーの連撃をいなしながら、Jはペンチノンの話を聴いていた。

《J-019との戦いで使用した手法を、使えばいい》

「そうか……!」

Jはたちどころに理解した。

ジェイダーはジェイバードに戻り、ジェイキャリアーと合体、ジェイアークへとなる。

「よし、ペンチノン。ESウィンドウを展開しろ!」

《了解、ソルダートJ》

さぁ、いまこそ、反撃の刻!

《ESウィンドウ……展開!》

「牽引ビームだ!」

ジェイキャリアーから一条の光線が伸び、ゾンダーを捕らえた。

指向性のある、潮汐力を帯びたビームで、対象を拘束し引っ張る事ができる。

ゾンダーはもがき、剛力で逃れようとした。

ジェイアークはES(エスケープ)空間にゾンダーを連れていく。

「Jは、なにを──」

アベルは知らなかったが、原種大戦時、Jは強敵とES空間内部で行っていた。

赤の星での攻防戦で敗れたソルダートの一人……J-019は、絶望から自らゾンダリアンと化し、原種の走狗となっていた。原種は目障りなアルマとJ-002を始末するため、J-019を太陽系に呼び寄せたのだ。

かくして、同じソルダート同士の戦いがはじまり、JはGGGらの介入を嫌ってES空間での戦闘を敢行した。

ES空間は物理法則が異なる並列空間で、ES兵器はこの特殊な空間を渡って空間跳躍する。

 

「ここの被害を抑えるため、ですか。我々とは関係のない世界なのに、優しいことですね」

アベルはJの行動を小馬鹿にするように、評した。

しかし。次の瞬間、アベルと、そしてパルパレーパの表情が、苦痛に歪んだ。

「ジェネシックオーラ……!?」

魔法陳の光の中から、彼ら遊星主の宿敵が現れた。

「ギャレオン!」

緑の星、カインの創りし鋼鉄の獅子。Gクリスタルの行動端末。

そして、勇者王の基幹をなすもの。

ギャレオンは凱達を護るように、遊星主の前に立ち塞がった。

遊星主はギャレオンが放つジェネシックオーラの波動で迂闊に近寄れない。

「ギャレオン、よく来てくれた!」

凱は原種大戦を共に戦い抜いた仲間を見上げ、嬉しそうに言った。

「フュージョンだ、ギャレオン!!」

ジェネシック・ガイガーの性能は彼の許にも届いていた。

ピサ・ソールの自爆で果たせなかったフュージョンを、いまこそ実現させる。

だが、パルパレーパがそうはさせじと、ある男の名を叫んだ。

「カインよ!汝の機体を奪い返すがよい」

ドックの壁を打ち抜き、緑の光を伴って現れたる長身の遊星主。

緑の星の指導者・カイン。

いや、厳密にはカインの人格と能力をコピーした、ペイ・ラ・カインだ。

ラティオ──天海護の本当の父は、緑の星の機界昇華で生命を落としていた。

「カイン──!」

凱は、彼を本物のカインと思い込み、敗北した過去がある。

結果、新生して間もなき勇者王ガオファイガーが完全に破壊される事態に陥った。

(あの時はカインを複製と見抜けず、自分の勇気を信じれなかったから──)

パピヨンはレプリ地球で凱に予言した。

貴方の信じるものが信じられなくなった時、凱自身の戦いが始まるのだと。

その戦いはもう、始まっている。

(今度こそ、俺は──全てを信じて……戦う!)

