ナノガイガー戦記~勇者とエース~    作:かがみん

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第23章 そして、決戦へ

ミッドチルダ沖合。

海上隔離施設。先のガジェットドローンによる襲撃の傷跡が未だ残る敷地内で、時空管理局の局員たちが、修復作業を急いでいる。

そんな喧騒から少し離れた場所に、水平線の彼方を見つめる一人の少女の姿があった。

潮風に銀髪を揺らしながら、陸のある方角を心配そうに凝視している。

戦闘機人No.5 チンクだ。

 

遊星主とレプリガジェット襲撃の後……

 

ナンバーズ達は半ば自主的に、管理局に協力を申し出た。

スカリエッティを殺害した遊星主に復讐するためなのだが、自らが犯した罪に対する贖罪の意味もある。

だが、管理局上層部はナンバーズ起用に難色を示したが、はやてが説得し、協力する許可を得た。

勇者隊にすれば人手はいくらあっても足りることはない状態なのだから、部隊の者たちは歓迎した。

時空管理局から信用されていないと認識したチンクは、自ら「人質」として海上施設に残った。

もし姉妹達が逃走した場合、チンクの「更正処分」は取り消され、厳罰に処せられるだろう。

もちろん、逃げたナンバーズも教育どころか終身刑を課せられるはずだ。

チンクの表情が曇っているのはそのことではなく、戦う相手がソール11遊星主だということ。

(誰も損傷しなければいいのだが……)

娘として、ドクターの仇は討たねばならない。

しかしそのために皆が傷つくのは、チンクの望むところではなかった。

「やはり、一緒にいくべきだったのだろうか……」

しかし、管理局を信頼させるには誰かが残った方がいいのではないか。どの道、自分では大した戦力になるまい……

そう自嘲気味に考えた。

「負傷が癒え切らぬこの身体では、妹たちを守り抜けまい」

あの高町なのはを擁する陣容ならば、妹たちを安心して預けられる。

「悔しいが、な――」

ほぅ、と吐息を吐き、振り向く。

その眼前に、一人の女性が立っていた。

清楚な雰囲気をまとったスバルの姉、ギンガ・ナカジマである。チンクは戦闘機人ならではの鋭敏な感覚で近づく気配を察知した。

「私は、役立たずの臆病者なのだろうか……ギンガ」

「いいえ。貴女は勇気があるわ」

微笑を口許に浮かべ、ギンガは告げた。

「大切な妹を戦場に送り出し、自分一人が残るのって、勇気ある決断だと思うの」

「だが……私は……」

姉として。この選択は正しかったのかと、チンクは悩んだ。

「お前は……辛くならないか……家族を――妹を戦いの場に赴かせるのは」

戦いこそが戦闘機人の生きる目的……疑問にすら思わなかった、存在理由。

なのに、姉は妹たちに戦いを放棄して、穏やかに暮らしてほしいと願わずにはいられない。

それは矛盾。自己の否定にもつながる思考だ。

チンクの望みは彼女自身に困惑をもたらした。

「そうね。心配していないって言ったら、嘘になるかな」

「お前でもそうなのか」

「だけどね」

空に顔を向け、

「私は信じているの。スバルの無事と、勝利を」

ギンガは自分の人生を変えた空港事故のことを思い起こした。

「あの人たちが、この戦いを終わらせて、スバルと共に還ってくるのを……」

自分を救ってくれた金色の髪の執務官。その優しさと強さを、ギンガは忘れたことがない。

「そう……か」

「ええ」

チンクの肩に手を置き、

「そして、皆が還ってくるべき場所を守るのが、私達の戦いよ」

瞳に強い意思が宿っていた。

「貴女は、なにもできないわけじゃない。貴女にできる戦いをやればいいのよ」

「私にできる……か」

チンクはギンガの話を聞いて、少しだけだが、気が楽になった。

依然として不安は残るが、彼女が言う「戦い」を始めようと思った。

「すまぬ……お前に要らぬ気遣いをさせてしまったようだ」

「いいのよ……それより、復旧作業を手伝ってほしいのだけど。いいかしら」

「ああ」

頷いて、チンクはギンガと並んで歩きはじめた。

しっかりとした、足取りで――

 

焦りと困惑。

いま、胸中に渦巻くパルパレーパの感情を言い表すとすれば、それが最も相応しいだろう。

ジャイアントメカノイド《キングジェイダー》から、魔法によってバージョンアップした《ゴッドジェイダー》の、パワーとスピードに、パルパレーパは翻弄されるばかりであった。

