ナノガイガー戦記~勇者とエース~    作:かがみん

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第26章 勇者王ガオガイガー

エクセリオンクラッシャーは、まっすぐピサ・ソールを貫いた。

その光は、物質再生マシンの中枢……パスキューマシンを破壊する。

そこへ蓄えられていた膨大なエネルギーが、外へと爆散していく。

超新星のような輝きは、それが原因だった。

しかし、ピサ・ソールを消滅させることが、エクセリオンクラッシャーの真価ではない。

 

ピサ・ソールの両極に、魔法陣が展開する。

ある術式が、起動した。

 

高町なのはは、己の役割が終了した事を悟った。

「ギャレオン、いままでありがとう」

真情のこもった、別れのことばであった。

「フュージョンアウト!」

なのははファイナルフュージョンを解除した。

ギャレオンはなのはから離れ、もう1人の勇者のもとへ向かう。

「よっしゃ、なのはちゃんを転送収容!」

はやての指示に、リインフォースⅡが操作を行った。

 

「……あぁ……三重連太陽系が、滅びる……!」

嘆きを発したアベルの瞳は昏く澱んでいた。

ピア・デケム・ピークもパルス・アベルも、その姿を薄れさせている。

ピサ・ソールを喪ったため、存在を維持できなくなっていたのだ。

「なぜ、三重連太陽系の復活を拒むのです!? ラティオ、貴方の故郷なのですよ……」

「僕の故郷は確かに、三重連太陽系だよ。だけど……僕が皆と生きていきたいのは、地球なんだ!」

「ラティオ……」

粒子となって崩れながら、アベルは憎悪を籠めた視線を護に向けたまま消滅していく。

「忘れるな……三重連太陽系を滅ぼしたのは……貴方たちだと……いうこと……に……」

護と戒道の眼前で、長きに渡って争ってきた遊星主が、四散する。

砂上の楼閣が崩壊するように、ピア・デケム・ピークも巨体を虚空に散華させた。

全ての戦いは、終わったのだ。

そう思いながら、護は濡れた瞳で呟いた。

「三重連太陽系は滅びた。だけど……新しい宇宙として再生したんだ……そして青の星を生み出した」

Gクリスタルで得た情報はいまや確信へと変わっている。

星は超新星爆発を起こしたのち、そこから散らばった物質が凝縮し、新たな星がまた誕生する。

宇宙も同じように、何億年という長い時間をかけて生まれ変わるのだ。

そして、カインが次元ゲートで繋げた宇宙は、遥かな時を得て誕生した、新しい宇宙でだったのだ。

その若い宇宙に在った青の星――――地球、そこに生きる人々にはソール11遊星主には無かった、勇気の力があった。

遊星主が怖れた、理解できなかった勇気が、異なる宇宙、異なる時空を滅亡から救ったのである。

「帰ろう……天海」

友の肩に手を置き、戒道は静かに言った。

「うん。帰ろう、皆が待つ地球へ」

涙を振り払い、護は戒道と共に飛翔する。

すでに凱はひと足早く動いていた。

 

フェイトはピア・デケム・ピーク消滅後、アースラへ戻っていた。

残るはなのはだけ。

さすがに疲労が濃いが、なのはを迎えるべく佇む。

そして。

リインフォースがなのはの座標を固定、転送を開始しようとした時に異変は起きたのである。

 

「ギャレオーン‼」

凱は鋼鉄の獅子目掛けて飛んだ。

手のGの紋章が光を放つ。

「フュージョン!」

エヴォリュダーはギャレオンと融合。

「ジェネシックマシン!!」

凱の意思に呼応して5つの機体がギャレオンを取り巻く。

「ガイガー!」

ギャレオンが変形し人型のジェネシック・ガイガーへ。

そして、ジェネシックマシンたちは各々の軌道を描きながら、次なる命令を待つ。

「ファイナル……フュージョン‼」

凱は高らかに叫んだ。

ガジェットガオー、プロテクトガオー、ブロークンガオー、ストレイトガオー、スパイラルガオーが機構を変えてガイガーに合体していった。

勇気の究極なる姿、勇者王の名を冠する破壊神。

「ガオッガイッ……ガー‼」

聞けよその咆哮を。熱き獅子王の雄叫びを。

いま、ジェネシック・ガオガイガーは力強く顕現した!

 

 

ギャレオンの口蓋部に、護と戒道、そして命が移っていった。

その中は一種のシェルターのように彼等を保護する空間となる。

凱は次にガオガイガーの尾部……即ちガジェットガオーの頸部を分離させた。それは様々な機能を持つツールとなってガオガイガーの腕に装着される。

凱にとっては、これから使用するのが初めての機能であった。

「ギャレオリア・ロード!」

それは単独で次元ゲートを開くツールだった。

いままではギャレオンのブラックボックスから全て引き出すことができず、完全には解明されなかった技術を、凱は使うのだ。

もっとも、さすがにギャレオリア彗星のような長期的に安定したゲートは開けないだろうと思われた。

第一、出力が足りない。

だから――――

 

「術式発動」

ジェネシック・ガオガイガーは両腕に装着されたギャレオリア・ロードを突き出した。

本来ならば出力不足のため次元ゲートを開くのは至難であるのだが……それを補うためにピサ・ソールを利用した。

なのはが放ったエクセリオンクラッシャーには、ピサ・ソールの爆発で溢れた膨大なエネルギーを抽出し束ねる術式が組み込まれてあったのだ。

そのエネルギーは魔力に変換され、凱のデバイスが汲み上げ、制御する。

そうして、アルカンシエルが数百発は撃てるであろう巨大な魔力を、ギャレオリア・ロードの発動に使うのだ。

「いっけぇっ!」

白銀に輝く閃光は、ピサ・ソール破壊によって生じた爆発の中心を、穿つ。

そこに、光の路が開かれた!

