次元の海。
遊星主を追って流星の如く加速する超人エヴォリュダーとGストーン・サイボーグ。そして、緑の星のラティオ。
凱は魔法を使い飛翔するが、遊星主に追い縋ることができたのは、アストロノーツ時代に習得した知識と技術のおかげであったろう。一方、ルネはもっぱら直感に頼っての飛行だ。
護の場合は、一年に渡り、三重連太陽系で遊星主と戦い続けた経験からか、追跡も手慣れたものである。とは言え、飛行速度は獅子王の二人よりは遅い。
彼らを振り切るかのように、ソール11遊星主はミッドチルダ目指し飛んでいく。
凱はデバイス《ガオーブレス》を起動。
直射型魔法を放つ。
「ブロウクンシューター!」
なのはのアクセルシューターを参考に編み出した砲撃であり、ブロウクンマグナムと同じ破壊力を持つ。さらに、複数に分裂して敵を撃つことも出来、ヴィータのシュワルベフリーベンに近い形態と言えた。
自動追尾機能が設定してあるため、逃れるは困難だ。
「いけっ!」
光の弾丸は遊星主を背後から追い、そして、着弾した。
だが、遊星主に目立ったダメージは見えない。むしろ爆発の衝撃を利用してさらなる加速を得ていた。
遊星主の姿が、一気に遠ざかる。
「しまった……!」
悔やむ凱。分裂したために威力が半減していたのか。
遊星主たちはぐんぐんと、ミッドチルダのある方向へと進んでいく。
凱とルネも負けじと加速を強めた。
「は、早い……!」
護は必死に凱たちに追い縋ろうとした。
そんな彼に、はやての命で地上防衛に向かった艦が接近してきた。
護は艦から、転送で地上に直接降下することを告げられ、同行を願った。
防衛部隊を指揮するシグナムは承知して、護を艦に収容した。部隊は、ミッドチルダの衛星にある転送ポートから、地上に降りる考えであった。
ミッドチルダ軌道上。
そこには、クロノ提督麾下の艦隊が連絡を受けて待ち構えていた。
防御陣形を敷き、遊星主の進撃を阻止せんと、皆が緊張の面持ちで遊星主到来に備えている。
「来ました!」
「敵・遊星主……七体確認!」
「こちらに真っ直ぐ向かって来ます──」
「よし、アルカンシエル、起動準備……」
管理局にすれば《勝利の鍵》に相当する、魔導砲起動に必要なキィを取り出して、クロノが艦隊に指示を与える。
魔導砲アルカンシエルはそもそも単体のみでも強力な武装だ。管理局の保有する兵器のなかでは最も破壊力を秘めたものといえよう。
純粋なる破壊を行うアルカンシエルは、物質そのものを消滅させる。ある意味、管理局にとっては切り札でもある。
滅多な事では使用されぬが、遊星主を倒すため即、許可が下りた。
「遊星主、間もなく射程に入ります!」
パーツキューブに乗った遊星主たちは、円陣を組むかのようなフォーメーションでクラウディア艦隊に接近してきた。
「アルカンシエル、発射!」
まばゆい光が、艦から放出された。
空間の一点に束ねられた光が、遊星主を飲み込もうとする。
──だが。
目前に迫るアルカンシエルの光にピルナスが婉然と微笑んだ。カインは無表情だ。他の遊星主感情のない顔立ちであるが、余裕のようなものが感じられた。
やがて、光が、彼らに直撃した。
「どうだ?」
ほぼ直撃だ。
普通なら、消滅は免れないはず……
「うっ!?」
クロノは目を疑った。
眼前の空間に、巨大な穴が出来ていた。
時を少し遡る。
アルカンシエルが放たれると同時に、一体の遊星主が前に進み出た。
彼は右腕を突き出し、力を振るう。
力は、指向性のある重力波だ。
アルカンシエルは空間の湾曲により、連鎖的に、百数十キロ内に存在する全てを反応消滅させる兵器である。その破壊の威力は、魔導の器であった《闇の書》の防衛プログラムですら消し去るほど。
それを遊星主──ピーヴァータは、重力波で逆方向に空間湾曲を発生させることで反応を弱め、ほぼ無力化させてしまった。