迷いなき心で、凱は魔法を発動させた。

「プラズマホールド!」

「ぬお、体が──!?」

雷撃の鎖がパルパレーパ・プラスの巨体を捕捉した。ガオガイガーの技を元に編み出したバインド系魔法である。

凱はすかさず《ブロウクンマグナム》でパルパレーパを打つ。

「がぁっ!」

パルパレーパ・プラスが衝撃に倒れた。それと同時に、凱はカインとギャレオンの許へと跳ぶ。

「偽のカインに真のギャレオンは渡さない!」

「ギャレオンは私のものだ──緑の星の指導者であるこのカインの……!」

ギャレオンの主は自分だとカインは宣言する。

だが、彼に本当の意味で意思と呼べるものはない。元来、遊星主アベルの操り人形にしかすぎないからだ。

彼を止めようと向かってきた凱に対し、カインはサイコキネシスにラウドGストーンの力を上乗せして放った。

「うわぁっ」

《ガオーブレス》がプロテクションで凱を守るが、吹き飛ばされてしまう。

カインはその行方を追わず、空中で静止するギャレオンに近づいた。

「さぁギャレオンよ、お前の主を受け入れるがよい」

護が聞けば憤慨するであろう傲岸な口調で、ギャレオンに呼びかけた。

「ジェネシックにフュージョンできる資格があるのは、この私だけ──」

「違う!」

唐突に割り込んだ声。

視線を移すと、ギャレオンの肩になのはが立っていた。

「貴方には解らないの……? ギャレオンが貴方を、拒んでいることを」

「なにを言う……ギャレオンの創造者である私を拒む理由がどこにある?」

カインは鷹揚に笑った。

「ギャレオンの目を見れば……明らかだよ」

カインは鋼鉄の獅子の顔に目をやった。

赤い双眸に、断固たる意思が宿っている。

「ギャレオン!?」

「ギャレオンは、真の勇気を持つ者だけを認める……!」

なのははかつて、護が言った事と同じ主旨の言葉を彼に突き付けた。

『ギャレオンは知ってる、本当の勇者を!!』

勇気を持つ者──勇者。

恐怖を乗り越え、諦めずに戦う者。

「そうだ、カイン。本当の勇気を持たない遊星主では、勇者にはなれない!!」

態勢を立て直し、追いついた凱が言った。

木星決戦の時に出会った本物のカインこそ、「勇者」と呼ぶに相応しい高潔なる人物だった。だが、このカインのコピーは感情のない人形だ。そのような者にGストーンは輝かせられない。Gストーンは勇気を力に変えるのだから。