その向こうが果たして故郷に通じているのか、凱にはわからない。

だが、それでもギャレオリア・ロードに賭けるしかない。

彼の勇気ある決断であった。

「いくぞ、みんな!」

「凱、貴方を信じてる……」

「僕達もさ、凱兄ちゃん!」

「たとえ何が待っていようとも、責めはしない」

「ありがとう……じゃあ、突入するぞ!」

ジェネシックは加速して、次元の扉を目指した。

 

遥か次元を越える旅が始まる。

その一歩を踏み出そうとする凱たち。

しかし。

それを許さない者が、ただ一人、いた。

 

「お前たちを行かせはしない!」

美しい面貌が悪鬼の如き変貌を遂げている。

目は怒りに燃え立ち、殺意を全身から発したその女は……紛れもなく戦闘機人・ウーノその人であった。

彼女はアベルを見限り、密かにピア・デケム・ピットから脱し、姿を隠して待ち続けた。

ドクター・スカリエッティの復仇を遂げる機会を。

ソール11遊星主は結局敗亡した。ならば、仇は自分の手で伐たねばならない。

特に、獅子王凱は必ず斃す。

その意志を以て、ジェネシックの前に立ちはだかった。

おそらく彼女の能力では、小細工を弄しても敵わないだろう。

だから正面から挑んだ。

切り札はある。

奴を、斃す切り札が。

 

「やめろ! もう戦いは……」

凱の言葉を遮るように、ウーノは漆黒の宝玉を取り出し掲げる。

「さぁ、いまこそ闇を開放しろ、暗黒の種子よ!」

「なに!?」

黒き宝玉から、闇が溢れた。

それは密度を増し、ジェネシックの巨体を覆い尽くせそうなほど拡がった。

「なんだ、これは」

「飲み込まれるがいい、永遠の闇に!」

「させん!」

ジェネシックを庇うように、アルティメット・ゴッドジェイダーが闇の前に割り込む。

「早く行け! 凱」

「だが、J!」

「いいから、早く……っ!」

闇は、ゴッドジェイダーをも凌駕する程の大きさに成長していた。

そして、雪崩のように襲いかかってきた。

闇がまるで生き物を思わせる動きで機体に絡みつく。

「ぐ……このパワーは」

「J、いま助け……」

「早く行けといっただろう、凱。ラティオとアルマを、あ、青の星へと帰――」

遊星主をものともしなかったアルティメット・ゴッドジェイダーが。闇の中に沈んでいった。

闇は自らをも飲み込むが如く丸まり、収縮し、消滅する。

「J――!!」

「ちっ……」

ウーノは舌打ちした。

「Jはどこに消えたんだ!」

彼はJとルネが死んだ等とは思わない。

「暗黒の種子は虚数空間への扉を開けるロストロギアだったのよ。お前の仲間は二度と戻っては来れない空間に堕ちていったの」

「そんな……」

愕然とする凱。

ウーノは悔しげにジェネシックを見上げ、

「切り札が無くなった以上、残る手段は……」

戦闘機人をスキャンしていたアースラでは、悲鳴が上がっていた。

「この反応は……」

「あかん。奴はーーー」

「くそ、プロテクト……」

「お前は私と一緒に死ぬのよ!」

「待ちなさい! 自爆なんてさせない」

高町なのはが、流星の様にウーノの元に飛んだ。

「バインド……」

急行したなのはが拘束魔法でウーノを封じようとする。

だが。ウーノの内部が臨界点を超えるほうが一瞬、なのはより優ったのだった。

「ドクター……」

創造主を想いながら、ウーノは自爆した。

ウーノは微笑みすら浮かべ、砕け散る。

爆発の衝撃が、暴風のように荒れ狂い、ジェネシックとなのはを吹き飛ばした。

「ぐおおおっ」

ジェネシック・ガオガイガーは、衝撃によって閉じかけたギャレオリア・ロードに突っ込んだ。

機体のバランスをくずしたまま、路の彼方へと飛ばされていく。

そして、なのはは……

 

「はやてちゃん、だめです……なのはちゃんの座標……ロスト……この近傍には」

「なんでや! なんでなのはちゃんが……」

はやては蒼い顔で、唇を噛んだ。

いまは安全な部屋で眠っているヴィヴィオのことを思い、胸が

痛んだ。

あの子が眼を覚ましたとき、一体何と告げればよいのか。

ブリッジにいた誰もが、沈痛な面持ちになった。

「探すんだ!」

「フェイトちゃん!」

振り向いた先に、決然としたフェイトの顔があった。

「なのははきっと無事に生きてる。だからすぐに捜索を」

「そやな。これよりなのはちゃんの捜索を開始する!」

「了解、本局に連絡し、応援を要請します!」

ギャレオリア・ロードは閉じていた。あとにはピサ・ソール爆発の名残りのような光がアースラを照らしていた。

異界から来た仲間たちはもう居ないのだ。

はやては、GGGの勇者たちが故郷へたどり着けることを祈りながら、艦隊の進路変更を命じていた。

 

[エピローグに続く]




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