その結果、GGGのディバイディングドライバーを発動させた時の様な現象が発生した。
ガオガイガーのディバイディングドライバーは、レプリションフィールド(反発力)とアレスティングフィールド(拘束力)を同時に励起させ、空間湾曲エネルギーにより見かけ上何も存在しない空間を作り出す。この場合、擬似的なディバイディングフィールドが遊星主と艦隊の中間に誕生したのであった。
そこを飛び越え、遊星主が攻勢を仕掛けて来る。
遊星主たちは高出力のソールウェーブを集中させて、艦隊に浴びさせた。
艦船が次々に攻撃を食らい、ダメージを負っていく。
「くっ──」
頼みの綱のアルカンシエルが効かないとなると……
「これでははやてがピサ・ソールを破壊する前に、地上が!」
防御陣が壊乱し、遊星主に突破されてしまう。
「だが。それでも……奴らを止めないと」
ソールウェーブの高熱で爆発する艦の装甲板を見ながら、クロノは歯を食いしばり、呻く様に言った。
数分後。
誰しもが不安と緊張を覚えながら待機していたミッドチルダ地上部隊に、緊急出動がかけられた。
クロノは焦りながらも、地上と連携を取って遊星主に対処する事を忘れない。
地上に自身の部下たち《
「ヴォルケンリッターや、なのはの教え子達も向かってくれている。何とか、持ちこたえてくれ……」
ミッドチルダではすでに市民の避難は完了し、防衛に当たる勇者隊が遊星主を待ち構えていた。
ミッドチルダの大気圏内に入り込むや否や、遊星主たちはパーツキューブとフュージョンした。
普段はアベルと共にピア・デケム・ピットに居る事が多いピルナスも、巨大な戦闘ロボへと変化する。
フュージョンしないのはカインだけだ。彼の場合、真にフュージョンするのに値するのは、ギャレオンのみなのかもしれない。
パーツキューブに合体して遊星主たちは、ミッドチルダ各地へと散って行き、破壊活動を開始する。
凱たちがミッドチルダにたどり着いた時には、すでに激しい攻防が繰り広げられていた。
巨大ロボと化した遊星主を食い止めるべく、追ってきた凱たちが立ち向かう。
緑豊かな景勝の地に、凱と護が降り立つ。
山々に囲まれたそこは、フェイトが幼き日を過ごした地方だった。
アルトセイムと呼ばれるそこに、遊星主・プラヌス、ペイ・ラ・カインが襲来していたのだ。プラヌスには凱が、カインには護がそれぞれ当たった。
一方、首都クラナガンでは、ポルタン、ピルナス、ペチュルオンが勇者隊と戦っていた。
また、ピーヴァータはベルカ自治領、ペルクリオは港湾地区に巨躯を降ろす。
ミッドチルダ各地は戦場となり、激闘が繰り広げられるのだった。
長身痩躯の遊星主プラヌス。
凱に対し、ビームとミサイルで攻撃をしてくる。
防御魔法でそれらを捌きながら、彼もまた攻撃を繰り出した。
「ブロウクン・ファントム!」
撃ち出された緑の光弾が、遊星主に肉迫する。
その軌道を見切ったプラヌスは、ブロウクンファントムを回避すると同時にミサイルを発射。誘導弾と接触し爆発。光弾が砕け散る。
「たやすく勝たせてはもらえんか……」
凱は闘志を奮い立たせた。
「行くぜ、ガオーブレス!」
獅子の顎が吠える様に、起動音をたてた。
凱はさらなる力を、腕に籠める。
「──勇気の赴くままに!!」
首都、高層ビルの屋上に二つの影が立っていた。
管理局の誇る、エース・オブ・エースの技を継ぐもの達。
短髪の少女スバルとツインテールの少女ティアナ。
二人は遊星主の姿を求めて、辺りを見回した。
下界を見下ろせば、街の様子は静かだ。市民は安全な区域に避難している為、視界に映る人々は皆管理局に属するものたちばかりであった。
「……おかしい」
「あんなデカブツ、普通なら見失うはずないのに」
魔法の走査にも引っ掛からないなんて……
「──!?」
スバルの目の色が変わる。
「ティア、危ない!!」
「えっ……!?」