(こ、こんなことが……)

プライドの高い彼は、格下と見ているソルダートJが自分を一方的に攻め続けていることに我慢できない。

しかし、戦力差は圧倒的だった。

パルパレーパと違って、Jには余裕がある。

フェイトも、

「早く倒してアースラに追いつこう」

「あぁ。ジェイストライク起動!」

光り輝く槍が、パルパレーパに向けられた。

「邪悪を討つ稲妻の刃よ!!」

ゴッドジェイダーが炎の翼を羽ばたかせ、パルパレーパ・プラジュナーに迫る。

「ぐおおっ」

パルパレーパはメスで対抗するが、槍の前には無力だった。

「はぁっ!!」

「ぐぅ、メスを切断するとは。ならば――」

武器を失った遊星主は、もはやなりふり構わぬ攻撃に出た。

「ぬあぁぁぁぁっ」

咆哮を上げての突進。

だが、それは何の戦略も感じられぬ、無謀な進撃としか看られなかった。

「奴め、自暴自棄になったな」

冷静さを欠いた破れかぶれの攻撃など、ソルダートJには勝負を捨てたとしか思えないのだった。

「いつまでも戦いを長引かせるわけにはいかん。いくぞフェイト、この一撃で仕留める!」

猛攻のプラジュナーに対し、ゴッドジェイダーは回避ではなく真っ正面からの撃破を選択した。

「ゴッド・アンド・デビル!!」

パルパレーパの両腕は鉗子(かんし)状に組み換えられる。それはかつて、ガオファイガーを葬ったパルパレーパの必殺技であった。

両者は高速で飛び掛かり、その巨体同士が衝突する。

「ぐがぁぁぁ」

ゴッド・アンド・デビルが届く前に、ジェイストライクの尖端が、パルパレーパのの胸を貫いていた。

「うおぉっ」

パルパレーパは鉗子状態を解除。だが、腕は苦痛にうち震えるかのように弱々しい動きだ。

「これで奴も……」

「そうはいくものか!!」

予想に反して、力を振り絞ったパルパレーパがジェイストライクの柄をがっしりと掴んだ。そして、ゴッドジェイダーに対し攻勢に出る。

「くらえ、ポイズンオーラ!」

「ぬ!?」

有利なJに向かってパルパレーパが反撃した。

「貴様を、内部から破壊してくれる……」

プラジュナーが合成した物質及びナノマシンによるケミカル攻撃は、ゴッドジェイダーのシステムに損害を与えるはず。パルパレーパがそう思った時、Jがその確信を打ち砕くように告げた。

「無駄だ」

「な……!?」

細かい粒子状となったケミカル物質を敵内部に浸蝕させ、神経伝達を阻害したり、器官/機関部分に障害を発生、機能を弱体化に追い込むのがポイズンオーラだ。

「馬鹿な」

ジェイアークの構造を熟知した遊星主には、内側からシステムを崩壊させるのはたやすいという思い込みがあった。

しかし、ゴッドジェイダーは全く影響を受けた様子がない。

「貴様がケミカル攻撃を得意とするのは自明のことだったからな……」

ガオファイガー敗北以降、パレッス粒子を用いたGGGの戦力無力化、凱へのケミカルボルト埋め込みによる操作――勇者たちは常にパルパレーパから煮え湯を飲まされ続けてきた。