「ギャレオン!俺に力を貸してくれ!!」

「……黙れ!」

カインは怒気をあらわにした。しかし。これも単に、アベルが作ったプログラムに従っての表情に過ぎなかったのだが。──

カインはラウドGストーンのパワーを凱に叩きつけようとする。

「させない、レイジングハート!」

なのはが凱を守るため、カインに《アクセルシューター》を撃った。

「くっ──」

カインは防護の力で防ぐ。

「凱さん、早くフュージョンを……!」

「おう!」

凱はギャレオンの口腔部に飛び込もうとした。

「なにが……勇気だっ!」

「があっ!」

飛来したパルパレーパ・プラスが、背後から凱を攻撃した。

「弱き人間の貴様に……勇気などあるものかぁっ!」

「パルパレーパっ……ぬおっ、体が!?」

「苦しいか。私のケミカルナノマシン、充分に味わうがいい」

彼が凱に放ったのは、パレッス粒子に似た毒物で五感の神経を破壊する、ケミカル攻撃でもあった。

「くっ──」

《ガオーブレス》が治癒魔法を発動しようとするが、それを制して凱が言った。

「パルパレーパ、超人エヴォリュダーの力を知らないのか」

凱は体内のケミカルナノマシンに干渉し、そのプログラムを書き換えた。それによりナノマシンの効果を無効化してしまう。

「ぬぅ……大人しく痛みなき死を与えてやろうとしたが……。いいだろう、神を本気にさせた後悔、貴様に思い知らせてくれるわ!」

「望むところだぜ!!」

凱は長髪をたなびかせ、不敵な表情を浮かべた。

を見せた。

一方、なのははギャレオン破壊に目的を切り替えたカインと交戦していた。

ふと、上方を見ると、ESウィンドウの中にジェイアークがゾンダー・プラジュナーを引きずり込もうとしている。

「ギャレオン、主に逆らうか!」

カインに向かって、なのはに協力したギャレオンが、牙や爪で攻める。

「むう。我一人では分が悪いか?」

カインは不利を悟った。

パルパレーパも凱との戦いで手を離せないようだ。アベルのほうは先に母艦に帰還したのか、姿が見えない。

彼は戦場からの離脱を決めた。

「ギャレオンよ、いかにお前が我らと敵対しようが、最後に敗北するのはお前たちだ……ラティオも、な」

そう呟くカインは、遊星主の飛行空母ピア・デケム・ピットに通信を送った。

「ウーノ、私を転送させろ──」

と、命じる。

遊星主の手助けで衛星軌道拘置所より逃亡した戦闘機人ウーノは、直ちに命令を実行に移す。

だが、カインがピア・デケム・ピットに転送されようかという瞬間を狙って妨害する者がいた。

なのはだ。

「貴方を行かせるわけにはいきません」

できれば捕獲し、遊星主の企みを聞き出したいところだ。

「小娘……」

ならば、戦ってこの場を脱出しよう。

カインはサイコキネシスを叩きつける。

強力なパワーが襲い、なのはがバリアで防御した。

「なんて……力なの!?」

サイコキネシスなどの超能力にラウドGストーン。

ペイ・ラ・カインは侮れない敵だと、なのはは再認識した。

「全力全開でいかないと……でも」

本局に被害が出るような戦い方は避けねばならない。それはJが危惧していたことでもあった。

「同じ魔導師相手なら、純粋魔力ダメージのみでもいいんだけど──」

それなら建物への被害は少なくできる。

しかし、遊星主は質量兵器のみの世界から来た存在だ。

物理的な破壊の力だけが、彼らを倒すことができる。

いや。

一つ、遊星主に有効な手段があった。

そのことをなのはは知らなかったが、ギャレオンは、凱は、知悉していた。

「え……!?」

なのはは振り返って、ギャレオンを見た。

なのはの胸に、声なき声が聞こえたのだ。

それは、なのはに勇気ある選択を決めさせるものだった。

「ギャレオンの……?」

ギャレオンの意思。その想い。

「私、が……?」

──勇気あるものよ。汝は勇者の資格ありき。

「ギャレオンと──」

──なれば、勇気ある誓いに基づき、大いなる遺産の力、汝に与えよう……

「でも、貴方は凱さんの……」

「俺に構う必要はない──君がギャレオンにフュージョンするんだ!!」

 

なのはの愛杖、レイジングハート・ジェネシスはG式に進化した、新たなデバイスだ。

Gストーンを組み込んだレイジングハートは、フュージョンを可能にする機能を有していた。

 

「ジェネシックこそ遊星主に対する最大の切り札。奴らを倒す為にはギャレオンの力がいるんだ」

パルパレーパ・プラスの斬撃を回避しながら、なのはに伝えた。

「さぁ、早く! 君の勇気を、俺は信じている」

まだ躊躇するなのはに、凱は大きく叫んだ。

それで、彼女の気持ちは固まった。

「わかりました……私、やります!フュージョンを!」

「馬鹿な。この宇宙の人間がフュージョンなどと……!」

パルパレーパが吐き捨てた。

「彼女も蒼の星の人間だぜっ」

凱はなのは達について、ある程度の話は聞いていた。

「ましてやデバイスの助けがある。サイボーグだった俺よりも有利なはず……!」

ゾンダー・プラジュナーは、ESウィンドウの彼方へと消えようとしていた。

「あの小娘にジェネシックが使いこなせるだと……? カイン、なにをしている。その娘を始末しろ」

冷ややかな声に、僅かに焦りのようなものが感じられた。

「ジェネシックはお前達の天敵だったな。よほど、怖ろしいらしいようだな」

「神に怖れるものなど……ない!!」

パルパレーパの振るうメスを、凱の直射型攻撃魔法が破壊した。

「やはり、図星のようだな、パルパレーパ!!」

「貴様──」

彼らが戦うのを視界の片隅に捉えながら、なのははレイジングハート・ジェネシスを手にギャレオンの前に飛んだ。

「フュージョン!!」

《Fusion Mode》

なのはのバリアジャケットが変化する。光に分解されて、新たに再構成された。

機体とフュージョンするために造られた特殊な防護服だ。胸元に宝石の形態に変わったレイジングハートが光っている。

「むうっ──」

カインが小さく呻いた。

ギャレオンの口蓋部になのはが吸い込まれる。

「やったな……!」

凱は歓声をあげた。

「ジェネシック・ガイガー……!」

なのはがギャレオンの体内に接続され、メカノイドへシステムを組み換える。

だが、変化はさらに続く。

《Fusion Revolution》

そして── かつてない奇跡が、起こる。

「不屈の心よ・星の輝き・大いなる力を・勇気ある誓いのもとに──!!」

 

パルパレーパは、驚愕した。

「信じられん……これは……どういうことだ!?」

彼は魔法を理解していなかった。想いが奇跡を生む、勇気の力を……!!

鮮やかな緑と桜色の輝きのなか、レイジングハート・ジェネシスは力を解き放った。

 

 

 

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