とっさにティアナを突き飛ばし、スバルはシールドを発動。
飛来した二刀を弾き返した。
「これは……!?」
立ち上がりつつ、驚愕するティアナ。
「出てこい、遊星主」
スバルが叫ぶ。
すると、隣のビルに、空間から滲み出るように巨大な姿が現れた。
ソール11遊星主の一体、ポルタンである。
鋭敏に感覚器官を強化されたスバルだからこそ、微かな投擲音に気付くことができた。
ティアナ一人では、危ないところであった。
「姿を消せる遊星主、か……」
ティアナは対策を練って考え込んだ。
スバルは構えつつ、ポルタンの動きを計っている。
──と、また、ポルタンの姿が消えた。
光学迷彩の一種であるが、魔法でも走査しにくい特殊なカモフラージュである。
しかし。
流石な遊星主といえど、動作音までは消せない。
人では気づかない静穏な動きでも、戦闘機人の強化された聴力なら……
「そこだっ」
スバルのシールドが、ポルタンの刀を弾いた。
ティアナは、改めて戦闘機人の身体能力の高さに感嘆した。
「スバル!」
「こいつ、でかいくせに、凄く早い……しかもあの巨大な刀。当たればやばいね」
「あんたのISで太刀打ちできないの?」
新たに開眼したスバルの先天技能。
それなら或いは……
「来るっ!」
ポルタンは加速。二人に襲い掛かる。
すでに光学迷彩を解除していた遊星主が、二刀を手にビルを揺るがし踏み込む。
「くっ」
スバルとティアナは跳躍しながらの回避へ。
同時に、ティアナが撃つ。
複数の誘導弾を放つ《シュートバレット》の魔法。
四方からの攻撃に、ポルタンは独楽の様に回転して、誘導弾を風船を割る様に全て弾き砕いた。
「ちっ──」
ティアナは舌打ち。
直後、その動きが一瞬静止するのに合わせ、スバルがポルタンの背後から攻めた。
「うおおっ」
至近距離からの《ディバインバスター》!
なのはから受け継いだ一撃必倒の技だ。白き光が遊星主を打つ。
爆発。
スバルは効いてくれることを祈りつつ、間合いを開けようとする。
(!)
スバルが反応するよりも一段早く。神速で放たれた斬撃が、水平に流れた。横からの一刀はスバルを両断せんと疾る。
「スバル──!?」
遊星主・ピーヴァータの巨大なチェーンソーアームが、高速でシグナムに叩きつけられる。
騎士はレヴァンティンで切断の力を受け止めた。
火花が散り、そのパワーの前に、さしものシグナムも押され気味となる。
「ぬう……」
汗が額を伝う。
カートリッジ二発分の魔力を消費し、チェーンソーを『斬る』事を図ったが、逆にレヴァンティン自身に負荷がかかるばかりだ。このままでは、埒があかぬ。
刃をチェーンソーからずらし、シグナムは展開したバリアでチェーンソーを受け流した。滑る様に体を移動させた彼女の横を、チェーンソーアームが轟音と共に振り降ろされる。すぐさま鋸の腹を蹴り跳んだ。空中高く離脱していく。
「カートリッジロード!!」
《explosion!!》
シュランゲフォルム。
シグナムは中・近距離攻撃を放とうとした。
そこへ──
「うっ!?」
パイルドライバーから、ピーヴァータの攻撃が繰り出される。それは、アルカンシエルを打ち破った、重力波攻撃だ。
「くおおおおっ……!」
重力衝撃波はシグナムを直撃した。重力波フィールドで歪めた空間の復元力を利用した衝撃波には、距離による減衰は無かった。結界を張って防いでいるが、守護騎士中、最も防御力が低いシグナムには苦しい防戦である。
「く……」
もし結界が破壊されれば、高重力に押し潰されるのだろうか。
「この衝撃波ごと、斬り裂ける力が……あれば」
だが、今は衝撃波から身を護るので精一杯だ。
「はっ……!」
不意に、衝撃波の圧力が消失した。と、思った瞬間。シグナムの正面に巨体が舞っていた。
ピーヴァータはチェーンソーでシグナムを打撃する。
「うわぁぁぁっ──!!」