これまでパルパレーパに苦戦してきた凱からもたらされた情報を得て、時空管理局はその対抗策を考えた。

相手がケミカル攻撃を使ってくるのは必至と思われたので、それを無効化する手段を開発する。

リインフォースIIが中心となり、ケミカルナノマシンから機体を保護するソフトウェア(魔法及びプログラム)が考案された。

「リインが開発したアンチプログラムは、貴方の使うケミカルナノマシンの反応を感知して、数秒で除去を開始する――」

「ナノマシンと共に内部に浸透した毒性物質も、無害なものに変質されるのだ。これで貴様の奥の手も封じられたぞ、パルパレーパ!」

「く……まさか……こんなことが……」

憤怒の表情を浮かべ、パルパレーパはゴッドジェイダーを睨んだ。

「さぁ、パルパレーパよ、ここで滅びるがいい!」

ゴッドジェイダーは力任せにプラジュナーを蹴った。

槍が抜け、吹っ飛ぶ。

「……がああああッ!!」

「仕掛けるよ、J」

「うむ!!」

体勢を立て直したパルパレーパに、ゴッドジェイダーが最後の勝負を挑んだ。

「た、たしかに、いまの貴様たちのが我より上手かもしれん。だが、我等遊星主はピサ・ソールある限り何度でも復活し、そして勝利するのだ!」

「ふっ。仲間がピサ・ソールを破壊すれば、そのような台詞も吐けなくなるさ」

「ピサ・ソールを破壊などできるものか!!」

「できる……私はそう信じている」

「なのはが、きっとすべてを終わらしてくれるわ!」

酷使されたプラジュナーの躯には、疲弊が見られた。装甲を砕いてできた傷と、出力の低下によってパルパレーパから継戦能力が奪われていく。

だが、怒りに満ちた彼は、限界を越えて戦いに執着した。

「ぬあぁぁぁっ」

「バルディッシュ!」

《Yes.sir》

フェイトがかねてより起動準備をしていた呪文を、バルディッシュ・ダイナストは発動した。

「こ、これは!?」

雷電の輪が、パルパレーパ・プラジュナーの両手両足を拘束していた。

「う、動かん」

ライトニングバインド。それも最大かつ強力なもの。

パルパレーパの機体はいかに本人が望もうとも、空間に固定されたまま。まるで釘付けされた昆虫標本のようだ。

「う……」

冷や汗が、さしものパルパレーパにも流れた。

「ここまで大規模な魔法だと、起動に時間が必要だからね」

フェイトは呪文詠唱に入る。

「来たれ雷の覇者・万軍の鬨・滅びの武具・破壊の光輝を此処に顕現せよ――!」

無数の光円が生まれては、ぐるりと、パルパレーパを取り囲んだ。

一瞬でそれは、輝きを帯びた魔法陣となる。

そんな、(つぼみ)から華が咲き開くような光景が、美しくもあり、幻想的でもあった。

「なんだこれは」

配置の完了した発射体は、魔導師のトリガーを待って待機。

「もしも、リニスが見たら、きっと驚くだろうね」

魔法の師である女性をフェイトは思い浮かべた。

これから使う魔法は、師匠であるリニスから教えられたものを継承、発展させた特別な呪文である。

彼女にしても、これほど大規模な魔法はおそらく見たことがないでしょう、と、そう相槌をうったバルディッシュにとっても、リニスは創造主という敬仰すべき人だった。

「それにしても、あの時の再現みたいだね」

かつて。同じ手を用いてなのはに勝負を挑んだことがあった。二人ともまだ、子供の頃の話だ。

あの決戦で、なのはを拘束して射撃魔法を放って墜とすという戦法をとっている。結局は直撃に耐えられ、逆転されてしまったのだが。……

もっとも、パルパレーパにフェイトの攻撃を防げるとは思えないので、バルディッシュは完膚なきまでに打ち砕く自信があった。

「フェイト、奴のとどめは任せた」

「わかった。バルディッシュ、《フォトンランサー・ディストラクションシフト》起動!」

《Get.Set》

フェイトの命を受けて、バルディッシュが発射シークエンスに入る。

従来のフォトンランサーを遥かに凌駕する発射体の数は、およそ15000は下らない。

「ファイア!!」

光の槍が解き放たれた。

「……!!」

パルパレーパのいる一点に向かって、一斉に飛ぶ。

「おのれ……!」

金色に輝く幾万の彗星が集まって、一つの惑星を形作っていく。そんな錯覚を抱かせる光景だった。

華麗なる、破壊の現出。

激しく雷光が弾けた。

パルパレーパは、その輝きに飲み込まれ、消えていった。

彼が、散る間際になにを思い、どんな声を上げたのかは、神の身に在らぬフェイトたちには知る術もない。

「遊星主の消滅を確認」

ペンチノンが報告した。

「よし」

頷いてJは、ゴッドジェイダーをメカノイド形態からジェイアークへと戻した。

速やかに当宙域から離脱しようとした。

「ピサ・ソールのもとへ急ぐぞ」

回頭したところで、不意にペンチノンが告げた。

「高速で移動してくる物体がジェイアークが近づきつつある」

すぐ、Jは索敵を確かめた。

 

