ジェイアークの艦橋に戻っていたフェイトは、そこからなのはがギャレオンとフュージョンするのを目撃していた。
(なのは……!)
メカライオンの姿から、人型のメカノイドに変わるのを、息を飲んで見守った。
(あれが……ガイガー!)
ジェネシック・ガイガーの勇姿にフェイトは感嘆した。
一瞬の後、フェイトとジェイアークはゾンダー・プラジュナーを引き連れて、ESウィンドウに突入していった。
カインは、己のために開発されたと思い込んだ機体が変型するのを、固い表情で見ている。
通常のガイガーを越える、対遊星主用アンチプログラム。
ジェネシック・ガイガー。
ギャレオンのGSライドとなのはのリンカー・コアが接続され、その全身に魔力が行き渡った。
レイジングハートがその機能を掌握し、なのはの意思とフィードバックする。
なのはの魔力光と同じ色の翼が六枚、ガイガーの背から伸びた。神々しい印象を与える翼だ。
これこそ、魔法の奇跡が生んだマジカル・メカノイド。
魔法の勇者とも呼ぶべき機体。その名も、スター・ガイガー!
「ジェネシック・クロウ──」
ガイガーの格闘戦用武器が装着される。
「ぬっ!!」
スター・ガイガーはカインに迫った。
カインはサイコキネシスで戦おうとするが──
「ぐああっ!」
ジェネシック・オーラを纏ったクロウの一撃で、カインの肉体を撃破。ジェネシック・オーラに遊星主は太刀打ちできない。彼は細かな粒子に分解され、消滅した。
「カイン!?」
パルパレーパは忌ま忌ましい敵の誕生に、憎悪の視線を送った。
「次はお前の番だぜ、パルパレーパ!!」
凱は気迫を篭めて攻撃を繰り出した。
「うぐっ……小癪な!」
パルパレーパ・プラスが揺らぐ。凱は一気に踏み込み、至近距離からの砲撃を胸にぶつけた。パルパレーパのダメージは軽いように見えたが……
「この程度の攻撃で……ぐわぁ!?」
苦痛の叫びがパルパレーパから漏れた。
「か、体が──!?」
痛みに震えるパルパレーパは、機体の制御ができなくなった。
「お前がさっき俺に打ち込んだケミカルナノマシン、返したぜ!!」
先程のケミカル攻撃、凱はナノマシンのプログラムを書き換えて逆にパルパレーパに注入したのだ。それはパルパレーパ・プラスを蝕み、動きを封じた。
「ぐおおおおっ!」
凱の腕に緑の光が集う。
なのはの必殺技と見紛うような、収束砲。
「ブロウクン……ファントーム!!」
ブロウクンマグナムを越えた一撃。
パルパレーパ・プラスの機体が、砕け散る。
「ぬあああぁぁっ……!!」
爆発が、パルパレーパを粉砕した。
「はぁはぁ……」
初めて魔法を使った実戦で、凱は疲労を覚えた。
だが、まだ敵の全てが倒されたわけではない。
(J……)
並列空間で戦っているはずのJ達に、凱は思いを致した。
(あいつらは、勝てただろうか……)
それまで戦場だった場所に、沈黙が落ちた。
本局の各所が戦闘で半壊し、局員達が事後処理に走りはじめた。
ES空間内。
トーレ・ゾンダー・プラジュナーは、空間に入ったところで、牽引ビームから解放された。
そこは無重力の世界であり、特異な法則に支配されている空間だ。
「メガ・フュージョン!!」
ジェイアークは再度、二機に分離し、合体する。
「キングジェイダー!!」
百メートルを越える全身に、無数の武器を搭載した、ジャイアント・メカノイド。
「決着をつけてやる!」
Jは闘志を燃やした。
そこへ、桜色の翼を生やしたガイガーが現れる。
なのはがフュージョンした、スター・ガイガーだ。
そして、二体のメカノイドと強化ゾンダーとの戦いが開始される。
ゾンダー・プラジュナーは肩や胸の装甲板を開き、白い球体を露出させた。小さな稲妻が爆ぜる光球が、その球状の器官の上に浮かぶ。
なのはのアクセルシューターのような技だ。
それが、キングジェイダーとスター・ガイガーに向けて発射される。
自動追尾機能があるのか、回避しようとする彼らに正確について来る。
《Wide Protection》
だが、ゾンダーの機雷攻撃も、なのはの防御魔法には通じず、キングジェイダーはジェネレーティングアーマーで身を守った。
「反中間子砲、十連メーザー砲!!」
キングジェイダーは凄まじい火力で反撃、ゾンダーの身体は爆発に包まれる。
「シュートッ!!」
なのはも得意の砲撃でゾンダーにダメージを与える。