吹っ飛ばされ。
シグナムは大地に叩きつけられた。
海上。
火竜と騎士達を阻む見えざる波が、鳴り響いていた。
ペルクリオは『音』を武器とする遊星主である。
超音波振動によって、目標となる対象を破壊するのがその能力だ。
原理的には、GGGのマイク13のソリタリーウェーブと同根であり、また、ソムニウム戦闘形態ベターマン・ネブラの必殺技「サイコ・ヴォイス」も同じ効果があった。
むしろ、ネブラの能力を元にGGGが開発したのがソリタリーウェーブと言えよう。
ペルクリオには専用オプションとして、ブルブルーンが付いている。ブルブルーンはペルクリオの『音』を増幅する、鯨形の巨大遊星主であった。
その『演奏』に、キャロが結界のフィールドで必死に耐え続けている。
「頑張って、キャロ!」
赤毛の少年、エリオは槍型のデバイス《ストラーダ》を手に、歯痒い感情を抱いていた。
フリードリヒの背に立ち、構えているものの、彼にはペルクリオの『音』に対抗する攻撃技が思いつかないでいる。
フリードの火炎も、酸素原子を粉砕される事で無効化された。接近戦に持ち込むにも、ペルクリオのソリタリーウェーブが有る限りそれも難しい。
『だけど、このままじゃ……』
ケリュケイオンに最大限の魔力を注ぎ込み、ひたすら結界の維持に集中するキャロの表情に、疲労の色が浮かびはじめた。
『指をくわえて見てるだけなんて──』
ギリ、と奥歯を噛む。
キャロはソリタリーウェーブから仲間を守りながら、アルザスの守護竜・ヴォルテールを召喚する方途を考えていた。だが。いかにヴォルテールといえど、遊星主に勝てるのか彼女には自信がない。
だが、それでも──
(エリオ君やフリードを……!)
その時。硝子が割れる様な、乾いた音が響いた。
(えっ──!?)
「まさか……」
「アギャ!?」
結界が、砕けた。
「魔法を……超音波振動で分解した!?」
驚愕している余裕は無かった。ソリタリーウェーブがエリオたちに襲い掛かってきた。
「うわあっ!!」
「きゃぁっ……ケリュケイオン!」
凄まじい痛みにさらされながら、キャロは無理を承知でデバイスに願う。
「みんなを守る……力を!」
直後、複数の水しぶきが巻き上がった。
エルセア地方。そこは山や林に囲まれた景勝の地であったが、いま、ここを局地的な暴風雨が荒れ狂っていた。遊星主・ペチュルオンが起こした電磁竜巻のせいである。
吹き荒れる風の中、ヴィータは無言でペチュルオンの巨体を見上げていた。その視線は冷徹で、鋭い。
電磁竜巻は、遊星主の腕にある巨大な電磁石とスクリューを高速で回転させて生み出しているようだった。
将であるシグナムよりも防御に優れたヴィータは、魔法で完全に電磁竜巻の影響を防いでいる。
ならば。ここは、攻勢に出るのみだ。
「ぶち抜く──」
くろがねの伯爵《グラーフアイゼン》が主に応えるように、カートリッジを排夾する。
「いくぞ、アイゼン!」
《Jawohl!!》
跳ぶ。
「一気に……真上に!!」
加速。
飛翔したヴィータは、電磁竜巻の上に。
空中から暴風雨の中心、「台風の目」に当たるぽっかり穴の開いた空間を見た。そこに発生源たる遊星主がいるのだ。
頭上から、攻撃を加えれば、電磁竜巻もガードの意を為さないはず。
「はぁっ!」
複数の鉄球をハンマーヘッドで撃ち出す、ヴィータの必殺技が放たれる。
大気を突き破る音が鳴り。
赤い魔力光の尾を引いて、鉄球が飛ぶ。
ペチュルオンの無防備な頭へと向かう。
「うっ……!?」
だが、遊星主は腕の向きを変えた。竜巻が、上空にいたヴィータに向かって牙を剥く。
顎を開いた竜の様に、獰猛な渦がヴィータを飲まんとした。
鉄球は電磁竜巻により、威力を削がれ、イオンパルスの衝撃をも食らって破砕される。
「ぅあぁぁっ!」
ほとんど音速に近い速度で、嵐の竜が襲い来る。深紅の騎士は電磁竜巻によって動きを封じられ、稲光が舞う激しい渦に翻弄された。