次元の海に浮かぶ《それ》は、まるで恒星のように光を発していた。

かつて、三重連太陽系においてGGGが太陽だと見誤った《それ》の正体こそが、ソール11遊星主の物質復元マシン、ピサ・ソールだ。

再生能力を司るピサ・ソールは、いまや遊星主にとって最大かつ最後の切り札と謂っていいだろう。

即ち、遊星主を束ねるパルス・アベルが、絶対に死守せねばならない存在である。

「……ペルクリオたちに続いてパルパレーパまでが……」

アベルの表情は硬い。

管理局により仲間たちが次々と討ち破られていく、その事実が彼女を苛立たせた。

「《聖王》とやらも《悪魔王》を止める役には立ちませんでしたか……パルパレーパの計画倒れですね」

蒼の星の勇者ではなく、ミッドチルダの魔導師がフュージョンしたガオガイガーは、立ちはだかる複製勇者王を圧倒的な勢いで撃破した。

これで《悪魔王》を遮る障害は、アベルとピア・デケムのみである。

「来る……!」

三段式飛行甲板空母《ピア・デケム・ピット》のブリッジで、アベルは迫り来る管理局艦隊を迎え撃つよう、ピア・デケムに指示した。

「間もなく、ピサ・ソールに三重連太陽系復元に必要なエネルギーが全て溜まる……」

それまで、時間稼ぎが必要だった。

「スカリエッティが儀式を始めれば、この時空の生命体は滅びます。その時こそ、我々の真の創造が成就するのです」

スカリエッティの研究によると、ゾンダー化という手段を採らずとも、次元世界の住人を完全に滅亡させることが可能らしい。

ジュエルシードは、それ程の力を秘めている。

「ジュエルシードが期待通りに力を発揮してくれれば、用済みのアルマにこだわる必要もなくなります」

戒道幾巳はJを牽制するための人質だが、チャージが完了したピサ・ソールの能力をフルに使えば――

「数百の遊星主で包囲殲滅、ですね。アベル様」

遊星主に協力したナンバーズの中で唯一生き残ったウーノが、アベルの言葉を引き継いだ。

「そうです。ジェネシックやキングジェイダーが進化したといっても、無限の再生力をもつ我々には敵いません」

消耗戦に持ち込めば、倒されても復活する遊星主に分があるだろう。

いかに強力な相手でもいつかは力尽き、遊星主の前に散るのである。

「ピサ・ソールが力を使えるようになるまでは、彼らを足止めしなければなりません。ピア・デケム、戦闘を頼みましたよ」

すでに索敵には、ナノガイガーとアースラの存在を捉えている。

「アベル様、ドクターから連絡は?」

「まだですが……おそらく、大規模な儀式なので時間がかかっているのでしょうね」

不安の入り混じったウーノとは対照的に、アベルの声はあくまで乾いていた。

「……」

「いずれにしても、これからやって来る時空管理局を倒せば、私たちの計画は達成できます――」

 