ゾンダー・プラジュナーは再生能力で傷を癒そうとするが、Jとなのはは休まず猛攻を加えたため、再生が追いつかなくなってきた。
それでも、死を恐れぬゾンダーは、自己の破損に構わず戦う事を辞めない。
《Restrict Lock》
しかし。ゾンダーはなのはのバインドにより、拘束されてしまう。
以前、強化前のゾンダーは管理局武装隊のバインド魔法を容易に引きちぎったが、魔力とGストーンのパワーで威力を増したなのはの《レストリクトロック》は剛力を以ってしても無理であった。
「うおおっ!!」
キングジェイダーは、拘束により動きを止められたゾンダーに、集中砲火。
そこへさらに──
「スターライトブレイカー!!」
ガイガーの胸──ギャレオンの顎の前方に形成された魔力球が、最強の魔法を発動させる。
一 撃 必 倒 。
砲撃が、ゾンダー・プラジュナーの胸部に直撃した。
「!!」
その装甲が、まるで紙で出来ていたかのように、易々と砕け散った。
「いまだっ」
キングジェイダーがゾンダーに強襲をかける。
腕を穿たれた胸に突っ込む。
ゾンダーの機体から、
核となっていたゾンダーメタルを引き抜いた。
「ディバインバスター!」
ゾンダー核を失った機体を、なのはが粉々に破壊した。
ゾンダーを構成していた物質は、きらきら輝きながら、砂粒のような粒子がES空間に消えていく。
「これで……ゾンダーを浄解できるな」
Jはペンチノンに通常空間への復帰を命じた。
ES空間からの脱出のため、時空を隔てる扉が開かれる──
凱やシャーリーは、固唾を飲んで戦士達の帰還を待ち続けた。ESウィンドウが閉じてもう数時間は経過した気がする。
無論それは錯覚で、実際には十数分しか経っていない。
(ゾンダーは……)
倒せただろうか──
凱が自問した時、《ガオーブレス》が知らせてきた。
《The distortion of the dimension was perceived》(時空間の歪みを感知しました)
はっと、上空を見上げると、そこから圧倒的な存在が感じられた。
ES空間から、超弩級戦艦ジェイアークと、スター・ガイガーが還ってきたのだ。
「ゾンダーメタルは、回収した!」
Jは高らかに睫報を伝えた。局員達は歓びの表情をあらわした。
「あとは、次元の海にいる遊星主か──」
クロノ提督は三段式飛行空母ピア・デケム・ピットの映像を睨んだ。
アベルは艦に撤退し、パルパレーパとカインは敗退している。
(さぁ、どう出る?)
緊張しながら出方を待ったが、やがて攻勢を断念したのか、ピア・デケム・ピットは艦首を翻して退きはじめた。
魔法陣が出現し、巨艦は光に包まれて、かき消える。本拠地であるピサ・ソールに戻ったのだろうか。
クロノはほっ、と息を吐いた。彼は指揮下にある艦隊に、ピサ・ソールの動向をより徹底して監視するように、通達を出した。
「第一種警戒体制、ここに解除する!」
管理局は戦闘状態を切り替え、施設の復旧と負傷者救助を優先して活動をはじめる。
その間に、護がミッドチルダから駆け着けてきた。
ゾンダーメタル浄解のためである。
「ラティオ、どうした。顔色が優れぬようだが……?」
少年の顔を一瞥して、怪訝そうにJが訊いた。
「大丈夫、ちょっと向こうで戦って疲れただけ……」
無理しているのだろうが、護は明るい口調で言った。
「そうか、ならいいのだが……」
Jは、ミッドチルダでなにかあったのではないか、と疑ったが敢えて問い質したりはしなかった。
護はゾンダーメタルの浄解に取り掛かった。
ゾンダーメタルはジェイアークの保管室に保存されている。かつてはゾンダークリスタル保管に使われていた部屋だ。
淡い、緑の輝きを発しながら、護が断ち切られた命を繋ぐ呪文を唱える。
ゾンダーメタルから人型へ。
生機融合の力が解き除かれ、トーレの姿を取り戻していく。
かつて、浄解を受けた数多の者達と同じ様に。トーレもまた、滂沱と落涙しながら己の罪を悔い改めていた。
「さぁ。奴らの計画について、知っていることを全て吐いてもらうぞ──」
Jは冷淡とも呼べる声で言った。それは、ゾンダー化の悲劇を微塵にも考慮にいれない口調だった。
「何でも言います──」
トーレは性格が一変した態度で、供述する。
彼女の口から、遊星主の企みが語られた。護はアベルの計画に対し、衝撃を受けた。
「アベル……君は、なんという……!」
クロノはこの会話を、ミッドチルダにいるはやてにも聞かせるため、急いで通信を開かせた。