「ぐあっ……!?」
やがて、竜巻の顎から吐き出されたヴィータは、凄まじい勢いで地面に投げ出された。
ぬかるみが騎士服を汚した。
グラーフアイゼンに縋り付きながら、ヴィータが立ち上がる。
「畜生……てめぇ」
その瞳に燃える闘志は衰えるどころか、逆に熱量を上げたようだった。
「今度はその電磁竜巻ごと、てめぇをぶっ潰してやる」
グラーフアイゼンをカートリッジ・ロード。
「なのはの為にも、てめぇは必ず倒す!!」
ミッドチルダ東部、かつてスカリエッティのアジトが存在した山嶺が見はるかす一帯。
緩急のある丘陵が連なっている地帯があり、その上空を飛ぶ人影があった。
ジグザグとした不規則な飛行は遊星主ピルナスであり、それを追って空を翔けるのはルネ・カーディフ・獅子王である。
針や鞭、火炎がピルナスの攻撃であり、ルネは魔力を帯びた拳と蹴りが武器だ。
だが、機動力に優れたピルナスに打撃を当てるのは難しい。
魔法の砲撃を撃ったみたが、直線的なビームでは簡単に回避されてしまう。
飛行魔法に未だ慣れぬことも、ルネが焦る一因である。
(くっ……ちょこまかと)
微笑しながら鞭を振るうピルナスに、ルネは苛立った。
さらに。
「ふふふ……子猫ちゃん、貴女との追いかけっこも飽きてきたし、そろそろ本気でぶち殺してあげる」
「なんだと!」
怒るルネの前で、ピルナスが叫ぶ。
それは融合の合図。
「フュージョン!」
パーツキューブを召喚、一体化していく。
「うっ、これはパルパレーパ達と同じ……」
巨大ロボットとなったピルナスは、右腕から針を発射した。
一本だけではない。数百に及ぶ巨針の弾幕である。
ルネはプロテクションを展開して防ぐが、ピルナスが次に繰り出す鋼鉄の鞭により、弾き飛ばされてしまった。
「ぐおぉっ」
丘の斜面にサイボーグボディーがめり込んだ。
「ううっ……」
たたき付けるように、ピルナスは炎熱の帯を放つ。
赤い光が周囲を照らし。
爆発が起こった。
豊かな自然が色づくアルトセイム地方。そこに、大きな窪地があった。
その窪地の底に対峙する大小の姿がある。
ペイ・ラ・カインと天海 護だ。カインは無表情で立ち、護は決意を秘めた瞳で遊星主を見返している。
二人は知らなかった。
かつて、この地はフェイトが幼少を過ごした思い出の土地だということを。プレシア・テスタロッサが真実の母だと信じ、魔導師となる訓練に一生懸命だった時代の記憶が染み付いた土地だということを。
窪地にはその居城たる「時の庭園」がそびえ、フェイトとアルフが成長した場所である。だが、それも、時空の彼方に於いて崩壊し消え去った。フェイトの母と姉を道連れに……
フェイトの思い出と、そして哀しみを遺したこの場所で。
緑の星の守護神と、そのオリジンの息子に生まれた少年がぶつかり合う。
「ラティオよ……」
厳めしく語りかけてきたペイ・ラ・カイン。
「本当に父である私と戦うつもりか?」
問い掛けと共に、彼の額から光が灯る。
逆転したGの紋章。
遊星主の力の源、ラウドGストーンの輝きだ。
「故郷である三重連太陽系を見捨て、下等な世界をそなたが救うというのか?」
「黙れ!」
あの、温厚な護が珍しく、語気荒く声をたたきつけた。
「あなたは僕のお父さんじゃない!」
そうだ……目の前の男は真の父ではない。アベルがオリジンのカインの人格を抽出して創りあげた操り人形だ。
アベルの命令に従い、プログラムの通りに行動する人形……。
「プログラムにしかすぎないあなたが……カインを騙るな!」
護は凱からカインについて、どれだけ高潔な人物であったか、聞かされていた。生前ついに見えること叶わなかった、父について。
(カインは……地球を滅ぼすより地球と共存しようとした。次元世界を滅ぼしてまで三重連太陽系を再生させようとする遊星主とは違う!)