ピサ・ソールの光を背に、ピア・デケム・ピットは巨大な威容を誇っていた。

それに較べれば、アースラなど大鵬を前にした小鳥のようなものだ。

しかし、その鳥には鋭い硬嘴と爪がある。

『ソール11遊星主に告ぐ』

はやてはピア・デケム・ピットに呼びかけた。

『おとなしく投降すれば、攻撃は控える』

管理局のマニュアルに沿った降伏勧告を、淡々とした口調で伝える。

「笑止」

と、アベルが突っぱねた。

「三重連太陽系の再生こそが、我らの大儀であり、存在理由。長きにわたる悲願を、ここで潰えさせる様な妥協を私が採ると思っているのですか」

自分たちより下等と見なす時空管理局に降ることは、創造神の矜持が許さない。

これは互いの世界の生存を懸けた戦いなのだから。

降伏は即、己の世界の滅亡を意味する。

「……まぁ、予想してたけどな」

頑迷なアベルに嘆息した後、はやてはブリッジ全体を見渡し、

「さぁ、みんな。こうして決裂したからには、全力全開で行くで!」

クルーたちは気負った(かお)で頷いた。

「こっからが正念場……絶対に負けられへん」

ついに、遊星主旗艦と会戦する時がきた。

アースラ全体が緊張に包まれる。

だが、なのはの精神は落ち着いていた。

その冷静さを、武術に精通した父・高町士郎が見れば、明鏡止水と呼んだだろうか。

なのはは、どのような状況になっても、対応できる構えである。

「いくよ、レイジングハート」

《Standby Lady》

巨大な機体にみなぎる力。

「艦載機を飛ばしなさい!」

アベルが下命した。

ピア・デケム・ピットから無数の艦載機が、雲霞(うんか)の如く飛び立っていく。

「……!」

艦載機という体当たり兵器が、ナノガイガーに向かって潮のように押し寄せる。

だが、なのはは怖れない。

「ジェネシック・シューター!!」

凛冽(りんれつ)たる声とともに、ギガンティスハートを振り下ろす。

ジェネシック・シューターは、ジェネシックオーラを中核とする射撃魔法で、貫通用の魔力でコーティングされた、一種の鉄甲弾である。

発射体は、光の弾幕となって、艦載機を覆滅していく。

炸裂し、遊星主に類するものを徹底的に破壊する。

「く……通じませんか」

憎々し気に、アベルが零した。

「これが……悪魔の力」

ウーノもナノガイガーの戦闘力に慄然としたものを覚えた。

その手が、宝石のような物体を掴んでいる。無意識に撫で回しているのは、彼女の不安感のあらわれからか。

「できれば、これを使う状況には、なってほしくなかったのだけれど……」

宝石をぎゅっと握り、呟く。

それは、楕円形をした、黒耀石を思わせる宝石だった。

その宝石の形状は、漆黒のジュエルシードと云っていいだろう。

中央に、何かの記号が刻まれていて、アクセサリーのように首から掛ける紐が付けられている。

それは、スカリエッティが古代の遺跡から掘り起こしたロストロギアの一つだった。

(ドクターは、計画が失敗し、打つ手がなくなった時の……最期の手段だと言っていたけど……)

もし、この決戦に遊星主が敗れるのならば――

(私まで彼らの巻き添えを食う必要はない)

彼女の目的は、あくまでも、ドクター・スカリエッティの夢を実現させることだ。

遊星主に協力したのも彼らの技術を利用するため。

しかし、ここで敗色の気配が出てきた以上、いつまでもこんな艦に居る必然性はない。

ウーノはアベルを余所(よそ)に、ある操作を始めた。

 

 

一方、パルス・アベルは激昂を抑えるのも困難なほどに、険しい表情を見せていた。普段の沈着冷静な態度は、ボロボロと崩れさっていっている。

「あと一歩というときに、何故いつも邪魔が入るのです!?」

敵に苛立ち、憎悪し、そして歎く。

「ピア・デケム!!」

遠距離攻撃が効かないのなら、やはり近接戦にいくしかないでしょう。

「ギガ・フュージョンです」

システムが組み換わり、空母からメカノイドの姿に変わる。

キングジェイダーをも凌駕した巨大さの、ジャイアント・メカノイドだ。

「たかが異世界の、魔導師ごときに我々の邪魔など許しません。ピア・デケム・ピークで叩き潰しなさい!」

怒りをまとって巨神がナノガイガーへと殺到する。

しかし、ピア・デケム・ピークが攻撃を仕掛けようとした時、いずれからか放たれた二条のビームが、その肩を強打した。

「ぐっ……これは、反中間子砲の」

では、まさか?

驚くアベルの前で、超弩級戦艦がアースラを追って駆け付けた。

「J-002――」

アベルは、唇を噛んだ。

ジェイアークはピア・デケム・ピークの針路を塞ぐように、突き進んできた。

「ここは、私が食い止める。お前たちは構わず、ピサ・ソールを破壊しろ」

と、Jはアベルの動きを封じ込む役目を買って出た。

「……わかった!」

「馬鹿な。ピサ・ソールを破壊するですって? レプリションフィールドで守られた、恒星ほどもあるピサ・ソールを、あなた方の技術で破壊できるというのですか?」

ありえないと、アベルは一蹴するが、はやてがそんな彼女の思い上がりを否定する。

「できる! ピサ・ソールは破壊できる!!」

「そんな方法など……」

「八神隊長、お願いします!!」

アベルが言いかけるのを遮って、なのはがはやてに請願する。

「これが最後の戦いや。なのはちゃん、いくでぇ!」

戸惑うアベルとは対照的に、はやては自信に満ちていた。

いまこそ、時空管理局が総力を上げて作り上げた最終兵器を出す刻だ。

はやてが空に手をかざすと、起動のために官制制御ウィンドウが表れる。

機動勇者隊隊長の認証コードを入力。

《……貴官による当機ユニットの使用を許可します》という文言のあと、起動シークエンスが立ち上がる。

その光景は、魔導砲アルカンシェルの起動方法にも酷似していが、細かい部分では異なっていた。

「ユニット起動・仮承認……完全起動準備に移行してください」

ブリッジが慌ただしくなった。

「リイン!」

リインフォースIIが操作。

「はい! 起動鍵(トリガー・キィ)による承認お願いします」

はやては起動鍵を取りだした。

「これが……勝利の鍵やぁっ!!」

ウィンドウの真ん中に、スリット様のアイコンがある。そこへ鍵の先端を合わせた。

「――GSユニット、起動・承認!!」

裂帛の気合いを以って、はやては起動鍵を回した。

《八神はやて隊長の承認を確認しました》

官制制御ウィンドウに文字が点滅する。

《本機・起動準備スタート》

セーフティーを解除、各ユニット機スタンバイ。

「駆動炉稼動率70%、なおも上昇中」

「格納ハッチ、開放します」

「射出まで約15秒」

「駆動炉稼動率100%を計測、射出待機」

「ハッチ、オープン」

「ユニット各機、艦外へ射出」

「ユニット出力安定、デバイス合体プログラムを起動――」

ナノガイガー目掛け、三機のユニットが飛び出していく。

「はやてちゃん、レイジングハートさんからユニットの管理権限委譲の要請が」

「わかった」

はやてはウィンドウに幾つかのパスワードと文字を打ち込む。

「GSユニットの制御管理権がレイジングハート・ジェネシスに移譲されました」

これで、本格的に機構をナノガイガーが扱えるようになる。

「あとは、なのはちゃんに任せた……」

ギガンティスハートが変型を開始。システムチェンジ成功。

GSユニットとドッキング、魔力炉及びGSライドのリンク、成功。

「デバイス合体完了!!」

「――こ、これは!?」

アベルは愕然とした。

悪魔王が完成した対ピサ・ソール殲滅用デバイスを真っすぐ遊星主に向ける。

「エクセリオンクラッッシャー!! これで、あなた達を討つ!」

「馬鹿な……」

魔法陣展開。砲撃チャージ開始。膨大な魔力が、ナノガイガーの前面に集中する。

GGGからもたらされた、対Zマスター級迎撃用ツール《ゴルディオンクラッッシャー》のデータを元に製作された究極の魔導砲、恒星級の敵すら滅ぼすためのギガンティスハート追加ユニット。

それがエクセリオンクラッッシャーであった。

ろくにテストもできず、シミュレーション試験のみで実戦投入という事になり、今、その真価が問われる。

「ぶっつけ本番やけど、なのはちゃんならきっと――」

「くっ……まさか本当にピサ・ソールを破壊できると……ならば、それを撃たせるわけにはいきませんね」

半信半疑だが、危惧がある以上放ってはおけない。

アベルはエクセリオンクラッッシャーに狙いを変えた。

だが、ソルダートJがその行動を阻んだ。

「そうはいかん。貴様の相手は私たちだ」

「邪魔です!!」

アベルは立ち塞がるジェイアークに猛進した。

「いくぞ、二人とも!!」

ジェイアークの艦橋には、Jの他にルネとフェイトがいた。

いや、凱と命、護もいる。

ミッドチルダで遊星主を撃破した後、凱たちは急いでアースラの向かう戦場へと追いつこうとした。

そうして、パルパレーパを倒したJに合流し、ピサ・ソール破壊を助けるために来た。

「今度こそ完全に、遊星主をぶっ潰す!」

右腕のGストーンを光らせ、ルネが語気強く言った。

「アルマも救出しないとね」

フェイトがバルディッシュを構えた。

三人は手を握りあった。

「よし。三位一体――トリニティ・フュージョン!!」

『おおっ!!』

ジェイアークに、三人がフュージョンしていく。

メカノイドに変型したその姿は、ゴッドジェイダーよりも神々しく、力強いシルエットをしていた。

「あの姿……キングジェイダーではない!?」

「そうだ。赤と緑の力と、魔法が融合した魔導巨神! アルティメット・ゴッドジェイダー!!」

猛るパワーを抑えきれないような、Jの名乗りであった。

 




更新が遅れて半年係ってしまいました。続きを待っていた読者の皆様にはご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした
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