それは、Gクリスタルの「マザー」から聞かされた事実だった。
滅亡が近づく三重連太陽系において、赤の星はギャレオリア彗星──次元ゲートの彼方の宇宙から暗黒物質を取り寄せ、宇宙の収縮を止めようとしていた。三重連太陽系は生きながらえることができるかわりに、暗黒物質を持ち出された宇宙は、滅亡を速めてしまう。
GGGが遊星主と戦う理由はこれに起因する。
三重連太陽系の復活を求めれば、結果的に別の宇宙の消滅に繋がるのだ。
他方、緑の星は全く逆の考えを持っていた。
カインは滅びゆく三重連太陽系から、次元ゲートの彼方の宇宙に移住する道を選択していたのだ。
先住民と共存し、三重連太陽系の文化を継承していく……
だが、アベルやカインの計画も、
紫の星で開発されたZマスターシステムにより瓦解する。
暴走したZマスターは三重連太陽系を機界昇華に導き、滅ぼした。
そして次に、次元ゲートの彼方へと侵攻し地球の機界昇華を狙った。
それからは、ガオガイガーと共に戦った護の記憶に新しいところだ。
「ふっ……そこまでこの世界に肩入れするのならラティオよ。そなたが仲間と呼ぶ者達共々、討ち滅ぼしてやろう」
カインはいきなり、ラウドGストーンの衝撃波を放った!
「くぅっ」
ズン、と防御する護の体に、重たい衝撃が伝わる。
「創造神に逆らう罰を食らうがよい」
アベル……彼にいくら僕を動揺させるために喋らせても……僕の勇気は砕けないよ!
『勇気さえあればGストーンは必ず俺達に力を与えてくれる』
……それが勇気ある誓い。
「だから、負けない。ペイ・ラ・カイン」
護の額にGストーンの紋章が浮かんだ。真逆ではない、正しく、真の勇気ある者の証たる紋章が。
「勇気があればきっと、GストーンはラウドGストーンを凌駕する!!」
「ラティオォォォ!!」
カインは破壊の力を解放する。それを護は防御の力で受け止める。
このパワーに耐え切れるか、ラティオよ!?
「うぉぉおおおっ!」
ほとばしる緑の輝き。
護の力が、カインの力を押しのけていく。
「ぬ?」
人形であるはずのカインの瞳に、驚愕が走った気がした。
「はぁっ!」
護はついに、カインの力を押し返した。
「ぐあっ」
カインは跳ね返ってきた己の力によって、吹き飛ばされる。
「ラティオっ」
だが、まだ致命的なダメージを与えたわけではない。
カインは護に容赦ない攻撃を仕掛けようとした。
「砕けるがいい……ラティオよ」
「あなたには、絶対に勝つ! ──本当の僕のお父さんのためにも!!」
地上で戦いが繰り広げられている頃。
アースラもまた、ピサ・ソールへ向けて着々と進んでいた。
だが。
進路の先には、妨害が待ち構えていた。
「よくここまで来たな……時空管理局の者達よ」
自らを神を宣する遊星主、パルパレーパはアースラの艦首に、その傲岸なる笑みを見せるのだった。